上 下
5 / 114
チャプター1:「異世界への降着 ―異質な〝ヤツ〟と中隊―」

1-5:「問題隊員合流。そしてゴブリンとの戦い」

しおりを挟む
 偵察から帰還した制刻、河義等は、臨時の指揮所として設営された業務用天幕に出頭していた。
 内部には陸曹筆頭の井神を始め、集落で合流したヘリコプターパイロットの小千谷。補給隊の長沼、他主要な陸曹、空曹が集い、各員は天幕内に置かれた長机を囲み、そこに置かれた複数のタブレット端末に視線を落としている。タブレット端末には、集落で撮影した写真映像が映し出されていた。

「ダイレクトに言いましょう。俺等は、どうやら全く別の世界に飛ばされたようです」

 そしてズバリとそう発したのは制刻だった。

「……信じられませんが、どうやら制刻陸士長の言う通りの様です。接触した集落――最初は何かの施設の跡地かと思いましたが、そこには確かに生活している人達がいました。そしてそこの文化形態は、日本の、いや現代のそれではありませんでした」

 河義はタブレット端末の画像をスライドさせて、撮影した写真を各員に見せながら言う。

「さらに我々は勇者を名乗る一行とも遭遇。彼らは魔王を討伐すべく旅をしていると言っていました」
「最初は、妙なロールプレイ集団かと思いましたが」

 河義の説明に、制刻が若干皮肉気に付け加える。

「彼らは驚異的な身体能力を誇り、さらに〝魔法〟を名乗る特殊能力を扱っていました」

 河義はタブレット端末を操作し、画面を動画再生モードに切り替える。
 動画は僧侶の男性であるイクラディが魔法により炎を生成する場面や、ハシアが家の屋根まで悠々と跳躍するを撮影したものだ。これ等は河義がハシア等に頼み込んで撮影させてもらったものであった。

「これはCGやトリックではありません。全て本物でした」

 動画の再生が終わると、河義は念を押すように発する。その言葉を区切りに、しばしの間、天幕内は沈黙に包まれた。

「――普通であれば、君たちの正気を疑う所だろう」

 沈黙を破ったのは井神の言葉だった。

「だが、我々に起こった現象、そして現状を考えれば、事実であると認めるしかないだろうな。これらの情報が本物であること、そして――我々が別の攻界に飛ばされたという事をな」

 そして続けて井神は、発した。
 井神の言葉が切っ掛けとなり、集っていた隊員等からは堰を切ったように、「マジかよ」「冗談にしちゃ質が悪いな」等といった声が上がる。

「そして我々、陸空の各隊を合わせた現在員100名強は――元の攻界から切り離され、この〝異攻界〟で孤立してしまっている――といった所だろう」
「……井神一曹、私たちはどうするべきなのですか?」

 隊員の内の一人が、井神に尋ねる。

「そうだな――当面は偵察行動を続けるべきだろう。他にも飛ばされた部隊がいるかもしれないし、何にせよ周辺の地理環境を掌握しておくに越した事は無い」

 暫定的なその案に、肯定とも否定とも取れない沈黙が訪れた。

「あぁ――それと井神一曹。この近辺にはゴブリンの群れが出没するとのことです」

 再びの沈黙を破ったのは、河義の報告の言葉だった。

「ゴブリン?神話に出てくる魔物の?」

 長机を囲っていた陸曹の内の一人が発する。

「ええ、これに関しては私達も目撃したわけではないのですが、どうにも人を襲う存在のようです。その勇者一行から警告を受けました」
「なんでもありだな……」

 河義の言葉に、聞いた陸曹は呆れたように発した。

「どちらにせよこんな状況だ。外部からの危険因子の警戒は当然すべきだな」

 井神は発すると、仕切り直すようにトンと長机を軽く叩く。

「今日はもう日が暮れる。これ以上の情報収集行動は明日以降としよう。本日はこれ以降は、防衛体制の構築に専念する事とする。よろしいですか、小千谷二尉?」

 井上はこの場で唯一の幹部隊員である、小千谷に確認をする。

「あぁ。問題無いよ。それと私はパイロットだし間借りの身だ。陣頭指揮は今後もあなたにお願いしたい、井神一曹」
「分かりました。それでは各隊、班は野営の準備、及び防衛体制構築の作業に戻ってくれ。解散」

