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Extra Ausgabe
伯爵令嬢、奮闘中《13》子供たちの変化
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アタッシュケースの中にあったもの……。
それは、一瞬で私の頭を空っぽにし、駆け巡る体中の血液を沸騰させた。
「ボニー、クライド………何故ここに……」
彼らは緑のビロードの中で左右対称になり、艶やかな銀の体を横たえている。
……おかしい。
これは、今、軍本部に保管されているはずだ。
私が彼らを持ち出しても良いのは、閣下の指示があった時だけ。
非常事態でもない限り、手入れしたり眺めたりするだけで使えないことになっている。
どうしてだ……どうしてこのタイミングで、ボニーとクライドが!?
高まるアドレナリンに翻弄されながらも、私はアタッシュケースを調べた。
すると、開けた上部の内ポケットに何か紙が挟まれている。
古めかしい白い封筒。
それは手紙のようで、封蝋がされていた。
この紋、どこかで見たぞ。
どこだったか………ああ、頭が回らない。
頭を働かせる成分が、全て体にまわっている!
ボニーとクライドを目にした途端、私は彼らを持ちたくて持ちたくて堪らなくなっている。
これは、一種の病気だろうな。
だから、閣下もこれを制限していたのだ。
よし、一旦落ち着こう……。
私はゆっくりと息を吐き、目を閉じる。
そして、一息ついて落ち着くと、手紙の封をあけた。
中身は………。
上質な紙が二枚。
そこには、とても美しい筆跡の手紙が認められていた。
『アンナ・オズワルド中佐
この度は、ファビー工房へのメンテナンスの依頼、どうもありがとう。
だいぶ使い込んでくれているようで、改良した私も、とても嬉しく思っています。
その分、中の部品がいくつか磨耗していたので、取り替えておきました。
まぁ、物にはありがちなことだから、気にせずどんどん使ってね。
それから、私も久しぶりに彼らに会って職人魂が疼いてしまって……少し、改良を加えておきました。
そう!気づきましたか?
これは、バージョンアップなのです!
説明書などはあえて入れませんよ。
貴女なら、彼らと心を通わせて使いこなせることが出来る筈です。
それでは、またの御利用お待ちしてるわ!!
ファビー工房 代表
ファビアンヌ・オーレリィ』
……………………………は?
えーと、これは、何だ?
メンテナンスのお礼の手紙か?
確かに、ボニーとクライドはファビー工房で加工された私専用の銃だ。
父、ユリウスの懇意にしている工房で、世界一の腕を持った博士がいると聞いている。
いやそんなことより、いつ誰がボニーとクライドをメンテに出した!?
それに、何故メンテから帰ってきた銃をリリアンヌ様が持っているんだ!?
わからん!!わからないことだらけだ!!
…………………………。
…………………………。
わからないことは考えるだけ無駄か。
事実、彼らはここにいる。
私の子供たちは、今この状況を打開するためにここにいるのだ。
私は、緑のビロードの波に両手を突っ込んだ。
ボニーを右手に。
クライドを左手に。
スッと手に馴染む感覚はいつも通り。
いつも通りなのだが……微かな違和感もある。
少し重く、銃身が長くなっている?
改めて彼らを見ると、銃身の部分に刻まれた名前が少し違っていた。
Bonnie GTX
Clyde RX
何だか、文字が増えている……?
名前の後ろに、前にはなかった文字が刻印されていた。
だが、性能がどう変わったのか未知数だ。
これは………使って確めなくてはなるまいっ!!
体中の血が滾る!アドレナリンが駆け巡る!!
もう止まることの出来ない情熱は、どこかに叩き付けなければ収まらない。
直ぐ様振り返り、大階段を確認する。
すると、クリム様がナイフを持った男に笑いかけているのが見えた。
さすがだ。
もう主導権を握っている。
だが、このままでは状況は動かない。
さて、クリム様は何をお望みだろうか?
やつらの一掃か?
私は別にジャ……ジャビ…………何だか知らんがテロリストどもの命に興味はない。
もうここから狙い撃ちしても構わないと思っている。
ボニーで爆弾を持った男の頭を後ろから撃ち抜き、同時にクライドでナイフを持った男を撃つ。
十分可能だが……クリム様は恐らくそれを望まないだろうな。
そうして良いなら、自ら交渉に行くことはない。
今、欲しいのは『情報』
よって……確保だ。
私のクリム様は、その情報を使って、蜘蛛の糸を張り、策を弄するのだろう。
そして、糸に絡まった者達を巧みに操り、美しく青い瞳を怪しく揺らす。
その様を、私は最も近くで見ていたいのだ。
それは、一瞬で私の頭を空っぽにし、駆け巡る体中の血液を沸騰させた。
「ボニー、クライド………何故ここに……」
彼らは緑のビロードの中で左右対称になり、艶やかな銀の体を横たえている。
……おかしい。
これは、今、軍本部に保管されているはずだ。
私が彼らを持ち出しても良いのは、閣下の指示があった時だけ。
非常事態でもない限り、手入れしたり眺めたりするだけで使えないことになっている。
どうしてだ……どうしてこのタイミングで、ボニーとクライドが!?
