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Chapter6:「ストライク TS ガールズ」
Part35:「始動」
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――さて。
驚きの自分以外のプレイヤーである、ヴォートとの邂逅から。そのヴォートと星宇宙の両者の間での協力が確約され。力を合わせてこのTDWL5のトゥルー・エンディングを目指す事となった。
そしてそこからは早かった。
ヴォートの側は、そのキャラクターの立場から活用できる組織力を用いて。クエストの重要施設であるアルスタライル太陽光発電所の復旧に向けた行動を開始。
この地の各地に活動のための部隊が差し向けられ、同時にその後に待ち受ける戦いに向けられた準備を開始。
元よりゲーム時間中で、すでにRPによりこの計画は起案されてスタートされた段階にあったため。実行にあっての各方各部への調整、説明説得などの懸念はほとんど無かった。
そして一方、星宇宙とモカは。
担うことになった重要アイテムの「ユートピア・デバイス」の入手。それに伴うPartyの本拠地への潜入襲撃に向けて動き始めた。
先日のToB騎士のファースの救出によってできた、ToBへのコネクションを利用してToBと再度接触。
これよりの計画を伝え、同時にParty本拠地の攻略においての助力を申し出た。
ToBはこの荒廃した世界の各地に勢力を持つ巨大組織だが、その組織方針は支部によって大小の違いがあり、実はそれぞれ独立気味で一貫していない。
治安維持の観点から精力的に土地の支配に乗り出し、軍閥のようになっている支部もあれば。あくまで人々の救済に重きを置く、守護者としての立場に徹する支部もある。
そしてこのプライマリー・ダウンワールドの支部は、どちらかと言うと後者よりの穏健派であった。
人々の脅威を排除し、その営みを見守る事に徹する。言い方を返れば、「非道を働かない限りは好きにしろ」とでも言う姿勢であり。
RPの拡大進出も看過しているというか、どこか他人事であったが。
別の地方地域ではそちらのRP AF方面隊とToB支部が衝突している地域もある中、この地方での情勢は穏やかといっても良かった。
そんな事情も助け、星宇宙のToBへの再接触から持ち込み知らせたRPの復興計画に。ToBは嫌な顔をする事も無く、しかし歓迎するでも無かった。
そしてしかし同時に。
Partyの本拠地を乗り込むという計画には、ToBは食いついた。
ToBにとっては、唯一政党を名乗るがカルト組織も同然の、非道を働くことを微塵も厭わないPartyは討つべく仇敵であり。それに向けての攻撃の手を加える事も、近いうちに計画されていたという。
そこへの星宇宙の持ち込んだPartyへ乗り込む算段に、ToBは丁度良い機会だと言うように賛同してくれた。
そこには、自分等を差し置いて別の者ばかりにPartyを討つ事を任せられないという、彼らの矜持もあったのだろう。
ともかく、ToBはParty本拠地の攻略に賛同。
かくして、星宇宙等とToBによるParty攻略作戦は実行される運びとなった――
日は数日が経過し、その日の時刻は夜。そろそろ深い時間に差し掛かろうとしている。
場所、地点に在ってはプライマリー・ダウンワールド地方の南西側に広がる海上。
少し雲に隠れながらも浮かぶ月の明かりが、海面を仄かに照らしている。
その会場の低い高度の上空を――轟音を立てて飛ぶ四つの飛行体があった。
大型の軍用機、ストライク・ヴァルチャーだ。
いずれもその機体にはToBのエンブレム、すなわちその所属機だ。
細かくは兵装搭載数をいくらか犠牲にして、人員貨物用の輸送スペースを大きく取った輸送降下戦用仕様が二機。そして護衛の通常型が二機。
それこそ、これより実行される「Party本拠地強襲作戦」に向かう攻撃部隊であった。
その内の輸送仕様の一機が、潜入強襲を担当する「チーム」運ぶメイン機、もう一機は万一に備えたバックアップ機。
そのメイン機の内で、星宇宙とモカは現在機上の人となっていた。
「――……」
