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ムーンバレー地方
20.拗らせ騎士団長
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「俺の気がすまない……とは何ぞや!?」
その剣幕と変顔に、ディランは堪えきれずに吹き出した。
あの……さっき容姿のことでへこんでた婦女子に対して、顔見て笑うってあなた、相当なワルよね!?
「何ぞや………くくっ……何ぞやって……シルベーヌ様は本当にお可愛らしい」
…………………………………へ?
ヴァーミリオン騎士団長ディランは、仰け反って笑っている。
「いやいや、あのね、笑うとこではなくてね?下ろしてくれって言ってるの!」
「……お断りする!!」
どうしたのかしらー………。
早くも脳、腐って来ちゃった??
「お断りする、というその理由を簡潔に述べよ………」
私は虚ろな目をして、ディランを見た。
すると彼はぐっと腕に力を入れ、そのひんやりする胸にやたらと私を押し付けたかと思うと、必死の形相で訴えた。
「ここに来てから、俺の役割が皆無なのだ!」
「……………は?」
何を言っているの?
私の頭がおかしいのかしら?理解不能なんですけど?
「……言い直すわ。わかるように説明して」
「……俺の仕事をくれ……」
ディランはそのキラキラした瞳を潤ませて、懇願するように私を見た。
……ん?と、いうことは?
今までの執拗で強引なこの行動はまさか………。
「………あなたひょっとして……私を抱えるのを仕事にしたいと……?」
「そうだ!」
「お、お、お断りするわっ!!」
間髪入れずに「お断り」を返します!
だって、どこの世界に抱えられて移動する人がいるって言うの?
そんなことされるのお姫様だけよ!?
………………………………………。
………………………………………。
姫だったわね……。
ええと、だとしても、そんなこと駄目でしょう!?
照れるし……照れるし……照れるわっ!
ああっ、照れてばっかりじゃないのー!
そんな妄想甚だしい私に、ディランはまた、信じられないことを言ってのけた!
「お断りするのを、お断りする!」
もう、訳がわからない……。
何故そこまで頑なに??
どうしようもなくなって、思わず涙目になった私に、慌てたディランが言った。
「シルベーヌ様!?泣かないで。申し訳ない……俺も意地を張りすぎた……皆がシルベーヌ様の役に立っているのに、俺は団長の癖に何もしてあげられないのかと。それが悔しかったんだ」
「……ディラン。役に立つとか立たないとか……そんなのどうでもいいと思うけど?」
「そう、なのか?……俺はヴァーミリオン家の役に立て、国の役に立てと言われ育って来たんだが……」
「まぁ、そういうのも大事だと思う。家名も、誇りも、忠義もね。だけど、役に立たないとダメだ、とか言うのは少し違うんじゃない?」
「……………?」
ディランは不思議そうに私を見た。
「あなたはあなた。そこに居てくれるだけでいいと、思っている人は必ずいる。例えば、騎士団の皆。あなたが団長として纏めなければ《生きる屍》としても存在してなかったかもしれない。そして私もね。さっきあなたが私の気持ちに気付いてくれなかったら、こんなに清々しい気持ちになってなかったわ」
投げ掛けた言葉に、ディランは何も答えなかった。
だけど、微かに微笑んだ気がして、思わず私も笑ってしまった。
その剣幕と変顔に、ディランは堪えきれずに吹き出した。
あの……さっき容姿のことでへこんでた婦女子に対して、顔見て笑うってあなた、相当なワルよね!?
「何ぞや………くくっ……何ぞやって……シルベーヌ様は本当にお可愛らしい」
…………………………………へ?
ヴァーミリオン騎士団長ディランは、仰け反って笑っている。
「いやいや、あのね、笑うとこではなくてね?下ろしてくれって言ってるの!」
「……お断りする!!」
どうしたのかしらー………。
早くも脳、腐って来ちゃった??
「お断りする、というその理由を簡潔に述べよ………」
私は虚ろな目をして、ディランを見た。
すると彼はぐっと腕に力を入れ、そのひんやりする胸にやたらと私を押し付けたかと思うと、必死の形相で訴えた。
「ここに来てから、俺の役割が皆無なのだ!」
「……………は?」
何を言っているの?
私の頭がおかしいのかしら?理解不能なんですけど?
「……言い直すわ。わかるように説明して」
「……俺の仕事をくれ……」
ディランはそのキラキラした瞳を潤ませて、懇願するように私を見た。
……ん?と、いうことは?
今までの執拗で強引なこの行動はまさか………。
「………あなたひょっとして……私を抱えるのを仕事にしたいと……?」
「そうだ!」
「お、お、お断りするわっ!!」
間髪入れずに「お断り」を返します!
だって、どこの世界に抱えられて移動する人がいるって言うの?
そんなことされるのお姫様だけよ!?
………………………………………。
………………………………………。
姫だったわね……。
ええと、だとしても、そんなこと駄目でしょう!?
照れるし……照れるし……照れるわっ!
ああっ、照れてばっかりじゃないのー!
そんな妄想甚だしい私に、ディランはまた、信じられないことを言ってのけた!
「お断りするのを、お断りする!」
もう、訳がわからない……。
何故そこまで頑なに??
どうしようもなくなって、思わず涙目になった私に、慌てたディランが言った。
「シルベーヌ様!?泣かないで。申し訳ない……俺も意地を張りすぎた……皆がシルベーヌ様の役に立っているのに、俺は団長の癖に何もしてあげられないのかと。それが悔しかったんだ」
「……ディラン。役に立つとか立たないとか……そんなのどうでもいいと思うけど?」
「そう、なのか?……俺はヴァーミリオン家の役に立て、国の役に立てと言われ育って来たんだが……」
「まぁ、そういうのも大事だと思う。家名も、誇りも、忠義もね。だけど、役に立たないとダメだ、とか言うのは少し違うんじゃない?」
「……………?」
ディランは不思議そうに私を見た。
「あなたはあなた。そこに居てくれるだけでいいと、思っている人は必ずいる。例えば、騎士団の皆。あなたが団長として纏めなければ《生きる屍》としても存在してなかったかもしれない。そして私もね。さっきあなたが私の気持ちに気付いてくれなかったら、こんなに清々しい気持ちになってなかったわ」
投げ掛けた言葉に、ディランは何も答えなかった。
だけど、微かに微笑んだ気がして、思わず私も笑ってしまった。
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