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Extra Ausgabe
クリスタ・ルイスはかく語れり④ クリスマスSS
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私とローラントは駅に戻り、待っていたルドガーと一緒に教会へ向かった。
私の左の薬指には、ローラントからのプレゼントの指輪が輝いていて、それを見ていると自然に笑顔になる。
ありとあらゆる宝飾品に興味のない私が、おかしいわよね?
でも、本当にこれは特別な気がしたの。
うっとりと指輪を眺める私を見て、ローラントも目を細めている。
あ!そう言えば私、ローラントに大事なことを言うのを忘れていたわ!
「ローラント。これ、ほんとに嬉しいわ、どうもありがとう!」
そう、お礼をね!!
私は左手につけた指輪を見せながら言ったわ。
その様子がどうやら、彼の何かに火を着けたみたい。
私の左手をぎゅうっと握りしめ、腰を抱き寄せ、やたらと頭に頬を擦り寄せてきて。
もちろん、お腹に負担をかけないように充分配慮してですけど。
「オレの奥さんは可愛いな。くそぅ、丸ごと食べたい」
冗談に聞こえないのが怖いわ。
実際食べそうだもの。
「ローラント、食べないでね。そうだ、私も何かお返しをしたいわ。欲しいものある?」
と、軽く聞いたのだけど、どうやらそれはローラントのお気に召さなかったらしいわ。
「これ以上君に何を貰えばいいのかわからない。この世で欲しいものは全て君に貰ったからな」
と、少し怒ったように言った。
「えーと、でもいいの?貰ってばかりだし……」
「そんなことはない。ほらここに……」
と、ローラントは大きくなったお腹を優しく擦ったの。
「どちらが多く貰ったか、と言われればそれはオレの方が圧倒的に多い。貰ってばかりですまないと思うのはオレの方だ。クリスタ……ありがとう。愛してる」
うん、知ってる。
知ってるけど、こうやって言葉にされるとまた泣けてきちゃうわ。
もうなんでこの人はこんなに素敵なのかしら!!
少し涙目になってきた私は、ふと顔を上げたの。
すると、どこからか熱い視線が……。
………ええ、ルームミラーに写るルドガーと目が合いましたよ。
彼は泣きながら見守ってくれていたわ。
いやちょっと!よそ見禁止!前向いて運転してね!
そして、ほんの20分ほど車を走らせると、丘の上の高台にあるシェーレンベルグ教会についた。
祝祭日らしく教会も美しく飾り付けられているわ。
ザナリア国教会は、確か約300年前からこの祝祭を認めているわね。
もとは、偶像崇拝をしない宗教だったけど、神認定された人の教えとザナリアの宗教は反発せず融合したみたいなの。
だから、宗教戦争はなかったらしいわ。
古今東西、宗教による戦争は絶えない。
領土を奪い合ったり、利権を争ったり様々なことで人は戦う。
こと、宗教においてもそう。
自分の信じる神の為に命を捨てるという行為は、無宗教の私にはまるで理解出来ないけど。
「さぁ、着いたよ」
先に降りたローラントは、さも当たり前のように私を車から抱き上げたわ。
下手すると、私、地面を歩かずに生活出来るかもね……そんなのは嫌だけど。
「あ、ローラント。車のトランクに例のものが……」
「おっと、そうだな。ルドガー、頼む。見つからないようにこっそりと持ってきてくれ」
「かしこまりました」
ふふ、なんのことかって??
それはね……
「フローエヴァイナハテン!!クリスタ!ローラント様!」
声高に叫びながら、マリアとアイスラーがこちらに駆けて来るのが見える。
そうだわ、補足だけれど『フローエヴァイナハテン』って言うのが祝祭日の挨拶になっているの。
ええと、どこか違う大陸では確か……そう!『メリークリスマス』と言うんだそうよ!
「フローエヴァイナハテン、マリア!そして、アイスラー!」
「フローエヴァイナハテン、お二人さん」
ローラントと私もそれに習うわ。
無宗教だけどそこまで無粋でもないしね。
「待ってたのよ!急がないと子供たちの劇がはじまっちゃうわ!」
「えっ!もうそんな時間!?」
「そうなのよ、小さい子が眠くなっちゃうからって前倒しになったの」
アーベル……なんで言ってくれなかったのっ!!
「ローラント、急いで!!」
「了解だ。ちゃんと抱きついてろよ」
ええ!了解!
ぎゅっとローラントの首に腕を絡めると、それを合図に彼は風のように早く走り出したわ。
そのかいあって、劇には直前で間に合い私もローラントも子供達の可愛らしい姿を堪能することが出来た。
ああ、そうそう、さっきのルドガーに頼んだものだけどね。
あれは子供達に渡すお菓子の袋なの。
今日の朝作った、焼き菓子の詰め合わせ。
あとは、ローラントが買ってきてくれた両手に抱えきれないくらいのショコラ。
大きい袋をもったルドガーからそれを預り、私達4人は手分けしてそれを配った。
子供達、本当に喜んでくれてもう涙が出ちゃった。
元気をもらったのはこっちなのにね。
その後、お義母様やみんなと合流して、教会でアーベルの説教を聞くの。
祭壇の下で、神の言葉を紡ぐ彼はとても神々しかったわ。
前を陣取ってるご婦人方の目が、ギラギラしてるのが若干気になったけど。
でも、アーベルもまだ決まった方もいないし牧師様は結婚出来ない訳じゃないからそのうちいい人があらわれるかもね!
