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ムーンバレー地方
6.みんなが死んじゃったワケ
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パアッと閃光が辺りを照らすと、散乱した死体の上にぼうっと何かが現れた。
それは、人の形をとった彼らの魂……まぁ、亡霊ね。
それぞれ自分の体を見下ろしながら、ある男は呆然とし、またある男は泣いている。
私はその亡霊達が、薄く紫に光るのを確認した。
「毒殺!?」
叫ぶ私の声に、亡霊達が振り向いた。
何十人かが一度にこちらを向く光景はかなり恐ろしい。
私の心臓は一瞬止まりそうになり、次に飛び出そうなほど音をたてた。
亡霊達は、ずっと私を見ている。
何をするでもなく、ぼーっと見ている。
その視界から逃れようと、右へ移動すると……彼らの視線も移動する。
左へ移動しても、同じだ。
「スピークルム?怖いわ」
『何もしないデス。見てるだけ、見てるだけデスから』
「見てるだけが怖いのよー!!」
また大声を上げた私を、亡霊達は執拗に凝視する。
その時、彼等の奥から、スーッと一体の霊が浮遊してきて私の前で止まった。
それは体格のよい男の霊で、他の亡霊達よりも身なりが整っていて、顔の作りも整っている……ように見える。
代表者、かしら?
「君は……誰?」
男は言った。
「私は……シルベーヌ」
「シルベーヌ……君は知っているのか?どうして俺達がこんなことになったのか……」
その問いに、私は黙りこんだ。
おおよその死因はわかっている。
紫に光るということは死因は『毒』だ。
これが赤なら『撲殺や刺殺』なんらかの人為的なものによって与えられた死。
白なら『自然死』というように、スピークルムが解析をしてくれるのだ。
ただ、死因がわかっても、何故そうなったかはまるでわからない。
彼らの名前も職業も、置かれていた立場も何もわからないのだ。
「毒殺された……ということだけなら、わかるわ」
「毒殺………何故………」
何故?本人がわからないなら、私にわかるわけないわ。
と言う言葉を飲み込んで、早速交渉に入ることにした。
「とにかく、貴方達は全員死にました。体も機能を停止しているわ。それで……」
「それは困る!!俺は、俺達はまだ死ぬわけには行かない!」
男は悲痛に顔を歪めた。
「お気の毒に。でも、死んだ事実は変わらないわ。もう暫くすると、体は朽ち果て魂は冥府へ行く。そして、新しい生を待つ列に並ぶのよ」
「何と言うことだ……しかし……こんな理不尽な死は、到底受け入れられない!!」
男が悔しそうに俯くと、後ろにいた者達も同じように俯いた。
「………どうして死んだのかを解明したいわけ?」
「ああ!俺達は、ここに王の命で来た。この国境付近の村で、度々隣国の者が目撃されていて……その調査と討伐を命じられた……」
「王??………えーと、名前何だっけ?」
「ザビル・アスガルド・ラシュカ陛下だ」
へーえ、そんな大層な名前だったのか。
別にどうでもいいけど。
「ふぅーん。で、どうしてここで集団死を??」
「…………わからない……夕暮れが近づいて、どこかで一晩凌ごうということになったんだが……廃屋を見つけて、安全を確認している途中で意識が……」
男の言葉を肯定するように、周りの男達が大きく頷いた。
それは、人の形をとった彼らの魂……まぁ、亡霊ね。
それぞれ自分の体を見下ろしながら、ある男は呆然とし、またある男は泣いている。
私はその亡霊達が、薄く紫に光るのを確認した。
「毒殺!?」
叫ぶ私の声に、亡霊達が振り向いた。
何十人かが一度にこちらを向く光景はかなり恐ろしい。
私の心臓は一瞬止まりそうになり、次に飛び出そうなほど音をたてた。
亡霊達は、ずっと私を見ている。
何をするでもなく、ぼーっと見ている。
その視界から逃れようと、右へ移動すると……彼らの視線も移動する。
左へ移動しても、同じだ。
「スピークルム?怖いわ」
『何もしないデス。見てるだけ、見てるだけデスから』
「見てるだけが怖いのよー!!」
また大声を上げた私を、亡霊達は執拗に凝視する。
その時、彼等の奥から、スーッと一体の霊が浮遊してきて私の前で止まった。
それは体格のよい男の霊で、他の亡霊達よりも身なりが整っていて、顔の作りも整っている……ように見える。
代表者、かしら?
「君は……誰?」
男は言った。
「私は……シルベーヌ」
「シルベーヌ……君は知っているのか?どうして俺達がこんなことになったのか……」
その問いに、私は黙りこんだ。
おおよその死因はわかっている。
紫に光るということは死因は『毒』だ。
これが赤なら『撲殺や刺殺』なんらかの人為的なものによって与えられた死。
白なら『自然死』というように、スピークルムが解析をしてくれるのだ。
ただ、死因がわかっても、何故そうなったかはまるでわからない。
彼らの名前も職業も、置かれていた立場も何もわからないのだ。
「毒殺された……ということだけなら、わかるわ」
「毒殺………何故………」
何故?本人がわからないなら、私にわかるわけないわ。
と言う言葉を飲み込んで、早速交渉に入ることにした。
「とにかく、貴方達は全員死にました。体も機能を停止しているわ。それで……」
「それは困る!!俺は、俺達はまだ死ぬわけには行かない!」
男は悲痛に顔を歪めた。
「お気の毒に。でも、死んだ事実は変わらないわ。もう暫くすると、体は朽ち果て魂は冥府へ行く。そして、新しい生を待つ列に並ぶのよ」
「何と言うことだ……しかし……こんな理不尽な死は、到底受け入れられない!!」
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へーえ、そんな大層な名前だったのか。
別にどうでもいいけど。
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「…………わからない……夕暮れが近づいて、どこかで一晩凌ごうということになったんだが……廃屋を見つけて、安全を確認している途中で意識が……」
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