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チャプター1:「異世界への降着 ―異質な〝ヤツ〟と中隊―」
1-2:「ファーストコンタクト 前編」
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高地を下り麓へと降りた小型トラックは、その先に広がる森の中へと入った。
森の中には、人の行き来により自然にできたと思われる道があり、小型トラックはそれを利用して難なく森の中を走り抜けてゆく。
「集落の情報にばかり意識が行ってたが、こんな森も演習場内にはなかったはずだ」
助手席に座る河義は、流れてゆく森の景色に目を配りながら呟いた。
その背後、小型トラックの荷台では、制刻と鳳藤がそれぞれ自身の小銃に弾倉を装填している。
「何も装填まで……なぁ、本当にここまでしておく必要があるのか?」
「知らねぇ。分からねぇから、こうやって備えておくんだ」
懐疑的な表情で尋ねる鳳藤に、制刻はその独特の重低音で端的に返事を返す。
小型トラックはしばらく走り続け、やがて前方に森の出口が見えてきた。
「河義三曹、あれを」
運転席でハンドルを握る策頼が、視線で前方を示す。森の出口付近にオートバイに跨り、こちらに向けて手を振る隊員の姿があった。
「無線連絡を寄越した21偵の隊員だな」
小型トラックは森の出口に到達し、オートバイの隣へと停車する。
「54普連、2中の河義三曹だ。21偵の新好地士長か?」
河義の問いかけに新好地は「そうです」と返し、両者は軽い敬礼を交わし合う。
「それで、あそこに見えるのが例の集落か」
森の出口から先はなだらかな下り坂になっており、河義はその先を見下ろす。
そこには報告道理、確かに小さな集落が存在していた。
「ほぅ。確かに妙ちくりんだ」
同じく集落を見下ろしていた制刻が呟く。
眼下に見える集落には、いくつかの家屋がポツポツと並んでいたが、それらはどれも日本国内で一般的に見られる住宅とは異なる物だった。
河義は荷台に積んだ無線機を手繰り寄せ、高地頂上の通信指揮車に向けての回線を開いた。
「こちら川越14、河義三曹。調布21、応答願う」
《河義か、井神だ》
無線の相手には、井神が直接出た。
「井神一曹、こちらは報告を受けた集落の外れに到着。21偵の新好地士長とも合流しました。まだ外れから様子を見ている所ですが、新好地士長の報告道理です。集落にはおとぎ話に出てくるような、小洒落た家屋が並んでます」
「自分の幻覚ではないという事は、分かってもらえましたか?」
河義の横から、新好地が冗談交じりの台詞を発する。
「これより集落に赴き、情報を集めたいと思います」
《よし。河義、判断はお前に任せる。しかし無理はするなよ、何かあればすぐさま帰投しろ》
「分かりました。川越14交信終了」
報告を終えた河義は無線を切り、無線機を荷台へと戻す。
「何かって、そんな……」
一方、井神の最後の忠告の言葉に、それを聞いていた鳳藤は苦い表情を作って声を漏した。
「新好地士長、君はここに留まり見張りを続けてくれるか?」
「構いませんが……必要でしょうか?」
河義の指示に、新好地は疑念の声を返す。
「まぁ、念のためな。――策頼、村の入り口まで進めてくれ」
「了解」
背後を新好地に任せ、小型トラックは再発進。
なだらかな坂を下り、集落の入り口付近へと乗り付けた。
「映画のセットか観光施設みたいだな……」
河義は小型トラックの助手席から降りながら、近場で見る集落の様子に対して、そんな言葉を漏した。
「よし、皆も降りろ。手分けして集落を調べるぞ。俺は家屋を何件か訪ねてみる。策頼、俺と一緒に来てくれ」
「了解」
策頼は同行の指示に端的に答えながら、小型トラックに載せていた自身の小銃を取り出し、肩へとかける。
「そんじゃあ、俺等は奥の方を見てきましょう」
「あぁ、頼むぞ制刻」
「よぉし剱、行くぞ」
制刻は河義に集落の奥側の調査を進言。河義の了解を得ると、鳳藤を呼びながら、集落の奥へと進みだす。
「お、おい!勝手に決めるなよ……!」
鳳藤は文句を吐き出しながら制刻の後に続いた。
「さて、まずあそこから訪ねてみるか」
河義は制刻等を見送ると、一番近くに建つ一軒の家屋に目星をつけ、玄関口と思われる扉へと近づく。そして扉をノックしながら、声を上げた。
「すみません。私は陸隊、北部方面隊の者です。どなたかいらっしゃいませんか?」
自身の身分を名乗りながら、居住者に呼びかける河義。
しかし少し待ち、さらに二度ほど呼びかけても、家屋の中から人が出てくる気配は無かった。
「河義三曹。見てきましたが、扉や窓は全部閉まってます」
家屋の周囲を回って来た策頼が、河義にそう伝える。
彼の言う通り、家屋の窓は全て木板でできた外窓で、完全に締め切られていた。
「この家には、誰も住んでいないんじゃないでしょうか?」
策頼は独特の鋭い目つきで、誰も出てこない家屋をしげしげと眺めながら発言する。
「そうは思えないがな……見ろ、新好地士長が言っていたように、確かに生活の痕跡がある」
河義は言いながら、家屋の壁際に視線を向ける。そこには最近用意されたばかりと見られる薪の束が、いくつか丁寧に積み重ねられていた。
「ひょっとしたら先の閃光と振動で、住人の身になにか起こったという可能性もある。よくよく注意しながら回ろう」
「了解」
河義等は最初の家屋を後にし、次の家屋へと向かった。
一方の制刻と鳳藤は、集落の中央を通る小道を、その両脇に点在する家々を調べつつ進んでいく。
「古めかしいのはパッと見だけってワケじゃねぇな。おまけに、インフラに関わる設備がまったく見当たらねぇ」
制刻が呟くように、立ち並ぶ家屋はどれも、外面だけの飾りではなく、純粋に木材とレンガを主として構成されていた。しかし異質なのはそれだけではなく、現代ではどんな田舎の家屋でも大抵みられる、電線やアンテナ、水道やガスのメーター、空調の室外機、そういった類の設備が一切見かけられなかった。
「やはり、河義三曹が言っていたように、映画のセットとか、観光施設の跡なんじゃないのか?それが撤去されずに残っていただけとか……」
「北東演習場ができてから何十年も経つ。そんなモンが掌握されずに残ってると思えねぇがな」
