34 / 169
ムーンバレー地方
34.黄色い三日月
しおりを挟む
部屋を出ていったサクリスは、思ったよりも早く帰ってきた。
その手には見たこともない『黄色い三日月』のようなものを持っている。
「悪いな、料理人が出払っていてこんなものしかなかった」
そう言うと部屋のテーブルに置かれた銀のトレイに『黄色い三日月』をのせ、私の膝にポンと置いた。
「まぁ、これ、とっても可愛い!何て言う食べ物?」
「可愛い??おい……まさか……バナナを知らないのか……」
サクリスはまた目を丸くした。
「バナナ?……へぇ、そんな名前なのねぇ。名前まで可愛いわ」
黄色い三日月のようなもの、それは「バナナ」という食べ物のようだ。
同じ大きさの三日月が四つ、まるで兄弟のように固まっていて、私の膝が揺れる度に彼らも揺れた。
「このまま食べるの?」
「まさか!!こうやって皮をむいて……」
サクリスはベッドサイドに腰かけて、バナナを一本もぎ取ると、先端の飛び出たところからグイッと下へ引く。
すると!
中から出てきたのは、クリーム色のバナナだった!!
「わあっ!!バナナの中からバナナが!!」
私は両掌を広げ感嘆の声を上げた。
でも、サクリスにはそれが大袈裟に見えたらしく、呆れて笑いながらこう言った。
「………………君は………それが素なのか?ええと……人生が楽しそうで何よりだな……」
うっ、し、失礼な!
そんなアホの子に言うみたいに言わないでっ!
でも、人生が楽しいってことには、反論はしないわ。
こちらに来てから、新しくて楽しい驚きの毎日を送っているんだもの。
サクリスの言葉を軽く流し、私は彼のむいてくれたバナナを食べることにした。
「食べてもいい?」
「どうぞ。召し上がれ」
そう言われて、私は一度手を止める。
何故かというと、バナナを食べる時のマナーとして………。
1、かぶりつく
2、ちぎって口に入れる
という2つの選択肢が浮かんだからだ!
ナイフとフォークは用意されてなかったから、選択肢から外した。
用意されてないってことは、使わないってことよね?
必然的に1か2のどちらかになるんだけど……。
「どうした?」
バナナを前に動かない私を見て、彼は首を傾げる。
そんなサクリスを見上げ、私はおどおど尋ねてみた。
「バナナを食べる時のマナーとか……ある?」
「バナナの!?マナー!?」
いや、食べる時のマナーですよ……と、言おうとしたけど、それはサクリスの大爆笑に遮られた!
「マナー!?マナーって……あはははっ!!ダメだ、腹が捩れる!!死ぬ……死んでしまう!!」
………そのまま、笑い死ぬがいい。
私は心の中で呪いの言葉を吐いた。
「ちょっと!知らないから聞いたのに、あんまりじゃないの!!知らないことを笑うのは失礼なことよ」
プンスカ怒る私の隣で、ヒーヒーと悶えていたサクリスはやっと落ち着きを取り戻した。
「いや、悪い。あんまり君が、面白くて……プッ……純粋で天然なもんだからさ」
「……………」
「ごめん。うん、そうだな、知らないことを笑うなんてダメだな」
笑いの波が去ったサクリスは、今度は真面目に言った。
「わかってくれればいいのよ。で、どうやって食べるの?」
「オレのおすすめはな……」
「うん」
「かぶりつけ!!」
その言葉を合図に、私は勢い良くバナナにかぶりついた!
その手には見たこともない『黄色い三日月』のようなものを持っている。
「悪いな、料理人が出払っていてこんなものしかなかった」
そう言うと部屋のテーブルに置かれた銀のトレイに『黄色い三日月』をのせ、私の膝にポンと置いた。
「まぁ、これ、とっても可愛い!何て言う食べ物?」
「可愛い??おい……まさか……バナナを知らないのか……」
サクリスはまた目を丸くした。
「バナナ?……へぇ、そんな名前なのねぇ。名前まで可愛いわ」
黄色い三日月のようなもの、それは「バナナ」という食べ物のようだ。
同じ大きさの三日月が四つ、まるで兄弟のように固まっていて、私の膝が揺れる度に彼らも揺れた。
「このまま食べるの?」
「まさか!!こうやって皮をむいて……」
サクリスはベッドサイドに腰かけて、バナナを一本もぎ取ると、先端の飛び出たところからグイッと下へ引く。
すると!
