美少女TSおやぢ×武人系美少女×美女TS青年のイチャイチャ記録 科学×ファンタジー世界with緊急自動車やミリタリーの趣味添え

EPIC

文字の大きさ
上 下
10 / 22
2章:「―航空祭とTS―」

10話:「―航空祭はTSにて賑わう―」

しおりを挟む
 馬車と列車で辺境伯領に行くのだが、今回は馬車二台に列車も個室席が二つ予約してあった。
 個室席は三人掛けの椅子が向かい合っていて六人で座れるのだが、わたくしとクリスタちゃんとふーちゃんとまーちゃんと両親が座ればひと席は満員になって、ヘルマンさんとレギーナとデボラとマルレーンが座ることができない。
 身の回りの世話をしてもらえるように、ヘルマンさんとレギーナだけでなく、デボラとマルレーンも今回の旅行にはついて来てくれていた。
 馬車が二台になったのはそのせいもあったが、単純に荷物が多くて一台では積み切れなかったという理由もあった。
 護衛付きの二台の馬車が列車の駅について、個室席に荷物を運び込んで座る。
 まーちゃんとふーちゃんが窓際の席に座って、わたくしがふーちゃんの隣りに、クリスタちゃんがまーちゃんの隣りに座った。
 わたくしの隣りに父が座って、クリスタちゃんの隣りに母が座っている。

「フランツとマリアが小さい頃にはもっとゆとりがあったのですが、かなりきつくなってきましたね」
「フランツとマリアがそれだけ成長したということだね」

 笑いながら話している両親に、わたくしは隣りに座るふーちゃんを見詰める。まだ背は低いので金色の髪の中につむじが見えているが、それがまた可愛くて堪らない。
 まーちゃんは最近は三つ編みにしてもらっているようだ。細い二つの三つ編みがよく似合っている。

「エクムント様とカサンドラ様は待っていてくれるでしょうか?」
「今日出発すると先方にはお伝えしてあります」
「歓迎してくださると思うよ」

 両親もエクムント様のことに関しては、進路の相談を受けていた十一歳の頃からよく知っているので、表情が柔らかい。辺境伯領に長期間滞在するということになっても、両親がすぐに了承してくれたのは、エクムント様とディッペル家との関わりが深いからかもしれなかった。
 わたくしは小さな頃からキルヒマン家に連れて行かれていて、エクムント様が抱っこして庭を散歩してくださっていた。
 エクムント様が士官学校を卒業すると、侯爵家の子息なので仕える家がないと困っていたところを、名乗りを上げたのがディッペル家だった。
 エクムント様はディッペル家で五年間修業をしてから、カサンドラ様の養子になって辺境伯を継いだ。

 士官学校を卒業したときにはエクムント様は十七歳だったので、いきなり辺境伯になるには若すぎたのだろう。それでディッペル家で騎士をして五年間過ごして学んだのだ。

 列車が辺境伯領に着くと、馬車に乗り換える。大量の荷物も馬車に積みこまれた。
 日差しが強くて馬車の窓を開けて風を入れても蒸し暑さが抜けない。吹き込む風も暑さを含んでいた。

「エリザベートおねえさま、おのどがかわいちゃった」
「水筒に紅茶がありますよ」
「のみたい」
「わたくしも、のみたい!」

 ふーちゃんとまーちゃんに順番に水筒の紅茶を飲ませたが、水筒の中の氷は溶けていてすっかり常温になっていた。常温の紅茶でも、ふーちゃんとまーちゃんは喉を鳴らして飲んでいた。

 辺境伯家に着くと、庭に木々が茂っていて、噴水もあるので、木陰を吹く風は少しは涼しく感じられる。
 辺境伯家ではエクムント様とカサンドラ様が迎えてくれた。

 昼食を一緒に食べることになって、わたくしとクリスタちゃんは楽なワンピースに着替えさせてもらう。ふーちゃんはシャツにショートパンツ、まーちゃんは可愛いワンピースにカボチャパンツといういで立ちになっていた。
 両親も若干ラフな格好に着替えている。

「遠路はるばるお越しくださってありがとうございます」
「お招きいただきありがとうございます。家族一同、とても楽しみにしてきました」
「私とカサンドラ様もディッペル家の皆様がいらっしゃるのを楽しみにしていました」
「エリザベート嬢とクリスタ嬢からは、学園のことも聞かないといけないね」
「カサンドラ様、よろしくお願いします」

 父とわたくしでご挨拶をすると、エクムント様とカサンドラ様が答えてくれる。
 カサンドラ様はスラックスにシャツ姿で、細身だがよく鍛えられた体が目立っていた。エクムント様もシャツとスラックス姿でリラックスしている。
 何を着ていても格好いいのだと見惚れてしまうが、そんなわたくしにクリスタちゃんが前に出た。

「カサンドラ様、エクムント様に言って差し上げてくださいな」
「どうしましたか、クリスタ嬢?」
「エクムント様はお姉様のこと、子どものように扱うのですよ。それなのに、急に『そのドレスの色は私の目の色ですよ』みたいなことを仰ったりして。わたくし、聞いていてびっくりしましたわ」
「クリスタ!? 聞いていたんですか!?」
「全部聞いていたと言ったではないですか」

 クリスタちゃんに聞かれていた。
 わたくしが熟れたトマトのように真っ赤な顔をしていたことも、声が裏返ってしまったことも、ミルクポッドを落としてしまったことも、不作法にカップとソーサーを落としかけて音を立ててしまったことも、全部クリスタちゃんに見られていた。
 恥ずかしさに頬を押さえるわたくしに、カサンドラ様が呆れた顔でエクムント様を見ているのが分かった。

「エクムント、それは意味が分かってやっているのか?」
「意味が、とは?」
「エリザベート嬢に、口説くような甘い言葉をかけている自覚があるのか、ということだ」
「く、口説く!? 私が、エリザベート嬢にですか?」

 動揺しているエクムント様にクリスタちゃんは止めとばかりに告げる。

「誠実なのはいいことなのですが、お姉様以外の異性からの贈り物は受け取らないとか、目の前で言ってしまうのも、どうかと思いました」
「それは当然のことでしょう? 婚約者に不義理はできません」
「エクムント、そういうところだぞ?」
「え? どういうことですか!?」

 カサンドラ様に叱られてエクムント様が動揺しているのが分かる。わたくしもあれだけ動揺させられたのだから、エクムント様にも少しは動揺して欲しかった。

「エリザベート嬢はお前が思っているほど子どもではない。大人の女性だよ?」
「エリザベート嬢はまだ十三歳です」
「十三歳とは、もう精神的にはかなり大人なのだよ」
「そ、そうですか……。私は、エリザベート嬢の顔を見るたびに、小さくて柔らかくて可愛いエリザベート嬢が浮かんできて……」
「それがいけないと言っているのだ。今すぐエリザベート嬢の認識を改めよ」
「は、はい!」

 優しくて穏やかで非の打ち所がないと思っているエクムント様が、カサンドラ様の前に出るとこれだけ少年のようになってしまっているのにも驚いてしまった。
 エクムント様はわたくしの中でずっと完璧な大人なイメージがあったのだが、それを覆された気がした。
 それもそのはず、エクムント様はまだ二十四歳、前世で考えると大学を卒業して二年目の新人社員くらいなのだ。

「エリザベート嬢、私が気付かぬうちに失礼をしていたようで、申し訳ありません」
「失礼なことはされていません」
「いえ、頭の中で失礼なことを考えていたかもしれません」
「それは、時間と共に変わっていくものだと思っていました」
「これから変えていくように努力します。どうか、私のことをお見捨てなく」

 見捨てるなんてあるわけがない。
 それなのに、反省してしょんぼりした少年のようになっているエクムント様の口からそんな言葉が出てきている。

「見捨てるわけがありません。エクムント様はわたくしの大事な婚約者です」
「そう言っていただけるとありがたいです。これからもエリザベート嬢のことを今まで以上に大事にすると誓うので、婚約者のままでいてくださいね」

 辺境伯家とディッペル家の婚約は国の一大事業であるし、破棄などあり得ないのだが、エクムント様が珍しく気弱になっているのだと気付いてわたくしは目を丸くした。
 エクムント様にもこんな一面があるのだ。

「エクムント、ディッペル家の方々も、昼食にしましょう。フランツ殿とマリア嬢がお腹が空いて涎が出そうになっていますよ?」

 カサンドラ様に声をかけられて、わたくしがふーちゃんとまーちゃんを見ると、ふーちゃんとまーちゃんは急いで服の袖で涎を拭いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

脅威応急作業 人類の敵を倒すのは、魔法少女たち――ではなく公共業務作業員?

EPIC
SF
ちょっとシビアめな魔法少女もの世界に、空気読まずに公共機関の作業員のチートおっさん等が横やり入れる話。

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

札束艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 生まれついての勝負師。  あるいは、根っからのギャンブラー。  札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。  時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。  そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。  亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。  戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。  マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。  マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。  高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。  科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

超克の艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
「合衆国海軍ハ 六〇〇〇〇トン級戦艦ノ建造ヲ計画セリ」 米国駐在武官からもたらされた一報は帝国海軍に激震をもたらす。 新型戦艦の質的アドバンテージを失ったと判断した帝国海軍上層部はその設計を大幅に変更することを決意。 六四〇〇〇トンで建造されるはずだった「大和」は、しかしさらなる巨艦として誕生する。 だがしかし、米海軍の六〇〇〇〇トン級戦艦は誤報だったことが後に判明。 情報におけるミスが組織に致命的な結果をもたらすことを悟った帝国海軍はこれまでの態度を一変、貪欲に情報を収集・分析するようになる。 そして、その情報重視への転換は、帝国海軍の戦備ならびに戦術に大いなる変化をもたらす。

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

蒼海の碧血録

三笠 陣
歴史・時代
 一九四二年六月、ミッドウェー海戦において日本海軍は赤城、加賀、蒼龍を失うという大敗を喫した。  そして、その二ヶ月後の八月、アメリカ軍海兵隊が南太平洋ガダルカナル島へと上陸し、日米の新たな死闘の幕が切って落とされた。  熾烈なるガダルカナル攻防戦に、ついに日本海軍はある決断を下す。  戦艦大和。  日本海軍最強の戦艦が今、ガダルカナルへと向けて出撃する。  だが、対するアメリカ海軍もまたガダルカナルの日本軍飛行場を破壊すべく、最新鋭戦艦を出撃させていた。  ここに、ついに日米最強戦艦同士による砲撃戦の火蓋が切られることとなる。 (本作は「小説家になろう」様にて連載中の「蒼海決戦」シリーズを加筆修正したものです。予め、ご承知おき下さい。) ※表紙画像は、筆者が呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)にて撮影したものです。

処理中です...