家屋の周囲をまるで不審者のように見て回りながら、制刻と鳳藤は考察を交わす。
「まぁ、その前にこの辺が演習場内だって保証もねぇがな。全く違う場所だってんなら、この得体の知れない集落にも、なんぼか説明はつく」
「はぁ?違う場所って……」
制刻の台詞に、鳳藤は怪訝な顔を浮かべる。
「演習場以外の別の土地に、漂流者のように流されたとでも言うつもりか?それも部隊ごと……非現実的にも程があるぞ」
「その非現実的な事が、すでにいくつも現実に起こってるだろうが。この集落に、地形の変わり様、不自然に消えた他の部隊。井神一曹等もまだ口には出さねぇが、頭の隅では考えてるだろうよ」
「だからって……じゃあ、ここは一体どこだって言うんだ」
「それが分かりゃ苦労はしねぇ。とにかく、俺等の知らねぇどっかさ」
言葉を交わしながらも家屋を調べ終わり、制刻と鳳藤はその場を離れて別の家屋へと向かった。
「――あ、あいつら二手に分かれたよ!」
「手分けして村を漁るつもりだろうか……?」
集落の奥の方に建つ家屋の一つ。その屋根の上に、声を交わし合う二人分の人影があった。
一人は僧服を身に纏った中性的な顔の青年。もう一人は革製の服の上に、肩当などいくらかの甲冑を纏った、整った顔立ちの女。
両者は家屋の屋根の傾斜を利用して身を隠し、地上の様子を伺っていた。
「どんな様子?」
その二人に背後から声が掛けらる。二人が振り向くと、家屋の裏に掛けられた梯子を上って来た、少年の上半身姿が目に映った。
「あ、勇者様」
僧服の青年から勇者様と呼ばれる少年。
旅人向けの服装の上から、先の女と同様にいくつかの装飾と甲冑を身に纏うその少年は、一見すれば少女と見まがう程の可憐な顔立ちをしてた。
「侵入者は村の各家を調べ回ってるみたい。そしてその内二人は少しづつこちらに向かって来てる」
僧服の青年は、自身が勇者と呼んだ少年に、地上に現れた侵入者の動きを説明する。
「まだ、家に押し入って荒らすような事はしていないのかい?」
「うん、今の所その様子はないね」
「うーん……盗賊の類かと思ったけど、ひょっとして違うのかな……」
屋根に上がり、他の二人に加わった少年は、地上の人影を観察しながら呟く。
屋根の上に並んだ三人の顔には、一様に緊張と疲労の色が浮かんでいた。
「えぇー……でも怪しさ満点だよぉ?おかしな馬や荷車に乗ってるし、格好も旅人にしては変だし」
しかし少年の言葉に、隣にいる女は訝し気な声を返した。
「まだ獲物の品定めをしてる途中とかじゃない?貴重品や珍しい物しか狙わない盗賊とかもいるじゃん」
「そうかもしれないけど……まだ分からないな、もう少し様子を見てみよう」
地上の侵入者の観察を続ける少年たち。侵入者は、やがて肉眼で表情が確認できる所まで近づいて来る。
「昨日、戦いになった辺りに踏み込んだ。あそこまでくれば姿もよく見えるように――うッ!?」
「ん?何?――いぃッ!?」
侵入者の明確な姿をその目に捉えた少年たちは、接近して来た二人組の内の、大柄の人物の容姿に目を見開いた。
「ちょっとちょっと、こっちに来るアイツ、なんか見た目がやばいよ!?」
「亜人の類か?でも、オークやトロル、オーガとかとも違う見た目だ……」
大柄の人物は形容し難い外見をしていた。特にその顔は異様に歪で、言葉にしがたい嫌悪感を感じさせる。
オークやトロルなどの亜人種ですら、その人物と比べればいくらか整った顔をしているとさえ感じた。
「よくわかんないけど、あいつ絶対やばいって!仕掛けてやっつけなきゃまずいよ!」
「いや……焦っちゃ駄目だ。まだ目的は分からないし、やり過ごせるならそのほうがいい」
攻撃を提案する女を説いて落ち着かせ、少年は観察を続けようとする。
「勇者様!」
しかしその時、屋根の下から少年達だけに聞こえる声量で、呼びかけの声が聞こえた。少年が地上へと顔を覗かせると、そこには一人の老人と、重装備の甲冑に見を包んだ端正な顔立ちの美青年がいた。
「ガシティア。それに村長さんまで、一体どうしたの?」
老人はこの集落の村長だった。村長は焦りと申し訳なさの入り混じった声で、少年に向けて話し出す。
「勇者様。それが……村の子供の一人が、大事な物を取りに行くと言って、飛び出して行ってしまったのです……!」
「え!?」
村長の説明に、少年は表情を険しくした。
「申し訳ありません、避難先の家から出てはならないと、きつく言い聞かせておいたのですが……」
「ご家族が目を離した隙に、抜け出してしまったそうだ」
村長の隣にいた、ガティシアと呼ばれた重装備の青年が補足を加える。
「まずいな……侵入者もすぐそこまで来てて……」
「あ!ちょっと、あれッ!」
少年の言葉を遮り、女が声を上げながら、慌てた様子で地上を指し示した。
女が指し示す先に視線を向けると、なんと地上にいる二人組の侵入者の近くに、件の子供と思わしき姿があった。そして二人組の片割れが、子供へと近寄って行く様子が見える。
「まずいよ、これ絶対まずいよ!」
その様子を見て、女はいよいよ焦りだす。そして少年は少し悩んだ後に、意を決して言葉を発した。
「……仕方ない。あの子に何かあってからじゃ遅い、仕掛けよう!アインプと僕で前に出る!」
「!――そうでなくっちゃ!」
少年の言葉に、アインプと呼ばれた女は不敵な笑みを浮かべると、傍に置いてあった巨大な斧を手に取った。
「イクラディ、火炎魔法で最初の牽制をお願い。僕たちが配置するのは待たなくていい、詠唱が完了したらとにかく撃って!」
「分かったよ、勇者様!」
少年から指示を受けた、イクラディと呼ばれた僧服の青年は、返事と同時に手にしていた分厚い本を広げた。
「間違っても、子供に当てたりしないでよッ!」
「分かってるよ!」
女のからかいの言葉に、僧服の青年は少しムスッとした顔で答えながら、
「鋭気溢れる熱と炎よ。その力を我は借り受けたい……その力にて仇成す者を包みたまえ!」
僧服の青年は開いた項に目を落とし、呪文を紡ぎ始めた。
「ガティシアは村長さん達を守って!」
「承った」
少年の指示に、甲冑の青年は端正な声で答える。
「よし、アインプ行くよ!」
「はいよッ!」
そして合図と共に、少年と斧を持つ女は、家屋の屋根の上から飛び立った。
集落の中程まで歩いた所で、制刻は周辺の家屋の変化に気付く。
「この辺、妙に荒れてんな」
周辺のいくつかの家屋は、レンガの壁の一部が崩落していたり、木板でできた外窓が壊れていたりと、損傷しているのが見て取れた。
よく調べるために、制刻と鳳藤がその内の一軒へと近づくと、その家屋は外窓だけでなく内側のガラス窓まで割れており、家屋の内外に破片が散らばっていた。
「混じりモンが多い。精度のよくねぇガラスだな」
制刻は地面に落ちたガラス片の一つを拾い上げると、観察しながら呟く。
「……なあ、やっぱりここは観光施設か何かの跡地だよ。申請の不手際かもしくは未許可の施設で、演習場管理隊の掌握から漏れていたとか、そんな所じゃないか?」
制刻の様子を横目に見た鳳藤は、周囲を見渡しながら言う。
「古めかしいがそいつぁどうだろうな、見てみろ」
「おい、流石に中を覗くのは……」
「今更何言ってやがる。いいから」
所有者が不明な家の中を覗くことに、鳳藤は抵抗を示したが、結局制刻に押され、ガラス越しに屋内を覗き見る。
すぐ側の、古めかしい調理場らしき場所には、最近まで使われていたと思われる調理器具が並んでいる。奥に見える部屋には、片づけの途中であった思われる、中途半端に畳まれた衣類が床に散らばっていた。
「……嘘だろ、生活の形跡が?」
人が住んでいるのであろう生々しい生活の跡を確認し、鳳藤は微かに目を見開く。
「だからって、誰がこんな所で……?」
「さあな。普通に考えりゃ、よほどの懐古趣味か、突き抜けたエコロジストあたりの変わりモンだろうが、あるいは――」
考察を呟いていた制刻と鳳藤だったが、その時、微かな物音が聞こえた。
「今のは?」
音源は家屋の側面の死角からだ。
物音に気がついた二人は、家屋の側面を覗き込む。見れば、そこには5歳前後とみられる男の子がいた。背後の家屋の裏口が空いていることから、そこから出て来たものと思われ、彼の腕には木でできた人形が抱かれていた。
「子供だ……!」
「やっぱり無人じゃなかったか」
制刻は呟くと、男の子に視線を向けて話しかける。
「悪ぃなボウズ、少し邪魔してる。聞きてぇんだが、ここに坊主の親御さんとか、誰か大人はいねぇのか?」
制刻が質問を投げかけるも、しかし男の子は固まったまま反応を示す様子がない。
「自由……よく見ろ。お前の歪な顔に怯えてしまっている」
「あぁ?」
鳳藤の言葉道理、制刻の容姿に男の子は明らかに怯えていた。
「まったく……私に任せろ」
眉を顰める制刻に対し、鳳藤は不敵な笑みでそう言いながら、フッと小さく鼻を鳴らす。
「やあキミ、大丈夫かい?もう怖がらなくてもいいよ」
そして男の子へと向き直った鳳藤は、美女と言っても過言ではないその端麗な顔に、さわやかな笑顔を作ると、男の子へと語りかけ始めた。
「心配しないでくれ。私たちはたまたま立ち寄った者で、ちょっと聞きたいことがあるだけなんだ。どうだろう、私とお話ししてくれないかな?」
それまでの不安の滲み出る態度を一変させて、微かな妖艶を醸し出し、子供相手というより女でも口説くような声色を作りながら、男の子との距離を詰める鳳藤。
「ガワだけは一丁前だなコイツ」
そんな変わり身の早さを見せた鳳藤を、制刻は端から冷ややかな眼で見ていた。
「――あ?」
しかしその直後、制刻は何かの気配を察知する。
そして村の奥の方へ視線を移すと、目に映ったのは、こちらに向けて飛んで来る〝火の玉〟だった。
「避けろッ!」
「え?――ほぎゃぁッ!?」
次の瞬間、制刻は戦闘靴の裏で劔の尻を蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされた鳳藤は、先程までの王子様のような振る舞いから一転した、無様な悲鳴を上げながら吹っ飛ぶ。制刻は蹴りを放つと同時に自身も、その巨体にあるまじき切り返しの速さで、すかさず反対方向に跳躍する。
「ぶッ……お前――ッ!」
蹴り上げられた後に地面へと突っ込んだ鳳藤は、制刻に抗議の言葉を向けるべく、鋭い目つきを作り背後を振り返る。
「ッ!?わぁッ!?」
だが彼女が振り返った瞬間、目の前、先程まで自分等が立っていた場所からすぐ近い場所に、直径50cm程の大きさの火炎の玉が直撃した。砂と土だけの地面に落ちた炎は、一瞬だけわずかに燃え広がった後にすぐに消えていった。
「な、何だ!?炎が突然……そうだ、君ッ!?」
突然の出来事に、地面に這いつくばったまま目を丸くしていた鳳藤だったが、先の男の子の安否が頭をよぎり、彼の居た方向に視線を向ける。
男の子は変わらず怯えた顔でその場に立ち尽くしていたが、外傷は見受けられず、鳳藤は胸を撫でおろす。そして彼を保護するべく近づこうとした。
しかし次の瞬間、それを遮るように、頭上から何者かが突然飛び降りてきて、姿を現した。
「わッ!?」
現れたのは十代半ば程と見られる少年だった。
家屋の屋根から飛び降りて来たのだろう少年は、着地するとすかさず目の前の男の子へと近寄る。
「イシュクェイフッ!」
少年は男の子に向けて、聞きなれない言葉で何かを叫んだ。そして男の子を背中側から抱きかかえると、次の瞬間少年は姿を消した。
「なッ!?」
鳳藤は驚愕するが、しかし直後に気配が頭上に移った事を察知し、視線を上へと向ける。そこには家屋の屋根よりも高い中空で舞う、少年と男の子の姿があった。少年は一度の跳躍で、それほどの高さまで飛び上がったのだ。
やがて重力に引かれ出した少年は、家屋の屋根の上にかろやかに着地。そのまま死角へと姿を消してしまった。
「ッ――ま、待てッ!」
信じがたい光景に目を奪われていた鳳藤だったが、男の子が連れ去られたという事態を把握し、声を張り上げると共に、消えていった少年を追いかけようとする。
「うわッ!?――痛ッ!」
しかし駆け出す前に、鳳藤は背後から突き飛ばされ、目の前の家屋の壁へと体をぶつけた。
「カバーが先だ」
鳳藤を突き飛ばしたのは、他でもない制刻だった。制刻は鳳藤を家屋の壁に片手で押し付けながら、自分も家屋の死角へと身を隠す。
「お前……何するんだ!?」
「さっきの火の玉がまた飛んでくるかもしんねぇ、様子を見ろ」
「そんな悠長な事……見ただろ!人が飛び上がって……!それに子供が連れ去られて……!」
