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Extra Ausgabe

隠し子騒動③

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クライムシュミット駅に到着し、迎えに来ていたルドガーの顔を見たとき、ローラントは今ハインミュラー家で起こっている騒動が結構大変なものであると推察した。

「ルドガー ……その、家の方は……どうだ?」

「はぁ……どうもこうも……針のむしろでございます。ベアトリクス様やガブリエラ、双子達までそれはもう物凄い剣幕で怒り狂っております。私、男というだけで妙な言い掛かりをつけられて困ってるんですが……」

と言うと、恨みがましい目でローラントを見る。

「いや、誤解のないように言っておくが、子を作った覚えはない!!きっと何かの間違いだ!」

「………それはどうぞベアトリクス様に……無事に誤解が解けるとよろしいのですが」

ルドガーは車のドアを開け、ローラントを中へと促すと、大きなため息をついた。

その精気の抜けた様子に、どれだけとばっちりを食ったのだろうと気の毒にもなったが、その中に今から飛び込んでいく自分はきっとそれ以上の謗りを受けるだろうと、ローラントはまた胃が痛むのを感じていた。


車内での沈黙がいたたまれなくなった頃、漸く車は白亜の豪邸に着いた。
音を立てないようにそっと玄関を開けると、中は誰もいないかのようにひっそりと静まり返っている。

「誰も………いないのか、な?」

独り言のように呟き、奥の居間へ続く廊下を覗き込むと、気配もなかった後ろから酷く恨みがましい声が響いてきた。

「……おかえりなさいませ、ローラント様」

「ひっ!」

思わず変な声を出したローラントが、おそるおそる振り向くと、そこには不快な思いを隠そうともせず、毛虫でも見るかのような目のガブリエラがいた。

「ああ……ただいま。母は?……あと、その………」

「……こちらです」

ガブリエラは目を逸らすと、ローラントを待つこともなくさっさと歩き出した。
2階へと階段を上がり、ローラントとクリスタが過ごしていた部屋の前で立ち止まると、どうぞと部屋へ促した。

中には、能面のような顔をしてソファーに座り込むベアトリクスとイーリス、小さな子供を抱え、疲れた顔で一生懸命あやしているイレーネがいた。

「ただいま戻りました。それで、お話が………」

「お話ですって!みんな、聞いた?御当主様からお話があるそうよ!何?何なのかしら?」

くわっと目を剥いたベアトリクスの声に、部屋の中の女性陣の目が一斉にローラントを捉えた。

「その子はオレの子ではありません」

「言い切るのね!でもそう簡単に信じると思うの?私達はね、あなたがいろいろ遊んでたこと全部知ってるの!本当は、いつかこんな日がくるんじゃないかってびくびくしてたのよ!せっかくとびきりのお嫁さんに来てもらったのに、何もかも台無しじゃないのっ!」

いろいろ鬱憤が溜まっていたらしいベアトリクスは真っ赤な顔で捲し立てる。

「ちゃんと言い切る理由があるんです。まぁ、少し落ち着いて聞いて」

「ふん、いいでしょう!さぁ!言ってみて」

「………オレがハインミュラーの当主になったのは2年前ですよね?」

「そうね、アーダルベルトとアルフォンスが亡くなってからだから」

「それから誰ともそういう関係になっていません」

「……そういえば、その頃から女の噂、聞いたことなかったわね。でも、それはあなたの自己申告でしょう?」

「それはそうですが、したか、してないかははっきりわかります!」

「まぁ、それを信じるとすると産まれたばかりのこの子では計算が合わないわよね」

「そういうことです」

「そういうことです、じゃないわ!だいたいあなたがちゃんとしていれば、こういう事態は起こり得なかったんですよ!反省なさい!」

誤解は解けても解けなくても、結局は怒鳴られるんだと、ローラントは頭を掻いた。

「でもこの子はどういう経緯でここに来たんですか?誰かが連れて来たんですか?」

少し落ち着いたベアトリクスにローラントが尋ねる。

「いいえ、5日前玄関の前に手紙と一緒に置かれていたの」

「その手紙はありますか?」

ベアトリクスは暖炉の上の手紙を取り、ローラントに手渡した。
その手紙は滲んでいて、見えにくいところが多く、見える部分だけを繋いでなんとか読める感じだった。

「ハインミュラーの当主様……この子……どうか貴方の子供………よろしく…………」

「ね、どう見てもあなたの子供だって書いてるように見えるわよね?ね?」

「……………これだけではなんとも。滲んで見えないところが重要な部分じゃないですか?」

「そうかもしれないけど、読めないんだから仕方ないじゃない」

『オレの子』疑惑はなんとか晴れたみたいだが、当面の問題は何も解決していない。
この子はどこの誰で、誰が置いて行ったのか。

その時ローラントと部屋の女性陣は、窓から見下ろせる庭の方から何人もが言い争うような声を聞き、何事かと様子を見に行こうとするイーリスを止め、ローラントは一人階下に向かった。












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