―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》

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チャプター10:「Intrigue&Irregular」

10-6:「Hunt Complete&Radical Chainsaw」

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「やりゃぁがったッ!」

 小形トラックの車上で、竹泉の荒げた声が響く。
 指揮通信車と馬車の激突の様子は、それを後方より追っていた小型トラック上からも、はっきりと見えた。
    指揮通信車に激突された馬車は一瞬宙に浮かび、その後に叩き付けられるように横転。さらに速度の弱まらない指揮通信車に再び追突され、草むらの上を荒々しく押してずられる。
 やがて指揮通信車側がブレーキを掛けたのだろう、速度の減退を見せ、両者は衝突地点から十数メートルも先の地点で、ようやく停止した。

「ヘイ!ありゃぁ馬車ん中、洗濯機状態じゃねぇかぁッ?」
「ヘタすりゃ中の奴、おっ死んだんじゃねぇのかぁ?」

 小型トラックの後席荷台で、多気投と竹泉が、巻き起こった事態を前にそれぞれ懸念の言葉を上げる。

《――ジャンカー4、今の見えていたか?》
「えぇ、大層派手な演出だ」

 そこへ、インカムより長沼の声が飛び込んで来た。
 車上の各員が驚く様子を見せる中、唯一変わらぬ様子でいた制刻が、通信に軽口混じりの淡々とした声で返す。

《あちらの現場は、私と1分隊で対応する。そちらは予定道理、後方の敵を排除してくれ》
「了解。――聞いたな?後ろにバラついてる奴等を、黙らせるぞ」

 続き長沼より聞こえ届く説明と指示。それを聞き了解の返事を返した制刻は、それから車上の各員へ向けて振り向き、指示の声を発した。
    商議会の組んでいた隊列の後方、轍の両脇には、散会した警備兵達の姿が見える。
    彼等は、隊列に向けて接近してきた小型トラックや高機動車に対応しようと、散会し行動に移る最中なのであったが、しかし今は皆愛馬の脚を止めて、巻き起こった事態に目を奪われている様子であった。

「エヴリヴァディ、ポカーン状態みてぇだなぁ」
「いや――反応確認」

 一様に呆然としている警備兵達の姿に、多気投は茶化すような声を上げる。しかし直後、策頼がそれを否定。彼の眼は、搭載のMINIMI軽機の照準の向こうに、動きを見せる一騎の軽騎警備兵を見た。小型トラックのエンジン音を聞きつけ、そして近寄る小型トラックに気付いたようだった。
 その軽騎警備兵は少し戸惑う様子を見せたが、しかしすぐに馬上で、おそらくクロスボウであろう得物を構える様子を見せる。
 しかし、それよりも速く策頼は動いた。
 策頼は、すでに旋回照準を付けていたMINIMI軽機の引き金に力を込め、そして発砲音と共に十数発分の5.56㎜弾が撃ち出された。
    放たれた5.56mm弾の群れは、一瞬後には軽騎警備兵に届いて襲い、内の数発が警備兵と愛馬の身を貫いた。
 馬は痛ましく叫び上げた後に崩れ、警備兵はその手のクロスボウより矢を放つ事無く、馬上より投げ出される。そして警備兵も地面に落ち、人馬とも沈黙する様子を見せた。

「一騎沈黙」

 相手の沈黙を確認し、端的に報告の声を上げる策頼。

「剱、適当な所で止めろ」
「あぁ……!」

 報告を聞き、そして制刻は鳳藤に小型トラックの停車を指示する。それを受け鳳藤は、周辺に散会する警備兵達より少し距離を離した位置で、小型トラックを停車させた。

「おぉし、行くぞ」

 停車と同時に制刻は、各員へ降車展開を促す。
 そして、車輛搭載のMINIMI軽機を担当する策頼以外の制刻等四名は、小型トラック上より飛び降り、駆け出した

「剱は俺とだ。お前等は、左っ側に広がれ」

 制刻は掛けながら指示を飛ばす。四名は二手に割れて広がり、それぞれが進行方向に適当な身を隠せる地形、及び遮蔽物を見つける。
 そして竹泉と多気投は、先程軽機の5.56mm弾に倒された馬の亡骸に。制刻と鳳藤は草原の中にできた小さな窪地にそれぞれ飛び込み、身を隠した。

「うェッ、チックショウッ!」
「アーォッ!お馬ちゃぁんッ!」

 竹泉と多気投が身を隠した馬の亡骸は、流れ出た血で汚れ、さらには血溜まりが広がっていた。その状況光景に対して上げた苦く渋い声が、制刻等の元にも聞こえ届く。

「他のが、来るぞ」

 しかし、その事を気にする余裕など無い事を訴えるように、制刻が声を上げる。
 周辺に展開していた他の警備兵達も、制刻等の接近に気付いたのであろう。数騎の軽騎警備兵が、行動を始めこちらへ向かい走り出す様子を見せた。

「やれ」

 その軽騎警備兵に対する行動を、制刻は端的に支持。同時に、各所各員から発砲が開始。
 撃ち出された各銃火から早速命中弾が生まれ、端に位置する一騎の軽騎警備兵が、弾を受けて落馬する姿を見せた。

「まず一つ」

 一体の沈黙を確認し、端的に発する制刻。
 続け攻撃を再開しようとしたが、その他の軽騎警備兵が、それまでの直進の行動から、違う動きを見せ始めたのはその時であった。

「ホワーイ?」

 見えた光景に、多気投から訝しむ声が上がる。
 軽騎警備兵達はそれぞれの愛馬を操り、ジグザグ行動取りながらの前進を試み始めたのだ。

「蛇行……回避行動を取りながら来るぞ!」
「俺等の攻撃の正体に、察しをつけたようだな」

 相手の動きを見た鳳藤が発し上げ、制刻が分析の言葉を発する。

「面倒を――!」

 一方で、竹泉は悪態を吐き上げながら、馬の亡骸の上で構えた小銃の照準内に、一騎の軽騎警備兵を除く。
 そして3点制限点射で二度発報。しかし撃ち出された弾は、蛇行行動を取る軽騎警備兵の横を掠め、命中弾は無かった。

「あぁウゼェ、チョコマカと――」
「――竹泉、身を隠せッ!」

 回避され射撃が不発に終わった事に、忌々しく声を荒げかけた鳳藤。しかし時、鳳藤から竹泉に向けて、警告の叫び声が飛ぶ。

「ッ――!?」

 それを聞くと同時に竹泉は、視線の先、迫る軽騎警備兵の内の一騎が、何か馬上で腕を翳し上げている姿を見る。
 見た瞬間、それが何かを意味する考える前に、直感で危機を感じ取り、反射で馬の亡骸に身を隠す。
 ――〝それ〟が襲い来たのはその直後であった。