壁に押さえつけられた鳳藤は、動揺を露わにしながらも抗議の声を上げる。
「まず落ち着け。火達磨になりてぇんなら放り出してやるが」
しかし制刻はそんな鳳藤を片手間に抑えながら、家屋の死角から村の奥の様子を伺っていた。
「なんだ!どうした!?」
そんな二人の耳に、集落の入り口近くにいる河義からの声が届く。一連の騒ぎに伴う騒音を聞き、河義等も異常事態に気付いたようだ。
「なんだか知りませんが、突然火の玉が降ってきました」
制刻は普段通りだが、しかしはっきりと聞き取れる声で報告の声を送る。
「何だってぇ?火の玉……!?」
「とにかく身を隠してください」
報告に河義は怪訝な声を返すが、制刻はそれ以上説明はせず、身を隠すことを進言。進言を受けた河義は策頼と共に、停車中の小型トラックの影へと身を隠した。
「おい!もう放せ……!」
一方、未だに壁に押さえつけられていた鳳藤は、身じろぎでその事を訴え、ようやく解放された。
「クソッ……何だって言うんだ?火炎瓶か、それとも焼夷ランチャーでも撃ち込まれたのか?いや……それよりもさっきの少年だ!信じられるか、屋根の上まで一瞬で飛び上がったぞッ!?」
「摩訶不思議で愉快だな」
困惑しながら喚き立てる鳳藤を適当にあしらいつつ、制刻は後方の河義等へと視線を向ける。
「ここの住民の方ですか!?聞いてくださいッ!我々は陸隊、北部方面隊の者です!危害を加える者ではありませんッ!」
河義は小型トラックの影から声を張り上げ、集落に潜んでいると思われる何者かに対して、呼びかけを行っていた。
「河義三曹」
制刻はそんな河義の発声に割り込むように、彼に呼び掛ける。
「あぁ?何だ?」
「今のうちに発砲許可をもらえますか」
制刻のその進言は、軽い頼み事でもするかのような調子で発せられた。
河義はその言葉を噛み砕くのに時間を要したのか、少しの間をおいてから返事を返した。
「………本気か!?」
「警告も無しにぶち込まれましたんで、妥当な所かと。それに、樺太ん時みてぇに、ゴタついて殺されかけんのはお断りです」
「……ッ、しょうがない。だが可能な限り威嚇に留めろ、殺傷を伴う射撃は本気でヤバい時まで控えろ」
河義は若干のためらいが混じった口調で許可を出す。
「どうも」
対する制刻は河義のその言葉に、まるで些細な事務連絡でも終えた時のように端的に返答した。
「お、おい!いくらなんでも発砲なんて……」
「実際、撃つ撃たないはともかく、やり易くしとくに越したこたぁない」
「だからって――」
淡々と言う制刻に、なおも食い下がろうとする鳳藤だったが、直後に響いた声が彼女の言葉を遮った。
「自由さん、背後上空ッ!」
端的で鋭いその声は、河義と共に小型トラックに姿を隠す唐児の物だ。
彼の言葉に導かれるままに、制刻と鳳藤は自分等の背後、斜め上に視線を向ける。そこには、中空に身を置き、そして今にも二人に襲い掛からんとする、一人の女の姿があった。
制刻等の背後に位置する家屋の屋根に潜み、そこから飛び降りてきたのだろう。その女の両手には、創作の世界でしかお目にかかれないような、巨大な斧が握られている。
「ジャアアアアッ!!」
そして女は掛け声とも叫び声ともつかない声を発しながら、自らの得物を二人に向けて、斜め向きで思いっきり振り下ろした。
「おぉっと」
「ひッ!?」
鳳藤は悲鳴と共にその場から飛び退き、制刻は最低限の動きで半身を捻り、それぞれ斧を回避。冗談のように巨大な斧は、しかし獲物に食らいつくこと叶わず、背後の家屋の角を掠って破損させた。
「デュンクッ……!ブレムヘスィ ロラ エジェネィフ……ッ!」
初撃に失敗した斧の主の女は、何か困惑したような表情で声を漏らす。
しかしそれも一瞬、女は地面に足を着いた瞬間に、素早く体を一回転させて、制刻と相対する。そして制刻に向けて、低い位置で持ち直した斧を思いっきり振り上げた。
「俺をご指名か」
対する制刻は後ろに一歩後退し、振り上げられた斧を回避。再び空を切った斧は、明後日の方向へと反れてゆく。
本来なら勢いと斧の重量に、そのまま体を持って行かれそうなものだが、しかし女は己の腕力のみで斧を引き留めて見せた。
「トゥッ!ジャァウッ!」
掛け声と思しき発声と共に、三撃目が振り降ろされ、さらにそこから連続動作で四撃目が横一文字に薙ぎ払われる。
一方制刻は、一歩、一歩と後退しながら、襲い来る斬撃をひらりひらりと回避していく。
「本気みてぇだな。それじゃ、しゃあねぇ」
回避行動を行いながらも、制刻はそんな事を呟く。
一方、斧女は今まさに五撃目を振り降ろそうとする瞬間だった。
「――オゴォッ!?」
しかし――次の瞬間、女の腹部に鈍痛が走った。見れば、女の腹部には制刻の膝がめり込んでいる。
制刻は彼女が振りかぶった際にできた一瞬の隙を突き、膝蹴りを放ったのだ。
体をくの字に折り、少量の胃液を吐き出しながら宙へと舞う斧女。
「グゥッ!?」
彼女はそのまま背後の家屋の壁に叩き付けられた。
「こいつぁビックリだぜ」
突然現れ、襲い掛かって来た女の人間離れした一連の動きに、そんな感想を呟く。
一方、女は崩れ落ちかけた所を踏んばり、身体を支える。
ダメージは少なくないらしく、その表情は苦し気だが、その目は制刻に攻撃の意思を向け続けていた。制刻は女の動向を警戒しつつ、対応行動を取ろうとする。
「奥の家屋の屋根にいるッ!」
しかしそこへ、再び策来の警告の声が響いた。
制刻が示された方向に視線を送ると、集落の奥に位置する家屋の上に、人影を捉える。その人物の掲げる両手の中には、先程制刻等を襲った物と同じ、直径50cm程の火の玉が浮かんでいた。そしてその火の玉は、今まさに彼の腕から制刻に向けて放たれようとする直前だった。
「アレって――まずいぞッ!」
同じく、家屋の影からそれを見ていた鳳藤が、危機を感じて声を上げる。
「成程」
かたや制刻は、彼女の声を聞き流しながら呟くと、大して焦る様子も見せずに、肩から下げていた銃を繰り出し構える。
そして、その引き金が引かれた。
発砲音が響き、マズルフラッシュが瞬く。銃身から複数の5.56㎜弾が撃ち出される。放たれた弾頭の群れは、音よりも早く家屋の屋根へ着弾した。
「ネゥッ!?」
火球の主の足元で弾けるような着弾音が響き、瓦が破損する。そして彼の、驚きと困惑の色が混じった悲鳴が上がった。
