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ヴァーミリオン領
95.少し丸みが………?
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騎士団詰所大広間には、もう既に多くの団員が集っている。
その中で、食事の必要のない死人組は、出入口付近のテーブルで、和やかに談笑していた。
「あ!おはようございます!シルベーヌ様!」
「おはようございます!!」
スレイがこちらに気づくと、ロビー、フォーサイス、アッシュらが次々と挨拶をする。
「おはよう!!みんな昨日はお疲れ様!!」
と、私も挨拶を返し、ぐいぐいと手を引くディランに促されテーブルについた。
「シルベーヌ様、お肌の調子を見せてもらってもいいですか?」
背の高い騎士団の中から、ヒューゴがひょっこりと顔を出した。
「あ、はーい。お願いします」
私は見やすいようにヒューゴに向かって顔を上げた。
彼は、長い指で頬を触り、右に左に顔を向けながらお肌の調子を熱心に確認している。
「うん。いいでしょう。湿疹は綺麗に消えました。水分も油分もちょうどいいようですね。念のため朝と夜寝る前には軟膏をつけて下さいね」
ヒューゴ先生の診察が終わった。
経過は良好なようね。
「はーい。この軟膏、ほんとに良く効くのね!日差しも防いでくれてるみたいだし。これなら、醜女も少し返上出来るかしら?」
と、呑気に言う私に、朝からヒューゴの雷が落ちた。
「シルベーヌ様は、醜女ではありませんっ!!」
「へっ、え?」
ヒューゴの落雷は、辺りに静けさをもたらせた。
食事を取っていた団員達も、フォークを持ったまま目を丸くしてこちらを見ている。
えーっと……どうした!?ヒューゴ先生?
「最初からシルベーヌ様は、美しかったのです!ただ、体が日光に慣れていなかっただけ!!そんな風に御自分を卑下されるのはやめて下さい」
「あー………はい、ごめん」
はい、ごめん、とは言ったものの、私はどうして怒られているのか良くわからない。
卑下じゃなくて、事実じゃない?
見たままを言ったまでなんだけど……そんな風に聞こえたのかしら?
「大体、肌荒れと激やせが原因なのに、醜女って言葉は相応しくありません!」
ヒューゴは自分で言ってて止まれなくなったのか、更に激しく捲し立てた。
このままだと魔王が降臨する……いや、もうしてる?
「うーん。じゃあ、なんて呼ぶのが相応しいの?ヒョロガリ?モヤシ?」
「………そっちの方がまだいいです」
どうしたことか、魔王は降臨する前に去った。
私のアダ名が的を得たらしく、ヒューゴは納得の表情で頷いた。
だけど。
ヒョロガリ、モヤシて………。
なんだか、モヤモヤするのは私だけ??
「シルベーヌ様はヒョロガリモヤシではないっ!!」
今度はディランが怒鳴った。
否定してくれるのはありがたいけど、それ、繋げないで?「ヒョロガリモヤシ」って名称を作らないで?
「そうだぞ!私のバランスの取れた食事を召し上がって、シルベーヌ様は少しふっくらとされたのだ!見てみろ、御腰の辺りに少し丸みが出てきただろう?」
次は私の番だ!とばかりにクレバードが叫んだ。
そしてその言葉に、全員が私の腰回りに注目した。
………ちょっと……見ないでよ、恥ずかしい!
「そうですね。そういえば御腰の辺りがふっくらと……」
ヒューゴ!?
「ほんとだ、丸い」
アッシュ!?
「いいねぇ、お肉が付くのはまず尻からだっていうし。この調子でどんどん丸くなっていくんだろうな」
ロビー……今、尻て………。
皆の声を聞きながら、クレバードは大きく頷いた。
「私が、名誉あるシルベーヌ様の専属料理人に就任したからには、これから一切の妥協を許さず、ひたすらシルベーヌ様の健康と笑顔のためだけに料理を作ります!ですから、安心して全てを任せて頂きたい!」
「よろしくお願いします……」
私は素直に頷いた。
だって、もうこれ以上「腰回り」の話を広げたら、朝食が冷めてしまうじゃないのっ!!