高まるアドレナリンに翻弄されながらも、私はアタッシュケースを調べた。
すると、開けた上部の内ポケットに何か紙が挟まれている。
古めかしい白い封筒。
それは手紙のようで、封蝋がされていた。
この紋、どこかで見たぞ。
どこだったか………ああ、頭が回らない。
頭を働かせる成分が、全て体にまわっている!
ボニーとクライドを目にした途端、私は彼らを持ちたくて持ちたくて堪らなくなっている。
これは、一種の病気だろうな。
だから、閣下もこれを制限していたのだ。
よし、一旦落ち着こう……。
私はゆっくりと息を吐き、目を閉じる。
そして、一息ついて落ち着くと、手紙の封をあけた。
中身は………。
上質な紙が二枚。
そこには、とても美しい筆跡の手紙が認められていた。
『アンナ・オズワルド中佐
この度は、ファビー工房へのメンテナンスの依頼、どうもありがとう。
だいぶ使い込んでくれているようで、改良した私も、とても嬉しく思っています。
その分、中の部品がいくつか磨耗していたので、取り替えておきました。
まぁ、物にはありがちなことだから、気にせずどんどん使ってね。
それから、私も久しぶりに彼らに会って職人魂が疼いてしまって……少し、改良を加えておきました。
そう!気づきましたか?
これは、バージョンアップなのです!
説明書などはあえて入れませんよ。
貴女なら、彼らと心を通わせて使いこなせることが出来る筈です。
それでは、またの御利用お待ちしてるわ!!
ファビー工房 代表
ファビアンヌ・オーレリィ』
……………………………は?
えーと、これは、何だ?
メンテナンスのお礼の手紙か?
確かに、ボニーとクライドはファビー工房で加工された私専用の銃だ。
父、ユリウスの懇意にしている工房で、世界一の腕を持った博士がいると聞いている。
いやそんなことより、いつ誰がボニーとクライドをメンテに出した!?
それに、何故メンテから帰ってきた銃をリリアンヌ様が持っているんだ!?
わからん!!わからないことだらけだ!!
…………………………。
…………………………。
わからないことは考えるだけ無駄か。
事実、彼らはここにいる。
私の子供たちは、今この状況を打開するためにここにいるのだ。
私は、緑のビロードの波に両手を突っ込んだ。
ボニーを右手に。
クライドを左手に。
スッと手に馴染む感覚はいつも通り。
いつも通りなのだが……微かな違和感もある。
少し重く、銃身が長くなっている?
改めて彼らを見ると、銃身の部分に刻まれた名前が少し違っていた。
Bonnie GTX
Clyde RX
何だか、文字が増えている……?
名前の後ろに、前にはなかった文字が刻印されていた。
だが、性能がどう変わったのか未知数だ。
これは………使って確めなくてはなるまいっ!!
体中の血が滾る!アドレナリンが駆け巡る!!
もう止まることの出来ない情熱は、どこかに叩き付けなければ収まらない。
直ぐ様振り返り、大階段を確認する。
すると、クリム様がナイフを持った男に笑いかけているのが見えた。
さすがだ。
もう主導権を握っている。
だが、このままでは状況は動かない。
さて、クリム様は何をお望みだろうか?
やつらの一掃か?
私は別にジャ……ジャビ…………何だか知らんがテロリストどもの命に興味はない。
もうここから狙い撃ちしても構わないと思っている。
ボニーで爆弾を持った男の頭を後ろから撃ち抜き、同時にクライドでナイフを持った男を撃つ。
十分可能だが……クリム様は恐らくそれを望まないだろうな。
そうして良いなら、自ら交渉に行くことはない。
今、欲しいのは『情報』
よって……確保だ。
私のクリム様は、その情報を使って、蜘蛛の糸を張り、策を弄するのだろう。
そして、糸に絡まった者達を巧みに操り、美しく青い瞳を怪しく揺らす。
その様を、私は最も近くで見ていたいのだ。
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