突然襲い来た現象は彼の手元を狂わせ、彼の手を離れた火球は、大きく変じた軌道を取る。そして制刻等より遥かに手前の地面に落ち、先と同様わずかに燃え広がった後に勢いを減じ、やがて掻き消えた。
森の中には、人の行き来により自然にできたと思われる道があり、小型トラックはそれを利用して難なく森の中を走り抜けてゆく。
「集落の情報にばかり意識が行ってたが、こんな森も演習場内にはなかったはずだ」
助手席に座る河義は、流れてゆく森の景色に目を配りながら呟いた。
その背後、小型トラックの荷台では、制刻と鳳藤がそれぞれ自身の小銃に弾倉を装填している。
「何も装填まで……なぁ、本当にここまでしておく必要があるのか?」
「知らねぇ。分からねぇから、こうやって備えておくんだ」
懐疑的な表情で尋ねる鳳藤に、制刻はその独特の重低音で端的に返事を返す。
小型トラックはしばらく走り続け、やがて前方に森の出口が見えてきた。
「河義三曹、あれを」
運転席でハンドルを握る策頼が、視線で前方を示す。森の出口付近にオートバイに跨り、こちらに向けて手を振る隊員の姿があった。
「無線連絡を寄越した21偵の隊員だな」
小型トラックは森の出口に到達し、オートバイの隣へと停車する。
「54普連、2中の河義三曹だ。21偵の新好地士長か?」
河義の問いかけに新好地は「そうです」と返し、両者は軽い敬礼を交わし合う。
「それで、あそこに見えるのが例の集落か」
森の出口から先はなだらかな下り坂になっており、河義はその先を見下ろす。
そこには報告道理、確かに小さな集落が存在していた。
「ほぅ。確かに妙ちくりんだ」
同じく集落を見下ろしていた制刻が呟く。
眼下に見える集落には、いくつかの家屋がポツポツと並んでいたが、それらはどれも日本国内で一般的に見られる住宅とは異なる物だった。
河義は荷台に積んだ無線機を手繰り寄せ、高地頂上の通信指揮車に向けての回線を開いた。
「こちら川越14、河義三曹。調布21、応答願う」
《河義か、井神だ》
無線の相手には、井神が直接出た。
「井神一曹、こちらは報告を受けた集落の外れに到着。21偵の新好地士長とも合流しました。まだ外れから様子を見ている所ですが、新好地士長の報告道理です。集落にはおとぎ話に出てくるような、小洒落た家屋が並んでます」
「自分の幻覚ではないという事は、分かってもらえましたか?」
河義の横から、新好地が冗談交じりの台詞を発する。
「これより集落に赴き、情報を集めたいと思います」
《よし。河義、判断はお前に任せる。しかし無理はするなよ、何かあればすぐさま帰投しろ》
「分かりました。川越14交信終了」
報告を終えた河義は無線を切り、無線機を荷台へと戻す。
「何かって、そんな……」
一方、井神の最後の忠告の言葉に、それを聞いていた鳳藤は苦い表情を作って声を漏した。
「新好地士長、君はここに留まり見張りを続けてくれるか?」
「構いませんが……必要でしょうか?」
河義の指示に、新好地は疑念の声を返す。
「まぁ、念のためな。――策頼、村の入り口まで進めてくれ」
「了解」
背後を新好地に任せ、小型トラックは再発進。
なだらかな坂を下り、集落の入り口付近へと乗り付けた。
「映画のセットか観光施設みたいだな……」
河義は小型トラックの助手席から降りながら、近場で見る集落の様子に対して、そんな言葉を漏した。
「よし、皆も降りろ。手分けして集落を調べるぞ。俺は家屋を何件か訪ねてみる。策頼、俺と一緒に来てくれ」
「了解」
策頼は同行の指示に端的に答えながら、小型トラックに載せていた自身の小銃を取り出し、肩へとかける。
「そんじゃあ、俺等は奥の方を見てきましょう」
「あぁ、頼むぞ制刻」
「よぉし剱、行くぞ」
制刻は河義に集落の奥側の調査を進言。河義の了解を得ると、鳳藤を呼びながら、集落の奥へと進みだす。
「お、おい!勝手に決めるなよ……!」
鳳藤は文句を吐き出しながら制刻の後に続いた。
「さて、まずあそこから訪ねてみるか」
河義は制刻等を見送ると、一番近くに建つ一軒の家屋に目星をつけ、玄関口と思われる扉へと近づく。そして扉をノックしながら、声を上げた。
「すみません。私は陸隊、北部方面隊の者です。どなたかいらっしゃいませんか?」
自身の身分を名乗りながら、居住者に呼びかける河義。
しかし少し待ち、さらに二度ほど呼びかけても、家屋の中から人が出てくる気配は無かった。
「河義三曹。見てきましたが、扉や窓は全部閉まってます」
家屋の周囲を回って来た策頼が、河義にそう伝える。
彼の言う通り、家屋の窓は全て木板でできた外窓で、完全に締め切られていた。
「この家には、誰も住んでいないんじゃないでしょうか?」
策頼は独特の鋭い目つきで、誰も出てこない家屋をしげしげと眺めながら発言する。
「そうは思えないがな……見ろ、新好地士長が言っていたように、確かに生活の痕跡がある」
河義は言いながら、家屋の壁際に視線を向ける。そこには最近用意されたばかりと見られる薪の束が、いくつか丁寧に積み重ねられていた。
「ひょっとしたら先の閃光と振動で、住人の身になにか起こったという可能性もある。よくよく注意しながら回ろう」
「了解」
河義等は最初の家屋を後にし、次の家屋へと向かった。
一方の制刻と鳳藤は、集落の中央を通る小道を、その両脇に点在する家々を調べつつ進んでいく。
「古めかしいのはパッと見だけってワケじゃねぇな。おまけに、インフラに関わる設備がまったく見当たらねぇ」
制刻が呟くように、立ち並ぶ家屋はどれも、外面だけの飾りではなく、純粋に木材とレンガを主として構成されていた。しかし異質なのはそれだけではなく、現代ではどんな田舎の家屋でも大抵みられる、電線やアンテナ、水道やガスのメーター、空調の室外機、そういった類の設備が一切見かけられなかった。
「やはり、河義三曹が言っていたように、映画のセットとか、観光施設の跡なんじゃないのか?それが撤去されずに残っていただけとか……」
「北東演習場ができてから何十年も経つ。そんなモンが掌握されずに残ってると思えねぇがな」
家屋の周囲をまるで不審者のように見て回りながら、制刻と鳳藤は考察を交わす。
