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ムーンバレー地方

11.昨今の騎士団事情

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ディランは、あはははと豪快に笑ったが、笑える話は一つもしていない。
むしろ、騎士団としてどうなのか、と疑問を投げ掛けているんだけど!?
困惑した私の顔を、ディランは本当に楽しそうに見て言った。

「アルハガウンではどうか知らないが、この国ではそれぞれの領地の領主が騎士団を運営している」

「へぇ。それは……領地の収益が騎士団の規模にかなり影響するってことね?」

「そう。収益が多く潤っている領地は騎士団も強大。反対に貧乏領主の所は弱小だ」

「……で、ヴァーミリオンはどうなの?」

一応尋ねてみたけど、どうも弱小騎士団臭い。
騎士団って、普通それを職業にしている人じゃないのかしら?
ヴァーミリオン騎士団は造園師や建築師とか、彫刻家やら……変なのが多い、あ、ごめんなさい!助かっているのよ、本当よ!?

「ヴァーミリオン騎士団はラシュカで最も強大だ」

………………嘘ね。
信じないわよ?
だって、25人しかいないし、兼業騎士じゃない!?

「………信じてないな?」

ディランは少し怒っている。
でも怒ったって、信じられないものは信じられない。
疑いの眼差しを向ける私を見て、ディランは頭を抱えた。

「……説明しよう」

ええ、そうして?

「ヴァーミリオン子爵家は家柄は劣るが、国で一番広く潤った領地を持っている。それは先代、俺の父が隣国との戦いで獅子奮迅の働きをし、その褒美として先王から与えられたものだ。その領地の中に鉱山があってな。そこからなんと!金や宝石がゴロゴロ出て……」

「わぁ……そんな夢みたいな話、あるのね……」

「あるんだ、これが。そのお陰でヴァーミリオン領は潤い、優秀な人材も多く集まってきた」

「でもそのことと、兼業騎士の件とは話が繋がらないわよ?」

「兼業騎士って何だ?……まぁいい。あのな、今ここにいる者は精鋭部隊だ。遠征に行くときは、いろんな分野の者を連れていく。例えばスレイなんかは、戦いにおいて砦を築く必要がある時に、ロビーはもし食料が調達出来ない時に食べられる野草を知っているし」

「彫刻は?」

「あれは、アッシュの趣味だ」

あ、そ。ふぅーん。
なんとなく理解したような、してないような……。

「つまり、これも遠征だからいろいろと使える人選をして来たと。そういうこと?」

「そうだ。騎士団の大半はまだ領地に残っている。総勢……100名だ」

「じゃあ、ここに来たのは4分の一の精鋭か……」

そして、4分の一の賭けに負けた不運の持ち主。
選ばれなければ、死ぬこともなかったのにね。

「理解してくれたかな?」

「ええ。ヴァーミリオン騎士団、ラシュカで最も強い騎士団ね」

私が頷くと、ディランは嬉しそうに笑った。
彼は家名をとても誇りに思ってる。
そして、騎士団を大切に思っている。
命を失ったとしても、誇りは失わない。
そんなディランを、私はいつもより眩しく感じていた。









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