少し落ち着かなそうに、しかしSV機の貨物室内の壁に背を着いて待機の姿を取る、星宇宙の姿がある。
目に留まるは、その星宇宙の今の姿格好だ。
星宇宙が纏うは、全身のラインが出るSFチックなぴっちりボディスーツ。
アーマー、プロテクタ類が付属しながらもその配置がまた星宇宙の女体を強調。青系統の配色が、星宇宙の鮮やかな青髪と調和している。
これは「タクティカル・スーツ」と名称されるMOD衣装装備。
これよりの「作戦」のために星宇宙等が事前に入手回収したもの。ゲーム終盤の激しい戦いにも耐えうる、高性能の衣装装備だ。
「ふぅぅ」
その対面、貨物室内のベンチシートにちょこんと座るはモカ。その姿は星宇宙と同じくタクティカル・スーツで、そのぴっちり具合がモカの豊満なボディを主張している。
そしてしかしそんなモカも、同じく緊張した面持ちで吐息を零していた。
無理もない、これより「敵」の本拠地に潜入しようと言うのだから。
星宇宙とモカは、これよりPartyの本拠地へ潜入襲撃を行う「チーム」の一員なのだ。
「――ほーれ、全部オッケーだっ。流石俺様っ」
そんな緊張の面持ちの二人の所へ、何か高く透りながらも独特の声が聞こえ来る。
SV機の貨物室内には3機程の水中スクーターが並び搭載されている。その一つに取り付く美少女から上がった声だ。
そのスクーターの整備をしていた様子の美少女は。ToB装備であるスカウト・スーツに身を包んでその豊満な凹凸の女体を主張し、ツーサイドアップに結った長い金髪を揺らしている。
その正体は、先日にショッピングモールロケーションで出会った口の悪い美少女――オックス。MODの影響で美少女の姿になっており、その正体は「ツンデレ男」であるそれが声の主であった。
他に機内には、先日に戦いを共にしたToB騎士で、今もまた黒髪ポニーテール美女姿のファース。
その際に救援に来てくれた、同じくToB騎士の茶髪美女のクラウレー。
さらに新たに紹介された、スノーマンと言う名のToB研究者だという白髪セミショートの美少女が。
それぞれ思い思いの立ち位置座り位置で待機している。
それぞれが皆スカウト・スーツ姿で、そのぴっちりボディスーツ状の装備でそれぞれの魅惑の体を主張している。
ちなみに改めて言うが。新顔のスノーマンを含めてこの場のToBの全員が、キャラクター性別変更MODの影響を受けて今の美少女・美女姿となっているのであって。
その正体は皆男性である。
そしてその彼女(彼)等もまた、これよりのParty本拠地への潜入襲撃のためのメンバーだ。
本当の所、星宇宙がToBに期待していた支援は、Party本拠地まで自分等の回収収容程度であったのだが。
先日のファース救出における星宇宙の活躍をToBは思った以上に高く評価しており。そして先にも記したようにToBは仇敵たるPartyの本拠地をよそ者ばかりに任せる気は無いらしく。
ToB騎士からも攻略チームを選抜編成。
それがファースやオックス等であり。こうして星宇宙等とToBによるチームが結成、共同作戦によるParty本拠地攻略が決行されたのであった。
「……」
「緊張しているようだな」
落ち着かなさそうに貨物室で背を預けていた星宇宙に、傍に立っていたファースが声を掛ける。
「まぁね……言い出しっぺが何を言うかと思われるだろうけど、俺等はアマチュアだ……正直、気圧されてる……」
それに虚勢を張ることは無く、正直な所を答えて見せる星宇宙。
いくらこの世界がゲームを模した世界で、その恩恵で自分自身のスペックも現実より優れたものとなっていると言っても。
これより自身がやろうとしている事は、高度な特殊作戦のそれだ。
正直言って緊張、いや恐怖が無いとは言えなかった。
「無理もないさ……しかし、失礼だが君が抱いている様子は恐怖だけでは無いように見える」
「?」
しかし察する言葉に続けて、ファースが紡いだのはそんな言葉。
「君はどこか楽しみにしているようだ。恐れと同時に、挑戦への期待が見える」
ファースが寄越したのはそんな言葉。そこまで自覚は無かったが、そこで星宇宙は恐怖とは別種の、確かな高揚感が自分の内にある事に気づく。
「――ふふっ、そうかもっ」
「頼もしい限りだ」
そして星宇宙は、それを肯定して自嘲気味に笑って見せた。
それにファースは同じく笑い、「頼りにしている」と言うように星宇宙の肩を叩き。
「ナチュラル戦闘狂様だなぁ、末恐ろしい事だっ」
そして皮肉屋のオックスからは、そんな皮肉気に揶揄う言葉が飛んで来た。
《――潜入要員各員へ、「目標」が視認距離に入った》
「!」
貨物室内に効果の掛かった、通信越しの音声が響き広がったのはその時だった。それは現在搭乗するSV機のコックピットからのもの。
それを聞き留め一度顔を上げた星宇宙は、しかしすぐに傍にあった観測捜索用のバブルキャノピー(半球状の窓)に顔を突きこみ、機体の進行方向を見る。
暗い空と海上が広がるその向こう。
そこに、「それ」は見えた。
海上に鎮座する巨大な建造物――船。
横たわった高層ビル、いやそれよりも巨大なそれが洋上に座礁して存在している。
――巨大航空戦艦、「エクログロフス」。
元は荒廃前のこの世界、この国の軍隊が保有していた巨大軍艦。
そして現在は、Partyの本拠地。
まるで悪魔の城とも印象をうけるそれが、世闇の海上に、しかし存在感を確かに主張していた。
「でっかーっ……」
「っ……」
遠目からでも圧倒されるその姿、存在感に。
背後にいつの間にか立って一緒の光景を見ていたモカから声が零れ。星宇宙にあっては思わず生唾を飲む。
《――!……警告ッ!前方より攻撃が――……ッぉ!?》
コックピットよりの再びの音声が飛び込み響いたのはその直後。
しかしそれを遮る様に、次にはSVの機体を衝撃振動が襲った。
「おぁ!?」
「わひゃっ!?」
機体を襲い伝わった振動に、思わず驚きの声を上げてしまう星宇宙にモカ。
「ッ!敵の対空射撃だッ!」
そして側にいたファースが、その衝撃振動の正体を発し上げる。
それを事実と示すように、機の窓の外では敵艦「エクログロフス」からの艦砲や機関砲のものであろう、対空砲火の炸裂が巻き起こっていた。
「っ、まだエクログロフス級の低空レーダー域の範囲外のはずなのにっ!?」
「Partyの連中が改造してスペック上げたんだろッ!古いカタログスペックの情報なんてそんなモンだッ!」
その対空砲火に対して、スノーマンが驚きの声を上げ。オックスがそれに推察の言葉を張り上げ返している。
《ッ……危険だッ!予定位置より遠いが、チームは降下してくれッ!》
そして響く、コックピットからの要請。
「了解!全員急げ、ただちに降下するッ!――クラウレー!」
コックピットからのそれにはファースが張り上げて答え。続けてファースはクラウレーに視線を送る。
貨物室の一番後部近くで待機ていたクラウレーは、「承知している」いうように駆ける姿を見せ。次には貨物室の後方にある、機体後部ハッチのスイッチを叩き押した。
それにより、SV機の貨物室の後部ハッチが開放。その向こうに夜空と暗い海上が広がり見える。
「降りるぞ、取り付くんだッ」
そして続け促すファースの言葉に、それを聞くが早いか各員は呼応。
慌て水中での行動のための呼吸マスクとゴーグルを降ろして装着。
そして三機の水中スクーターのそれぞれに二人一組で取り付く。星宇宙もモカと共に機首側の水中スクーターに取り付いた。
「よし――降下ァッ!」
星宇宙等が取り付いた瞬間には、ファースが発し上げて降下行動を開始した。
ファースとクラウレーの組が水中スクーターを貨物室のレールに沿って思いっきり押し、次には放り出す勢いで後部ハッチより投下。
そしてそれと同じくするように、二人はハッチよりその向こうの暗闇に向けて、何の躊躇も無く飛び降りて行った。
間髪入れずに二手目、オックスとスノーマンの組が同様の手順で降下。ハッチの向こうへと消える。
そして星宇宙とモカの番だ。
わずか一瞬だけ躊躇を感じるが、しかし次には二人は水中スクーターをレールに沿って思いっきり推し始める。
レールはすぐに終わりを向かえ、開かれたハッチの向こうの暗い海が、飲み込まん様相で眼下に広がる。
しかしすでに勢いに乗った脚は止まらない。
二人はそのまま勢いに任せて水中スクーターを放り出し投下。
そしてハッチの足場を踏み切り、暗闇の海に向けて飛んだ。
「――ッぅ!?」
瞬間、星宇宙は背後で爆音と衝撃を感じる。
「撃墜」。
そんな言葉を瞬時に浮かべ発しながら、しかし次には星宇宙の体は。暗く冷たい海中へと飛び込んでいた――
驚きの自分以外のプレイヤーである、ヴォートとの邂逅から。そのヴォートと星宇宙の両者の間での協力が確約され。力を合わせてこのTDWL5のトゥルー・エンディングを目指す事となった。
そしてそこからは早かった。
ヴォートの側は、そのキャラクターの立場から活用できる組織力を用いて。クエストの重要施設であるアルスタライル太陽光発電所の復旧に向けた行動を開始。
この地の各地に活動のための部隊が差し向けられ、同時にその後に待ち受ける戦いに向けられた準備を開始。
元よりゲーム時間中で、すでにRPによりこの計画は起案されてスタートされた段階にあったため。実行にあっての各方各部への調整、説明説得などの懸念はほとんど無かった。
そして一方、星宇宙とモカは。
担うことになった重要アイテムの「ユートピア・デバイス」の入手。それに伴うPartyの本拠地への潜入襲撃に向けて動き始めた。
先日のToB騎士のファースの救出によってできた、ToBへのコネクションを利用してToBと再度接触。
これよりの計画を伝え、同時にParty本拠地の攻略においての助力を申し出た。
ToBはこの荒廃した世界の各地に勢力を持つ巨大組織だが、その組織方針は支部によって大小の違いがあり、実はそれぞれ独立気味で一貫していない。
治安維持の観点から精力的に土地の支配に乗り出し、軍閥のようになっている支部もあれば。あくまで人々の救済に重きを置く、守護者としての立場に徹する支部もある。
そしてこのプライマリー・ダウンワールドの支部は、どちらかと言うと後者よりの穏健派であった。
人々の脅威を排除し、その営みを見守る事に徹する。言い方を返れば、「非道を働かない限りは好きにしろ」とでも言う姿勢であり。
RPの拡大進出も看過しているというか、どこか他人事であったが。
別の地方地域ではそちらのRP AF方面隊とToB支部が衝突している地域もある中、この地方での情勢は穏やかといっても良かった。
そんな事情も助け、星宇宙のToBへの再接触から持ち込み知らせたRPの復興計画に。ToBは嫌な顔をする事も無く、しかし歓迎するでも無かった。
そしてしかし同時に。
Partyの本拠地を乗り込むという計画には、ToBは食いついた。
ToBにとっては、唯一政党を名乗るがカルト組織も同然の、非道を働くことを微塵も厭わないPartyは討つべく仇敵であり。それに向けての攻撃の手を加える事も、近いうちに計画されていたという。
そこへの星宇宙の持ち込んだPartyへ乗り込む算段に、ToBは丁度良い機会だと言うように賛同してくれた。
そこには、自分等を差し置いて別の者ばかりにPartyを討つ事を任せられないという、彼らの矜持もあったのだろう。
ともかく、ToBはParty本拠地の攻略に賛同。
かくして、星宇宙等とToBによるParty攻略作戦は実行される運びとなった――
日は数日が経過し、その日の時刻は夜。そろそろ深い時間に差し掛かろうとしている。
場所、地点に在ってはプライマリー・ダウンワールド地方の南西側に広がる海上。
少し雲に隠れながらも浮かぶ月の明かりが、海面を仄かに照らしている。
その会場の低い高度の上空を――轟音を立てて飛ぶ四つの飛行体があった。
大型の軍用機、ストライク・ヴァルチャーだ。
いずれもその機体にはToBのエンブレム、すなわちその所属機だ。
細かくは兵装搭載数をいくらか犠牲にして、人員貨物用の輸送スペースを大きく取った輸送降下戦用仕様が二機。そして護衛の通常型が二機。
それこそ、これより実行される「Party本拠地強襲作戦」に向かう攻撃部隊であった。
その内の輸送仕様の一機が、潜入強襲を担当する「チーム」運ぶメイン機、もう一機は万一に備えたバックアップ機。
そのメイン機の内で、星宇宙とモカは現在機上の人となっていた。
「――……」
少し落ち着かなそうに、しかしSV機の貨物室内の壁に背を着いて待機の姿を取る、星宇宙の姿がある。
目に留まるは、その星宇宙の今の姿格好だ。
星宇宙が纏うは、全身のラインが出るSFチックなぴっちりボディスーツ。
アーマー、プロテクタ類が付属しながらもその配置がまた星宇宙の女体を強調。青系統の配色が、星宇宙の鮮やかな青髪と調和している。
これは「タクティカル・スーツ」と名称されるMOD衣装装備。
これよりの「作戦」のために星宇宙等が事前に入手回収したもの。ゲーム終盤の激しい戦いにも耐えうる、高性能の衣装装備だ。
「ふぅぅ」
その対面、貨物室内のベンチシートにちょこんと座るはモカ。その姿は星宇宙と同じくタクティカル・スーツで、そのぴっちり具合がモカの豊満なボディを主張している。
そしてしかしそんなモカも、同じく緊張した面持ちで吐息を零していた。
無理もない、これより「敵」の本拠地に潜入しようと言うのだから。
星宇宙とモカは、これよりPartyの本拠地へ潜入襲撃を行う「チーム」の一員なのだ。
「――ほーれ、全部オッケーだっ。流石俺様っ」
そんな緊張の面持ちの二人の所へ、何か高く透りながらも独特の声が聞こえ来る。
SV機の貨物室内には3機程の水中スクーターが並び搭載されている。その一つに取り付く美少女から上がった声だ。
そのスクーターの整備をしていた様子の美少女は。ToB装備であるスカウト・スーツに身を包んでその豊満な凹凸の女体を主張し、ツーサイドアップに結った長い金髪を揺らしている。
その正体は、先日にショッピングモールロケーションで出会った口の悪い美少女――オックス。MODの影響で美少女の姿になっており、その正体は「ツンデレ男」であるそれが声の主であった。
他に機内には、先日に戦いを共にしたToB騎士で、今もまた黒髪ポニーテール美女姿のファース。
その際に救援に来てくれた、同じくToB騎士の茶髪美女のクラウレー。
さらに新たに紹介された、スノーマンと言う名のToB研究者だという白髪セミショートの美少女が。
それぞれ思い思いの立ち位置座り位置で待機している。
それぞれが皆スカウト・スーツ姿で、そのぴっちりボディスーツ状の装備でそれぞれの魅惑の体を主張している。
ちなみに改めて言うが。新顔のスノーマンを含めてこの場のToBの全員が、キャラクター性別変更MODの影響を受けて今の美少女・美女姿となっているのであって。
その正体は皆男性である。
そしてその彼女(彼)等もまた、これよりのParty本拠地への潜入襲撃のためのメンバーだ。
本当の所、星宇宙がToBに期待していた支援は、Party本拠地まで自分等の回収収容程度であったのだが。
先日のファース救出における星宇宙の活躍をToBは思った以上に高く評価しており。そして先にも記したようにToBは仇敵たるPartyの本拠地をよそ者ばかりに任せる気は無いらしく。
ToB騎士からも攻略チームを選抜編成。
それがファースやオックス等であり。こうして星宇宙等とToBによるチームが結成、共同作戦によるParty本拠地攻略が決行されたのであった。
「……」
「緊張しているようだな」
落ち着かなさそうに貨物室で背を預けていた星宇宙に、傍に立っていたファースが声を掛ける。
「まぁね……言い出しっぺが何を言うかと思われるだろうけど、俺等はアマチュアだ……正直、気圧されてる……」
それに虚勢を張ることは無く、正直な所を答えて見せる星宇宙。
いくらこの世界がゲームを模した世界で、その恩恵で自分自身のスペックも現実より優れたものとなっていると言っても。
これより自身がやろうとしている事は、高度な特殊作戦のそれだ。
正直言って緊張、いや恐怖が無いとは言えなかった。
「無理もないさ……しかし、失礼だが君が抱いている様子は恐怖だけでは無いように見える」
「?」
しかし察する言葉に続けて、ファースが紡いだのはそんな言葉。
「君はどこか楽しみにしているようだ。恐れと同時に、挑戦への期待が見える」
ファースが寄越したのはそんな言葉。そこまで自覚は無かったが、そこで星宇宙は恐怖とは別種の、確かな高揚感が自分の内にある事に気づく。
「――ふふっ、そうかもっ」
「頼もしい限りだ」
そして星宇宙は、それを肯定して自嘲気味に笑って見せた。
それにファースは同じく笑い、「頼りにしている」と言うように星宇宙の肩を叩き。
「ナチュラル戦闘狂様だなぁ、末恐ろしい事だっ」
そして皮肉屋のオックスからは、そんな皮肉気に揶揄う言葉が飛んで来た。