「まぁ、その前にこの辺が演習場内だって保証もねぇがな。全く違う場所だってんなら、この得体の知れない集落にも、なんぼか説明はつく」
「はぁ?違う場所って……」
制刻の台詞に、鳳藤は怪訝な顔を浮かべる。
「演習場以外の別の土地に、漂流者のように流されたとでも言うつもりか?それも部隊ごと……非現実的にも程があるぞ」
「その非現実的な事が、すでにいくつも現実に起こってるだろうが。この集落に、地形の変わり様、不自然に消えた他の部隊。井神一曹等もまだ口には出さねぇが、頭の隅では考えてるだろうよ」
「だからって……じゃあ、ここは一体どこだって言うんだ」
「それが分かりゃ苦労はしねぇ。とにかく、俺等の知らねぇどっかさ」
言葉を交わしながらも家屋を調べ終わり、制刻と鳳藤はその場を離れて別の家屋へと向かった。
「――あ、あいつら二手に分かれたよ!」
「手分けして村を漁るつもりだろうか……?」
集落の奥の方に建つ家屋の一つ。その屋根の上に、声を交わし合う二人分の人影があった。
一人は僧服を身に纏った中性的な顔の青年。もう一人は革製の服の上に、肩当などいくらかの甲冑を纏った、整った顔立ちの女。
両者は家屋の屋根の傾斜を利用して身を隠し、地上の様子を伺っていた。
「どんな様子?」
その二人に背後から声が掛けらる。二人が振り向くと、家屋の裏に掛けられた梯子を上って来た、少年の上半身姿が目に映った。
「あ、勇者様」
僧服の青年から勇者様と呼ばれる少年。
旅人向けの服装の上から、先の女と同様にいくつかの装飾と甲冑を身に纏うその少年は、一見すれば少女と見まがう程の可憐な顔立ちをしてた。
「侵入者は村の各家を調べ回ってるみたい。そしてその内二人は少しづつこちらに向かって来てる」
僧服の青年は、自身が勇者と呼んだ少年に、地上に現れた侵入者の動きを説明する。
「まだ、家に押し入って荒らすような事はしていないのかい?」
「うん、今の所その様子はないね」
「うーん……盗賊の類かと思ったけど、ひょっとして違うのかな……」
屋根に上がり、他の二人に加わった少年は、地上の人影を観察しながら呟く。
屋根の上に並んだ三人の顔には、一様に緊張と疲労の色が浮かんでいた。
「えぇー……でも怪しさ満点だよぉ?おかしな馬や荷車に乗ってるし、格好も旅人にしては変だし」
しかし少年の言葉に、隣にいる女は訝し気な声を返した。
「まだ獲物の品定めをしてる途中とかじゃない?貴重品や珍しい物しか狙わない盗賊とかもいるじゃん」
「そうかもしれないけど……まだ分からないな、もう少し様子を見てみよう」
地上の侵入者の観察を続ける少年たち。侵入者は、やがて肉眼で表情が確認できる所まで近づいて来る。
「昨日、戦いになった辺りに踏み込んだ。あそこまでくれば姿もよく見えるように――うッ!?」
「ん?何?――いぃッ!?」
侵入者の明確な姿をその目に捉えた少年たちは、接近して来た二人組の内の、大柄の人物の容姿に目を見開いた。
「ちょっとちょっと、こっちに来るアイツ、なんか見た目がやばいよ!?」
「亜人の類か?でも、オークやトロル、オーガとかとも違う見た目だ……」
大柄の人物は形容し難い外見をしていた。特にその顔は異様に歪で、言葉にしがたい嫌悪感を感じさせる。
オークやトロルなどの亜人種ですら、その人物と比べればいくらか整った顔をしているとさえ感じた。
「よくわかんないけど、あいつ絶対やばいって!仕掛けてやっつけなきゃまずいよ!」
「いや……焦っちゃ駄目だ。まだ目的は分からないし、やり過ごせるならそのほうがいい」
攻撃を提案する女を説いて落ち着かせ、少年は観察を続けようとする。
「勇者様!」
しかしその時、屋根の下から少年達だけに聞こえる声量で、呼びかけの声が聞こえた。少年が地上へと顔を覗かせると、そこには一人の老人と、重装備の甲冑に見を包んだ端正な顔立ちの美青年がいた。
「ガシティア。それに村長さんまで、一体どうしたの?」
老人はこの集落の村長だった。村長は焦りと申し訳なさの入り混じった声で、少年に向けて話し出す。
「勇者様。それが……村の子供の一人が、大事な物を取りに行くと言って、飛び出して行ってしまったのです……!」
「え!?」
村長の説明に、少年は表情を険しくした。
「申し訳ありません、避難先の家から出てはならないと、きつく言い聞かせておいたのですが……」
「ご家族が目を離した隙に、抜け出してしまったそうだ」
村長の隣にいた、ガティシアと呼ばれた重装備の青年が補足を加える。
「まずいな……侵入者もすぐそこまで来てて……」
「あ!ちょっと、あれッ!」
少年の言葉を遮り、女が声を上げながら、慌てた様子で地上を指し示した。
女が指し示す先に視線を向けると、なんと地上にいる二人組の侵入者の近くに、件の子供と思わしき姿があった。そして二人組の片割れが、子供へと近寄って行く様子が見える。
「まずいよ、これ絶対まずいよ!」
その様子を見て、女はいよいよ焦りだす。そして少年は少し悩んだ後に、意を決して言葉を発した。
「……仕方ない。あの子に何かあってからじゃ遅い、仕掛けよう!アインプと僕で前に出る!」
「!――そうでなくっちゃ!」
少年の言葉に、アインプと呼ばれた女は不敵な笑みを浮かべると、傍に置いてあった巨大な斧を手に取った。
「イクラディ、火炎魔法で最初の牽制をお願い。僕たちが配置するのは待たなくていい、詠唱が完了したらとにかく撃って!」
「分かったよ、勇者様!」
少年から指示を受けた、イクラディと呼ばれた僧服の青年は、返事と同時に手にしていた分厚い本を広げた。
「間違っても、子供に当てたりしないでよッ!」
「分かってるよ!」
女のからかいの言葉に、僧服の青年は少しムスッとした顔で答えながら、
「鋭気溢れる熱と炎よ。その力を我は借り受けたい……その力にて仇成す者を包みたまえ!」
僧服の青年は開いた項に目を落とし、呪文を紡ぎ始めた。
「ガティシアは村長さん達を守って!」
「承った」
少年の指示に、甲冑の青年は端正な声で答える。
「よし、アインプ行くよ!」
「はいよッ!」
そして合図と共に、少年と斧を持つ女は、家屋の屋根の上から飛び立った。
集落の中程まで歩いた所で、制刻は周辺の家屋の変化に気付く。
「この辺、妙に荒れてんな」
周辺のいくつかの家屋は、レンガの壁の一部が崩落していたり、木板でできた外窓が壊れていたりと、損傷しているのが見て取れた。