 井神の言葉を受け、集っていた各員は解散。陸曹達はバラバラと天幕を後にしてゆく。

「やぁれやれ」
「あぁ、制刻。少し残ってくれ」

 陸曹に続いて業務用天幕を出ようとしていた制刻は、しかしそこで井神に呼び止められた。

「あぁ、鳳藤。行ってろ」
「あ、あぁ」

 制刻は鳳藤を先に出て行かせ、自分は長机の前へと戻る。

「何か?井神一曹」

 そして問うた制刻に、しかし井神はすぐには返さずにパイプ椅子にどかりと座り直す。

「君も会ったろう――異質な空間で、異質な人物に」

 そして制刻を見つめて言った。

「あぁ――あなたもですか、井神一曹」

 問われた制刻は、淡々と返した。

「この世界が、我々の世界に殴り込みをかけようとしている。だからそれを止めてこい。ただし詳しい事は俺達のほうで調べろと――」

 井神は異質な空間で、奇妙な人物から言われた言葉の内容を、簡潔にまとめて口に出す。

「ふざけた話だ」
「えぇ、まったく」

 呆れた口調で言い放った井神の言葉に、制刻は同意する。

「彼は、口ぶりからどうにも君の知り合いのようだったが」
「まぁ――ちょっとした、知り合いです。それ以上の事は俺にも何も」
「そうか」

 制刻の言葉は何か煙に巻くようなものだったが、井神はそれ以上追求しようとはしなかった。

「他の隊員にはまだ話すな。ふざけた人物の所為で飛ばされて来たなんてことが、今の不安定な状態で広まったら、余計な火種になりかねん」
「いっそ、張本人を引っ張ってこれりゃいいんですがね」

制刻はハッ、と吐き捨てるように言った。

「すまなかったな、確認したかっただけだ。行っていいぞ」
「んじゃ、失礼します」

 そう言うと、制刻は業務用天幕を後にした。



 天幕を出た制刻は、そこで待っていた鳳藤と合流する。

「なんだったんだ?」
「ちょいとな」

 鳳藤の問いかけに、制刻は曖昧な答えを返した。
 そんなやり取りをしながら二人が視線を上げると、その先で河義が別の古参三曹と何かを話している様子が目に映った。

「ったく、どうなってやがんだぁ」
「サプラーイズにしちゃ妙だよなぁ」

 そしてその傍には、妙に騒がしくしている二人の隊員の姿があった。
 一人はそれなりに良い体をした、頭にゴーグルを掛けた男性隊員。
 もう一人は身長が200㎝は超えているであろう巨大な体躯を持ち、かなり日に焼けた肌をした男性隊員。
 どちらも制刻や鳳藤の所属する、第2中隊では見ない顔であった。

