―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》

EPIC

文字の大きさ
上 下
110 / 114
チャプター20:「激突」

20-4:「F-1」

しおりを挟む
 凪美の町上空に、突如として瞬いた謎の閃光。
 その閃光が消失すると同時に、そこから抜け出るように現れたのは、尖ったシルエットが特徴的な、ジェットエンジンを携える航空機であった。
 その機体上面と側面を緑を基調とした迷彩柄で塗装し、底面は水色。そして機首と主翼に記した、日の丸の国籍表示が良く目立っている。
 その航空機は、三菱 F-1戦闘機と呼ばれていた。
 そのF-1戦闘機の、機首に設けられたキャノピーで覆われたコックピット部分。

「――どォなってんだぁ――」

 その内部で、パイロットシートに座す一人の者。パイロット服を身に纏い、パイロットヘルメットを被る人物――すなわちパイロットの口から、独特な声色での一言が零れ出る。

「ヨォ――何事だァッ!?オォラァ――ッ!!」

 そしてパイロットは、若干落としていた視線を上げ、威勢が良いと表現するには、荒々し過ぎる声で発し上げた。
 厳つく、そしてどこか独特な顔立ちをしたそのパイロット。
 彼の名は、推噴すいぶき 起撃きげきと言った。
 彼は、〝日本国航空隊、北部航空方面隊、第14航空団、第1飛行隊〟に所属する、二等空尉階級の、戦闘機パイロットであった。

「あ゛ぁ?」

 その推噴は、コックピットのキャノピー越しに外部へ支援を向け――そして怪訝な声を上げた。
 彼の操るF-1戦闘機は、どういうわけか酷く低い高度を飛んでいた。
 いや、それも安全を考えればあまりよろしい事ではないのだが、問題はそこではない。問題なのは、周辺の環境光景が一変していた事にあった。
 彼と、彼の乗るこのF-1戦闘機は哨戒任務のため、樺太県豊原市に所在する〝豊原基地〟より少し前に飛び立ち、そして洋上に出たはずであった。しかし折に突然発生した閃光に巻き込まれ、気付けば眼下に陸地の広がる、この空に出ていたのだ。
 推噴は操縦桿を操り機体を旋回させ、さらに周辺状況を掌握するべく、視線を走らせる。
 すると眼下には、何やら世界史で見たような作りの、城壁で囲まれた町のような物が存在する。さらに周辺各方を見渡せば、何やら鷹とも鷲とも付かない、それも目測から掃討に大きいと推察できる鳥獣が、無数に飛んでいるではないか。

「オイオイ、マジでどぉなってんだァ?」

 推噴は引き続き、機体を旋回させて周辺を観察しながらも、無線を開く。

「――豊原管制塔、応答しろやぁッ!こちらヘヴィメタル1、ヘイワードォッ――!!」

 そして無線に向けて、あまりに荒々し過ぎる声色で、訴え上げ始めた。



「――それでは井神さん、ご健闘をお祈りしています――」

 そんな一言を最後に、作業服と白衣の人物は不気味な彩色の背景に溶け込み、井神の前より姿を消す。
 そして周囲は元の色彩を取り戻し、世界は再び動き始めた。

「――ッ!」

 井神は顔を顰めながらも、異質な空間から戻った事に、ハッと意識を取り戻す。
 ――ここは草風の村の、空き倉庫を借り受けて運用中である指揮所。
 井神は各所各方への指揮命令に追われていた最中に、突如として不可解な現象に見舞われ、異質な空間へと招かれた。そしてそこで作業服と白衣の人物より、要領の得ない説明のような物を受け、そして今しがた、元の世界――いや異世界に戻されたのであった。

「また、あの人物か――」

 少し面白くなさそうな色を作り、今しがた相対した人物の姿を浮かべる井上。

「井神一曹ッ!」

 しかし考える間もなく、井神を呼ぶ声が上がる。声の主は、指揮所要員の算域だ。

「どうした」
「これを見てください……!」

 返した井神に、算域は急いた様子で、ノートパソコンの画面を促す。その周りでは、小千谷や帆櫛も、何か目を見開き驚いた様子で、画面を注視していた。
 井神もそこに加わり、画面に視線を落とす。
 画面に映るは引き続きの、無人観測機からの町の映像。無人観測機は現在高高度を取り、さらにカメラを最大までズームアウトしているため、映像ウィンドウには町の全形が映り、そして周辺の地形も見えた。そして今は町の上空を、無数の鳥獣が覆っている。
 しかし、その画面上に、異質な物体が映り込んだのはその瞬間であった。