「ヅッ!?」
「ウワァオッ!?」

 竹泉等を襲ったのは、身を隠した馬の亡骸越しに伝わりくる、いくつもの何かを強く叩くような振動。そして同時に、竹泉等の頭上を同様にいくつもの何かが掠めて飛んで行く。

「ッ!なんだって――……マジかよ……ッ!」

 それが収まり、竹泉は悪態混じりに馬の亡骸より頭を出す。しかしそこで目に映った物に、竹泉は言葉を切り替えて目を剥いた。
 飛び込んで来たのは、馬の亡骸に突き刺さった、 長さ20cm程の針状の鉱石の山。20本近いそれ等は、馬の亡骸の表面を、まるで剣山のように変えていた。

《4-3、策頼。攻撃を受けました》

 そこへさらに、インカムより策頼の声による報告が聞こえ来る。襲い来た鉱石の針は、後方の小型トラックにも流れたらしい。

「またも鋼の、雨あられか。オメェら、ハリネズミにならねぇよう、気ぃつけろ」
《フワっとした警告はやめろや!具体策をくれ、具体策をぉ》

 少し呆れ混じりに呟き、そしてインカムで各員へ注意喚起の声を送る制刻。しかしそれに、竹泉から訴えの声が返される。

「向こうの攻撃には、予備動作があるようだ。良く観察して、隙を狙え」
《あぁ、へいへい。参考にしますぅ》

 訴えに制刻は、対応策を説く。それに対して竹泉からはいい加減な返事が返された。

「剱、今のヤツをやる。折り返すタイミングを狙って、発砲だ」
「あぁ……」

 通信を終えると、制刻は鳳藤に攻撃行動を行う旨を告げる。狙うは、先に鉱石の魔法攻撃を放ってきた一騎。
 両名はそれぞれの小銃を窪地の端より突き出し構え、蛇行行動を行う軽騎警備兵を、その向こうに見る。

「予測進路を狙え――今だ」

 狙うは、相手が次に身を置くであろう空間――その軽騎警備兵が蛇行の折り返しに入った瞬間、二人は引き金を引いた。
 安全装置が単射に合わさった状態で、制刻は3回、鳳藤は2回発砲。
 軽騎警備兵の予測進路上に撃ち込まれた計5発。内の3発が、その進路上にまるで自ら当たりに来るように身を晒した軽騎警備兵に、見事命中。
 警備兵は馬上より打ち飛ばされ、地面に投げ出されて沈黙した。

「一体排除だ!」

 敵の無力化の旨を鳳藤が発する。両名が別方向に、また別の軽騎警備兵の動きを見たのは、その直後だ。
 その手にはクロスボウと思しき物が見え、そして次の瞬間に放たれた矢が、制刻等の元へと襲い来た。

「いッ!」

 飛来した矢は、制刻等が身を隠す窪地の、すぐ手前に突き刺さった。
 幸い命中とはならなかったが、襲い来たそれに鳳藤は顔を伏せて、困惑の声を零す。

「おもしろくねぇな」

 一方の制刻は、手前につき刺さった矢に視線を落としつつ、淡々と吐き捨てる。そして小銃を構え直して、矢を放ってきた軽騎警備兵を狙おうとした。

「ッ!左方ッ!」

 だがそれよりも前に、鳳藤が声を発し上げる。制刻がその言葉を受けて示された方へ視線を向ければ、その先に腕を翳し上げる動きを見せる、また別の軽騎警備兵の姿
見止める。

「チッ」

 制刻の舌打ち。それと同時に制刻と鳳藤は、反射的に窪地に伏せて再び身を隠す。――瞬間、多数の鉱石針が飛来。それ等は制刻等の頭上を、まるで機関銃の銃撃のごとく勢いで掠めて行った。

「……ッ!魔法現象使用者は、複数いるようだぞ……ッ!」

 襲い来た攻撃に鳳藤は顔を顰め、そして魔法使用者の複数の存在が確認された事に、苦い声でその旨を発する。

「愉快じゃねぇな――殺るぞ」

 対する制刻は端的に、その魔法使用者を排除する旨を発する。
 そして制刻と鳳藤はそれぞれ小銃を突き出し構え直し、その照準内に、魔法攻撃を放ってきた軽騎警備兵を覗く。
 しかし直後、制刻等が発砲するよりも前に、蛇行行動の折り返しに入っていたその軽騎警備兵は、瞬間馬上で何かに打たれるように体勢を崩した。

「ウォーらぃッ!ゲボ吐き戻すまで食らいやがれッ!フィーウィーッ!」

 同時に制刻等の側方から、陽気で高らかな声が聞こえ来る。その主は他でも無い多気投。
 彼の扱うMINIMI軽機より放たれた銃火が、軽騎警備兵を襲ったのだ。

「アイツか」

 制刻は多気投の方を一瞥して呟き、そして視線を警備兵へ戻す。
 立て続けの被弾により警備兵は、一瞬の内に何度もその身を弾かれもんどり打ち、そして馬上より飛ばされ地面に落ちた。

「三つ目だな」

 敵方のさらなる沈黙に、それを数え呟く制刻。
 その制刻等の視線の先に、またも別の軽騎警備兵が、視界端より駆け現れる。その手にはクロスボウらしき物の構えられる様子も見える。

「させねぇ」

 しかし今度は、制刻等の行動の方が早かった。制刻等は構えていた小銃を即座に再照準。そして引き金を数度引き、銃弾を軽機警備兵に向けて叩き込んだ。
 銃火は軽騎警備兵の馬と、馬上の警備兵の双方に命中。馬は崩れて激しく転倒。そして警備兵は馬上より放り出され、運の悪い事に、その先にあった剥き出しの岩場に頭より落下。頭部を激しく強打する様子を見せ、そして沈黙した。

「見たか?岩場に顔から言ったぞ……!」
「ああ、今度は愉快だな」

 敵方の迎えた痛々しい末路に鳳藤は驚きの声を上げ、制刻は台詞に反した淡々とした声色で呟いた。



「オイ自由ッ!真正面、そっちに突っ込んでくぞぉッ!」

 側方より警告の声が聞こえ来たのは、その時であった。
 声の主は竹泉。その言葉を受け、制刻と鳳藤は示された正面方向へ視線を向ける。そして視線の先に2騎の騎兵の姿を見止めた。

「あれは――」

 鳳藤はそこで言葉を零す。その迫る騎兵達は、これまでとは様子が違っていた。
 それまでの軽装であった軽騎警備兵とは違い、その姿は人馬共に堅牢そうな装甲装備に包まれている。警備隊の重騎兵――重装警騎だ。
 その重装警騎は、それまでの軽騎警備兵のような蛇行による回避行動は取らず、真っ直ぐに制刻等の方向へと向かって来ていた。

「踏み込んでくる気かッ!」
「ようだな。止めるぞ」

 制刻が発すると同時に、両名は発砲を開始。小銃より撃ち出された5.56㎜弾が、重装警騎の内の片方へと飛ぶ。しかし、直後に発生し聞こえ来たのは、いくつかの乾いた金属の衝突音。そして重装警騎は変わらず動き続けている。撃ち込まれた弾は重装警騎の纏う鎧に阻まれ、有効弾を出してはいなかったのだ。