「あの二人は?」
「見ねぇ顔だな」

 見慣れぬ二人の隊員の姿を訝しみながら、制刻と鳳藤は河義等の元へと歩く。

「じゃあ、頼むぞ」
「了解です、峨奈がなさん」

 二人が近づくと、会話は丁度終わったのか、峨奈と呼ばれた古参三曹は入れ替わりに去って行った。

「河義三曹」

 制刻は河義の名を呼ぶ。

「あぁ、制刻に鳳藤。丁度いい所に」

 振り向き、二人に気付いた河義は、そんな言葉を発する。

「その二人は?」
「第1中隊の隊員だ。この二人だけ、俺達と一緒に飛ばされてきたらしい。それで、4分隊――つまりウチに合流してもらう事になった」

 説明を終えると、河義はその二人に自己紹介をするよう促す。

「第1中隊第1小隊の竹泉たけいずみ二士。ったく、カンベンだぜ」
「同じく1中。多気投おおきなげ一士ですゥ、ハハァッ!」

 竹泉と名乗った隊員は、所属姓階級を言った後に吐き捨て、多気投と名乗った巨体の隊員は、陽気に笑って見せた。

「竹泉と多気投って……聞いたことあるぞ、1中の問題児二人組じゃないか……!」

 二人の名を聞き、鳳藤は二人の噂を思い出して発する。

「確かに、一癖ありそうな奴らだな」

 そして両名を前に、制刻は一言発する。

「アンタに言われたかねぇけどなぁ」

 それに対して、竹泉は皮肉気に、そしてどこか突っかかるように返した。

「おい、やめろお前等……!」

 そんな二人に、河義は制止の声を掛ける。

「まぁ、落ち着け竹しゃん。所で、2中のやべぇヤツとプリンスってアンタ等のことだろぉ?」

 さらに多気投が両者の間に割って入り、場を収めるためか別の話題を振った。

「さぁな」
「そ、そんな噂になってるのかい?」

 制刻は端的に答え、鳳藤はまんざらでもなさそうに発する。

「あぁ、有名だぜぇ。2中にゃ、なんぞ超やべぇやつと、中身がちと残念なハリボテプリンスがいるってなぁ」
「は、ハリボテ……!?」
「また傑作だな」

 しかし多気投の詳しい説明でオチが付き、昼間と同様の鳳藤はショックを受け、制刻は端的にそれを一笑。

「アホくっさ」

 そしてその様子を見ていた竹泉が吐き捨てる。

「はぁ、なんで俺の分隊には変なヤツばかり集まるんだ……」

 最後に河義が、状況を嘆いて言葉を零した。



 日が暮れて夜が更けた。
 この世界での時間の流れがどのような物かは不明だが、少なくとも隊の各員が観測している限りでは、時刻は日を跨ごうとしていた。
 高地の頂上周辺には簡易的ではあるが防護陣地が築かれ、隊の各員が不測の事態に備えて、警戒に付いていた。

「はぁ……くたびれた。塹壕は入ってるだけで疲れるな……」

 高地上に設営された野営地内を、呟きながら歩く鳳藤の姿がある。彼女は今さっき、夜哨の任を他の隊員と交代して終え、自身に割り振られた宿営天幕へ戻ろうとしている所であった。

「……ん?」

 そんな彼女が、その時前方から歩いて来る人影に気付く。人影の正体は、他でも無い制刻であった。

「よぉ、上りか」

 鳳藤に気付いた制刻は、近づいて来ながら発する。

「あぁ、そうだよ。お前は今からか?」
「あぁ」

 鳳藤の問いに、制刻は返す。

「夜は視野が不制刻になるし、集中力も減る。十分注意しろ」
「は、お前ぇに言われるまでもねぇ」

 鳳藤の忠告に、制刻は皮肉気に返す。

「ならいいが――所で……空は見たか?」
「あぁ、嫌でも目に映る」

 言うと、二人は同時に上空へ視線を向ける。
 二人の目に映ったのは、夜空に瞬く無数の星々と、浮かぶ〝三つ〟の月だった。
 一つは元居た攻界と変わらぬ金色に。一つは青白く、一つは赤白く微かな光を放ち、夜闇を仄かに照らしていた。

「とんでもねぇな」
「まぁな。でも、綺麗じゃないか……」
「オメェが、ゲテモノ趣味とは驚いた」
「ゲテモノって……!酷い言われようだな……」

 制刻の言葉に、鳳藤は不服そうに発する。

「はぁ……まぁいい。私はもう寝かせてもらう、お休み」
「あぁ」

 そう言って、二人は別れようとする。
 甲高い笛の音が、夜の静寂を割って響いたのはその次の瞬間だった。

「な!?」
「警笛か」

 響く笛の音は、異常事態を知らせる警笛であった。

「何かあったのか!?」
「じゃなきゃ、警笛なんぞ鳴らねぇだろ。行くぞ」

 鳳藤の就寝はお預けとなり、二人は警笛の響く方向へと急いだ。



 制刻と鳳藤の二人は、間もなくして警笛の発信源である一つの塹壕陣地へと到着した。

《こちらは日本陸隊の展開設営した施設です!進入は許可されません、その場で停止してください!》
「なんなんだよあいつ等……!?」

 塹壕では、古参三曹の峨奈が不審者、侵入者に対する警告広報を行っている。そしてその横では中性的な顔の男性隊員、樫端かしばた一士が、程よく日焼けしたその顔を困惑に染めていた。
 制刻と鳳藤はそんな状況の塹壕へと飛び込む。

「4分隊、鳳藤、制刻です!一体何事ですか!?」

 そして鳳藤が峨奈に向けて所属、姓を名乗ると共に、状況を訪ねた。

「多数の不審人物が陣地に接近中だ!先ほどから警告を行っているが、従う様子が全く見られない!」
「不審人物?」
「あぁ……!」

 制刻は訝しみながら、暗視眼鏡を取り出すと、それを覗いて塹壕の先を見る。そして目に映ったのは、こちらに向かってくる集団だ。
 しかし接近して来る彼等の容姿は、どれも人間のそれでは無かった。
 背丈は小学生よりも低いと思われ、手足は飢えたように細く、耳は尖り、何より老人のように深い皺がいくつも刻まれた、酷く醜いものであった。

「ったく、なんだってんだよ!」
「フゥー、到着だぜぇ!」
「制刻、鳳藤、ここにいたか。状況は?」

 そこへ竹泉、多気投、策頼、河義の四名が滑りこむように塹壕へ到着。河義は制刻と鳳藤の姿を見止め、尋ねる。

「見てください」

 制刻は河義へ暗視眼鏡を渡す。

「……何だ彼等は?」

 暗視眼鏡越しに見えた存在に、河義は困惑の声を上げた。

「あれが、勇者の坊主が言ってたゴブリンでしょう」
「あれがか……」
「想像はしてたが、言葉の通じるヤツ等じゃねぇようだ」

 制刻は呟く。

「んだアイツ等。よぉ、制刻さんとやらよぉ、アイツ等はお前さんの親戚かなんかかぁ?」

 同様に暗視眼鏡を覗いてゴブリンの群れを確認した竹泉が、制刻のほうを向いて皮肉気に発する。しかし制刻は投げかけられた言葉を無視して、返事は返さなかった。

「峨奈さん、指揮所はなんと?」
「万一攻撃を受けた場合には、反撃行動を取るよう指示を受けているが……」

 言い淀む峨奈。許可を受けてはいるものの、彼の心情にはためらいがあるようだった。
 しかしその時、先頭に位置するゴブリンが手斧を放ち、それが塹壕内へと飛び込んで来た。

「おぁ!?ふざけんな掠ったぞ!?」

 飛び込んで来た手斧は、竹泉の二の腕を掠め、戦闘服を切り裂き、その下にある彼の肌を微かに傷つけた。

「話が通じねぇ上に、おまけに害意有りと来た。峨奈三曹、選択の余地はねぇかと」
「ッ――川越13より朝霞2へ。こちらは不審者の一団から攻撃を受け、軽傷者一名発生。不審者の一団を、対話不可能な害意存在と認め、自衛行動を取る!」
 制刻からの進言を受け取った峨奈は、意を決したように、自身の装着したインターカムに叫ぶように発した。

《了解、川越13。すでに装甲戦闘車と指揮通信車にも出動指示を出してある》

 発信に応答した声は指揮所の井神だ。峨奈とは対照的に、冷静な声色で、応援をこちらへ向かわせた旨を発した。

「了解……!――3分隊各員、これより不審者団体の処理を行う。射撃用意!」
「マジかよ……!」

 峨奈の指示に、3分隊の隊員等は困惑しつつも、射撃体勢を取り始める。

「んじゃ、河義三曹。俺等もいいですね?」
「あぁ……許可する!」

 制刻は河義の許可を得ると、小銃を構えてゴブリンの内一体を狙う。
 そして発砲した。
 撃ち出された5.56㎜弾が先頭を切る一体のゴブリンに命中。ゴブリンはもんどりうち、後続のゴブリン達の中へと倒れ込んだ。

「糞……!」

 制刻が発砲した事を皮切りに、各隊員も各個に発砲を開始した。
 各員の小銃から撃ち出された5.56㎜弾が群れの前方に位置するゴブリン達を襲い、数体のゴブリンがバタリバタリと倒れてゆく。

「多気投一士、お前は分隊支援火器射手だな?」
「イエッサァー」

 河義の問いかけに、ふざけた調子の返事を多気投は返す。

「MINIMIでゴブリンの群れを掃射しろ」
「りょぉーかいですぅ」

 指示を受けた多気投はふざけた了解の返事を返すと、MINIMIを塹壕から突き出して構える。そしてゴブリンの群れにその銃口を向け、引き金を引いた。弾頭の群れがゴブリン達に向けて牙を剥き、5.56㎜弾をその身に食らったゴブリン達から、「ギ!」「ギュァ!」と言った風な悲鳴が上がる。

「ワァオ、ダイレクトに入ってくずぇ!」
「奴ら、銃撃を受けたら伏せるってセオリーがねぇんだ」

 銃火器による攻撃に晒されながら、伏せる、隠れる等の行動を見せないゴブリンの群れに、竹泉や多気投はそんな言葉を発する。

「峨奈三曹、奥からさらに別の群れが来ます!」
「ッ、増援か?」

 樫端の報告の声に、峨奈は舌打ちをしながら暗視眼鏡を覗く。塹壕の先、高地の中腹程に、さらなるゴブリンの集団が確認できた。

「――!峨奈さん!」

 その時、河義が峨奈に向けて声を上げる。
 そして鉄の擦れるような不気味な音と、低い唸り声のような音が、塹壕に居る各員の耳に届いた。

「こっちも増援が来たか」

 呟く制刻。
 塹壕の後方、暗闇から巨大な物体が二つ、姿を現す。隊の保有する89式装甲戦闘車と、82式指揮通信車だ。

《川越13、及び14へ。こちら調布21。坂戸12と共に塹壕の両翼へ回る。注意しろ》

 塹壕の各員のインターカムに、82式通信指揮車の車長からの通信が入る。
 両装甲車両はそれぞれ、塹壕の左右を抜け、ゴブリン達の両翼へと展開する。

《坂戸12より川越13へ。不審者の団体を目視で確認した。……本当に撃っていいんだな?》

 装甲戦闘車の車長から、念を押して確認する無線通信が届く。

「あぁ、構わない……攻撃してくれ!」

 それに対して峨奈は答えた。
 そして89式装甲戦闘車の砲塔が旋回し、同軸機銃がゴブリンの群れに向けて発砲した。続いて82式指揮通信車の前方に装備されているMINIMI軽機に付く隊員が、その銃口をゴブリンの群れへと向けて引き金を引く。
 ゴブリン達は双方からの銃撃による十字砲火に晒され、盤上に並べたチェスの駒を手で一気に薙ぎ倒すかのように、次々と倒れてゆく。
 多大な犠牲を出し、さらに装甲車両が現れた事でゴブリン達は混乱に陥ったのか、逃走する、自棄を起こして突撃して来るなど、各個体ごとにちぐはぐな行動を取り出した。

「奴ら混乱してるな」

 制刻はゴブリン達の様子を見て呟く。

「照明弾を上げろ」
「は」

 峨奈が指示し、隊員の一人が信号けん銃を掲げ、照明弾を撃ち上げる。
 上空に撃ち上げられた照明弾が強烈に瞬き、周辺を照らし、ゴブリンの集団は光の元に晒される。
 そして丸裸にされたゴブリンの集団は、塹壕と、装甲車両からの苛烈な攻撃を諸に受け、殲滅されていった――。



 装甲戦闘車と、指揮通信車のヘッドライトが地面を照らしている。その地面の上には、処理されたゴブリン達の死体が無数に散らばっていた。

「ひでぇ……」

 警戒に付きながらその光景を眺める樫端が、そんな言葉を零す。
 その一方、ゴブリンの死体の山の脇では、井神を始めとする陸曹等が、検分を行っていた。

「本当に、神話やお話の攻界のままのゴブリンだな」

 井神は死体の内の一体を確認しながら、言葉を発する。

「こちらの被害は?」
「軽傷一名、それと体調不良が一名です」

 井神の問いに、彼の背後に控えていた女隊員の帆櫛が、報告の言葉を発する。報告を聞いた井神は、装甲戦闘車の方へ視線を移す。

「うぷ、おェ……チクショウが――ッ」
髄菩ずいぼ、大丈夫か?」

 装甲戦闘車の脇では、装甲戦闘車の砲手がその光景に吐き気を催し、車長に背中をさすられていた。

「無理もない」、井神はそう思いながら、足元から広がるゴブリンの死体の山へと視線を戻す。

「――それでだ。かなりの数の死体になるが、これが彼等の全てだったのか?」
「いえ。何体かの個体が逃げていったのを目撃しています。別の群れがまだ存在して、それに合流しようとしている、という可能性は捨てきれません」

 井神の疑問の言葉に、峨奈が答える。

「井神一曹」

そこへ別の声が割って入る。声の主は河義だ。

「奴らが逃げて行った方向には、昼間に接触した集落があります」
「ふむ……それは気がかりだな」

 河義の申し出た懸念事項に、井神も顔を顰めて発する。

「集落へ行く許可を下さい」
「そうだな――いいだろう。君の分隊で、もう一度集落へ行ってくれるか」
「了解です。制刻、鳳藤、策頼、準備しろ」

 河義は昼間に偵察行動を共にした、自身の部下の各員の名を呼ぶ。

「いいでしょう」
「了解」
「は」

 河義の指示を受け、制刻を始めとする各員は再出動の準備を開始する。

「よーやる」

 傍らでは、竹泉が塹壕に腰かけ、衛生隊員から負傷した片腕の手当てを受けている。彼は出動準備にかかる各員を端から見ながら、呆れた声で呟いた。



 芽吹きの村。
 夜も更け、暗闇に包まれた村内を、無数の物体が蠢いている。
 それらはすべてゴブリンだった。
 村の入り口から、半ば付近まで、ゴブリンが群れ成している。そしてそれらの全てが殺意に満ち、その手に得物を握っている。

「くッ、昨日までより数が多い!」

 そんなゴブリンの群れを相手取る姿がある。
 ハシア等勇者一行だ。
 ゴブリン達の殺意は、全て彼等へと注がれていた。

「イクラディ、フィルエ・ベイルを群れの真ん中に撃って!」

 ハシアは先頭にいたゴブリン一体を、大剣を払って切り倒すと、近くの家屋の屋根にいるイクラディに向けて大声で発する。

「炎の加護よ、我が手元に現れ、そして怨敵を焼け!」

 ハシアからの指示を受けたイクラディが詠唱は行う。すると彼の手中にバスケットボール大の炎球が現れる。そしてイクラディはゴブリンの群れ目がけて、炎球を撃ち放った。
 撃ち放たれた火球はゴブリンの群れの中央付近に飛び込み、数匹のゴブリンえを焼く。しかしそれでもゴブリンの群れの勢いが収まることはなかった。

「まずいよ!このままじゃ村の奥まで押し込まれる!」
「そうはさせん!ここで押し留める!」

 斧使いのアインプと騎士のガティシアは、それぞれ発しながらゴブリンをそれぞれの得物で薙ぎ、突く。

(く……みんな限界が見えてる……!)

 ハシアは内心で苦悶する。
 二日前からの毎夜の連戦で、勇者一行は皆、体力気力共に限界に達しようとしていた。

「――ッ!ハシア、何か聞こえる!」

 その時、アインプの耳が何かの音を捉え、彼女は発する。
 その音は次第に大きくなり、ハシア達の耳にも届く。それは奇妙な唸り声のような音。

「あれは――!」

 そしてゴブリンの背後に位置する森の奥から、強烈な光が瞬いた――。



 制刻、河義等の乗ったジープベースの小型トラックは森を抜け、再び集落へと到着。そしてハシア達と対峙しているゴブリンの群れの背後に出た。
 小型トラックのヘッドライトが、ゴブリンの群れを照らす。

「やはりこちらも襲撃されていたか!」

 小型トラックの助手席で、村を襲うゴブリンの群れを目視した河義が叫ぶ。
 小型トラックの進路の先、村の入り口付近から中央付近にかけて、多数のゴブリンの蠢く姿が。そして奥側でそれと対峙するハシア達勇者一行の姿が、河義等の目に映った。

「彼等に退避するよう、呼び掛けなければ!」
「俺が」

 河義の言葉に、制刻が応じる。制刻は荷台に積んであった拡声器を手に取り、そのマイク部分に向けて発し始めた。

《ハシア、聞こえるか?今から皺共の群れを弾く、邪魔だからそっから退避しろ》

 制刻の拡声器を越した不躾な要請の言葉が、村の方向へと響く。ハシア達は一瞬戸惑う様子を見せたが、次の瞬間にはこちらの意図を汲み取ったのか、集落の左右へと飛び退く。

「彼等の退避を確認――策頼、群れを掃射しろ!」
「了」

 河義の指示を受け、荷台に据えられたMINIMI軽機に着く策頼は、その銃口をゴブリンの群れへと向け、そして引き金を引いた。
 撃ち出された5.56弾の弾頭群は、ゴブリン達へ背後から食らいつき、数匹のゴブリンが押し飛ばされるように倒れる。
 策頼はMINIMI軽機をゆっくり旋回させ、連射により攫えるようにゴブリン達に銃弾を撃ち込んでゆく。突然の事態に驚愕するゴブリン達に、5.56㎜弾は容赦なく襲い掛かり、彼等を打ち倒して行った。

「奴ら、奥の方までぎっしりだな。河義三曹、手榴弾の許可ください」
「……許可する」

 一瞬考えた後に、河義は制刻の進言に許可を出す。
 許可を得た制刻は手榴弾を繰り出すと、ピンを抜き、車上からゴブリンの群れ目がけて投擲。群れの真ん中付近へと投げ入れられた手榴弾は、一瞬の間を置いた後に炸裂。
 爆発の勢いと飛び散った破片が、群れの中央付近にいた10体以上のゴブリン達を吹き飛ばし、殺傷した。
 中央から吹き飛んだゴブリンの群れに、さらにMINIMI軽機の掃射が襲う。掃射を逃れた僅かなゴブリン達も混乱に陥り、逃走を図ろうとする個体も現れ始める。しかしそんな彼等も、制刻や鳳藤による車上からの小銃による各個射撃により無力化されて行った――。



「凄い……」

 制刻からの要請により退避したハシア等は、家屋の屋根の上から、ゴブリン達が掃討されてゆく様子を眺めていた。
 ハシアはその光景を目の当たりにし、おもわず言葉を零す。

「でも……なんか怖いよ……」

 しかし隣にいたアインプが、顔を若干青くして、そんな言葉を零す。

「うん、僕もだ……彼等の武器は、ただ強力なだけじゃなく、多くを効率的に殺すことに特化してるように思える……」

 ハシアはアインプの言葉に同意し、そして観察して思った言葉を発した。



 ゴブリンの群れは程なくして一掃され、村の敷地内や周辺で動くゴブリンの姿はなくなった。
 ゴブリンが掃討された事を確認し、小型トラックは運転席の鳳藤の操作で、村の敷地内へと乗り入れる。
 そこへ、屋根の上に居たハシア達が軽やかな身のこなしで飛び降り、歩み寄って来た。

「よーぉ」
「皆さん、ご無事ですか?」

 制刻と河義は小型トラックから降車。
 制刻はハシアに向けて端的な挨拶で呼びかけ、河義はハシア達に安否を尋ねる。

「ええ……しかし、なぜあなた達がまたここに……?」

 ハシアは河義に尋ねる。

「私たちの宿営地も襲撃を受けまして、その際、こちらへ逃げてゆく個体を確認したんです。そこで、ひょっとしたら村も襲撃を受けているのではないかと、気がかりになりまして」
「成程……」
「そ、そうなんだ……」

 河義の説明に、ハシアやアインプは少したじろいだ様子で発する。

「彼等、ちょっと引いてるな……」

 彼等のその様子に、ハシア達の心情に感づいた運転席の鳳藤が発する。

「ま。見てて気分のいいモンじゃぁねぇからな」

 それに対して制刻は淡々と返した。

「……いや――すまない。正直、僕等は危ない所だった。その窮地を救ってくれた君たちに、こんな態度は失礼だな……」

 ハシアはそんな言葉で、自分の態度を反省。

「ありがとう、おかげで助かったよ」

 そして凛とした態度を作り直し、河義等に向けて礼の言葉を述べた。

「とんでもない、感謝するのは私達の方です。あなた方の警告を事前に受けていなかったら、対応が後手に回って、もっと被害を被っていたかもしれなかった」

 ハシアの謝罪と礼に、河義は同じく礼で返した。



 河義等とハシア等が話している傍ら、小型トラックの後方でごそりと動く一体のゴブリンの姿があった。
 攻撃を逃れ、生き残った一体のゴブリンは、得物である手斧を握りしめて起き上がり、小型トラックの傍らに立つ制刻に、背後から飛び掛かった。



「――!君、後ろッ!」

 制刻の背後から襲い掛かるゴブリンの姿がハシアの目に映り、彼の警告の声が響く。
 その次の瞬間、鋭い手に握られた斧が、今まさに制刻に振り降ろされた。
 ――しかし斧が制刻に届く事は無く、代わりに「ギェ!」というゴブリンの悲鳴が小さく響いた。
 見れば、制刻が前を向いたまま後ろに振り上げた右腕の拳骨が、ゴブリンの独特の長い鼻面をへし折り、顔面にめり込んでいた。
 制刻は拳骨を降ろすと、同時に弾帯に挟んでいた鉈を抜き、片足を軸に身を翻す。そして未だ中空にあったゴブリン目がけて、鉈を振り上げた。
 振り上げられた鉈はゴブリンの首元に真横から突き刺さり、ゴブリンは今度は声にならない掠れた悲鳴を零し、刺さった鉈に支えられて中空にぶら下がった。

「うわ……!?」
「おま――大丈夫か……!?」

 制刻以外の各員は、制刻の一連の動作が終わった後にようやく事態を把握。鳳藤は驚きの声を上げ、河義は冷や汗を一筋流しながら、制刻に安否確認の言葉を発する。

「えぇ、大丈夫です」

 対する制刻は淡々と返事を返しながら、ゴブリンの刺さったままの鉈を振り降ろし、勢いでゴブリンの体から鉈を引き抜く。そしてゴブリンの死体は地面に叩き付けられた。

「まだ生き残りがいたのか……!鳳藤、策頼、各個体を確認してくれ」
「了解です……!」
「了」

 指示を受け、鳳藤と策頼は小型トラックから降車。ゴブリンの死体の確認作業へ取り掛かって行った。

「君、すごいな……反応の速さもだけど、その体躯でよくあそこまで素早い動きができたね……」
「あぁ、ちぃとコツがあるんだ」

 ハシアの驚き混じりの評価の言葉に、対する制刻は特段誇るでもなく、簡単に答えて見せた。

「危なかったな……しかし――なぜ彼らはこうやって人を襲うんです?」

 河義は制刻が倒したゴブリンの亡骸に、一度視線を送ってからハシアに尋ねる。

「僕らが知る限りでは、ゴブリンだから、としか……。ゴブリンは、生きる糧を自分達以外の種族や動物を襲って得る種族だと言われています」

 あまり愉快ではない話だからか、ハシアは少し声のトーンを落として説明する。

「ではやはり、対話は不可能な存在だと」
「今の所は、そういう認知です」
「そうですか……」

 説明を聞いた河義も、同様にあまり愉快ではなさそうな表情で返した。

「とりあえず、割り切るしかねぇようだな――で、皺共はこれで全部か?」

 今度は制刻が、周辺に散らばるゴブリン達の死体を一度見渡してから、ハシアに尋ねる。

「僕等も全体数は把握してないけど、昨日までの襲撃の時に来た数と比べると、これが群れの本体である可能性は、低くないと思う」

 ハシアは同様にゴブリン達の死体に目をやりながら、分析の言葉を発する。

「そりゃいい。だが、念のためここいら周辺を、攫っといたほうがいいかもしれません」
「だな……」

 制刻の進言に、河義は同意し呟いた。



 昨晩の襲撃を受け、隊は高地及び集落周辺の調査索敵を徹底的に行った。
 結果、単体個体や少数グループのゴブリンとの接敵が2~3報告あったのみで、大規模な集団との接触は無く、隊はゴブリンの群れが周辺から掃討された物と結論づけた。

「――と、いう訳です。ゴブリンの群れは、この辺りからいなくなったの見て問題ないでしょう」

芽吹きの村の村長宅では、井神が村長にゴブリンが掃討された旨を説明する姿があった。

「なんと……!それはうれしい知らせです……」

 井神の言葉に、驚きつつも感謝の言葉を述べる。

「なんとお礼を言ったら良いか。これでまた、元の生活に戻る事が出来ます」
「僕等からも感謝するよ。正直、今の僕たちにあの規模のゴブリンの群れは相手として厳しかった」
「もっと強くなんないとねー……」

 ハシアが村長に続いて感謝の言葉を述べ、隣にいたアインプが頭を掻きながら零す。

「いえ、私たちも自身の身を守るために行動したに過ぎません。私たちの方こそ、数々の情報と協力をいただき、ありがたく思っています」

 対する井神も、村長やハシア等に向けて礼の言葉を返した。



 村の外の広場には、ジープベースの小型トラックが2両、止められている。

「では、我々はこれで失意礼いたします」

 村長宅を出た井神は、挨拶と共に帽子を被り、身を翻して小型トラックへと戻る。

「所で、オメェ等はこれからどうすんだ?」

 一方、制刻はハシアへと視線をやると、そんな旨の言葉を発した。

「あぁ、僕たちは近いうちに村を発って、東を目指す予定さ。君たちは?」
「さぁな。今の俺等は流浪の身だ。色々手探りで、調べていくことになるだろうな――」

 互いの今後を話す制刻とハシア。

「ひょっとしたら、また会う事もあるかもしれないね」
「あぁ。そん時まで、元気でな」

 制刻とハシアは、最後に互いに別れの言葉を交わした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

装甲列車、異世界へ ―陸上自衛隊〝建設隊〟 異界の軌道を行く旅路―

EPIC
ファンタジー
建設隊――陸上自衛隊にて編制運用される、鉄道運用部隊。 そしてその世界の陸上自衛隊 建設隊は、旧式ながらも装甲列車を保有運用していた。 そんな建設隊は、何の因果か巡り合わせか――異世界の地を新たな任務作戦先とすることになる―― 陸上自衛隊が装甲列車で異世界を旅する作戦記録――開始。 注意)「どんと来い超常現象」な方針で、自衛隊側も超技術の恩恵を受けてたり、めっちゃ強い隊員の人とか出てきます。まじめな現代軍隊inファンタジーを期待すると盛大に肩透かしを食らいます。ハジケる覚悟をしろ。 ・「異世界を――装甲列車で冒険したいですッ!」、そんな欲望のままに開始した作品です。 ・現実的な多々の問題点とかぶん投げて、勢いと雰囲気で乗り切ります。 ・作者は鉄道関係に関しては完全な素人です。 ・自衛隊の名称をお借りしていますが、装甲列車が出てくる時点で現実とは異なる組織です。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

超克の艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
「合衆国海軍ハ 六〇〇〇〇トン級戦艦ノ建造ヲ計画セリ」 米国駐在武官からもたらされた一報は帝国海軍に激震をもたらす。 新型戦艦の質的アドバンテージを失ったと判断した帝国海軍上層部はその設計を大幅に変更することを決意。 六四〇〇〇トンで建造されるはずだった「大和」は、しかしさらなる巨艦として誕生する。 だがしかし、米海軍の六〇〇〇〇トン級戦艦は誤報だったことが後に判明。 情報におけるミスが組織に致命的な結果をもたらすことを悟った帝国海軍はこれまでの態度を一変、貪欲に情報を収集・分析するようになる。 そして、その情報重視への転換は、帝国海軍の戦備ならびに戦術に大いなる変化をもたらす。

最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~

尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。 ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。 亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。 ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!? そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。 さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。 コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く! はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。

スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。 地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!? 異世界国家サバイバル、ここに爆誕!

処理中です...