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ヴァーミリオン領
55.毒物
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「ところで、俺達が去った後、こちらで起こったことについて細かく聞きたいんだが……」
口を動かすのが忙しい私の後ろでは、ディランが居残りの騎士団と話し合いをしている。
「そうですね。変わったことと言えば、団長達が出立してから、宰相が来ましたよ」
答えたのは、騎士団二番隊隊長ジョゼフ。
彼は団長補佐も兼任しているらしいわ。
ディランとフォーサイスが共に出る時には彼が最高責任者になるんだって。
「宰相ガスト……何をしに?」
「エレナ様をお迎えに……と言ってました……ですが、何かを探しているようにも見えました」
「………探す、か。怪しいな……そう言えば、出立前にエレナを厨房付近で見たものはいるか?」
ディランの問いに、数十人が手を挙げた。
「ほらな、言った通りだろう?」
勝ち誇ったようなフォーサイスに、フレアが思い出したように言った。
「エレナ様……あ、そうそう。その日のことなんだけど、私厨房でお昼ご飯の仕度をしていたら、突然エレナ様がやって来たのよ」
「は!?それで、どうした?」
「うん……《私も騎士団のお仕事を手伝いたいわー、だってディラン様の妻になるんですもの》とか言うの!それで、手伝わせろっていうから、少しだけ鍋を任せたのよ。その間に私、庭の野菜を収穫したんだけど……」
「…………おいおい、こりゃあ、かなりキナ臭いぞ。ムーンバレーの屋敷の地下室には仕掛けなんてなかったからな」
というロビーに、フォーサイスもディランも頷いた。
「となると……やはりここで盛ったのか?おい、ヒューゴ。遅効性で致死率の高い毒物ってあるか?」
ディランの問いに、ヒューゴが答える。
「遅効性であっても、効果時間はせいぜい一時間から二時間でしょうね。だけど、半日持たせる方法も無くはないんです」
「出来るのか?」
「出来ますね。猛毒性のある物を同時に摂取すると、一時中和されます。そして、どちらか効果範囲の長いものが残って死に至る、という訳ですが……」
「が?って?」
今度はスレイが口を挟む。
「一般的に、猛毒を手に入れるのが困難ですし、相当の知識がなければ、そんな都合の良い毒は作れないと思います。それこそ、過去に存在した犯罪者《毒の魔女》くらいじゃないと無理です。それにエレナ様が鍋に毒を入れたと仮定しても、動機はわからないし、証拠は何もない」
「………証拠?毒?魔女?ねぇ、皆一体何の話をしているの?」
その内容の物騒さに、フレアが震えながら答えた。
ヒューゴはアッと口を押さえたけど、もう遅い。
居残りの騎士団員もフレアと同じく、眉間にシワを寄せ、ディラン達を見ていた。
「ああ!実はな、ムーンバレーに行っている最中に、そういう推理ゲームをしていたんだよ……な?」
慌てたフォーサイスが言い、
「そうそう!皆で話を考えて!うん、そ、そうだ!」
ロビーも助け船を出す。
しかし、フレアはまだ納得していなかった。
そしてその矛先は、口を動かしながら聞いていた私へと向いたのだ!
口を動かすのが忙しい私の後ろでは、ディランが居残りの騎士団と話し合いをしている。
「そうですね。変わったことと言えば、団長達が出立してから、宰相が来ましたよ」
答えたのは、騎士団二番隊隊長ジョゼフ。
彼は団長補佐も兼任しているらしいわ。
ディランとフォーサイスが共に出る時には彼が最高責任者になるんだって。
「宰相ガスト……何をしに?」
「エレナ様をお迎えに……と言ってました……ですが、何かを探しているようにも見えました」
「………探す、か。怪しいな……そう言えば、出立前にエレナを厨房付近で見たものはいるか?」
ディランの問いに、数十人が手を挙げた。
「ほらな、言った通りだろう?」
勝ち誇ったようなフォーサイスに、フレアが思い出したように言った。
「エレナ様……あ、そうそう。その日のことなんだけど、私厨房でお昼ご飯の仕度をしていたら、突然エレナ様がやって来たのよ」
「は!?それで、どうした?」
「うん……《私も騎士団のお仕事を手伝いたいわー、だってディラン様の妻になるんですもの》とか言うの!それで、手伝わせろっていうから、少しだけ鍋を任せたのよ。その間に私、庭の野菜を収穫したんだけど……」
「…………おいおい、こりゃあ、かなりキナ臭いぞ。ムーンバレーの屋敷の地下室には仕掛けなんてなかったからな」
というロビーに、フォーサイスもディランも頷いた。
「となると……やはりここで盛ったのか?おい、ヒューゴ。遅効性で致死率の高い毒物ってあるか?」
ディランの問いに、ヒューゴが答える。
「遅効性であっても、効果時間はせいぜい一時間から二時間でしょうね。だけど、半日持たせる方法も無くはないんです」
「出来るのか?」
「出来ますね。猛毒性のある物を同時に摂取すると、一時中和されます。そして、どちらか効果範囲の長いものが残って死に至る、という訳ですが……」
「が?って?」
今度はスレイが口を挟む。
「一般的に、猛毒を手に入れるのが困難ですし、相当の知識がなければ、そんな都合の良い毒は作れないと思います。それこそ、過去に存在した犯罪者《毒の魔女》くらいじゃないと無理です。それにエレナ様が鍋に毒を入れたと仮定しても、動機はわからないし、証拠は何もない」
「………証拠?毒?魔女?ねぇ、皆一体何の話をしているの?」
その内容の物騒さに、フレアが震えながら答えた。
ヒューゴはアッと口を押さえたけど、もう遅い。
居残りの騎士団員もフレアと同じく、眉間にシワを寄せ、ディラン達を見ていた。
「ああ!実はな、ムーンバレーに行っている最中に、そういう推理ゲームをしていたんだよ……な?」
慌てたフォーサイスが言い、
「そうそう!皆で話を考えて!うん、そ、そうだ!」
ロビーも助け船を出す。
しかし、フレアはまだ納得していなかった。
そしてその矛先は、口を動かしながら聞いていた私へと向いたのだ!
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