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ヴァーミリオン領
100.渦巻く陰謀!?王都へ向かって
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子爵邸、応接室ーー
「それでは、皆さん。各々準備は良いでしょうか?」
ローケンの問いに、私、ディラン、サクリスが頷く。
ガストからの便りが届いた翌日、全ての準備を整え、関係者全員がここに集結した。
王都へは馬で約1日かかり、途中、王都最寄りの町ナーデルに駐留し、そこで迎えを待つ。
それぞれの役割としてはこうだ。
私は、ガストからの使者を待ちそれから王宮へ。
騎士団は、一旦ナーデルで待機し、先に潜入した私やアリエルからの連絡を待って王都に進撃。
サクリスは、一旦ナシリスへ向かい手勢を揃えてから騎士団と王都で合流。
ローケンは、私の側近として一緒に王宮へ侵入するという手筈だ。
「ここから先は、時間との戦いです。シルベーヌ様達が潜入してから、1日が勝負だと思って下さい」
「元より短期決戦だと思っている!あの愚王の側にシルベーヌ様がいるなんて、考えただけでもおぞましい!」
「なんだ、復活しやがって……まぁ、オレ達も心得てるぜ。まかせときな、シルベーヌとフロールは必ず助ける!」
ディランとサクリスの間には見えない火花が散った。
ローケンはやれやれまたか、という顔をし肩を竦めた。
「それでは皆さん。段取り通りにお願いします。では、表に向かいましょうか!」
ローケンは、サクリスとディランに向かって、優雅に『どうぞ』と先を譲った。
サクリスとディランはどちらが先に出るかというくだらない事で揉めた結果、家主であるディランがその権利を得た。
勝ち誇ったようなディラン。
舌打ちをしたサクリス。
私とローケンが、後ろで冷たい目をしていたことなど、きっと彼らは知らないわね。
表玄関を出ると、そこにはピシッと隊服を着た騎士団がフォーサイスを先頭に整列している。
総勢100名が並ぶ姿は壮観で、私は、改めてヴァーミリオン騎士団が王国最強だと知ることになった。
ディランは一番前で誇らしく鬣をなびかせたドミニオンを撫で、領主らしく、また、団長らしく檄を飛ばした。
「我らヴァーミリオン騎士団は、これより、人の理に背く者を退治しに行く!我らこそ正義、正義は我らにある!そして、シルベーヌ様が安心して暮らせる世界を我らが創るのだ!」
「だから、どうして私の名を出すの!?」
思わず出た本音は、その後の大地が揺れるような咆哮にかきけされた。
どこかで聞いたわね……ああ、ムーンバレーと同じじゃない?
でも人が多いぶん、こっちの方が派手で恥ずかしいわ。
これでまた名前を連呼なんてされたら……。
そう思っていた私の肩をディランがグイッと抱き寄せ、雄叫びを上げた。
「シルベーヌ様のために!!」
げっ!やっぱりそう来るのね!?
「シルベーヌ様のためにーー!!」
「うぉーーシルベーヌ様のために!」
「シルベーヌ様ぁ!!」
騎士団のシルベーヌ連呼は、出立の鐘の音を完全に消した。
ムーンバレーでは、谷だから響くのかなと思ったけど、それは関係なかったらしい。
騎士団の咆哮はここ、ヴァーミリオンでも絶好調に響いている。
むぅ……ここまでされると、私も何かやりたくなってきた!
ちょっと昂ってるのかしら!?
そして!気分が乗った勢いそのままに、私は右腕をグッと天に突き立て言った。
「がんばろーー!ね?」
その一言は余計だったかもしれない……。
と思ったけど既に遅し。
一拍の空白の後、地鳴りと共に起こった再度のシルベーヌ連呼。
それは、子爵邸を揺らしヴァーミリオン領に軽い地震を起こしたのだった……。
「それでは、皆さん。各々準備は良いでしょうか?」
ローケンの問いに、私、ディラン、サクリスが頷く。
ガストからの便りが届いた翌日、全ての準備を整え、関係者全員がここに集結した。
王都へは馬で約1日かかり、途中、王都最寄りの町ナーデルに駐留し、そこで迎えを待つ。
それぞれの役割としてはこうだ。
私は、ガストからの使者を待ちそれから王宮へ。
騎士団は、一旦ナーデルで待機し、先に潜入した私やアリエルからの連絡を待って王都に進撃。
サクリスは、一旦ナシリスへ向かい手勢を揃えてから騎士団と王都で合流。
ローケンは、私の側近として一緒に王宮へ侵入するという手筈だ。
「ここから先は、時間との戦いです。シルベーヌ様達が潜入してから、1日が勝負だと思って下さい」
「元より短期決戦だと思っている!あの愚王の側にシルベーヌ様がいるなんて、考えただけでもおぞましい!」
「なんだ、復活しやがって……まぁ、オレ達も心得てるぜ。まかせときな、シルベーヌとフロールは必ず助ける!」
ディランとサクリスの間には見えない火花が散った。
ローケンはやれやれまたか、という顔をし肩を竦めた。
「それでは皆さん。段取り通りにお願いします。では、表に向かいましょうか!」
ローケンは、サクリスとディランに向かって、優雅に『どうぞ』と先を譲った。
サクリスとディランはどちらが先に出るかというくだらない事で揉めた結果、家主であるディランがその権利を得た。
勝ち誇ったようなディラン。
舌打ちをしたサクリス。
私とローケンが、後ろで冷たい目をしていたことなど、きっと彼らは知らないわね。
表玄関を出ると、そこにはピシッと隊服を着た騎士団がフォーサイスを先頭に整列している。
総勢100名が並ぶ姿は壮観で、私は、改めてヴァーミリオン騎士団が王国最強だと知ることになった。
ディランは一番前で誇らしく鬣をなびかせたドミニオンを撫で、領主らしく、また、団長らしく檄を飛ばした。
「我らヴァーミリオン騎士団は、これより、人の理に背く者を退治しに行く!我らこそ正義、正義は我らにある!そして、シルベーヌ様が安心して暮らせる世界を我らが創るのだ!」
「だから、どうして私の名を出すの!?」
思わず出た本音は、その後の大地が揺れるような咆哮にかきけされた。
どこかで聞いたわね……ああ、ムーンバレーと同じじゃない?
でも人が多いぶん、こっちの方が派手で恥ずかしいわ。
これでまた名前を連呼なんてされたら……。
そう思っていた私の肩をディランがグイッと抱き寄せ、雄叫びを上げた。
「シルベーヌ様のために!!」
げっ!やっぱりそう来るのね!?
「シルベーヌ様のためにーー!!」
「うぉーーシルベーヌ様のために!」
「シルベーヌ様ぁ!!」
騎士団のシルベーヌ連呼は、出立の鐘の音を完全に消した。
ムーンバレーでは、谷だから響くのかなと思ったけど、それは関係なかったらしい。
騎士団の咆哮はここ、ヴァーミリオンでも絶好調に響いている。
むぅ……ここまでされると、私も何かやりたくなってきた!
ちょっと昂ってるのかしら!?
そして!気分が乗った勢いそのままに、私は右腕をグッと天に突き立て言った。
「がんばろーー!ね?」
その一言は余計だったかもしれない……。
と思ったけど既に遅し。
一拍の空白の後、地鳴りと共に起こった再度のシルベーヌ連呼。
それは、子爵邸を揺らしヴァーミリオン領に軽い地震を起こしたのだった……。
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