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ヴァーミリオン領
96.心外だわ
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話が一段落したところで、クレバードは、柘榴亭のワンプレートランチのような大皿を私の前に置いた。
「ふわぁぁぁぁーーー!!」
その皿の美しさに私、思わず叫んだわ!
それは、柘榴亭で見たワンプレートよりも、更に洗練され考えられた一品だった。
赤いトマトは薔薇のように飾り切りされ、葉に見立てたミントが添えてある。
隣に盛られたサラダはちぎりレタスを下に、鶏肉を茹でて割いたものに細切りの人参を和え、それに黒ゴマソースをかけて彩りよく仕上げていた。
主食のライ麦パンは2枚。
その間には白身魚の揚げ物が、卵を細かく潰したものと一緒にはさみ込まれている。
「さぁ、冷めないうちにどうぞ」
「うん!」
隣で笑うクレバードからフォークを受け取り、ぐるりと周りを取り囲む騎士団は気にしないようにして、私はまず薔薇トマトを口にした。
ひんやり、そして、ほのかな甘味。
ジュワッと広がる特有の食感と、流れ出るジュース……。
「ふまいっ!!」
うまい!!と言ったのよ。
毎度はしたないと思うけど、これは仕方ないわね。
美味しすぎるのがいけないんだわ!
「ありがとうございます!」
クレバードは照れて頭を掻いた。
「ああ、ほら、トマトが口から漏れてる……」
ディランがナプキンで私の口を拭いた。
良かった、今度は舐めなかったわね。
ホッとした私は、どんどん次を放り込む。
メインである白身魚のサンドを一気に半分ほど平らげ、続いて黒ゴマソースの鶏肉サラダを一口。
サンドの白身魚はアツアツで、ほどよく酸味の利いた卵のフィリングと良く合う。
サラダも黒ゴマの芳ばしさが、淡泊な鶏肉を上手く盛り立てていた。
「すごく美味しい。全部食べるのが勿体無いわ。食べるけど」
「ははっ、遠慮せずどんどん食べて下さい!おかわりはちゃんとありますから」
なっ!なんですって!
それを、早く言ってよね!
ニヤリとした私は、あっという間に一皿平らげ、隣のクレバードに次を催促した。
結局、合計4皿を食べ、ぽっこりと出たお腹をさすりながら、お約束のヒューゴ厳選のハーブティーを頂く。
今日はレモングラスだ。
「ふぅ……お腹いっぱい、夢いっぱい……幸せすぎて、もう死にそう」
思わず感嘆の声を上げた私に、隣でじっと見ていたディランが言った。
「さて、これから、君のドレスを合わせに行くんだが……」
「は?え?ドレスって言った?」
「ああ、言った。どうした?何か問題でもあるか?」
「問題大有りじゃない……」
きょとんとしたディランには、私の発言の意味がわかっていない。
だけど、アッシュとロビー、繊細な感性を持つ2人には、それがわかっていた。
「団長。飯食った後は、ダメだろ?」
「だよな、腹が出てる時に合わせるって……」
2人のダメ出しに、どうやらディランも気付いたみたい。
「あ、それもそうか……じゃあ、少し働いて引っ込ませるか?」
「働く?」
思いもよらない言葉に私は首を傾げた。
「ほら、そこの畑で収穫の手伝い」
ディランは窓の外、騎士団の菜園を指差す。
「え?わぁ、私がしてもいいの?」
「………したいのか!?冗談だったのに……シルベーヌ様に畑仕事をさせるなんてそんな大それたこと……」
大それた……?
一体、ディランの脳内の私は、どんな位置にいるの?
ひょっとして、働いたこともない王女だと思ってるんじゃない?
もしそうなら心外だわ!
こう見えても、立派にモヤシの栽培もしていたんだから!
「ふわぁぁぁぁーーー!!」
その皿の美しさに私、思わず叫んだわ!
それは、柘榴亭で見たワンプレートよりも、更に洗練され考えられた一品だった。
赤いトマトは薔薇のように飾り切りされ、葉に見立てたミントが添えてある。
隣に盛られたサラダはちぎりレタスを下に、鶏肉を茹でて割いたものに細切りの人参を和え、それに黒ゴマソースをかけて彩りよく仕上げていた。
主食のライ麦パンは2枚。
その間には白身魚の揚げ物が、卵を細かく潰したものと一緒にはさみ込まれている。
「さぁ、冷めないうちにどうぞ」
「うん!」
隣で笑うクレバードからフォークを受け取り、ぐるりと周りを取り囲む騎士団は気にしないようにして、私はまず薔薇トマトを口にした。
ひんやり、そして、ほのかな甘味。
ジュワッと広がる特有の食感と、流れ出るジュース……。
「ふまいっ!!」
うまい!!と言ったのよ。
毎度はしたないと思うけど、これは仕方ないわね。
美味しすぎるのがいけないんだわ!
「ありがとうございます!」
クレバードは照れて頭を掻いた。
「ああ、ほら、トマトが口から漏れてる……」
ディランがナプキンで私の口を拭いた。
良かった、今度は舐めなかったわね。
ホッとした私は、どんどん次を放り込む。
メインである白身魚のサンドを一気に半分ほど平らげ、続いて黒ゴマソースの鶏肉サラダを一口。
サンドの白身魚はアツアツで、ほどよく酸味の利いた卵のフィリングと良く合う。
サラダも黒ゴマの芳ばしさが、淡泊な鶏肉を上手く盛り立てていた。
「すごく美味しい。全部食べるのが勿体無いわ。食べるけど」
「ははっ、遠慮せずどんどん食べて下さい!おかわりはちゃんとありますから」
なっ!なんですって!
それを、早く言ってよね!
ニヤリとした私は、あっという間に一皿平らげ、隣のクレバードに次を催促した。
結局、合計4皿を食べ、ぽっこりと出たお腹をさすりながら、お約束のヒューゴ厳選のハーブティーを頂く。
今日はレモングラスだ。
「ふぅ……お腹いっぱい、夢いっぱい……幸せすぎて、もう死にそう」
思わず感嘆の声を上げた私に、隣でじっと見ていたディランが言った。
「さて、これから、君のドレスを合わせに行くんだが……」
「は?え?ドレスって言った?」
「ああ、言った。どうした?何か問題でもあるか?」
「問題大有りじゃない……」
きょとんとしたディランには、私の発言の意味がわかっていない。
だけど、アッシュとロビー、繊細な感性を持つ2人には、それがわかっていた。
「団長。飯食った後は、ダメだろ?」
「だよな、腹が出てる時に合わせるって……」
2人のダメ出しに、どうやらディランも気付いたみたい。
「あ、それもそうか……じゃあ、少し働いて引っ込ませるか?」
「働く?」
思いもよらない言葉に私は首を傾げた。
「ほら、そこの畑で収穫の手伝い」
ディランは窓の外、騎士団の菜園を指差す。
「え?わぁ、私がしてもいいの?」
「………したいのか!?冗談だったのに……シルベーヌ様に畑仕事をさせるなんてそんな大それたこと……」
大それた……?
一体、ディランの脳内の私は、どんな位置にいるの?
ひょっとして、働いたこともない王女だと思ってるんじゃない?
もしそうなら心外だわ!
こう見えても、立派にモヤシの栽培もしていたんだから!
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