「ッ――今のは!」

 物体はかなりの速度で画面上を飛び抜け、直後には姿を消す。しかし、その間に見えた尖ったシルエットから、それが何であるかは容易に推察することが出来た。

「先程、町の上空で巨大な閃光が瞬いたんですが――その直後に、出現しました」

 横に立つ算域が、今の物体の出現経緯を説明する言葉を紡ぐ。そして同時に、マウス操作で画面上に別のウィンドウを表示させる。それは無人観測からの映像を録画していた者であり、今は一時停止されたワンシーンが映っている。そこに移っていたのは、間違いなく航空機のシルエットであった。

「小千谷二尉」

 井神は、横で画面を注視している小千谷に、尋ねる意図の含まれた声を発する。航空隊隊員である彼に、確認を願う物であった。

「――F-1戦闘機だ、間違いない」

 尋ねられた小千谷は、画面に映る航空機のその正体、名称を発して見せた。

「また、とんでもない物を送り込んで来た――!」

 映像上に移るそれの導き人が、先の作業服と白衣の人物である事は、最早疑うまでもなかった。その事を浮かべ、井神は驚きと皮肉の混じった声を零す。

《――豊原管制塔、応答しろやぁッ!こちらヘヴィメタル1、ヘイワードォッ!!》

 その時、長机に置かれた大型無線機から、怒号が飛び込んで聞こえた。それに、各々の視線が大型無線機を一斉に向く。

「今のは、戦闘機の――」

 予測の言葉を零す井神。
 どうにも戦闘機から発せられた通信を、無人観測機が拾い、流してきたようだ。

《ヌォイッ!!どっか聞いてねェのかァッ!こっちゃ14空団、1飛ィッ!ヘヴィメタル1、ヘイワードォッ!!応答しろやァッ、オ゛ォンッ!!?》

 立て続けに、大型無線機からは怒号が響く。

「ッ!この声!それに14空団、1飛――まさかッ!」

 それに反応したのは、小千谷だ。
 聞こえ来た声に何か思い当たる節があるのか、かれは零しながら、大型無線機に駆け寄りマイクを取る。

「――ヘヴィメタル1、通信を受け取った。確認させてくれ――お前、推噴か!?」
《あ゛ぁん!?そっちは誰じゃいッ!?》

 そして問いかけの声を送る小千谷。それに、相手からは怒号に近い荒々しい声での返答が返って来る。

「俺だ!17-C《チャーリー》で一緒だった小千谷だ!」

 それに対して、小千谷は訴える声を発し返した。

「お知合いですか?」
「あぁ……初期課程の同期だ」

 横から井神が尋ねる声を掛け、小千谷は少し困惑した様子でそれに答える。

《小千谷ぁぁッ?ヨォ、ヨォッ!久しぶりだなぁッ!でぇ、どこにいんだぁッ!?こっちゃおかしなデッケェ鳥共がウヨウヨ飛んでっぞぉッ!!》

 そこへ、再び怒号に近い声が返って来た。



 場所は再び凪美の町上空へ。
 一度町の上空を飛び抜けたF-1戦闘機は、旋回行動を取り、再び町上空への進入経路を取る。眼下周辺を可能な限り観測するため、その速度は失速ギリギリの所まで落としていた。

「マジで、どォなってんだァ?そもそもどこなんだここはァ!?この邪魔っけな鳥共はなんなんだァ!?」
《推噴!今は説明する時間が無い!可能ならば、その町上空の鳥獣達に対応して欲しい!》

 キャノピー越しに周辺眼下に視線を降ろしながらも、荒々しい言葉を引き続き吐き続ける推噴。
 それに対して、応答のあった同期である小千谷より、そんな要請の通信が飛び込んで来た。

「対応ォ?何のこっちゃァ?」

 しかし聞こえ来た要請の、その意図する所等が掴めずに、推噴は訝しむ声を無線に返す。
 そんな一方で、推噴の操るF-1戦闘機は再び町の上空へと侵入。
 ――推噴と彼の乗る機体に、不可解な現象が起こったのはその瞬間であった。

「あ?」

 機体の速度が、突如として落ちた。
 推噴は即座に失速を疑い、対処行動を取ろうとする。――しかし直後に、推噴は事態が全く別のそれである事に気付いた。
 速度計に視線を落せば、その数値に変わりはない。
 速度が落ちた感覚を感じたにも関わらず、機体は依然として、まるで浮力を得て浮かんだように、依然として宙空に身を置き、申し訳程度の緩慢さで前進を続けている。
 そして周囲を見渡せば、町上空に無数に存在していた鳥獣達も、その動きを酷く緩慢な物にしている事が分かった。まるで、スローモーション効果を掛けたかのように。

「今度はあんだァ?ふざけてんのかァ!?どういう――」

 事態に対して荒々しく吐きながら、周囲へ再び視線を送る推噴。しかし、直後に推噴はその言葉を切った。
 良好な視力を要求されるパイロットの中でも、特異なまでに良い視力を持つ、推噴の両眼が。機体が速度を減じた影響で、より鮮明に見えるようになった眼下に、周囲に。
 それを見たから――
 眼下に見えたのは、鳥獣に襲われる町並み。怯え、逃げまどう人々。
 何か爆発があったかのように損壊する建物。そして巻き上げられる人々が見える――
 鳥獣達が人々を襲っている。その嘴に啄まれ、貫かれ、そしてまるで餌のように咥えられ、宙に攫われる人々が見える――
 食い残しのように、鳥獣の口より落下して行く、人の亡骸が見える――
 今まさに泣き叫ぶ子を残し、鳥獣に攫われる母親の姿が見える――
 町全体が、阿鼻叫喚の光景に包まれる光景が、推噴のその眼に、はっきりと焼き付いた。

《さぁ、あなたの選択を見せてください――》

 そして推噴の耳に、異質なそんな問いかけの声が響き聞こえた。

「――ッのヤロウ――テメェ……!――ヤロウテメェァ――ッ!!」

 光景が、推噴の怒りに火を付けた――
 そしてF-1戦闘機は元の速度を、元の世界を取り戻す。
 それが、合図であった――



 凪美の町。立ち並ぶ民家家屋の一つ。
 その建物もまた、エルフ達の操るグルフィの放った風魔法により、損壊していた。二階部分が損壊し、大穴が開いている。
 その内、二階の一室には、損壊崩落により瓦礫が降り積もっている。
 その瓦礫の下に、動く人影があった。

「……ぐ……ッ」
「に、兄ちゃん……!」

 それは二人の男児、歳の離れた兄弟であった。
 兄が、弟を庇う形で瓦礫の下敷きになっている。
 いつもの朝を迎えたはずの兄弟は、しかし襲った住まいの崩落により、この悲劇に見舞われていた。

「兄ちゃん!大丈夫!?」

 弟はまだ小さな体である事が幸いし、なんとか瓦礫と兄の身体を抜け出す。しかし兄の方は瓦礫に脚を挟まれ、抜け出すことが出来ないでいた。
 弟は必死に兄に呼びかけ、その体を引っ張るが、まだ幼い彼の力では、兄を救う事は叶わない。
 ――そんな兄弟を、何か大きな物の影が覆った。

「……ぇ……」

 弟は視線を上げる。
 屋根から壁まで大きく崩落した、家屋一室の開口部。その向こうに、巨大な鳥獣の、羽ばたき滞空する姿があった。堅牢な嘴の切っ先が、鋭い猛禽類の眼光が、兄弟を睨み降ろしている。

「フン、人間のオスの兄弟か」

 そして鳥獣、グルフィの背から、声が聞こえ降りて来る。
 グルフィの背には、扇情的な格好をしたエルフの女が跨っていた。長身で端麗な顔をしたエルフの女。しかし反して発されたその台詞は嫌悪感を露わにしたものであり、そしてその眼は冷たい色で兄弟を見降ろしている。

「せめて一思いに、潰してやる」

 そして聞こえ来る、そんな一言。

「……ぁ……」

 幼い弟にも、それが自分達に危害を加える存在である事は、嫌でも分かった。

「やれ」

 エルフの女は発し、そしてグルフィに繋がる手綱を引く。主のその命に応じ、グルフィはその嘴をかっぴらき、雄たけびを上げる。そして両翼を大きく振るい上げ、攻撃の物であろう挙動を見せた――


 ――その雄叫びを上回る、唸り声のような物が響いたのはその瞬間であった。


 ボォォ――という何かが吐き出される、あるいは振動するような音。
 それが聞こえ来たと同時に、驚くべき光景が弟の目の前で巻き起こっていた。

「――ぇ?」

 今まさに自分達を襲おうとしていた鳥獣グルフィの、その体に数多の大穴が空き、血が飛び散っていたのだ。
 そして打たれるようにして落下して行くグルフィ。その後ろには、その身が真っ二つに千切れ、そして落鳥してゆくエルフの女の姿も見える。
 その直後。轟音が轟き、そして何か鏃のようなシルエットが、真上上空を凄まじい速度で飛び抜けて行く姿が、崩壊部より弟の眼に映った。

「ぁ――」

 自然と、弟には今飛び抜けて行ったそれが、自身を救ってくれた存在なのだという事が理解できた。

「――ラロウ君、ユエ君!無事かッ!」

 そこへ、背後一室の扉が勢いよく開かれ、警備隊の警備兵が言葉と共に踏み込んで来た。兄弟を知る警備兵が、兄弟の住まいが襲われる様子を目撃し、駆け付けたのだ。
 警備兵達は一室内の惨状に目を剥き、兄弟の救助作業に飛びつく様に取り掛かる。
 しかしそんな中、弟は兄の手を握りながらも、今しがたの飛行物体が去った方向を、見つめていた。



「――一機撃墜、一機撃墜ッ!!」

 F-1戦闘機のコックピット内で、推噴の威勢の良い声が響く。
 眼下の惨劇を前に、推噴は町を覆う鳥獣の群れを、排除する事を決断。
 そして今しがた、民家を襲おうとする様子を見せていた一匹の鳥獣を、F-1戦闘機がその機首に搭載装備する、JM61A1 20㎜バルカン砲による射撃を持って、排除撃墜して見せた。

「ヘイワード、エンゲージッ。ヘイワード、エンゲージッ!デケェ鳥共と交戦するッ!!」

 無線に向けて張り上げる推噴。
 その間にF-1戦闘機は再び町の上空を通過。
 推噴は一度町より離脱し距離を取り、それから操縦桿を横に倒し、そして引き、機体の旋回を始める。

「ウヨウヨいやがらァッ!」

 視線を上げて機体の向きに先んじて、町の方を見る推噴。町の上空には、大型鳥獣が無数に飛び交っている。その内の一点に、特に鳥獣達が固まり飛んでいる箇所を見つけた。
 程なくして機体は旋回行動を終え、推噴の視線の向きに、機体の向き追いつき同一方向を向く。
 先に当てを付けた鳥獣の群れが、推噴の前に設置されている照準器の内に収まる。
 速度を失速寸前まで落としているとは言え、時速100kmを優に超えている機体は、瞬く間にその鳥獣の群れへと距離を詰める。
 そして推噴は、操縦桿のトリガーを引いた。
 パイロットの攻撃の意思。それを受け取り、JM61A1 20㎜バルカン砲は再び唸り声を上げ、20㎜機関砲弾を無数に吐き出した。
 照準に収まった鳥獣の群れは、次の瞬間にその向こうで穴だらけになり、弾け飛び蹴散らされた。
 一瞬後には機体はその群れの元へ到達。墜ちてゆく鳥獣の群れの間を、掻き分け散らかすように飛び抜けた。

「撃墜ッ!撃墜ッ!」

 再び撃墜の報を張り上げる推噴。

「外道な事しやがって、カス共ォ!!よく分かんねぇが、墜ちやがれオォラァッ!!」

 そして発し上げ、再進入するべく再び操縦桿を倒す――



 別方を飛んでいた何匹かの鳥獣グルフィ達、正確にはそれを操るエルフ達が、F-1を明確な敵と認識し、追撃行動を仕掛け始める。
 しかし彼女達が、F-1に追いつくことは到底かなわなかった。彼女達の操るグルフィが追撃を始めた時には、F-1は町の遥か向こうに飛び去り、そして旋回行動を始めていた。
 大きく旋回を終えたF-1は、再び機首を町へと向ける。そして瞬く間に接近。
 エルフ達がそのあまりの早さに驚愕している間に、その機首のJM61A1 20㎜バルカン砲から再度、20mm機関砲弾が放たれ、エルフとグルフィ達をまるで殴るように襲った。
 魔法始め攻撃を放つ暇もなく、穴だらけになり千切れ飛ぶエルフとグルフィ達。
 そして墜ちてゆく彼女達の上空を、F-1が轟音を轟かせて飛び抜けた。



「撃墜ッ!撃墜だオラァッ!」

 町上空を飛び抜けたF-1のコックピット内で、またも推噴が声を張り上げる。

《推噴ッ!無闇に突っ込むなッ!》

 しかしそんな所へ、無線より張り上げられた声を届き響いた。それは指揮所に身を置く、小千谷からの声だ。

《たしかに対応を要請したが、飛行が際ど過ぎるッ!安全高度を保てッ、もっと慎重にやれッ!》

 届き聞こえたのは、警告の言葉。
 小千谷の言葉通り、推噴の行う飛行は、かなり荒々しく際どい物であった。小千谷はそれを見咎め、警告の言葉を送って来たのだ。
 だが、当の推噴にそれを聞き入れる様子はまるで無かった。
 無線からの警告をそっちのけにして、推噴は操縦桿を操り機体を旋回。同時に視線を上げて、町の上空に視線を送る。
 そして推噴の眼は、町の上空の比較的高い高度を飛ぶ、全幅10mクラスの大型鳥獣を見止めた。

「えっらそうに飛びやがってッ!舐めてんのかオラァッ!?」

 その悠々と飛ぶ姿が鼻に着いたのか、そんな言葉を吐く推噴。
 そして旋回を終えた機体の機首を、その大型鳥獣に向け、その巨体を照準器内に収めた。

「――チィッ、ロックオンはできねぇかァッ!」

 しかし、そこで推噴は吐き捨てる。
 推噴の操るF-1戦闘機は、主翼に90式空対空誘導弾 AAM-3を4発。99式空対空誘導弾 AAM-4を2発。計6発のミサイルを、搭載装備していた。
 大型鳥獣の巨体に対してバルカン砲では不足を感じた推噴は、その搭載するミサイルの内の、90式空対空誘導弾 AAM-3の使用をまず試みた。
 だが、赤外線誘導方式であるAAM-3では、大型鳥獣をロックオンする事はできなかった。

「んだったら、こっちだァッ!」

 そこで推噴は、99式空対空誘導弾 AAM-4を、操縦系を操作し選択。発射母機からの指令誘導であるAAM-4であれば、巨大鳥獣を狙えるはずであった。
 そして推噴は、操縦桿のミサイル射撃ボタンを、力強く押した。
 瞬間、主翼下に下がり搭載されていたAAM-4が、搭載ラックを離れて投下される。そして直後、AAM-4の固体燃料ロケットが点火。AAM-4は一気に加速し、母機であるF-1の元を飛び立った。

「フォぉックスワンッ!フォックスワンだァ、オラァッ!!」

 声を張り上げながらも、推噴は照準器内に巨大鳥獣を収め続け、AAM-4の誘導を行う。コックピット内には、誘導中を示す電子音が一定間隔で響く。
 AAM-4は噴進の跡を宙空に描きながら、瞬く間に町の上空の大型鳥獣へと接近。
 ――そして瞬間に、直撃。
 大型鳥獣に身の元で、爆発が巻き起こった。

「おォっしゃァッ!!命中ッ!!」

 歓喜の声を張り上げる推噴。
 巨大鳥獣は、ミサイル直撃により致命傷を負い、滞空を続ける事が叶わなくなり、その頭を真下に向けて、真っ逆さまに落下して行く。

「ざぁまぁみやがれッ!!偉っそぉな鳥スケがぁッッ!!」

 その真上を、F-1戦闘機が轟音を轟かせて飛び抜けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

装甲列車、異世界へ ―陸上自衛隊〝建設隊〟 異界の軌道を行く旅路―

EPIC
ファンタジー
建設隊――陸上自衛隊にて編制運用される、鉄道運用部隊。 そしてその世界の陸上自衛隊 建設隊は、旧式ながらも装甲列車を保有運用していた。 そんな建設隊は、何の因果か巡り合わせか――異世界の地を新たな任務作戦先とすることになる―― 陸上自衛隊が装甲列車で異世界を旅する作戦記録――開始。 注意)「どんと来い超常現象」な方針で、自衛隊側も超技術の恩恵を受けてたり、めっちゃ強い隊員の人とか出てきます。まじめな現代軍隊inファンタジーを期待すると盛大に肩透かしを食らいます。ハジケる覚悟をしろ。 ・「異世界を――装甲列車で冒険したいですッ!」、そんな欲望のままに開始した作品です。 ・現実的な多々の問題点とかぶん投げて、勢いと雰囲気で乗り切ります。 ・作者は鉄道関係に関しては完全な素人です。 ・自衛隊の名称をお借りしていますが、装甲列車が出てくる時点で現実とは異なる組織です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

銀河英雄戦艦アトランテスノヴァ

マサノブ
SF
日本が地球の盟主となった世界に 宇宙から強力な侵略者が攻めてきた、 此は一隻の宇宙戦艦がやがて銀河の英雄戦艦と 呼ばれる迄の奇跡の物語である。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜

紫 和春
SF
二〇二〇年の現代から、一九三六年の世界に転生した八人の若者たち。彼らはスマートフォンでつながっている。 第二次世界大戦直前の緊張感が高まった世界で、彼ら彼女らはどのように歴史を改変していくのか。

処理中です...