「ッ……弾かれたのか!?」

 起こった事態を理解し、驚きの混じる声を上げる鳳藤。

「ストップだぜ、ウォオイッ!」

 そこへ独特の大声が。そして同時に連続的な銃器の射撃音と、三点制限点射の特徴的な射撃音が上がり聞こえ来る。見れば側方の竹泉、多気投等の側から、それぞれの装備火器による銃撃が行われている。
 しかし重装警騎達に向け注がれたそれらの銃火は、彼等の纏う鎧や、その手に持たれ構えられた大きな盾に阻まれ防がれ、決定的なダメージを生み出してはいなかった。
 そして銃撃を受けながらも、重装警騎達はその突撃の姿勢を揺らがせる事無く、制刻等の目と鼻の先まで距離を詰める。

「まずい――」

 迫る重装警騎の巨体と迫力。その姿に鳳藤は目を剥き、声を零す。

「チッ――飛べ!」

 同時に舌打ちを打ち、そして発し上げた。
 瞬発的に身を起こし、そして地面を蹴り、それぞれ左右に飛んで窪地を飛び出す制刻と鳳藤。
 直後、それまで両名が居た窪地を、重装警騎の内の一騎が強襲。その巨体は荒々しくその場を踏み、そして警備兵はその手の件を突き出し振るいながら、駆け抜けて行った。

「……ッ!危なかった!」
「舐めた真似してくれる」

 幸い、振るわれた剣は空を切り、両者に被害は無かった。
 それぞれ飛び退き退避した先で、制刻と鳳藤は各々言葉を上げながら、抜けて行った重装警騎を振り向き視線で追いかける。制刻等の展開範囲の内側へと踏み込んだ2騎の重装警騎は、速度を維持しつつ旋回する姿を見せている。内側から、こちらの態勢を撹乱する腹積もりらしい。
 そんな重装警騎達に向けて、各方より銃火が注がれ襲う。竹泉や多気投、そして後方の小型トラックでMINIMI軽機を操る策頼からの攻撃だ。各火器を動かし、旋回させて駆ける重装警騎を追いかけ照準、銃弾を注ぎ浴びせる各員。しかしそれ等はことごとく重装警騎の纏う鎧や盾に阻まれ、ダメージを生み出してはいなかった。
 その間に、重装警騎達は旋回行動を終える。2騎は散会し二手に割れていた。

「ッ!」

 その内の片方は、反転し制刻と鳳藤の方へ再びその進路を向けている。
 それを見止めた鳳藤はその場で立膝の姿勢を取り、小銃を構えて重装警騎に発砲、接近阻止を試みる。しかし虚しくもその銃撃もまた、厚い装甲に阻まれ有効打とはならない。
 そし重装警騎はあっという間に接近肉薄。馬の巨体と、馬上の警備兵が振るった剣が、再び駆け抜け両名を襲った。

「うぁッ!?」
「っとぉ」

 鳳藤は叫びながら飛び退き、吶喊を逃れる。一方の制刻は、今度は最低限場所を動かし身を捻り、容易い様子で攻撃を回避して見せる。

「ファーーオッ!?」
「チキショウがぁッ!」

 そこへ数秒の差で、側方より驚きと悪態の声が響き聞こえ来た。声を辿り見れば、その先に竹泉と多気投の、それぞれ飛び退く様子が見える。そしてその向こうには、走り去る重装警騎の姿。割れた2騎の内のもう片方は、竹泉等の方への襲撃を敢行したようだ。

「ヘェイッ!ちょいとオモシロクねぇぜぇッ!」
「ふっざけやがってッ!」

 幸い無事であった竹泉等から、文句や悪態の声が張り上げられ聞こえ来る。

「もっとガツンとした火力がいるぜ、オイッ!」
《他隊に火力支援要請を》

 そして竹泉から具申の声が、インカム越しには策頼からの進言の声が届き、各員の声が錯綜する。

「焦るな。他の隊も役割に手いっぱいだ。俺等だけで、どうにかはっ倒す」

 しかし制刻はその各方に向けて、そんな旨の言葉を発し促した。

「余裕ぶっこいてる場合かよ!?」
「竹泉。オメェはハチヨン用意しとけ」

 竹泉からは苦言を呈する言葉が寄越されたが、制刻はそれに対して、無反動砲を用意する要請だけを返す。

「おい!また来るぞッ!」

 そこへ横から鳳藤の声が飛ぶ。彼女の視線を追えば、先程抜けて行った重装警騎が再度の旋回反転を終え、こちらへ迫る姿が見えた。

「くッ!」

 苦々しい声を零しながら、鳳藤は迫る重装警騎に向けて小銃を構え向ける。

「やめとけ。意味がねぇようだ」

 しかし制刻がそう発し、鳳藤の発砲を差し止めた。

「だからって――じゃあ、どうする!?」

 射撃を止められた鳳藤は、迫る重装警騎を睨みながら、焦る声で問いかける。

「しゃぁねぇ。ちょいと億劫だが――やるか」
「は――?」

 問いかけに対して、制刻はそんな言葉を返した。しかしその意図が読めず、鳳藤はやや呆けた声を上げる。
 そんな鳳藤をよそに、制刻は動きを見せた。数歩歩んで鳳藤の前に出ると、そこ場に立ち構える制刻。そこは位置関係的に、迫る重装警騎の進路上――真正面だ。

「え……お前、まさか――!」
「ちょいと避けてろ」

 そこで制刻の動きの意図を察し、鳳藤は目を剥き声を上げる。しかし鳳藤のその声を遮るように、制刻は視線を前方に向けたまま、促す言葉だけを鳳藤へ掛ける。
 その間にも重装警騎は距離を詰める。立ち構えた制刻を見止め標的と定めたのか、真っ直ぐにこちらへと向かって来た重装警騎は、ついには制刻の直前に迫る。

「ぬぉい自由ッ!?」

 回避の様子も見せない制刻の姿に、そこで竹泉からも声が上がる。
 装甲で覆われた馬の巨体が、自動車並みの速度で制刻へと突っ込んだのはそれと同時。――そして、鈍い衝突音が響き上がった。
 その様子を見ていた竹泉等、そして警備兵達の誰もが、その音が制刻が重装警騎に跳ね飛ばされた音である事を想像し、覚悟あるいは確信した。

「――ッ!?」
「――はぁッ!?」

 しかし直後に、各々はまったく別の理由で驚き、そして目を剥いた。
 各々の視線の先には、依然として立ち構え、健在である制刻の姿が見える。

「――よ。っとぉ」

 一言呟き零す様子を見せる制刻。
 そして同時に各員の眼に飛び込んで来たのは、制刻に〝押し留められた〟馬の巨体であった。
 制刻は片腕を翳し上げ、馬の首と胴の境目付近を掴み、馬のその巨体を悠々とした姿勢で押し留めていた。それまで出していた速度勢いを強制的に、そして完全に止め殺され、馬はその体を制刻の片腕に持ち上げられて、宙に浮いている。
 加えて見れば、馬上には騎手である警備兵の姿が無い。視線を移せば宙空に、突然勢いを殺され失った馬上より放り投げ出され、放物線を描いて舞う騎手の姿が見えた。そして彼は次にはその先の地面に叩き付けられ、纏う鎧のぶつかる音を響かせた。

「硬ぇの一体、無力化だ」

 制刻は端的に発しながらも、持ち上げられ大きく身悶えしている馬の体を、なんともない軽々とした様子で支えている。
 常識で考えれば、人の何倍もの体重と速度を持つ馬の突進を、人一人が受け止められる物では到底無い。
 しかし、制刻は常識の外れそれを成して見せた。

「で、続くか」

 そんな制刻は、呟きながら視線を移す。
 見れば先より、もう一騎の重装警騎がすぐ側まで走り迫っていた。制刻等に向けて、2騎揃っての立て続けの攻撃を行う算段なのであろう。
 馬上の警備兵の手には、構えられた剣。そして愛馬が間合いに踏み込むと同時に、警備兵はそれを振るった。

「おぉう――」

 しかし、制刻はそれを、先の馬を片手に掴み支えたまま最低限かつ軽やかな動きで回避して見せた。振るわれた剣は空しく空を切り、制刻と重装警騎の位置は交差する。

「――らっ、と」

 瞬間、制刻は掴んでいた馬の体を、おもいっきりぶん回した。
 その軌道の先には、馬上の警備兵の体。そして馬の巨体は警備兵の体を襲い直撃。馬の体重は警備兵の首を圧して折り、微かな悲鳴のような音が零れる。そして絶命した警備兵は、そのまま襲い来た馬の巨体に襲われ、跨る愛馬に置いて行かれ馬上より落下。沈黙した。

「2体目、沈黙だ」

 二騎目の無力化を完了した旨を呟く制刻。
 そして制刻は、未だ掴み上げられ手の上で大きく身を捩る馬を、少し荒い手つきながらも放って降ろし、解放してやる。
 馬は少しふらつき迷う様子を見せた後に、あてどなく逃げ去って行った。
 それを一瞥した後に、制刻は身を翻して歩き出す。
 その先に見えるは、先程馬上より放り投げ出され、地面に落ちた警備兵。ダメージは少なくない様子の体で、しかしまだ戦う意思はあるのか、這い進みその先に落ちた剣に手を伸ばそうとしていた。

「よぉ」

 しかし、その行動は阻まれた。
 制刻はその警備兵の傍に踏み込むと、一言を発すると同時に、警備兵の体側に横蹴りを加えた。それは軽めの勢いであったが、しかし纏う鎧含め中々の体躯と重量を持つ警備兵の体を、易々と崩して無理やり仰向けにさせる。
 突然の出来事に、警備兵は鎧越しにも驚きの色を見せる。その警備兵に対して、制刻は間髪入れずに、頭部目がけて脚を踏み下ろした。

「コぇッ――」

 制刻の脚が叩き込まれ、ヘルムに覆われた警備兵の頭は曲がってはならない角度を向き、ヘルム越しに掠れた悲鳴が響いた。そして警備兵の力は支える力を失い、地面に沈んで動かなくなる。絶命し、沈黙した証であった。

「悪く思うな」

 止めを刺し、無力化した警備兵の亡骸に向けて、制刻は一言発する。

「――怪物め……!」

 そして、その制刻の背後で、鳳藤がそんな言葉を上げた。
 鳳藤に関しては、制刻のその身に備える常識外れのフィジカルについては知っていた。その上で、この結果も想像の範疇内では一応あったが、しかしそれでも驚愕に値する目の前の光景に、彼女はおもわずそんな一言を零したのであった。

「これで全部のようだな――オメェ等、問題ねぇか?」

 制刻は聞こえ来た鳳藤のその声には取り合わずに、周囲へと視線を走らせ、近辺にそれ以上攻撃を仕掛けて来る敵の姿が無い事を確認。そしてインカムを用いて、各員に尋ねる言葉を送る。

《問題ありません》

 策頼からは異常の無い旨の言葉が返って来る。

「あぁ、こっちもダイジョーブだずぇ!しっかし――スゲェ事したなぁ!」
「一体全体おめーさんってヤツはどーなってんだ!?」

 そして、多気投と竹泉等の方向からは、張り上げられた声が返されて来る。
 それは、制刻が重装警騎達を相手に見せた一連の行動に対する、呆れにも似た驚きの言葉であった。

「おぉし、そんじゃ再編成だ。ふっとんだ馬車んトコに、応援に向かうぞ」

 しかし制刻は尋ねる言葉には答えずに、これよりの行動を説明する言葉を発する。

「剱、行くぞ」

 そして背後の鳳藤に促し、歩き始める。

「あ、あぁ――」

 鳳藤はそれに戸惑いつつも答え、制刻を追った。



 時系列は、指揮通信車と馬車の衝突直後まで戻る。
 馬車と衝突した指揮通信車は、馬車を少しの間荒々しく押した後に、ようやくその速度を落して停車した。

「ヅッ……皆、無事か!?」

 停車した指揮通信車に車上で、矢万が搭乗する各員に向けて、安否確認の言葉を発する。

「痛……無事ですが――今のは何です!?」
「対象の馬車と衝突したんだ!タイミングの悪さが重なってな!」

 問いかけの言葉に、後部隊員用スペースの威末から、返答と状況の説明を求める声が返る。それに矢万は、荒く苦々しい色の声で回答する。

《ハシント応答しろ!大丈夫か?》

 そこへ矢万始め各員の耳に、インカム越しに長沼の声が飛び込み聞こえた、

「ハシント、乗員は皆無事です。ですが……」

 聞こえ来た尋ねる声に、矢万は無事である旨を返し、同時に目と鼻の先で横転している馬車の姿に目を落とす。

「……拘束対象の方は分かりません」

 そして苦い表情で、対象の状態が不明である事を、無線の向こうへと伝えた。

《了解。まず君等は、自分の身を守れ――》

 長沼からは返答と、続いて状況の説明が成される。
 隊列後方に位置していた護衛の警備兵達は二手に分かれ、内の一方は後方より接近する各分隊に向けて。もう一方は指揮通信車、すなわちこちらへ向けての対応行動を取り出したとの事であった。
 そして高機動車の1分隊は、早急にこれを撃破しこちらへ応援に向かうとの事だが、それまでの間こちら側でも、応戦行動を取るようにとの警告指示が寄越された。

「了解です――聞いたな、準備しろ!奴さん達こっちに群がって来るぞ!」

 通信を終え、矢万は搭乗する各員に向けて張り上げる。

「そらそうだろ。大老の乗った駕籠が、見事にふっ飛んでったんだからよ」
「行くぞ」

 その指示声に、後部隊員用スペースの門試は、そんな皮肉気な言葉を零す。そんな彼に、傍らの威末はそれを聞き流してその上で促す。そして両名は指揮通信車の後部ハッチを開け放ち、車外へと降車展開してゆく。
 さらに指揮通信車の前部、助手席からは天井ハッチより、宇現士長が這い出て来る姿を見せ、各員は向かい来る敵警備兵達との戦闘に備える――



 指揮通信車の操縦席。そこに座す鬼奈落は、その顔に少し困ったような色を浮かべていた。

《鬼奈落、お前も車上に上がれ!》
「あぁ、はい」

 鬼奈落の耳に、矢万からのインカム越しの指示の声が響く。しかし対して、鬼奈落はどこかはっきりとしない生返事を返した。

《おい、大丈夫か?》
「大丈夫です。上がります」

 それを訝しんのだろう、矢万からは問い尋ねる声が寄越される。その声に対して鬼奈落は再度答えるが、その意識と視線は、フロントガラスのその向こうに向いていた。
 そこには、一人の人間の体があった。
 指揮通信車の先端の突起部にその体を乗り上げて横たえ、動く様子を見せないそれは、馬車を操っていた御者の物であった。
 すでに亡骸となっていたそれは、額に死因となったと思しき、頭部強打の証の流血が見て取れる。そしてその眼は、光の消えたそれで、ガラス越しに鬼奈落を見つめていた。

「困ったものですね」

 そんな光景を前に、しかし何か涼しい様子で鬼奈落は呟く。
 そして言いながらも鬼奈落は、操縦席の足元に置き備えていた、護身用火器の65式9mm短機関銃を手に取り、そして座席より立ち上がる。

「悪いですね」

 そこで鬼奈落は、こちらを見つめる死体を一瞥。そんな一言を発して投げると、天井のハッチに手を掛け、外へと繰り出した。



「――派手にやってしまいましたね」

 ハッチを潜り車上へと上がった鬼奈落は、そこで眼下に見止めた横転した馬車や、それに引きずられて倒れ藻掻いている馬達の姿に、そんな呟きの一言を零す。状況に対して、その口調はどこか飄々としていた。

「おや」

 しかしそんな彼の眼が、横転した馬車の上に動きを見たのはその時であった。

「急げ、だいぶ接近を許してる!準備できた者から、各個の判断で攻撃しろ!」
「車長」

 一方の矢万は、自身も12.7㎜重機関銃をその握把を掴み手繰り寄せながら、周囲へ指示の声を張り上げている。その矢万に、鬼奈落は声を掛けた。

「馬車から人が出て来ます」
「何!?」

 伝え来たその言葉に、それを受けた矢万は驚き――といよりも忌々し気な声を返す。そしてターレットハッチ上から身をさらに乗り出し、鬼奈落が視線で示す先を確認。
 鬼奈落の言葉通り、横転した馬車はその側面の乗降用扉が開かれ、そこから人が這い出て来ようとしている様子が見えた。

「捕獲対象でしょうか?」
「区別はつかんが……チッ、この切羽詰まってる時に……!」

 現在、指揮通信車と馬車に向けて、各方より護衛の警備兵達が向かってきている。そしてその一部は、すでにすぐそこまで迫っている。余裕の無い状況での事態の追加発生に、矢万はその顔を険しくする。

「押さえます。私が行きます」

 そこへ鬼奈落が進言の声を上げた。言いながらも彼は、65式9mm短機関銃を手にすでにハッチから這い出ている。

「頼む。気を付けろ」

 それを受け入れ、そして矢万は自身の付く12.7㎜重機関銃を敵へと旋回させながら、忠告の言葉を送る。鬼奈落はそれに片腕を上げて答えながら、指揮通信車の車上より飛び降りて行った。
 そして同時に、12.7㎜重機関銃は咆哮を上げた。



「ぐ……一体何が……」

 横転した馬車から出て来たのは、側近の男であった。
 文字道理、這う這うの体で扉から半身を出して来た側近の男。しかし瞬間に、彼の体を鈍痛が襲った。

「ぐぁッ!?」

 側近の男から悲鳴が上がる。
 見れば馬車上には鬼奈落の姿があった。威末は指揮通信車より馬車の上に飛び乗り、半開きであった扉ごと、側近の体を踏みつけたのだ。
 そして間髪入れずに、鬼奈落は短機関銃のグリップで側近の男の後ろ首を打つ。側近の男は再び悲鳴を上げ、そして気を失いその体を支える力を失った。

「すみませんね。あまり乱暴はしたくないんですが」

 そんな言葉を零しながらも鬼奈落は、気を失った男の両肩を掴み、そして強引に馬車の中へと押し戻し、扉を自らの体を乗せて踏み塞ぐ。
 その折、内部からは「ひ!」と驚く別の悲鳴が聞こえた。

「さて――」

 しかし鬼奈落はそれに意識は割かずに、背後から響く、12.7㎜重機関銃の咆哮を始めとする各銃声を聞きながら、周囲へ視線を走らせる。

「指揮車の12時!二騎周ったぞぉ!」

 間髪入れずに、銃声に混じり誰かの張り上げる声が聞こえ来た。
 鬼奈落が視線を向ければその先に、こちらに向かって回り込むように駆けこんでくる二騎の軽騎警備兵の姿が映った。そのさらに向こうには、こちらの銃火の犠牲となったのだろう倒れた警備兵達の姿も見えたが、その二騎はどうやら捌ききれずに零れ、回り込んで来たらしい。

「――ッ」

 二騎からはクロスボウにより矢が放たれ、それ等は鬼奈落の傍を掠めて、背後の指揮通信車の装甲を叩く。
 鬼奈落は少し表情を険しくしたがしかし怯まず、接近し眼前を横切って行くその二騎に向けて、すかさず短機関銃を構えて引き金を引いた。
 銃口から9mm弾がばら撒かれ、それ等は軽騎警備兵達を襲う。内一騎がそれを諸に受け、警備兵が馬上より打たれるように転落。しかしもう一騎はばら撒かれた弾を逃れ、駆け抜け去って行った。

「――!、新手ですか」

 逃れた一騎を視線と銃口で追う鬼奈落だが、しかしその先に彼はまた新たな敵影を見た。
 別方向より、こちらへ迫る軽騎警備兵がまた二騎。そして直後、その二騎は二手に割れた。

「車輛3時より新手、二手に割れました」
「対応する!」

 鬼奈落は背後の指揮通信車上に向けて報告の声を上げる。それに対して、車上でMINIMI軽機に着く宇現が呼応。軽機が車上で旋回され、新手の二騎に向けて火を吹いた。
 二騎の内片方は、指揮通信車の側へと踏み込む前に、銃火を受けて押し留められ、無力化される。しかしもう一騎が運よく弾を逃れ接近、そしてすり抜け様に矢を放ち、それが再び指揮通信車の装甲を叩いた。

「同一方向、先のが反転してきます」
「車輛7時方向より反転、再来!」

 各方より迫った騎兵の警備兵達は、その速度を持って指揮通信車を取り巻き駆け、反復攻撃を試みて来た。
 こちらを翻弄するような動きに、各員は頻繁な銃器の旋回、再照準を余儀なくされる。

「排除!」
「ダウン!」

 しかしそれでも銃火器による優勢は覆らなかった。各員の装備火器、あるいは搭載火器が各方へ発砲音を響かせ火を吹き、警備兵達は一騎また一騎と数を減らしていった。

「――新手。車輛、2時方向より新手です」

 引き続き馬車の上で構えていた鬼奈落が、また視線の先に接近する騎兵の姿を捉える。

「何か姿が違います。――通達にあった重装甲の騎兵のようです」

 そして鬼奈落はその騎兵の様相がそれまでの物と違う事に気付き、発する。その言葉通り接近するそれは、人馬共に鎧で身を覆った重装警騎であった。

「車輛10時方向からも2騎!同、装甲騎兵!」

 直後、指揮通信車の側に身を隠す、威末からも声が上がる。反対側からも、同様に重装警騎の迫る姿があった。
 聞くが早いか、鬼奈落は短機関銃を構え直し、自分の発見した重装警騎をその照準に覗き、引き金を引いた。連続的な軽い発砲音と共に放たれた数発の9mm弾は、重装警騎目がけて飛ぶ。
 しかし直後に鬼奈落が見聞きしたのは、微かな乾いた金属音。そしてわずかに身を揺らすも、こちらへの吶喊を止めない重装警騎の姿であった。

「!――弾かれましたか」

 その様子から、瞬時に9mm弾が鎧に弾かれた事を鬼奈落は察する。

「――対象健在!これは……弾が通ってない!」
「冗談だろ」

 反対側から接近する敵に対応した威末等も、同様の物を目撃したのだろう、威末の発し上げる声や、門試の荒げた言葉が聞こえて来る。

「彼等相手には豆鉄砲ですか――車長、50口径での対応願います」

 そんな中鬼奈落は呟き、そして車上で12.7㎜重機関銃に着く矢万に、要請の声を上げた。

「ちょい待ち、ちょい待ち――順に対応する」

 指揮通信車上からは、矢万の少し焦った色での返答が降りて来る。矢万はまず、ターレットを指揮通信車の10時方向に向け、迫る2騎の重装警騎へその銃口を向ける。そして押し鉄に力が込められ、唸り声と共に12.7㎜弾が吐き出された。
 流石の装甲に包まれた重装軽騎も、12.7㎜弾の凶悪な威力の前では無力であった。
 撃ち込まれた12.7㎜弾の群れは、重装警騎達の鎧を易々と貫通。彼等の身をその勢いで、まるで殴り飛ばすようの弾き、打ち倒した。

「車長、2時方向よりなお接近。間もなく踏み込まれます」

 しかし反対側より近づく重装警騎は未だ健在。鬼奈落は矢万に向けて冷静な、しかし急かす声を送る。

「今やる!」

 要請に荒々しく返しながら、矢万はターレットを旋回させる。しかし悪い事にすでに重装警騎は、矢万に再照準の間を許さぬ距離まで踏み込んでいた。

「ッ」

 鬼奈落は、牽制に短機関銃の引き金を引き、9mm弾をばら撒き注ぎ込む。しかしそれ等は重装警騎の装甲に阻まれ、そしてその吶喊の勢いが減じる様子は無い。
 重装警騎は、そのまま真っ直ぐ、鬼奈落の咆哮へと突撃して来る。

「鬼奈落!」
「ッ――!」

 矢万の警告の声。同時に鬼奈落は身を翻し、乗っていた馬車の上より滑るように飛び降りる。
 瞬間、その直上を、地を蹴り飛んだ重装警騎が飛び越えて行った。そして先程まで鬼奈落が居た場所を、振るわれた剣が掠めてゆく。
 重装警騎は人馬共に跳ねて、馬車の上を飛んで跨いで見せた。そしてその先で蹄を着き、そのままの速度でかけ離れてゆく。
 しかし直後、周囲に唸り響いた発砲音と同時に、重装警騎の身は弾け撃ち飛ばされた。
 見れば、指揮通信車上で再度の旋回照準を終えた12.7㎜重機関銃が、その銃口から白い煙を上げていた。

「排除――他は!?」

 腕中の凶悪な得物で敵を屠った矢万は、それから各員に向けて報告を求める声を上げる。

「――無し」
「排除完了したようです」

 それに各員から返答が上がる。
 今の重装警騎を最後に、指揮通信車周辺に迫る敵の姿は無くなっていた。

「――鬼奈落、大丈夫か?」

 周辺の安全化、無力化の確認ができた後に、矢万は重装警騎からの肉薄攻撃を受けた鬼奈落の身を案じて発する。

「少し不愉快でしたね」

 対して、幸いにも無事であった鬼奈落は、しかし身を起こしながらもそんな言葉を返す。
 自身を飛び越えて行った重装警騎に対して不快感を覚えての物であろう、少し不機嫌そうな色の込められた軽口であった。

「際どかったな」
「ったく、俺等は道を封鎖するだけじゃなかったのかよ」

 威末や門試からも、警戒の姿勢を維持する傍らに、それぞれ声が上がり聞こえる。

「矢万三曹、高機が来ます」

 そこへ指揮通信車上の宇現が声を上げ、そして一方向を指し示す。矢万始め各員が示された方向を見れば、その先にこちらに向けて走って来る高機動車の姿が見えた。
 高機動車はそのまま接近、指揮通信車の側まで走り込んで来て停車。

「1分隊、展開してくれ」

 高機動車の助手席は長沼の姿があり、彼は指示の声を上げる様子を見せる。
 そしてそれに呼応し、高機動車からは搭乗していた普通科1分隊の隊員等が降車。指揮通信車の周辺へと展開を始めた。
 そして長沼自身も高機動車を降り、指揮通信車へと歩いて来る。

「矢万三曹、大丈夫か?」
「なんとか凌ぎました。こちらに損害はありません」

 長沼は車上の矢万を見上げ尋ね、矢万はそれに返す。

「拘束対象はまだ未確認か?」
「中から声を聞きました。少なくとも、生きてはいるようです」

 続け、馬車を一瞥しつつ紡がれた長沼の疑問には、傍らに立つ鬼奈落が答える。

「そうか、では確保にあたろう。1組――」

 対象の生存確認の報を受けた長沼は、呟き、そして1分隊の隊員等に、拘束対象の確保に掛かるよう、指示の声を発する。
 隊員等が行動に移ると同時に、その場へ制刻等4分隊の乗る小型トラックが駆け込んで来た。

「こっちも、片付いたようだな」
「派手にやったモンだなオイ」

 停車した小型トラックより、制刻や竹泉は淡々とした声や皮肉の台詞を上げながら、降車し長沼等の元へと合流する。

「制刻士長、そちらも片付いたか」
「えぇ、見える限るは弾きました」
「よし。じゃあ君等も、対象の確保と警戒に、それぞれ当たってくれるか」

 制刻の報告を聞き、長沼は制刻等に新たな指示を与える。

「いいでしょう。策頼、多気投、確保の加勢に行け。剱と竹泉は、見張りだ」

 それを了承し、制刻は各員にそれぞれの行動を指示。各員は各々の藩王を示しながら、それ等に掛かって行った。



 横転した馬車から拘束対象を確保すべく、隊員等は馬車を囲み作業に当たっている。
 消化斧、チェーンソー等の物々しい工具が用いられ、馬車の側面が壊され引っぺがされる。そして内部の様子が露わにされ、そこにいた人間達が、隊員等の手により引きずり出された。

「な、なんだ貴様ら……!?放せ……!」

 隊員等の手によりその身を抑えられ、引っ張り出されて来たのは、商議会の議員の男だ。
 突然現れた得体の知れない者達に拘束され、議員の男は大きな動揺の様子を見せている。

「失礼。商議会議員の、ムエア氏ですね?」

 そんな議員の男の前に、長沼が現れ立った。
 長沼は、事前の調査で判明していた議員の男の名を出して尋ねる。

「き、貴様ら!一体何者だ……!?い、一体何が目的だ!?」

 対する議員の男は、長沼の質問には答えずに、喚き立て言葉をぶつけた。

「できればこちらの質問に答えて頂きたいのですが――仕方ないか」

 少し困った色を浮かべ呟いた長沼。しかし反応から、男が目的の議員本人である事は確かだろうと察し、長沼は言葉を続ける。

「私達は日本国陸隊です。ムエアさん、あなたには私達と同行して頂きます」

 そして長沼は自分等の組織を名乗り、そして目的を告げた。

「ど、同行だと……ふざけた事を!そもそも、こんな事をしてただで済むと……!」
「すみませんが、拒否は受け入れません。連れて行くんだ」

 長沼の要求に対して、拒絶の姿勢を見せて喚き立てる議員の男。
 しかし長沼は議員の男の言葉を、ピシャリと跳ね除ける。そして議員の男を抑えている隊員等に向けて、連行するよう発した。

「や、やめろ放せ……!どこへ連れて行くのだ……!」

 抵抗の姿勢を見せ喚き上げる議員の男は、しかしそれも虚しく連行されて行った。

「――他にも、何か証拠になるような物があるかもしれない。すべて押収しよう」

 議員の男を見送った長沼は、そして各員に向けて発し、各員は引き続きの作業へと当たって行った。



 議員の男と拘束と、証拠品の可能性がある物の押収が行われる一方。周辺の一端では、警戒監視に着く一人の隊員の姿がある。

「はー、こりゃひでぇや」

 呟くのは、褐色肌と中性的な顔立ちが特徴の男性隊員の樫端。
 本来の所属は3分隊だが、今作戦では増強のために1分隊に加えられていた彼。そんな彼の呟きと視線は、彼の足元に横たわる、重々しい鎧を纏った警備兵に向けられていた。
 それは先の戦闘で隊側攻撃の餌食となった者の一人であり、見渡せば周辺にも、同様に倒れた人や馬の姿がいくつも見える。それ等の光景を、樫端は苦い表情で眺めていた。

「樫端、警戒はもういい。こっちを手伝ってくれ」
「あ、はい!」

 そんな所へ、樫端へ作業の応援を求める声が掛けられた。
 樫端は掛けられたその声に振り向き答え、そして身を翻してその場を離れようとした。

「?」

 彼が背後に気配を感じたのは、その瞬間であった。樫端は感じたそれに、自分の背後を振り向く。

「――え?」

 そこで彼の目に映った物。それは、先程まで横たわっていたはずの、鎧を纏う屈強な外観の警備兵が、自分の背後に立つ姿であった。

「――ぐぁッ!?」

 状況を把握するより前に、直後、樫端の腹部に衝撃が走った。警備兵より放たれた拳が、樫端を襲ったのだ。受身も取れない状態での攻撃に、男性の平均よりも小柄な樫端は宙に浮かび、地面に放り出された。
 一方の警備兵は隊員Bが怯んだのを見てから、自分の近くに落ちていた剣を拾い、手に取った。そして剣を手に、樫端へと歩み寄る。

「が……あぁ……!」

 腹部の鈍痛と混乱に襲われながらも、樫端は必死で這いずり、重装騎兵から距離を取ろうとしていた。そして同時にどうにか小銃を構え、警備兵にその銃口を向ける。

「あッ!」

 しかし引き金を引く前に重装騎兵の剣が払われ、小銃は樫端の手より弾き飛ばされた。

「ぐ、嘘……」

 苦し気な声で零し、顔を顰める樫端。
 警備兵はそんな樫端に迫る。そして剣を大きく振り上げ、樫端の体を貫くべく、それを振り下した――

「樫端ッ!!」

 だが瞬間、樫端の名を呼ぶ声が上がる。同時に、金属が同士がぶつかる音が響いて上がった。

「!?」

 樫端の目に映ったのは、体勢を崩して大きくよろめく警備兵。
 そして横から割り入り現れた、策頼の姿だ。
 策頼の両手にはチェーンソーが持たれ、チェーンソーは起動して歯を回転させ、唸り声を上げている。策頼は、警備兵をチェーンソーで横から叩き殴ったのだ。

「策頼……!?」
「逃げろ、ここから離れろッ!」

 現れた策頼のその姿に、苦しみ混じりの驚きの声を上げる樫端。対する策頼は、警備兵の姿を睨みながら、背後の樫端に向けて離脱を促し発し上げる。言われた樫端は痛みの続く体をなんとか起こし、よろめきながらもその場から離れていった。
 一方、突然の衝撃により、よろめきながら数歩下がった警備兵は、しかしすぐに体勢を立て直して見せる。生身にチェーンソーが当たっていれば大惨事になっていただろうが、鎧に阻まれ警備兵ににダメージは見られない。
 そして警備兵は体勢を立て直し、新たに現れた策頼を標的とし、剣を振るい上げ切りかかって来た。

「野郎――ッ!」

 だがその剣が振り下ろされるよりも先に、策頼は警備兵に向けて踏み切り突っ込んだ。
 そして、剣を握り振り上げられる警備兵の右腕を狙って、チェーンソーを掲げ薙ぐ。薙がれたチェーンソーは警備兵の篭手に命中し、回転する刃が接触し、ガリガリという音が一瞬響く。そしてその衝撃で警備兵の右腕は跳ね除けられ、その手から剣が離れて落ちた。
 さらに策頼はそのままチェーンソーを一度引いて戻すと、間髪入れずにその刃を警備兵の体の正面におもいきり叩き付けた。

