純喫茶カッパーロ

藤 実花

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第五章 天狐を探して

③ロシアンきゅうりっと!?

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店内に戻ると、3人が待つカウンターの上に、持ってきた保冷バックを置き中身を出す。
ラップにつつんだきゅうりは既に洗ってあるのですぐに食べられる状態だ。
それを彼らは、「ロシアンルーレット」ならぬ「」で食べ始めた。
それまでは「変な儀式」とか「例のやつ」とか、様々に呼んでいたけど、どうせなら名称があるといいかもしれない、と私が命名したのだ!
「ロシアンきゅうりっと」と名付けてからは、このおかしな儀式を前よりも身近に感じることが出来……るわけない。
可愛い名前をつけたからといって、可愛くなるわけがない、という論理と同じである。

「では、皆。サユリ殿と民さん殿、その他村の方々に感謝して……いただきます!」

「いただきます!」

「いただきまーす!」

パンッと手を合わせると、彼らの戦いが始まった。
15本の積まれたきゅうりはいろんな場所から慎重に引き抜かれ、最早、何か違うゲームになっている気さえする。
一つ一つ、また一つ。
やがて全部のきゅうりが行き渡ると、毎度お馴染み、貪りタイムがやってきた。

ボォリボォリボォリボォリ……。
シャクッ、シャクッ、シャクッ。

小気味良い音はカッパーロ店内に響き渡る。
そして、今回当たったのは長兄のようだ。

「来たか!!良し。幸先が良い。この調子で天狐から水神の玉を取り戻すっ!」

エリちゃんの妹のこと、忘れてないよね?
私が軽くツッコミを入れている間に、次郎太と三左もピカーンと輝き始めた。
そして店内での発光ショーが終わると、そこには緑色多めの光景があった。

「それでは、三左は伝言の術を。次郎太は出かける準備を!」

一之丞は法被を颯爽と羽織りながら指示を出し、次男と三男は素早くそれに従った。

「ねぇ、私は何をしようか?」

問いかけて指示を待った。
人間の自分に出来ることなんて、限りがあるけど、照明の確保とか食料の運搬とか、何か出来ることがあるかも。
そう思っていた私に一之丞が言ったのは、信じられない言葉だった。

「サユリ殿は晩酌でもしながら、ごゆるりとされるが良いぞ?」

「……え?」

晩酌?今、晩酌と言った!?
……ちょっと信じられない。
このカッパ、私を置いて行く気だわ!!

「まだまだ夜は冷えるゆえ、睡眠時はちゃんと布団を被るが良い。昨晩も布団がはだけて腹が出ていたのを私が直して……ん、如何いたし……た?」

黙ったのを気にしたのか、はたまた隣から刺さる視線を怪訝に思ったのか……一之丞は私を見た。
そして、ヒイッ!と一声鳴いた。

「一之丞……私を置いて行くつもり?」

今、自分がどんな顔をしているのか、それは見えないからわからない。
でも、目の前でガタガタと震える一之丞を見て、きっと鬼婆みたいな顔をしているのだろうと思った。

「ねぇ、一之丞?」

「う、う、うむ……サユリ殿……を連れていくわけには、いかぬ」

「……」

黙ったまま睨みを利かせると、一之丞はブルルッと体を震わせた。

「水神の玉のことは……我らの問題……人であるサユリ殿には関係のないことであるから……」

その一之丞の言い方に傷付いた。
人間の私が、妖怪同士の戦いで役に立たないことは百も承知だ。
でも、縁あって出会い、同じ釜の飯を食い、更に同じ部屋で寝ているのに関係ないなんて酷すぎる。

「関係のないこと!?本当にそう思ってるの!?」

「サユリ殿……」

困り顔の一之丞の元に、次郎太と三左が戻ってきた。
彼らは私と一之丞の不穏な様子を見て、しきりに目を泳がせている。

「ど、どうしたんだい?」

「なぁに?2人とも。ケンカ?」

探るように2人が覗き込んでくる。
次郎太と三左も同じ意見なのか、私は聞いてみることにした。

「次郎太、三左。一之丞がね、水神の玉のこと、私には関係ないって言ったんだけど」

すると、2人は顔を見合わせ、すぐに一之丞を食い入るように見つめた。

「関係なくはないよねぇ」

「ないよな」

三左と次郎太は私の寄りの意見を言った。
だけど、次に一之丞を擁護するようなことを言ったのだ。





















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