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ムーンバレー地方
24.料理人の生き甲斐、衛生師の動揺
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笑いが押さえられないディランのことは放置して、私はクレバードの横に座り込み、話を続けた。
「それで、どうしてこのブロッコリーをシチューに入れたの?」
「これは優秀な食材なんです。今、シルベーヌ様に必要な栄養素が粗方補充出来ますからね!」
「へぇ!?このもさもさしたのがねぇ?」
目を丸くして見る私を、クレバードは目を細めて見た。
「本来は茹でたり、水に浸けると栄養素が溶け出てしまうのですが、シチューに入れると、スープまでちゃんと飲むでしょう?お手軽に美味しく、栄養を摂取出来るというわけです」
「なるほどね!勉強になります。クレバードのご飯を食べてると、健康になれそうな気がするわ!」
私は手にしたスプーンでシチューを掬い、勢い良く口に入れた。
朝のシチューと少し違ったのは食感と、何か瑞々しい後味。
ホッコリとするシチューから、どこかオシャレなシチューへと変化している。
「美味しい。うん。洗練された味がするわ!何かを足すだけでこんなに違うものなのね」
「はい。簡単な足し算なんですがね。それが思いも寄らない奇跡をおこす。料理の奥深さはそこにあるのだと思います!」
クレバードは息巻いた。
彼のその熱心な様子からは、料理に対する情熱が溢れてくるようだった。
食材に敬意を払い、その栄養を最大限に引出し、更に美味しく進化させる。
持って生まれた才能もあるかもしれないけど、それよりは、クレバードの育った環境の方が大きく影響しているのかもしれない。
培われた努力や勉強の賜物。
彼にはそんな言葉が相応しい。
「クレバード」
「はい!何か?」
「あなたの作る料理、私大好きよ。短い間かもしれないけど、とても楽しみにしてるから!今日の夜も、明日の朝も……ね!」
一瞬の空白の後。
クレバードはとびきりの笑顔で笑った。
「シルベーヌ様を元気に美しくすることが、今の私の生き甲斐です!あ、死んでますけどね」
なんてブラックな冗談を……と思ったけど、クレバードの笑顔は晴れやかだった。
私は皿のシチューを全て平らげ、予めヒューゴが調合してくれていたハーブティーを香りを堪能しながら、ゆっくりと飲んだ。
そして、ちょうど飲み干した頃、ロビーとヒューゴが早足で帰ってきた。
「おっと、お食事中だったか」
ロビーが背負ったものをドサッと下ろした。
茶色の大きい麻袋の中には、何か重量のあるものが入っていたらしく、ロビーはやれやれと肩を回している。
「シルベーヌ様、軟膏が完成しましたよ。はい、それでは、先に手で試してみましょうね?」
優しく言うヒューゴに、私は疑いもなく手を出した。
医者っていうのは、患者に信頼されないと駄目なのよね。
その点でいうと、ヒューゴはこの職業に向いている。
「まずは、手の甲で……」
と、優しくゆっくり円を描くようにすりこんでいく。
「どうですか?肌、ピリピリしたりとか熱かったりとか違和感ないですか?」
「今のところ、ないわ」
「わかりました。では、あともう少し様子を見て、問題なければ顔にも塗っていきましょう」
「はい、ヒューゴ」
感謝を込めて、ニッコリ微笑んでおく。
すると、ヒューゴは突然挙動不審になり、持っていた軟膏をストンと落とした。
「それで、どうしてこのブロッコリーをシチューに入れたの?」
「これは優秀な食材なんです。今、シルベーヌ様に必要な栄養素が粗方補充出来ますからね!」
「へぇ!?このもさもさしたのがねぇ?」
目を丸くして見る私を、クレバードは目を細めて見た。
「本来は茹でたり、水に浸けると栄養素が溶け出てしまうのですが、シチューに入れると、スープまでちゃんと飲むでしょう?お手軽に美味しく、栄養を摂取出来るというわけです」
「なるほどね!勉強になります。クレバードのご飯を食べてると、健康になれそうな気がするわ!」
私は手にしたスプーンでシチューを掬い、勢い良く口に入れた。
朝のシチューと少し違ったのは食感と、何か瑞々しい後味。
ホッコリとするシチューから、どこかオシャレなシチューへと変化している。
「美味しい。うん。洗練された味がするわ!何かを足すだけでこんなに違うものなのね」
「はい。簡単な足し算なんですがね。それが思いも寄らない奇跡をおこす。料理の奥深さはそこにあるのだと思います!」
クレバードは息巻いた。
彼のその熱心な様子からは、料理に対する情熱が溢れてくるようだった。
食材に敬意を払い、その栄養を最大限に引出し、更に美味しく進化させる。
持って生まれた才能もあるかもしれないけど、それよりは、クレバードの育った環境の方が大きく影響しているのかもしれない。
培われた努力や勉強の賜物。
彼にはそんな言葉が相応しい。
「クレバード」
「はい!何か?」
「あなたの作る料理、私大好きよ。短い間かもしれないけど、とても楽しみにしてるから!今日の夜も、明日の朝も……ね!」
一瞬の空白の後。
クレバードはとびきりの笑顔で笑った。
「シルベーヌ様を元気に美しくすることが、今の私の生き甲斐です!あ、死んでますけどね」
なんてブラックな冗談を……と思ったけど、クレバードの笑顔は晴れやかだった。
私は皿のシチューを全て平らげ、予めヒューゴが調合してくれていたハーブティーを香りを堪能しながら、ゆっくりと飲んだ。
そして、ちょうど飲み干した頃、ロビーとヒューゴが早足で帰ってきた。
「おっと、お食事中だったか」
ロビーが背負ったものをドサッと下ろした。
茶色の大きい麻袋の中には、何か重量のあるものが入っていたらしく、ロビーはやれやれと肩を回している。
「シルベーヌ様、軟膏が完成しましたよ。はい、それでは、先に手で試してみましょうね?」
優しく言うヒューゴに、私は疑いもなく手を出した。
医者っていうのは、患者に信頼されないと駄目なのよね。
その点でいうと、ヒューゴはこの職業に向いている。
「まずは、手の甲で……」
と、優しくゆっくり円を描くようにすりこんでいく。
「どうですか?肌、ピリピリしたりとか熱かったりとか違和感ないですか?」
「今のところ、ないわ」
「わかりました。では、あともう少し様子を見て、問題なければ顔にも塗っていきましょう」
「はい、ヒューゴ」
感謝を込めて、ニッコリ微笑んでおく。
すると、ヒューゴは突然挙動不審になり、持っていた軟膏をストンと落とした。
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