中から出てきたのは、クリーム色のバナナだった!!
「わあっ!!バナナの中からバナナが!!」
私は両掌を広げ感嘆の声を上げた。
でも、サクリスにはそれが大袈裟に見えたらしく、呆れて笑いながらこう言った。
「………………君は………それが素なのか?ええと……人生が楽しそうで何よりだな……」
うっ、し、失礼な!
そんなアホの子に言うみたいに言わないでっ!
でも、人生が楽しいってことには、反論はしないわ。
こちらに来てから、新しくて楽しい驚きの毎日を送っているんだもの。
サクリスの言葉を軽く流し、私は彼のむいてくれたバナナを食べることにした。
「食べてもいい?」
「どうぞ。召し上がれ」
そう言われて、私は一度手を止める。
何故かというと、バナナを食べる時のマナーとして………。
1、かぶりつく
2、ちぎって口に入れる
という2つの選択肢が浮かんだからだ!
ナイフとフォークは用意されてなかったから、選択肢から外した。
用意されてないってことは、使わないってことよね?
必然的に1か2のどちらかになるんだけど……。
「どうした?」
バナナを前に動かない私を見て、彼は首を傾げる。
そんなサクリスを見上げ、私はおどおど尋ねてみた。
「バナナを食べる時のマナーとか……ある?」
「バナナの!?マナー!?」
いや、食べる時のマナーですよ……と、言おうとしたけど、それはサクリスの大爆笑に遮られた!
「マナー!?マナーって……あはははっ!!ダメだ、腹が捩れる!!死ぬ……死んでしまう!!」
………そのまま、笑い死ぬがいい。
私は心の中で呪いの言葉を吐いた。
「ちょっと!知らないから聞いたのに、あんまりじゃないの!!知らないことを笑うのは失礼なことよ」
プンスカ怒る私の隣で、ヒーヒーと悶えていたサクリスはやっと落ち着きを取り戻した。
「いや、悪い。あんまり君が、面白くて……プッ……純粋で天然なもんだからさ」
「……………」
「ごめん。うん、そうだな、知らないことを笑うなんてダメだな」
笑いの波が去ったサクリスは、今度は真面目に言った。
「わかってくれればいいのよ。で、どうやって食べるの?」
「オレのおすすめはな……」
「うん」
「かぶりつけ!!」
その言葉を合図に、私は勢い良くバナナにかぶりついた!
0
お気に入りに追加
2,685
あなたにおすすめの小説
夫を愛することはやめました。
杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
【完結】殺されたくないので好みじゃないイケメン冷徹騎士と結婚します
大森 樹
恋愛
女子高生の大石杏奈は、上田健斗にストーカーのように付き纏われている。
「私あなたみたいな男性好みじゃないの」
「僕から逃げられると思っているの?」
そのまま階段から健斗に突き落とされて命を落としてしまう。
すると女神が現れて『このままでは何度人生をやり直しても、その世界のケントに殺される』と聞いた私は最強の騎士であり魔法使いでもある男に命を守ってもらうため異世界転生をした。
これで生き残れる…!なんて喜んでいたら最強の騎士は女嫌いの冷徹騎士ジルヴェスターだった!イケメンだが好みじゃないし、意地悪で口が悪い彼とは仲良くなれそうにない!
「アンナ、やはり君は私の妻に一番向いている女だ」
嫌いだと言っているのに、彼は『自分を好きにならない女』を妻にしたいと契約結婚を持ちかけて来た。
私は命を守るため。
彼は偽物の妻を得るため。
お互いの利益のための婚約生活。喧嘩ばかりしていた二人だが…少しずつ距離が近付いていく。そこに健斗ことケントが現れアンナに興味を持ってしまう。
「この命に代えても絶対にアンナを守ると誓おう」
アンナは無事生き残り、幸せになれるのか。
転生した恋を知らない女子高生×女嫌いのイケメン冷徹騎士のラブストーリー!?
ハッピーエンド保証します。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
転生おばさんは有能な侍女
吉田ルネ
恋愛
五十四才の人生あきらめモードのおばさんが転生した先は、可憐なお嬢さまの侍女でした
え? 婚約者が浮気? え? 国家転覆の陰謀?
転生おばさんは忙しい
そして、新しい恋の予感……
てへ
豊富な(?)人生経験をもとに、お嬢さまをおたすけするぞ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる