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ヴァーミリオン領

97.畑で収穫を

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止めるディランを尻目に、食後の運動をするべく、私は畑へと出た。
そして何故か、騎士団の皆さんもゾロゾロとついてくる。
……何?……暇なのかしら?
そんな彼らのことは放っておいて、私は畑で働くフレアに声を掛けた。

「おはよう、フレア!お手伝いしたいんだけど?」

「ん……え?シルベーヌ様!?ど、どうしてです?」

ソラマメのさやを握りしめながら、フレアは目を丸くした。
どうして?それはね、食べ物を消化するためですよ、奥さん。
私はふふっ、と笑った。
それが不気味だったのか、フレアは引きつったように固まってしまった。

「フ、フレア?あら、ごめんなさい、私の顔が怖かった?」

「いえ、とんでもない!ですが……あの……王女様に畑仕事をさせるなんて……畏れ多くて……」

フレアはそう言うと、チラッとディランを見た。

「俺も止めたんだが……聞かなくて……」

ディランはため息をついて言った。
いや、元はと言えば、あなたが薦めたことじゃない!?
私が1人でプンスカしていると、裏手からマーサと大人しそうな女性が歩いてくる。
一部始終を聞いていたらしいマーサは、おおらかに笑い飛ばしながら言った。

「まぁまぁ、いいじゃないのー!シルベーヌ様は朝日に当たって、もっと健康的になるといいよ!ヒョロガリだからねぇ!」

ええ、ヒョロガリですからね!
あら、ヒョロガリって共通認識なのかしら?

「マ、マーサまで……はぁ、仕方ない。皆でやろうか?」

ディランは、諦めて腕捲りをした。
それを見て、私もぐっと腕捲りをし、ドレスの裾を少したくしあげる。
そして座り込むと、マーサの指示に従って収穫を手伝った。

「シルベーヌ様は王女様っぽくないねぇ。なんというか親しみやすい感じでさ!初めて見たときは、その美しさに度肝を抜かれたけど、話してみるとなんかさ、少し違うよね!」

対面で作業するマーサが朗らかに言った。

「あー、王女っぽくないって良く言われるわ。私もあまり意識したことないし……まぁ、ぼーっとしすぎて、父や母に注意されることは多々あります!」

私はマーサに向かっておどけて言った。
すると、マーサのすぐ後ろにいた女性がクスッと小さく笑い声を溢し、一瞬驚いた顔をしたマーサは、すぐに彼女を紹介した。

「この子はフィン、私の妹なんだけどね……この畑で作業中にエレナ様に突然髪を掴まれてね……それがショックで余り口をきかなくなってしまったんだ。ここに来るのも怖がってねぇ」

「まぁ……」

私は、フィンが怯えないように控えめに挨拶をし、不気味にならない程度に微笑んだ。
フィンは、マーサの後ろにスッと隠れたけど、暫くこちらを伺うように見て、やがて少し笑った。

「ふふ、ほらね、シルベーヌ様は怖くないだろ?」

マーサは振り向き、フィンに言った。
そして、言葉を続ける。

「ディラン様が選んだ方だからね。素直な人柄だってのはすぐにわかったし、表情がくるくる変わって楽しいったらないよ。一家に一人いれば、家が明るくなるね!」

「マーサ……ほめてる??それ?」

私は軽く睨みを利かせた。
変な人、と言われてるような気がひしひしと……。

「もちろん、ほめてるよ!シルベーヌ様自身はそう思わなくても、知らない間に人を笑顔にする。そんな女性なんだよ」

「んなっ!!それは、ほめすぎ……」

めちゃくちゃ、恥ずかしい!
誉め殺しね!ほんとに殺されてしまいそう!
真っ赤になった私を、後ろにいたディランが覗き込み、

「そんな女性なんだよ?」

と、煌めきながら念を押した……いや、トドメを刺した、が正解。
朗らかに笑うマーサに、控えめに微笑むフィン。
ぷっと口を押さえたフレアに、大声で笑う騎士団の皆さん。
私の変顔はそんなに面白かったのか……スピークルムで確認しようにも彼はまだ休眠中。
仕方なく、煌めき続けるディランを拗ねたような目でみるしかない私、なのである……。
























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