《――潜入要員各員へ、「目標」が視認距離に入った》
「!」
貨物室内に効果の掛かった、通信越しの音声が響き広がったのはその時だった。それは現在搭乗するSV機のコックピットからのもの。
それを聞き留め一度顔を上げた星宇宙は、しかしすぐに傍にあった観測捜索用のバブルキャノピー(半球状の窓)に顔を突きこみ、機体の進行方向を見る。
暗い空と海上が広がるその向こう。
そこに、「それ」は見えた。
海上に鎮座する巨大な建造物――船。
横たわった高層ビル、いやそれよりも巨大なそれが洋上に座礁して存在している。
――巨大航空戦艦、「エクログロフス」。
元は荒廃前のこの世界、この国の軍隊が保有していた巨大軍艦。
そして現在は、Partyの本拠地。
まるで悪魔の城とも印象をうけるそれが、世闇の海上に、しかし存在感を確かに主張していた。
「でっかーっ……」
「っ……」
遠目からでも圧倒されるその姿、存在感に。
背後にいつの間にか立って一緒の光景を見ていたモカから声が零れ。星宇宙にあっては思わず生唾を飲む。
《――!……警告ッ!前方より攻撃が――……ッぉ!?》
コックピットよりの再びの音声が飛び込み響いたのはその直後。
しかしそれを遮る様に、次にはSVの機体を衝撃振動が襲った。
「おぁ!?」
「わひゃっ!?」
機体を襲い伝わった振動に、思わず驚きの声を上げてしまう星宇宙にモカ。
「ッ!敵の対空射撃だッ!」
そして側にいたファースが、その衝撃振動の正体を発し上げる。
それを事実と示すように、機の窓の外では敵艦「エクログロフス」からの艦砲や機関砲のものであろう、対空砲火の炸裂が巻き起こっていた。
「っ、まだエクログロフス級の低空レーダー域の範囲外のはずなのにっ!?」
「Partyの連中が改造してスペック上げたんだろッ!古いカタログスペックの情報なんてそんなモンだッ!」
その対空砲火に対して、スノーマンが驚きの声を上げ。オックスがそれに推察の言葉を張り上げ返している。
《ッ……危険だッ!予定位置より遠いが、チームは降下してくれッ!》
そして響く、コックピットからの要請。
「了解!全員急げ、ただちに降下するッ!――クラウレー!」
コックピットからのそれにはファースが張り上げて答え。続けてファースはクラウレーに視線を送る。
貨物室の一番後部近くで待機ていたクラウレーは、「承知している」いうように駆ける姿を見せ。次には貨物室の後方にある、機体後部ハッチのスイッチを叩き押した。
それにより、SV機の貨物室の後部ハッチが開放。その向こうに夜空と暗い海上が広がり見える。
「降りるぞ、取り付くんだッ」
そして続け促すファースの言葉に、それを聞くが早いか各員は呼応。
慌て水中での行動のための呼吸マスクとゴーグルを降ろして装着。
そして三機の水中スクーターのそれぞれに二人一組で取り付く。星宇宙もモカと共に機首側の水中スクーターに取り付いた。
「よし――降下ァッ!」
星宇宙等が取り付いた瞬間には、ファースが発し上げて降下行動を開始した。
ファースとクラウレーの組が水中スクーターを貨物室のレールに沿って思いっきり押し、次には放り出す勢いで後部ハッチより投下。
そしてそれと同じくするように、二人はハッチよりその向こうの暗闇に向けて、何の躊躇も無く飛び降りて行った。
間髪入れずに二手目、オックスとスノーマンの組が同様の手順で降下。ハッチの向こうへと消える。
そして星宇宙とモカの番だ。
わずか一瞬だけ躊躇を感じるが、しかし次には二人は水中スクーターをレールに沿って思いっきり推し始める。
レールはすぐに終わりを向かえ、開かれたハッチの向こうの暗い海が、飲み込まん様相で眼下に広がる。
しかしすでに勢いに乗った脚は止まらない。
二人はそのまま勢いに任せて水中スクーターを放り出し投下。
そしてハッチの足場を踏み切り、暗闇の海に向けて飛んだ。
「――ッぅ!?」
瞬間、星宇宙は背後で爆音と衝撃を感じる。
「撃墜」。
そんな言葉を瞬時に浮かべ発しながら、しかし次には星宇宙の体は。暗く冷たい海中へと飛び込んでいた――
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