54 / 59
Extra Ausgabe
出産狂想曲④~従軍記者ジェシカ
しおりを挟む
急いで馬を駆け、駅前に着いた私は、一旦降りて産科医を探した。
しかし、顔を知らない私ではとても探しようがない。
困り果て、知っている顔を探して目を彷徨わせると、ハインミュラー家の執事を見つけた。
「執事さーん!!」
「え……っ、あ!ジェシカさ……まっ!?」
執事の目は横に並んだ馬に釘付けになった。
しかしさすがはハインミュラー家の執事。
息を整えると、何事もなかったように状況を説明し始めたのである。
「ご覧下さい。やっと医術士が来てくださいました!しかしまだ人手は足りません」
「大丈夫よ。もうすぐ各地から医術士が押し寄せるでしょう。それよりも!クリスタ嬢の担当医はどの方かしら?」
私は焦っていた。
こうしている間にも、クリスタ嬢が大変なことになってやしないかと気が気じゃない。
「はっ!そうでしたね!急がねばなりません!ええと、フィーネ・バーナー医術士は……」
執事は額に手を翳し、辺りを物色すると「あっ!」と声を上げ指差した。
「そこでございます!」
彼の指差す方には、バスから怪我人を運んでいる女性の姿が。
「ありがとう。じゃあ、私、一足先にあの人を連れてハインミュラー邸に行くわね!」
「はい!宜しくお願いします!クリスタ様とお子様方をどうか……」
深く長く頭を下げる執事に、力強く頷くと、私はバーナー医術士の元へと向かった。
「すみません!フィーネ・バーナー先生?」
「へ?……ええっ!?馬?」
バーナー医術士は患者を見る手を止めこちらを見、隣の馬を見て叫ぶ。
「貴女、クリスタ嬢の担当医ですわよね?彼女陣痛が始まったらしいわ!一緒にハインミュラー邸まで来てくださる!?」
「なっ……そうなの!?大変だ!すぐ行くよ!で、あの……もしかしてだけど……この馬で、かな?」
「これの他に手段はないでしょうね?交通がマヒしてる今、一番確実で早いわ!さぁ、乗って!ザナリア馬術大会優勝者のジェシカ・ハーネスが華麗で優雅に最速でお届けするわ!」
「あ、うん……」
バーナー医術士は恐々と馬を見上げた。
初めて乗るのだろうか、緊張感丸出しで若干顔色が悪い。
しかし、そんなことで無駄にする時間はない。
「バーナー先生?行きますわよ!」
「わ、わかった!ちょっと待ってて!」
彼女はゴクリと息を呑み、それから腹を括ったような表情で駆け出した。
行き先は、フローリアの妹の所だ。
そこで、何やら会話を交わした後、バーナー医術士はしっかりした足取りでこちらにやってきた。
「行こうか!ジェシカさん!お世話になります!」
「ええ!参りましょう!」
私は先に馬に乗ると、バーナー医術士をグイッと後ろに引き上げた。
すると彼女は、馬上の高さを怖がりもせず、スッと姿勢を正す。
……案外肝が座っている。
何だか、仲良くなれそうな人だわ。
「しっかり掴まってらして!飛ばすわよ!」
「了解!いつでもどうぞ!」
バーナー医術士は私の腰に手を回し、ギュッと抱きつくようにした。
それを確認して、私は颯爽と馬を駆った。
しかし、顔を知らない私ではとても探しようがない。
困り果て、知っている顔を探して目を彷徨わせると、ハインミュラー家の執事を見つけた。
「執事さーん!!」
「え……っ、あ!ジェシカさ……まっ!?」
執事の目は横に並んだ馬に釘付けになった。
しかしさすがはハインミュラー家の執事。
息を整えると、何事もなかったように状況を説明し始めたのである。
「ご覧下さい。やっと医術士が来てくださいました!しかしまだ人手は足りません」
「大丈夫よ。もうすぐ各地から医術士が押し寄せるでしょう。それよりも!クリスタ嬢の担当医はどの方かしら?」
私は焦っていた。
こうしている間にも、クリスタ嬢が大変なことになってやしないかと気が気じゃない。
「はっ!そうでしたね!急がねばなりません!ええと、フィーネ・バーナー医術士は……」
執事は額に手を翳し、辺りを物色すると「あっ!」と声を上げ指差した。
「そこでございます!」
彼の指差す方には、バスから怪我人を運んでいる女性の姿が。
「ありがとう。じゃあ、私、一足先にあの人を連れてハインミュラー邸に行くわね!」
「はい!宜しくお願いします!クリスタ様とお子様方をどうか……」
深く長く頭を下げる執事に、力強く頷くと、私はバーナー医術士の元へと向かった。
「すみません!フィーネ・バーナー先生?」
「へ?……ええっ!?馬?」
バーナー医術士は患者を見る手を止めこちらを見、隣の馬を見て叫ぶ。
「貴女、クリスタ嬢の担当医ですわよね?彼女陣痛が始まったらしいわ!一緒にハインミュラー邸まで来てくださる!?」
「なっ……そうなの!?大変だ!すぐ行くよ!で、あの……もしかしてだけど……この馬で、かな?」
「これの他に手段はないでしょうね?交通がマヒしてる今、一番確実で早いわ!さぁ、乗って!ザナリア馬術大会優勝者のジェシカ・ハーネスが華麗で優雅に最速でお届けするわ!」
「あ、うん……」
バーナー医術士は恐々と馬を見上げた。
初めて乗るのだろうか、緊張感丸出しで若干顔色が悪い。
しかし、そんなことで無駄にする時間はない。
「バーナー先生?行きますわよ!」
「わ、わかった!ちょっと待ってて!」
彼女はゴクリと息を呑み、それから腹を括ったような表情で駆け出した。
行き先は、フローリアの妹の所だ。
そこで、何やら会話を交わした後、バーナー医術士はしっかりした足取りでこちらにやってきた。
「行こうか!ジェシカさん!お世話になります!」
「ええ!参りましょう!」
私は先に馬に乗ると、バーナー医術士をグイッと後ろに引き上げた。
すると彼女は、馬上の高さを怖がりもせず、スッと姿勢を正す。
……案外肝が座っている。
何だか、仲良くなれそうな人だわ。
「しっかり掴まってらして!飛ばすわよ!」
「了解!いつでもどうぞ!」
バーナー医術士は私の腰に手を回し、ギュッと抱きつくようにした。
それを確認して、私は颯爽と馬を駆った。
12
お気に入りに追加
3,419
あなたにおすすめの小説



今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる