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Extra Ausgabe
伯爵令嬢、奮闘中《6》あなたのブルー
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皇帝陛下主宰の舞踏晩餐会。
それは、かれこれ5年ぶりに開かれる大きな行事である。
多くの晩餐会や舞踏会は皇太子殿下や公爵家などが主で、陛下が主宰となるものは数えるほどしかなかった。
御本人が軍人上がりで、あまり好まれないのもあるが、実際は戦争で疲弊した国力を憂慮してのものである。
……と、いうのはクリム様の受け売り。
皇帝一家は、グリュッセル家の親戚に当たる。
気心も知れているし、ノイラート様なんて、裏ではタメ口をきいているとか。
少し前の軍事演習の折りも、事前の段取りを細かくお二人で練っていた……と、後からクリム様から聞いた。
そして、軍が王城で暴れた件も、後で何の遺恨も残さないようにと取り計らったのは陛下とノイラート様だとも。
このお互いの信頼により、ザナリアの平和は成り立っている。
そして、間もなく前線から退かれるノイラート様に変わり、クリム様と皇帝陛下の跡を継ぐ皇太子殿下が、これからを担って行かれるのだ。
……などと、私は出来るだけ難しいことを考えようとしていた。
そうでなければ卒倒してしまう!という状況に陥っているのだ。
「アンナ、今日は一際美しいよ」
「あ、ありがとうございます……クリム様も一段とお美しく……」
舞踏晩餐会当日、グリュッセル家のピカピカ黒光りする車はクリム様と私を乗せ王城へと向かっている。
皇太子殿下の舞踏会の時も、車中で多少の緊張はあった。
が、今日はそれとは別の緊張が私を襲っている!
麗しき婚約者クリム様が、凄く近い距離で甘い言葉を囁くからだ!
「私なんかどうでもいい。ああ、やはりそのブルーは君に良く似合う」
「そ、そうでしょうか?嬉しいです。着心地も最高ですし、敏捷性も防御力も高いし……」
間近に迫るブルーの瞳を直視出来ずに目を逸らす。
本来なら、ここでクリム様の神々しさに悶え、喰らいつくように愛でるのは私の筈なのだが……?
何がどうなっているのか、逆にクリム様に食らい付かれている。
困る!こういうのには慣れてないので!
クリム様はかなり余裕のある車内で、思い切りこちらに詰めて座っている。
反対を見ると、あと2人は座れそうな余白があるのだが?
ああ、嬉しいけど辛い!
美しさとは……遠くにありて……愛でるもの……と、私は思うのだ。
「実はこの生地を見たとき、是非ともアンナに着てもらいたいと思ったんだ」
「……え、ああ!防御力が高いから、ですね!」
「……あ……うん、それもあるが……」
と、クリム様は苦笑いをした。
もしかして……間違ってたのか?
防御力で選んだのではない、と?
「……この薄いブルーを見て何を想像する?何でもいい、言ってみて?」
何を想像するか?
袖の部分、胸の部分、腿の部分。
それぞれに目を落とし、確認してみる。
行き交う車のライトに照らされて、一瞬ごとに変わる青。
あ……これって。
私はもう一度クリム様を見た。
その時、自然に答えは出たのだ。
「クリム様の瞳です」
「ありがとう、その答えが聞きたかった」
ブルーの瞳の色をまた変えて、クリム様は目を細めた。
「私の瞳の色を纏って欲しかった。少し……カッコつけすぎだろうか?らしくないとは思ったんだが……」
「カッコいいので構わないと思います!!」
恥ずかしそうに俯いたクリム様に、私は詰め寄った。
「クリム様の思い、この生地を残して下さったルイーシャ様の思い。その他沢山の皆様の思いで、私のドレスは最強です!!」
《アンナの防御力はレベルマックスになった》
というファンファーレが聞こえる!