よく調べるために、制刻と鳳藤がその内の一軒へと近づくと、その家屋は外窓だけでなく内側のガラス窓まで割れており、家屋の内外に破片が散らばっていた。
「混じりモンが多い。精度のよくねぇガラスだな」
制刻は地面に落ちたガラス片の一つを拾い上げると、観察しながら呟く。
「……なあ、やっぱりここは観光施設か何かの跡地だよ。申請の不手際かもしくは未許可の施設で、演習場管理隊の掌握から漏れていたとか、そんな所じゃないか?」
制刻の様子を横目に見た鳳藤は、周囲を見渡しながら言う。
「古めかしいがそいつぁどうだろうな、見てみろ」
「おい、流石に中を覗くのは……」
「今更何言ってやがる。いいから」
所有者が不明な家の中を覗くことに、鳳藤は抵抗を示したが、結局制刻に押され、ガラス越しに屋内を覗き見る。
すぐ側の、古めかしい調理場らしき場所には、最近まで使われていたと思われる調理器具が並んでいる。奥に見える部屋には、片づけの途中であった思われる、中途半端に畳まれた衣類が床に散らばっていた。
「……嘘だろ、生活の形跡が?」
人が住んでいるのであろう生々しい生活の跡を確認し、鳳藤は微かに目を見開く。
「だからって、誰がこんな所で……?」
「さあな。普通に考えりゃ、よほどの懐古趣味か、突き抜けたエコロジストあたりの変わりモンだろうが、あるいは――」
考察を呟いていた制刻と鳳藤だったが、その時、微かな物音が聞こえた。
「今のは?」
音源は家屋の側面の死角からだ。
物音に気がついた二人は、家屋の側面を覗き込む。見れば、そこには5歳前後とみられる男の子がいた。背後の家屋の裏口が空いていることから、そこから出て来たものと思われ、彼の腕には木でできた人形が抱かれていた。
「子供だ……!」
「やっぱり無人じゃなかったか」
制刻は呟くと、男の子に視線を向けて話しかける。
「悪ぃなボウズ、少し邪魔してる。聞きてぇんだが、ここに坊主の親御さんとか、誰か大人はいねぇのか?」
制刻が質問を投げかけるも、しかし男の子は固まったまま反応を示す様子がない。
「自由……よく見ろ。お前の歪な顔に怯えてしまっている」
「あぁ?」
鳳藤の言葉道理、制刻の容姿に男の子は明らかに怯えていた。
「まったく……私に任せろ」
眉を顰める制刻に対し、鳳藤は不敵な笑みでそう言いながら、フッと小さく鼻を鳴らす。
「やあキミ、大丈夫かい?もう怖がらなくてもいいよ」
そして男の子へと向き直った鳳藤は、美女と言っても過言ではないその端麗な顔に、さわやかな笑顔を作ると、男の子へと語りかけ始めた。
「心配しないでくれ。私たちはたまたま立ち寄った者で、ちょっと聞きたいことがあるだけなんだ。どうだろう、私とお話ししてくれないかな?」
それまでの不安の滲み出る態度を一変させて、微かな妖艶を醸し出し、子供相手というより女でも口説くような声色を作りながら、男の子との距離を詰める鳳藤。
「ガワだけは一丁前だなコイツ」
そんな変わり身の早さを見せた鳳藤を、制刻は端から冷ややかな眼で見ていた。
「――あ?」
しかしその直後、制刻は何かの気配を察知する。
そして村の奥の方へ視線を移すと、目に映ったのは、こちらに向けて飛んで来る〝火の玉〟だった。
「避けろッ!」
「え?――ほぎゃぁッ!?」
次の瞬間、制刻は戦闘靴の裏で劔の尻を蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされた鳳藤は、先程までの王子様のような振る舞いから一転した、無様な悲鳴を上げながら吹っ飛ぶ。制刻は蹴りを放つと同時に自身も、その巨体にあるまじき切り返しの速さで、すかさず反対方向に跳躍する。
「ぶッ……お前――ッ!」
蹴り上げられた後に地面へと突っ込んだ鳳藤は、制刻に抗議の言葉を向けるべく、鋭い目つきを作り背後を振り返る。
「ッ!?わぁッ!?」
だが彼女が振り返った瞬間、目の前、先程まで自分等が立っていた場所からすぐ近い場所に、直径50cm程の大きさの火炎の玉が直撃した。砂と土だけの地面に落ちた炎は、一瞬だけわずかに燃え広がった後にすぐに消えていった。
「な、何だ!?炎が突然……そうだ、君ッ!?」
突然の出来事に、地面に這いつくばったまま目を丸くしていた鳳藤だったが、先の男の子の安否が頭をよぎり、彼の居た方向に視線を向ける。
男の子は変わらず怯えた顔でその場に立ち尽くしていたが、外傷は見受けられず、鳳藤は胸を撫でおろす。そして彼を保護するべく近づこうとした。
しかし次の瞬間、それを遮るように、頭上から何者かが突然飛び降りてきて、姿を現した。
「わッ!?」
現れたのは十代半ば程と見られる少年だった。
家屋の屋根から飛び降りて来たのだろう少年は、着地するとすかさず目の前の男の子へと近寄る。
「イシュクェイフッ!」
少年は男の子に向けて、聞きなれない言葉で何かを叫んだ。そして男の子を背中側から抱きかかえると、次の瞬間少年は姿を消した。
「なッ!?」
鳳藤は驚愕するが、しかし直後に気配が頭上に移った事を察知し、視線を上へと向ける。そこには家屋の屋根よりも高い中空で舞う、少年と男の子の姿があった。少年は一度の跳躍で、それほどの高さまで飛び上がったのだ。
やがて重力に引かれ出した少年は、家屋の屋根の上にかろやかに着地。そのまま死角へと姿を消してしまった。
「ッ――ま、待てッ!」
信じがたい光景に目を奪われていた鳳藤だったが、男の子が連れ去られたという事態を把握し、声を張り上げると共に、消えていった少年を追いかけようとする。
「うわッ!?――痛ッ!」
しかし駆け出す前に、鳳藤は背後から突き飛ばされ、目の前の家屋の壁へと体をぶつけた。
「カバーが先だ」
鳳藤を突き飛ばしたのは、他でもない制刻だった。制刻は鳳藤を家屋の壁に片手で押し付けながら、自分も家屋の死角へと身を隠す。
「お前……何するんだ!?」
「さっきの火の玉がまた飛んでくるかもしんねぇ、様子を見ろ」
「そんな悠長な事……見ただろ!人が飛び上がって……!それに子供が連れ去られて……!」
壁に押さえつけられた鳳藤は、動揺を露わにしながらも抗議の声を上げる。
「まず落ち着け。火達磨になりてぇんなら放り出してやるが」
しかし制刻はそんな鳳藤を片手間に抑えながら、家屋の死角から村の奥の様子を伺っていた。
