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ヴァーミリオン領
87.あんまりだわ!
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「だが、フロールが無事かどうかはわからない!これでは……状況が何も変わらないのと一緒だ!」
サクリスが悔し紛れに応接室の壁を殴るのを見て、ガストは言葉を付け加えた。
「殿下。フロール様の命は無事だと思われます。先ほども言いましたが、王は美しい者を愛でる。美しい者を傷つけることはありません。それに、王宮から死者が運び出された様子はなかったので……」
「そうか……だが、捕らえられていることは間違いない。なんとか助けださなくては……」
サクリスは、一縷の希望を得て少し表情を明るくした。
だけど、依然として状況は芳しくなく、最悪といった方がいいかもしれない。
そんな中、ディランが飄々と言ってのけた。
「わかりやすくていいじゃないか。結局のところ、ヴァーミリオン騎士団とサクリス殿下の敵はラシュカ王なわけだ。倒してしまえばいい」
「簡単に言うがな?人質がいるし、王の私兵は選りすぐりの戦士だ、強いぞ」
ガストはディランを睨めつけたが、当のディランは、どこ吹く風だ。
「選りすぐりだろうが、何だろうが、人間ならば疲れもするし怪我もする。ならば俺達の方に分がある」
「君はそんな男だったか?もっと、堅実で思慮深い人間だったような気がしたが。今は血の気の多い狂戦士みたいだぞ?」
死んでるから血の気はないわよ!
それに、堅実で思慮深いって一体誰のこと?
出会ってから、奔放で強引なディランしか知らないんだけど。
あ、そういえば。
亡霊として最初に出会った時は、任務に忠実な真面目君に見えたわ!
死んで性格が変わったのかしら?
変なの。
「ディランは生まれ変わったんですよ、ある意味ね」
ローケンはくくっと笑いながらガストに言った。
「ほう……ああ!そうか。それは多分シルベーヌ様が関係しているのだな?どこでどうやって出会ったのかは知らないが………待てよ?」
「どうしました?」
ローケンは、はたと止まったガストに問いかけた。
「あの時王は、シルベーヌ様に古い離宮へ行けと言ったな。そして騎士団には確か……隣国の者がムーンバレーに入り込むので、それの討伐にと…」
「そうだったわね」
「そうだな」
私とディランは顔を見合わせて頷いた。
「ひょっとすると……いや、これは本当に推測でしかないが……討伐ついでに、あわよくばシルベーヌ様も殺させようと思ったのでは………」
な!?
そんな酷い……。
醜女には生きる権利もないと!?
さすがの私もキレてもいいかな、と思った瞬間、先にぶちギレたのはディランだった。
「何だと!?騎士団にシルベーヌ様を!?愚王め!!叩き斬ってやる!」
「推測だと言ったろう!?いや、まぁ、自分で言っておいてなんだが、それは正解のような気がしている……」
ガストは腕を組み唸った。
尚も噛みつこうとするディランをとめながら、今度はローケンが言った。
「美しい者じゃなければ要らないということでしょうか?なんと、傲慢なこと、神か何かになったつもりなのでしょうか……」
いつも冷静なローケンもこの時ばかりは、怒りを露にした。
「もしシルベーヌ様が離宮で殺されていたら……アルハガウンは問答無用で戦争を仕掛けてきただろう。そんなこともわからぬとは……」
そうでしょうね。
父は軍隊を率い、すぐにやってくる。
そして、あっと言う間に地上を闇に変えてしまうわ。
あの軍隊に……人は決して敵わないのだから。
サクリスが悔し紛れに応接室の壁を殴るのを見て、ガストは言葉を付け加えた。
「殿下。フロール様の命は無事だと思われます。先ほども言いましたが、王は美しい者を愛でる。美しい者を傷つけることはありません。それに、王宮から死者が運び出された様子はなかったので……」
「そうか……だが、捕らえられていることは間違いない。なんとか助けださなくては……」
サクリスは、一縷の希望を得て少し表情を明るくした。
だけど、依然として状況は芳しくなく、最悪といった方がいいかもしれない。
そんな中、ディランが飄々と言ってのけた。
「わかりやすくていいじゃないか。結局のところ、ヴァーミリオン騎士団とサクリス殿下の敵はラシュカ王なわけだ。倒してしまえばいい」
「簡単に言うがな?人質がいるし、王の私兵は選りすぐりの戦士だ、強いぞ」
ガストはディランを睨めつけたが、当のディランは、どこ吹く風だ。
「選りすぐりだろうが、何だろうが、人間ならば疲れもするし怪我もする。ならば俺達の方に分がある」
「君はそんな男だったか?もっと、堅実で思慮深い人間だったような気がしたが。今は血の気の多い狂戦士みたいだぞ?」
死んでるから血の気はないわよ!
それに、堅実で思慮深いって一体誰のこと?
出会ってから、奔放で強引なディランしか知らないんだけど。
あ、そういえば。
亡霊として最初に出会った時は、任務に忠実な真面目君に見えたわ!
死んで性格が変わったのかしら?
変なの。
「ディランは生まれ変わったんですよ、ある意味ね」
ローケンはくくっと笑いながらガストに言った。
「ほう……ああ!そうか。それは多分シルベーヌ様が関係しているのだな?どこでどうやって出会ったのかは知らないが………待てよ?」
「どうしました?」
ローケンは、はたと止まったガストに問いかけた。
「あの時王は、シルベーヌ様に古い離宮へ行けと言ったな。そして騎士団には確か……隣国の者がムーンバレーに入り込むので、それの討伐にと…」
「そうだったわね」
「そうだな」
私とディランは顔を見合わせて頷いた。
「ひょっとすると……いや、これは本当に推測でしかないが……討伐ついでに、あわよくばシルベーヌ様も殺させようと思ったのでは………」
な!?
そんな酷い……。
醜女には生きる権利もないと!?
さすがの私もキレてもいいかな、と思った瞬間、先にぶちギレたのはディランだった。
「何だと!?騎士団にシルベーヌ様を!?愚王め!!叩き斬ってやる!」
「推測だと言ったろう!?いや、まぁ、自分で言っておいてなんだが、それは正解のような気がしている……」
ガストは腕を組み唸った。
尚も噛みつこうとするディランをとめながら、今度はローケンが言った。
「美しい者じゃなければ要らないということでしょうか?なんと、傲慢なこと、神か何かになったつもりなのでしょうか……」
いつも冷静なローケンもこの時ばかりは、怒りを露にした。
「もしシルベーヌ様が離宮で殺されていたら……アルハガウンは問答無用で戦争を仕掛けてきただろう。そんなこともわからぬとは……」
そうでしょうね。
父は軍隊を率い、すぐにやってくる。
そして、あっと言う間に地上を闇に変えてしまうわ。
あの軍隊に……人は決して敵わないのだから。
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