それは絶対ダメだから!
その中で、食事の必要のない死人組は、出入口付近のテーブルで、和やかに談笑していた。
「あ!おはようございます!シルベーヌ様!」
「おはようございます!!」
スレイがこちらに気づくと、ロビー、フォーサイス、アッシュらが次々と挨拶をする。
「おはよう!!みんな昨日はお疲れ様!!」
と、私も挨拶を返し、ぐいぐいと手を引くディランに促されテーブルについた。
「シルベーヌ様、お肌の調子を見せてもらってもいいですか?」
背の高い騎士団の中から、ヒューゴがひょっこりと顔を出した。
「あ、はーい。お願いします」
私は見やすいようにヒューゴに向かって顔を上げた。
彼は、長い指で頬を触り、右に左に顔を向けながらお肌の調子を熱心に確認している。
「うん。いいでしょう。湿疹は綺麗に消えました。水分も油分もちょうどいいようですね。念のため朝と夜寝る前には軟膏をつけて下さいね」
ヒューゴ先生の診察が終わった。
経過は良好なようね。
「はーい。この軟膏、ほんとに良く効くのね!日差しも防いでくれてるみたいだし。これなら、醜女も少し返上出来るかしら?」
と、呑気に言う私に、朝からヒューゴの雷が落ちた。
「シルベーヌ様は、醜女ではありませんっ!!」
「へっ、え?」
ヒューゴの落雷は、辺りに静けさをもたらせた。
食事を取っていた団員達も、フォークを持ったまま目を丸くしてこちらを見ている。
えーっと……どうした!?ヒューゴ先生?
「最初からシルベーヌ様は、美しかったのです!ただ、体が日光に慣れていなかっただけ!!そんな風に御自分を卑下されるのはやめて下さい」
「あー………はい、ごめん」
はい、ごめん、とは言ったものの、私はどうして怒られているのか良くわからない。
卑下じゃなくて、事実じゃない?
見たままを言ったまでなんだけど……そんな風に聞こえたのかしら?
「大体、肌荒れと激やせが原因なのに、醜女って言葉は相応しくありません!」
ヒューゴは自分で言ってて止まれなくなったのか、更に激しく捲し立てた。
このままだと魔王が降臨する……いや、もうしてる?
「うーん。じゃあ、なんて呼ぶのが相応しいの?ヒョロガリ?モヤシ?」
「………そっちの方がまだいいです」
どうしたことか、魔王は降臨する前に去った。
私のアダ名が的を得たらしく、ヒューゴは納得の表情で頷いた。
だけど。
ヒョロガリ、モヤシて………。
なんだか、モヤモヤするのは私だけ??
「シルベーヌ様はヒョロガリモヤシではないっ!!」
今度はディランが怒鳴った。
否定してくれるのはありがたいけど、それ、繋げないで?「ヒョロガリモヤシ」って名称を作らないで?
「そうだぞ!私のバランスの取れた食事を召し上がって、シルベーヌ様は少しふっくらとされたのだ!見てみろ、御腰の辺りに少し丸みが出てきただろう?」
次は私の番だ!とばかりにクレバードが叫んだ。
そしてその言葉に、全員が私の腰回りに注目した。
………ちょっと……見ないでよ、恥ずかしい!
「そうですね。そういえば御腰の辺りがふっくらと……」
ヒューゴ!?
「ほんとだ、丸い」
アッシュ!?
「いいねぇ、お肉が付くのはまず尻からだっていうし。この調子でどんどん丸くなっていくんだろうな」
ロビー……今、尻て………。
皆の声を聞きながら、クレバードは大きく頷いた。
「私が、名誉あるシルベーヌ様の専属料理人に就任したからには、これから一切の妥協を許さず、ひたすらシルベーヌ様の健康と笑顔のためだけに料理を作ります!ですから、安心して全てを任せて頂きたい!」
「よろしくお願いします……」
私は素直に頷いた。
だって、もうこれ以上「腰回り」の話を広げたら、朝食が冷めてしまうじゃないのっ!!
それは絶対ダメだから!
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