きっとリューデルもそう願っているはずよ。
私の左の薬指には、ローラントからのプレゼントの指輪が輝いていて、それを見ていると自然に笑顔になる。
ありとあらゆる宝飾品に興味のない私が、おかしいわよね?
でも、本当にこれは特別な気がしたの。
うっとりと指輪を眺める私を見て、ローラントも目を細めている。
あ!そう言えば私、ローラントに大事なことを言うのを忘れていたわ!
「ローラント。これ、ほんとに嬉しいわ、どうもありがとう!」
そう、お礼をね!!
私は左手につけた指輪を見せながら言ったわ。
その様子がどうやら、彼の何かに火を着けたみたい。
私の左手をぎゅうっと握りしめ、腰を抱き寄せ、やたらと頭に頬を擦り寄せてきて。
もちろん、お腹に負担をかけないように充分配慮してですけど。
「オレの奥さんは可愛いな。くそぅ、丸ごと食べたい」
冗談に聞こえないのが怖いわ。
実際食べそうだもの。
「ローラント、食べないでね。そうだ、私も何かお返しをしたいわ。欲しいものある?」
と、軽く聞いたのだけど、どうやらそれはローラントのお気に召さなかったらしいわ。
「これ以上君に何を貰えばいいのかわからない。この世で欲しいものは全て君に貰ったからな」
と、少し怒ったように言った。
「えーと、でもいいの?貰ってばかりだし……」
「そんなことはない。ほらここに……」
と、ローラントは大きくなったお腹を優しく擦ったの。
「どちらが多く貰ったか、と言われればそれはオレの方が圧倒的に多い。貰ってばかりですまないと思うのはオレの方だ。クリスタ……ありがとう。愛してる」
うん、知ってる。
知ってるけど、こうやって言葉にされるとまた泣けてきちゃうわ。
もうなんでこの人はこんなに素敵なのかしら!!
少し涙目になってきた私は、ふと顔を上げたの。
すると、どこからか熱い視線が……。
………ええ、ルームミラーに写るルドガーと目が合いましたよ。
彼は泣きながら見守ってくれていたわ。
いやちょっと!よそ見禁止!前向いて運転してね!
そして、ほんの20分ほど車を走らせると、丘の上の高台にあるシェーレンベルグ教会についた。
祝祭日らしく教会も美しく飾り付けられているわ。
ザナリア国教会は、確か約300年前からこの祝祭を認めているわね。
もとは、偶像崇拝をしない宗教だったけど、神認定された人の教えとザナリアの宗教は反発せず融合したみたいなの。
だから、宗教戦争はなかったらしいわ。
古今東西、宗教による戦争は絶えない。
領土を奪い合ったり、利権を争ったり様々なことで人は戦う。
こと、宗教においてもそう。
自分の信じる神の為に命を捨てるという行為は、無宗教の私にはまるで理解出来ないけど。
「さぁ、着いたよ」
先に降りたローラントは、さも当たり前のように私を車から抱き上げたわ。
下手すると、私、地面を歩かずに生活出来るかもね……そんなのは嫌だけど。
「あ、ローラント。車のトランクに例のものが……」
「おっと、そうだな。ルドガー、頼む。見つからないようにこっそりと持ってきてくれ」
「かしこまりました」
ふふ、なんのことかって??
それはね……
「フローエヴァイナハテン!!クリスタ!ローラント様!」
声高に叫びながら、マリアとアイスラーがこちらに駆けて来るのが見える。
そうだわ、補足だけれど『フローエヴァイナハテン』って言うのが祝祭日の挨拶になっているの。
ええと、どこか違う大陸では確か……そう!『メリークリスマス』と言うんだそうよ!
「フローエヴァイナハテン、マリア!そして、アイスラー!」
「フローエヴァイナハテン、お二人さん」
ローラントと私もそれに習うわ。
無宗教だけどそこまで無粋でもないしね。
「待ってたのよ!急がないと子供たちの劇がはじまっちゃうわ!」
「えっ!もうそんな時間!?」
「そうなのよ、小さい子が眠くなっちゃうからって前倒しになったの」
アーベル……なんで言ってくれなかったのっ!!
「ローラント、急いで!!」
「了解だ。ちゃんと抱きついてろよ」
ええ!了解!
ぎゅっとローラントの首に腕を絡めると、それを合図に彼は風のように早く走り出したわ。
そのかいあって、劇には直前で間に合い私もローラントも子供達の可愛らしい姿を堪能することが出来た。
ああ、そうそう、さっきのルドガーに頼んだものだけどね。
あれは子供達に渡すお菓子の袋なの。
今日の朝作った、焼き菓子の詰め合わせ。
あとは、ローラントが買ってきてくれた両手に抱えきれないくらいのショコラ。
大きい袋をもったルドガーからそれを預り、私達4人は手分けしてそれを配った。
子供達、本当に喜んでくれてもう涙が出ちゃった。
元気をもらったのはこっちなのにね。
その後、お義母様やみんなと合流して、教会でアーベルの説教を聞くの。
祭壇の下で、神の言葉を紡ぐ彼はとても神々しかったわ。
前を陣取ってるご婦人方の目が、ギラギラしてるのが若干気になったけど。
でも、アーベルもまだ決まった方もいないし牧師様は結婚出来ない訳じゃないからそのうちいい人があらわれるかもね!
きっとリューデルもそう願っているはずよ。
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