「おぉぁぁぁぁッ!!」

 策頼の雄叫びと、チェーンソーの刃が鎧を引っかく音が盛大に上がり、そして火花が散る。接触は数秒続き、その後に両者は離れ、距離を取った。

「無理か――だろうとは思っていたが」

 警備兵を睨み、静かに発する策頼。
 チェーンソーは警備兵の鎧に傷をつけただけで、警備兵本人にはダメージを与えられてはいなかった。そもそも、チェーンソーで白兵を挑んだこと事態、樫端を救うためのその場しのぎの行動でしかなかった。
 策頼は、態勢を整え仕切り直すべく、後退することを頭に浮かべる。

「――ッ!?」

 しかしそれを許さんとばかりに、警備兵が行動を起こした。警備兵は、剣を失い丸腰であるにもかかわらず、策頼目掛けて吶喊の声をあげながら仕掛けて来た。

「――イィぁぁぁッ!」

 策頼はそれに対応。チェーンソーを突き出し再び警備兵の鎧にぶつけ、金属音が鳴り響き火花がまたも散った。加えられた衝撃に、警備兵はよろめき数歩後退する。しかしその姿に、戦意が衰える色は見えなかった。
 勇敢。いや、警備兵には先の戦闘による負傷の様子が見え、その影響により感覚が麻痺しているのかもしれない。

「クレイジー――」

 そんな警備兵を前に、策頼は呟き零す。一方の警備兵は、再度の突撃の姿勢を見せる。

「ッ――!」

 埒が明かない、だが鎧を貫く術もない。そう思いつつ身構えようとした策頼は、しかし瞬間、一箇所に突破口を見つけた。

「!――そこだぁッ!」

 そして策頼はチェーンソーを突き出し、今まさに突撃してきた警備兵のその頭部、
ヘルムの目の部分の開口部向けて突き込んだ。
 チェーンソーの刃は、一度ヘルムの開口部の縁に引っかかるが、策頼は構わずさらに強引にチェーンソーを押し込む。
 そしてチェーンソーの切っ先はヘルムの内部、重装騎兵の顔面に到達――

「ッ――!ぁ――ごがぁあばががががあッ!?」

 ――ヘルム越しに、警備兵の歪な悲鳴が上がった。
 ヘルムの内部でチェーンソーの切っ先が暴れる。警備兵の顔面は、回転するチェーンソーの刃により掘り起こされ、かき乱されていく。

「あぁああぁぁぁッ!!」

 策頼は咆哮を上げながら、差し込んだチェーンソーを、警備兵の頭部を掻き回すように動かす。警備兵の体は激しい痙攣を見せ、ヘルムの開口部からは血や肉片のような物が噴き出し、策頼の身を汚す。

「か……はば……ぁ……」

 やがて警備兵はヘルム越しに声、いや音を零しながら、地面に膝を突いた。
 そこでようやく策頼は、警備兵のヘルム開口部からチェーンソーを引き抜く。支えを失った事により、警備兵は倒れ、地面にその体を沈めた。

「ッ――はぁ……ッ――」

 策頼は未だ唸るチェーンソーを降ろし、不安定な呼吸の様子を見せながら、足元に伏した警備兵の体を見下ろす。
その時、苛烈なぶつかり合いの終了を見計らったかのようなタイミングで、陰鬱な色の空が雨粒をばら撒き始めた。
 周辺が雨水で滲み出す中、策頼は高揚かた戻らぬ意識と、血走った眼で死体を見つめ続けている。最初に警備兵を殴ってからの経過時間はほんの数十秒だったが、策頼にとってはとてつもなく長い時間に感じられた。

「策頼――おい策頼」

 そこへ声が掛かり、そして策頼の肩を何者かが掴む。それにより、策頼の意識は引き戻された。

「……自由さん」

 振り向けば、策頼の背後には制刻の姿があった。さらに周囲には、鳳藤や竹泉等、駆け付けて来た4分隊の隊員等の姿がある。

「うっぇ――何やらかしてんだお前はよぉ!?」

 内の竹泉が、その場の惨状に苦言を吐く。
 策頼の周囲には、警備兵から撒き散らされた血や肉片が散乱し、チェーンソーは血まみれ。そして策頼本人も、顔や迷彩戦闘服の肩周りが返り血で染まっていた。

「策頼……お前、顔に……」
「え?」

 続け今度は、鳳藤がやや青い顔で策頼の顔を示す。
 言われ策頼は、頬の辺りになにかが張り付いているような違和感を感じた。手を当ててそれを掴み取ってみると、それはなにが白い物体だった。

「あぁ――目玉だ」

 最初、それが何か判別がつかなかったが、よくよく見るとそれは人間の眼球の欠片であった。おそらく警備兵の物であろう。

「うげぇ……おぃ、おかしいんじゃねぇかマジで!?」
「急だったんだ、仕方が無かった――樫端は?」

 顰め面で発せられる竹泉の言葉。それに対して策頼は倦怠感の混じった声で返し、そして先に逃がした樫端の安否を尋ねる。
 緊張と興奮が一気に解けた影響か、策頼は酷くしんどそうだ。

「ヤツなら、大事はねぇ。お前ぇこそ、怪我はねぇか」

 尋ねる言葉には制刻が答えた。続け制刻は、策頼自身に尋ねる言葉を返す。

「えぇ――たぶん」

 策頼はそう言うが、返り血まみれの彼の見た目では、負傷しているのかどうか判別がつかない。

「こんな血まみれで分かるわけねぇだろが」
「念のため、よく確認しろ。その物騒なモンは置いてな」

 竹泉は顰めた顔で呆れた声を発する。そして制刻は策頼に促し、その手からチェーンソーを引ったくるように預かる。

「竹泉。一応、付き添って行け」
「あぁ、へぇへぇ。ほれ行くぞ策頼」

 制刻の言葉を受け、竹泉は気だるげな声で了承し、そして策頼に促す。
 策頼と竹泉は、その場を離れて車輛の方向へと向かって行った。

「これは……凄いし酷い……」

 そんな二人を見送った後に、鳳藤が足元に広がる凄惨な光景に、目を落して呟く。

「観察はそこまでだ。他にくたばってる奴等の、息を確認したほうがいい」
「ああ……そうだな。私は西側を見てくる」

 しかし制刻は周囲の再確認、確実な安全化を行う必要性を言葉にする。
 鳳藤もそれに賛同。凄惨なその場より立ち去りたいと言う内心もあったのだろう、足早にその場を離れて行った。
 一方、制刻はすぐにそこから移動することはせず、先程策頼からひったくったチェーンソーに視線を落とす。

「――工具類か。中々、使えるかもな」

 そして微かにその不気味な顔に笑みを作り、一言呟いた。
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