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番外編
僕の初めての友達⑥
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それからまた、いくつもの春が過ぎて、僕達兄弟にも転機が訪れた。
水神の玉が盗まれたことによって、浅川池の水位はみるみる下がった。
仕方なく兄さまは、父様から託された契約書を開き、ある人間を頼って地上に出たんだ。
それが石原仁左衛門の子孫、サユリちゃん。
僕達が妖怪(カッパ)だと知っても受け入れてくれた強者だ。
しかもっ!
石頭の兄さまの意識を変え、その上、ベタ惚れさせたんだよ?
もう人間の枠を越えてるって思うんだ!
そんなサユリちゃんのお店、カッパーロで看板娘をやりつつ、浅川村を巡る怪事件に巻き込まれていった僕は……。
昔の友達に会うことが出来たんだ。
*****
「民さぁん!いらっしゃーい!」
「おうっ!サンちゃん!」
カッパーロ常連のたみおくん……民さんは、昔と同じ笑顔で僕の名前を呼び、いつもの席に腰かける。
目尻にシワは増えたけど、笑顔はあの頃と全く変わらない。
きっと、いい仲間に恵まれて、いい人生を過ごしたんだね。
例え僕のことを覚えていなくても、それだけで幸せだ。
「その髪飾り、気に入ってるのかい?」
民さんがお馴染みのキャップを脱ぎながら僕に尋ねる。
「うんっ!大事な友達から貰ったものなんだ!」
「そうか。その友達も嬉しいだろうね!大切にしてもらって」
「た、民さんはそう思う?」
「おう!わしだったら嬉しいからな!」
その答えに、僕の胸の底から暖かい何かが溢れてきた。
「あ、そうだ。わしもな、大切な友達に貰ったものがあるんだ」
そう言って民さんが胸のポケットから出したものは、錫製の丸い小物入れだった。
「これ?可愛い小物入れだねぇ」
僕がそう言うと、民さんは「違う違う」と手を振り、小物入れを開けて見せた。
「あっ!……こ、れ……」
中には僕があげた翠の石が入っていた。
あれから何十年も経っているのに、石はピカピカに磨かれていて、昔より丸みを帯びている。
「綺麗だろう?なんともいえないこの翠色。毎日磨いていたら、だんだん丸くなってきてなぁ」
民さんはハハッと豪快に笑った。
「……うん、綺麗だねぇ。友達に……貰ったの?」
「そうだよ……でもなぁ……変な話だと思うだろうが……顔を覚えてないんだよ。覚えてるのは、その子と遊んだ楽しい思い出だけなんだ」
「へ、へぇ……そうなの……」
僕は焦った。
術が未熟だったのか、時が経って術が解けつつあるのか。
でも、覚えてもらってることが嬉しくもあった。
「わしが辛かった時、確かに側にいてくれた友達がいたんだ。覚えてはいないが……思い出そうとする度、なんかこう……幸せな気持ちになるんだよ、変だろう?」
「変なんて……きっと、その友達も同じだと思うよ?」
動揺を隠しながら言うと、民さんは僕を見て幸せそうに微笑んだ。
今、僕はあの時の自分の決断が正しかったと断言出来る。
兄さまが言ったように、人間と関わらないようにすることが、あの時は正解だったんだ。
でも……時が過ぎれば、人も世界もガラッと変わる。
サユリちゃんのように妖怪と人間の区別なく接してくれる人も多くいるんだと思う。
だから僕は、これからも人間と関わって行きたいんだ。
辛い別れもある。
誰かを恨んだり、哀しい思いをすることもある。
でもね、それを補って余りある優しさを誰かから貰えたら……。
それは、忘れられない素敵な宝物になるんだよねっ!
水神の玉が盗まれたことによって、浅川池の水位はみるみる下がった。
仕方なく兄さまは、父様から託された契約書を開き、ある人間を頼って地上に出たんだ。
それが石原仁左衛門の子孫、サユリちゃん。
僕達が妖怪(カッパ)だと知っても受け入れてくれた強者だ。
しかもっ!
石頭の兄さまの意識を変え、その上、ベタ惚れさせたんだよ?
もう人間の枠を越えてるって思うんだ!
そんなサユリちゃんのお店、カッパーロで看板娘をやりつつ、浅川村を巡る怪事件に巻き込まれていった僕は……。
昔の友達に会うことが出来たんだ。
*****
「民さぁん!いらっしゃーい!」
「おうっ!サンちゃん!」
カッパーロ常連のたみおくん……民さんは、昔と同じ笑顔で僕の名前を呼び、いつもの席に腰かける。
目尻にシワは増えたけど、笑顔はあの頃と全く変わらない。
きっと、いい仲間に恵まれて、いい人生を過ごしたんだね。
例え僕のことを覚えていなくても、それだけで幸せだ。
「その髪飾り、気に入ってるのかい?」
民さんがお馴染みのキャップを脱ぎながら僕に尋ねる。
「うんっ!大事な友達から貰ったものなんだ!」
「そうか。その友達も嬉しいだろうね!大切にしてもらって」
「た、民さんはそう思う?」
「おう!わしだったら嬉しいからな!」
その答えに、僕の胸の底から暖かい何かが溢れてきた。
「あ、そうだ。わしもな、大切な友達に貰ったものがあるんだ」
そう言って民さんが胸のポケットから出したものは、錫製の丸い小物入れだった。
「これ?可愛い小物入れだねぇ」
僕がそう言うと、民さんは「違う違う」と手を振り、小物入れを開けて見せた。
「あっ!……こ、れ……」
中には僕があげた翠の石が入っていた。
あれから何十年も経っているのに、石はピカピカに磨かれていて、昔より丸みを帯びている。
「綺麗だろう?なんともいえないこの翠色。毎日磨いていたら、だんだん丸くなってきてなぁ」
民さんはハハッと豪快に笑った。
「……うん、綺麗だねぇ。友達に……貰ったの?」
「そうだよ……でもなぁ……変な話だと思うだろうが……顔を覚えてないんだよ。覚えてるのは、その子と遊んだ楽しい思い出だけなんだ」
「へ、へぇ……そうなの……」
僕は焦った。
術が未熟だったのか、時が経って術が解けつつあるのか。
でも、覚えてもらってることが嬉しくもあった。
「わしが辛かった時、確かに側にいてくれた友達がいたんだ。覚えてはいないが……思い出そうとする度、なんかこう……幸せな気持ちになるんだよ、変だろう?」
「変なんて……きっと、その友達も同じだと思うよ?」
動揺を隠しながら言うと、民さんは僕を見て幸せそうに微笑んだ。
今、僕はあの時の自分の決断が正しかったと断言出来る。
兄さまが言ったように、人間と関わらないようにすることが、あの時は正解だったんだ。
でも……時が過ぎれば、人も世界もガラッと変わる。
サユリちゃんのように妖怪と人間の区別なく接してくれる人も多くいるんだと思う。
だから僕は、これからも人間と関わって行きたいんだ。
辛い別れもある。
誰かを恨んだり、哀しい思いをすることもある。
でもね、それを補って余りある優しさを誰かから貰えたら……。
それは、忘れられない素敵な宝物になるんだよねっ!
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