「頼もしいな。私も君を守れて嬉しいよ。どうか、忘れないで。いかなる時も私はアンナの側にいることを」
クリム様の手が、私の手を強く握る。
その握られた手で、ドレスをギュッと握ると、薄いブルーはまた少し色味を変えた。
側にある青い瞳は夜陰の中で今は深く、雫を落としたように潤んでいる。
その視線を感じながら、ずっと思い続けていたことを、私はもう一度反芻する。
あなたを守る。
永遠に。
それは、かれこれ5年ぶりに開かれる大きな行事である。
多くの晩餐会や舞踏会は皇太子殿下や公爵家などが主で、陛下が主宰となるものは数えるほどしかなかった。
御本人が軍人上がりで、あまり好まれないのもあるが、実際は戦争で疲弊した国力を憂慮してのものである。
……と、いうのはクリム様の受け売り。
皇帝一家は、グリュッセル家の親戚に当たる。
気心も知れているし、ノイラート様なんて、裏ではタメ口をきいているとか。
少し前の軍事演習の折りも、事前の段取りを細かくお二人で練っていた……と、後からクリム様から聞いた。
そして、軍が王城で暴れた件も、後で何の遺恨も残さないようにと取り計らったのは陛下とノイラート様だとも。
このお互いの信頼により、ザナリアの平和は成り立っている。
そして、間もなく前線から退かれるノイラート様に変わり、クリム様と皇帝陛下の跡を継ぐ皇太子殿下が、これからを担って行かれるのだ。
……などと、私は出来るだけ難しいことを考えようとしていた。
そうでなければ卒倒してしまう!という状況に陥っているのだ。
「アンナ、今日は一際美しいよ」
「あ、ありがとうございます……クリム様も一段とお美しく……」
舞踏晩餐会当日、グリュッセル家のピカピカ黒光りする車はクリム様と私を乗せ王城へと向かっている。
皇太子殿下の舞踏会の時も、車中で多少の緊張はあった。
が、今日はそれとは別の緊張が私を襲っている!
麗しき婚約者クリム様が、凄く近い距離で甘い言葉を囁くからだ!
「私なんかどうでもいい。ああ、やはりそのブルーは君に良く似合う」
「そ、そうでしょうか?嬉しいです。着心地も最高ですし、敏捷性も防御力も高いし……」
間近に迫るブルーの瞳を直視出来ずに目を逸らす。
本来なら、ここでクリム様の神々しさに悶え、喰らいつくように愛でるのは私の筈なのだが……?
何がどうなっているのか、逆にクリム様に食らい付かれている。
困る!こういうのには慣れてないので!
クリム様はかなり余裕のある車内で、思い切りこちらに詰めて座っている。
反対を見ると、あと2人は座れそうな余白があるのだが?
ああ、嬉しいけど辛い!
美しさとは……遠くにありて……愛でるもの……と、私は思うのだ。
「実はこの生地を見たとき、是非ともアンナに着てもらいたいと思ったんだ」
「……え、ああ!防御力が高いから、ですね!」
「……あ……うん、それもあるが……」
と、クリム様は苦笑いをした。
もしかして……間違ってたのか?
防御力で選んだのではない、と?
「……この薄いブルーを見て何を想像する?何でもいい、言ってみて?」
何を想像するか?
袖の部分、胸の部分、腿の部分。
それぞれに目を落とし、確認してみる。
行き交う車のライトに照らされて、一瞬ごとに変わる青。
あ……これって。
私はもう一度クリム様を見た。
その時、自然に答えは出たのだ。
「クリム様の瞳です」
「ありがとう、その答えが聞きたかった」
ブルーの瞳の色をまた変えて、クリム様は目を細めた。
「私の瞳の色を纏って欲しかった。少し……カッコつけすぎだろうか?らしくないとは思ったんだが……」
「カッコいいので構わないと思います!!」
恥ずかしそうに俯いたクリム様に、私は詰め寄った。
「クリム様の思い、この生地を残して下さったルイーシャ様の思い。その他沢山の皆様の思いで、私のドレスは最強です!!」
《アンナの防御力はレベルマックスになった》
というファンファーレが聞こえる!
「頼もしいな。私も君を守れて嬉しいよ。どうか、忘れないで。いかなる時も私はアンナの側にいることを」
クリム様の手が、私の手を強く握る。
その握られた手で、ドレスをギュッと握ると、薄いブルーはまた少し色味を変えた。
側にある青い瞳は夜陰の中で今は深く、雫を落としたように潤んでいる。
その視線を感じながら、ずっと思い続けていたことを、私はもう一度反芻する。
あなたを守る。
永遠に。
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