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ムーンバレー地方
48.まずやるべきこと
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「ちょっといいか、団長」
サクリスと話していたフォーサイスが何やら険しい顔でやって来た。
それを見て、他の騎士団の皆もこちらに注意を向ける。
「何だ?」
「王都へ行く道すがら、ヴァーミリオン領へ一旦帰るのはどうだろう?こちらの《問題》も解決していないし、あとで何があってもいいように、皆、家族との別れを済ませた方が良くはないか?」
その提案に、ディランは少し俯いて考え込んだ。
考え込む必要なんてないんじゃない?
元々騎士団は、自分達の死因を突き止める為に死人になったのだし。
王都へ行く途中にヴァーミリオンがあるのならちょうどいい。
と思ったけど、ディランにはディランの思うことがあるのかもしれない。
普段、全く空気を読まない私は暫く黙って状況を見守った。
「………そうだな……だが、死因を突き止めることは、慎重にやった方がいい。毒殺というからには、誰が関与していてもおかしくないからな。身内も信用出来ないかもしれない」
「信用出来ない」その言葉をディランは噛み締めるように言った。
「ああ、わかってる。死の原因を突き止めるまでは、オレたちが死んだということを、誰にも知られない方がいい。犯人は、オレたちが生きて帰ってきたとなると、それを見て慌てるはずだ。きっと何かボロを出す」
そう言ってフォーサイスは、サクリスを見た。
「殿下も、この件は他言無用で願いますよ」
「ああ。騎士団全員が死人で、それを可能にしたのが、冥府の力なんてな……さっき聞いても信じられなかったが、先程の戦いを思い出すと、それも納得だ……疲れを知らぬ死人の騎士団か、怖いな」
と、サクリスは呆れ半分、恐れ半分の微妙な顔をしている。
それもそうだ。
地上では、死人は死人。
動いたりはしない。
ましてや、感情もあり、見た目生者と変わらないなんてね。
「サクリス殿下、妹姫が心配ではあろうが少し時間をくれないか?」
「いいだろう。こちらも今のところ君達に頼るしか方法がないからな」
ディランの言葉にサクリスは頷いた。
「よし!ではそういうことで話を進めよう。まずやるべきことは、ヴァーミリオン領で俺達の問題を片付けること。その後、王都へ向かい消えた王女達の消息を辿る!!」
ディランは落ち着いた中にも威厳のある声で方針を決定した。
その姿は雄々しく、正に騎士団長然としている。
それがいつもと違うものに見えて、私は少しドキドキした。
側で眩しい笑顔を振り撒いている男でなく、心配して泣きそうになっている男でもない。
初めて見る騎士団長ディランは、大いに私の心を掻き乱した。
『キラキラ団長、カッコいいデスね!』
「えっ!?」
スピークルムの声に私は目を泳がせた。
幸いにも、スピークルムの周波数は、今は私に合わせているようで、誰も気にする様子もない。
『シルベーヌ様もお年頃デスし?そういった感情があってもいいんデス。いや、むしろ今までなかったことがおかしいんデスが』
(お、お黙りっ、割るわよ?)
小声ながら、ドスの聞いた恫喝にスピークルムはふるっと身を震わせて黙った。
いやいや、違うから。
そうよ、だって、婚約者持ちの男よ?しかも、死人だし。
どうやっても結ばれないでしょう!?
そうやって全否定してみても、一度走り出した思いは、簡単に消えたりはしない。
仕方なく私は………。
一生懸命考えて、気をまぎらわせた。
何を考えたかって?
もちろん………バナナのことを、よ!!
サクリスと話していたフォーサイスが何やら険しい顔でやって来た。
それを見て、他の騎士団の皆もこちらに注意を向ける。
「何だ?」
「王都へ行く道すがら、ヴァーミリオン領へ一旦帰るのはどうだろう?こちらの《問題》も解決していないし、あとで何があってもいいように、皆、家族との別れを済ませた方が良くはないか?」
その提案に、ディランは少し俯いて考え込んだ。
考え込む必要なんてないんじゃない?
元々騎士団は、自分達の死因を突き止める為に死人になったのだし。
王都へ行く途中にヴァーミリオンがあるのならちょうどいい。
と思ったけど、ディランにはディランの思うことがあるのかもしれない。
普段、全く空気を読まない私は暫く黙って状況を見守った。
「………そうだな……だが、死因を突き止めることは、慎重にやった方がいい。毒殺というからには、誰が関与していてもおかしくないからな。身内も信用出来ないかもしれない」
「信用出来ない」その言葉をディランは噛み締めるように言った。
「ああ、わかってる。死の原因を突き止めるまでは、オレたちが死んだということを、誰にも知られない方がいい。犯人は、オレたちが生きて帰ってきたとなると、それを見て慌てるはずだ。きっと何かボロを出す」
そう言ってフォーサイスは、サクリスを見た。
「殿下も、この件は他言無用で願いますよ」
「ああ。騎士団全員が死人で、それを可能にしたのが、冥府の力なんてな……さっき聞いても信じられなかったが、先程の戦いを思い出すと、それも納得だ……疲れを知らぬ死人の騎士団か、怖いな」
と、サクリスは呆れ半分、恐れ半分の微妙な顔をしている。
それもそうだ。
地上では、死人は死人。
動いたりはしない。
ましてや、感情もあり、見た目生者と変わらないなんてね。
「サクリス殿下、妹姫が心配ではあろうが少し時間をくれないか?」
「いいだろう。こちらも今のところ君達に頼るしか方法がないからな」
ディランの言葉にサクリスは頷いた。
「よし!ではそういうことで話を進めよう。まずやるべきことは、ヴァーミリオン領で俺達の問題を片付けること。その後、王都へ向かい消えた王女達の消息を辿る!!」
ディランは落ち着いた中にも威厳のある声で方針を決定した。
その姿は雄々しく、正に騎士団長然としている。
それがいつもと違うものに見えて、私は少しドキドキした。
側で眩しい笑顔を振り撒いている男でなく、心配して泣きそうになっている男でもない。
初めて見る騎士団長ディランは、大いに私の心を掻き乱した。
『キラキラ団長、カッコいいデスね!』
「えっ!?」
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幸いにも、スピークルムの周波数は、今は私に合わせているようで、誰も気にする様子もない。
『シルベーヌ様もお年頃デスし?そういった感情があってもいいんデス。いや、むしろ今までなかったことがおかしいんデスが』
(お、お黙りっ、割るわよ?)
小声ながら、ドスの聞いた恫喝にスピークルムはふるっと身を震わせて黙った。
いやいや、違うから。
そうよ、だって、婚約者持ちの男よ?しかも、死人だし。
どうやっても結ばれないでしょう!?
そうやって全否定してみても、一度走り出した思いは、簡単に消えたりはしない。
仕方なく私は………。
一生懸命考えて、気をまぎらわせた。
何を考えたかって?
もちろん………バナナのことを、よ!!
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