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ムーンバレー地方
9.造園師、ロビー
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地上に移動した彼等は、深夜にも関わらず館の修繕を開始した。
ヴァーミリオン騎士団は、団長を入れて総勢25名。
彼らはまず建物組、庭組に隊を分けた。
建物組は壊れた部分の材料を一度庭に集め、基礎だけにしてまた組み立てる、という作業を始めている。
庭組は蔦を切り、草を刈り、倒れた石柱を起こし、土を耕していた。
この庭組の指揮をとるのは、小柄で童顔なロビーという男。
彼は、5人の同僚に的確に指示を出し、最短で庭を美しく整えた。
倒れた石柱(頭のもげたアレ)も、彫刻が趣味だというアッシュによって、小振りな天使の像へと変えられる。
お陰で庭はさっぱりと明るくなった。
不気味さが完全に払拭出来た庭は、これで花でもあれば立派な屋敷に見えるけど、まぁ、そこまで贅沢は言えないわね。
私は庭組が作業する様子を、館玄関前の傾いた階段に座りボーッと見ていた。
何の知識もなく、非力な女はいても邪魔になるだけだしね。
「シルベーヌ様?」
「え、あ、はい?」
ふと見ると、前にニコニコ笑うロビーがいた。
「森の奥に珍しいバラがあったのですが、それを持ってきて植え替えても宜しいですか?」
花でもあれば……と考えていた私は、ロビーのその提案に目を丸くした。
いつの間にか顔に出てたのかも知れないわね……。
「本当!?……嬉しいけど、そんなことまでしてもらっていいの?」
「もちろんです!シルベーヌ様の美しさに相応しい庭にしないといけませんからね」
と、ロビーは微笑んだが、私の表情は曇った。
美しさ………か。
朝が来てから私を見て、同じことが言えるのかしら?
「どうしました?シルベーヌ様?」
「い、いえ。何でもないの。バラ、出来ればお願いしたいわ!」
「はいっ!今から隊を編成して、森のありとあらゆる美しい花を探しに行こうと思っております!」
ありとあらゆる??
えー……そこまで、する?
とはもう言えない状況よ。
ロビーの溢れそうな笑顔を見てしまったら「適当でお願い」なんて絶対言えない。
私は愛想笑いをして、森へ向かうロビー達を見送った。
それにしても不思議ね……既に死んでしまっているのに、あんなに笑顔になれるなんて。
もう人としての生は望めないのに。
「楽しそうだな、あいつ」
突然の声に振り向くと、そこにはディランが呆れたように笑っていた。
「……ロビー?ええ、そうね、とても楽しそう。私も助かるわ」
ディランはごく自然に私の横に腰かけて、作りかけの庭を眺めた。
「ロビーはこの仕事が終わったら、騎士団を退団し、造園の仕事をする筈だったんだ」
「まぁ!……そうだったの……」
「造園師は需要も多く、一流の職業で高給取りだ。家族の為にはその方が稼げていい」
「でも、お金の問題ではないわね。彼、本当に花が好きで、庭が好きだもの。じゃなきゃ、あんな顔出来ないわ」
あの顔は、花や草木を愛して止まない優しい男の顔。
私は、ロビーの綻ぶ笑顔を思い出し一人納得した。
ヴァーミリオン騎士団は、団長を入れて総勢25名。
彼らはまず建物組、庭組に隊を分けた。
建物組は壊れた部分の材料を一度庭に集め、基礎だけにしてまた組み立てる、という作業を始めている。
庭組は蔦を切り、草を刈り、倒れた石柱を起こし、土を耕していた。
この庭組の指揮をとるのは、小柄で童顔なロビーという男。
彼は、5人の同僚に的確に指示を出し、最短で庭を美しく整えた。
倒れた石柱(頭のもげたアレ)も、彫刻が趣味だというアッシュによって、小振りな天使の像へと変えられる。
お陰で庭はさっぱりと明るくなった。
不気味さが完全に払拭出来た庭は、これで花でもあれば立派な屋敷に見えるけど、まぁ、そこまで贅沢は言えないわね。
私は庭組が作業する様子を、館玄関前の傾いた階段に座りボーッと見ていた。
何の知識もなく、非力な女はいても邪魔になるだけだしね。
「シルベーヌ様?」
「え、あ、はい?」
ふと見ると、前にニコニコ笑うロビーがいた。
「森の奥に珍しいバラがあったのですが、それを持ってきて植え替えても宜しいですか?」
花でもあれば……と考えていた私は、ロビーのその提案に目を丸くした。
いつの間にか顔に出てたのかも知れないわね……。
「本当!?……嬉しいけど、そんなことまでしてもらっていいの?」
「もちろんです!シルベーヌ様の美しさに相応しい庭にしないといけませんからね」
と、ロビーは微笑んだが、私の表情は曇った。
美しさ………か。
朝が来てから私を見て、同じことが言えるのかしら?
「どうしました?シルベーヌ様?」
「い、いえ。何でもないの。バラ、出来ればお願いしたいわ!」
「はいっ!今から隊を編成して、森のありとあらゆる美しい花を探しに行こうと思っております!」
ありとあらゆる??
えー……そこまで、する?
とはもう言えない状況よ。
ロビーの溢れそうな笑顔を見てしまったら「適当でお願い」なんて絶対言えない。
私は愛想笑いをして、森へ向かうロビー達を見送った。
それにしても不思議ね……既に死んでしまっているのに、あんなに笑顔になれるなんて。
もう人としての生は望めないのに。
「楽しそうだな、あいつ」
突然の声に振り向くと、そこにはディランが呆れたように笑っていた。
「……ロビー?ええ、そうね、とても楽しそう。私も助かるわ」
ディランはごく自然に私の横に腰かけて、作りかけの庭を眺めた。
「ロビーはこの仕事が終わったら、騎士団を退団し、造園の仕事をする筈だったんだ」
「まぁ!……そうだったの……」
「造園師は需要も多く、一流の職業で高給取りだ。家族の為にはその方が稼げていい」
「でも、お金の問題ではないわね。彼、本当に花が好きで、庭が好きだもの。じゃなきゃ、あんな顔出来ないわ」
あの顔は、花や草木を愛して止まない優しい男の顔。
私は、ロビーの綻ぶ笑顔を思い出し一人納得した。
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