「なんだ!どうした!?」
そんな二人の耳に、集落の入り口近くにいる河義からの声が届く。一連の騒ぎに伴う騒音を聞き、河義等も異常事態に気付いたようだ。
「なんだか知りませんが、突然火の玉が降ってきました」
制刻は普段通りだが、しかしはっきりと聞き取れる声で報告の声を送る。
「何だってぇ?火の玉……!?」
「とにかく身を隠してください」
報告に河義は怪訝な声を返すが、制刻はそれ以上説明はせず、身を隠すことを進言。進言を受けた河義は策頼と共に、停車中の小型トラックの影へと身を隠した。
「おい!もう放せ……!」
一方、未だに壁に押さえつけられていた鳳藤は、身じろぎでその事を訴え、ようやく解放された。
「クソッ……何だって言うんだ?火炎瓶か、それとも焼夷ランチャーでも撃ち込まれたのか?いや……それよりもさっきの少年だ!信じられるか、屋根の上まで一瞬で飛び上がったぞッ!?」
「摩訶不思議で愉快だな」
困惑しながら喚き立てる鳳藤を適当にあしらいつつ、制刻は後方の河義等へと視線を向ける。
「ここの住民の方ですか!?聞いてくださいッ!我々は陸隊、北部方面隊の者です!危害を加える者ではありませんッ!」
河義は小型トラックの影から声を張り上げ、集落に潜んでいると思われる何者かに対して、呼びかけを行っていた。
「河義三曹」
制刻はそんな河義の発声に割り込むように、彼に呼び掛ける。
「あぁ?何だ?」
「今のうちに発砲許可をもらえますか」
制刻のその進言は、軽い頼み事でもするかのような調子で発せられた。
河義はその言葉を噛み砕くのに時間を要したのか、少しの間をおいてから返事を返した。
「………本気か!?」
「警告も無しにぶち込まれましたんで、妥当な所かと。それに、樺太ん時みてぇに、ゴタついて殺されかけんのはお断りです」
「……ッ、しょうがない。だが可能な限り威嚇に留めろ、殺傷を伴う射撃は本気でヤバい時まで控えろ」
河義は若干のためらいが混じった口調で許可を出す。
「どうも」
対する制刻は河義のその言葉に、まるで些細な事務連絡でも終えた時のように端的に返答した。
「お、おい!いくらなんでも発砲なんて……」
「実際、撃つ撃たないはともかく、やり易くしとくに越したこたぁない」
「だからって――」
淡々と言う制刻に、なおも食い下がろうとする鳳藤だったが、直後に響いた声が彼女の言葉を遮った。
「自由さん、背後上空ッ!」
端的で鋭いその声は、河義と共に小型トラックに姿を隠す唐児の物だ。
彼の言葉に導かれるままに、制刻と鳳藤は自分等の背後、斜め上に視線を向ける。そこには、中空に身を置き、そして今にも二人に襲い掛からんとする、一人の女の姿があった。
制刻等の背後に位置する家屋の屋根に潜み、そこから飛び降りてきたのだろう。その女の両手には、創作の世界でしかお目にかかれないような、巨大な斧が握られている。
「ジャアアアアッ!!」
そして女は掛け声とも叫び声ともつかない声を発しながら、自らの得物を二人に向けて、斜め向きで思いっきり振り下ろした。
「おぉっと」
「ひッ!?」
鳳藤は悲鳴と共にその場から飛び退き、制刻は最低限の動きで半身を捻り、それぞれ斧を回避。冗談のように巨大な斧は、しかし獲物に食らいつくこと叶わず、背後の家屋の角を掠って破損させた。
「デュンクッ……!ブレムヘスィ ロラ エジェネィフ……ッ!」
初撃に失敗した斧の主の女は、何か困惑したような表情で声を漏らす。
しかしそれも一瞬、女は地面に足を着いた瞬間に、素早く体を一回転させて、制刻と相対する。そして制刻に向けて、低い位置で持ち直した斧を思いっきり振り上げた。
「俺をご指名か」
対する制刻は後ろに一歩後退し、振り上げられた斧を回避。再び空を切った斧は、明後日の方向へと反れてゆく。
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「トゥッ!ジャァウッ!」
掛け声と思しき発声と共に、三撃目が振り降ろされ、さらにそこから連続動作で四撃目が横一文字に薙ぎ払われる。
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回避行動を行いながらも、制刻はそんな事を呟く。
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「――オゴォッ!?」
しかし――次の瞬間、女の腹部に鈍痛が走った。見れば、女の腹部には制刻の膝がめり込んでいる。
制刻は彼女が振りかぶった際にできた一瞬の隙を突き、膝蹴りを放ったのだ。
体をくの字に折り、少量の胃液を吐き出しながら宙へと舞う斧女。
「グゥッ!?」
彼女はそのまま背後の家屋の壁に叩き付けられた。
「こいつぁビックリだぜ」
突然現れ、襲い掛かって来た女の人間離れした一連の動きに、そんな感想を呟く。
一方、女は崩れ落ちかけた所を踏んばり、身体を支える。
ダメージは少なくないらしく、その表情は苦し気だが、その目は制刻に攻撃の意思を向け続けていた。制刻は女の動向を警戒しつつ、対応行動を取ろうとする。
「奥の家屋の屋根にいるッ!」
しかしそこへ、再び策来の警告の声が響いた。
制刻が示された方向に視線を送ると、集落の奥に位置する家屋の上に、人影を捉える。その人物の掲げる両手の中には、先程制刻等を襲った物と同じ、直径50cm程の火の玉が浮かんでいた。そしてその火の玉は、今まさに彼の腕から制刻に向けて放たれようとする直前だった。
「アレって――まずいぞッ!」
同じく、家屋の影からそれを見ていた鳳藤が、危機を感じて声を上げる。
「成程」
かたや制刻は、彼女の声を聞き流しながら呟くと、大して焦る様子も見せずに、肩から下げていた銃を繰り出し構える。
そして、その引き金が引かれた。
発砲音が響き、マズルフラッシュが瞬く。銃身から複数の5.56㎜弾が撃ち出される。放たれた弾頭の群れは、音よりも早く家屋の屋根へ着弾した。
「ネゥッ!?」
火球の主の足元で弾けるような着弾音が響き、瓦が破損する。そして彼の、驚きと困惑の色が混じった悲鳴が上がった。
突然襲い来た現象は彼の手元を狂わせ、彼の手を離れた火球は、大きく変じた軌道を取る。そして制刻等より遥かに手前の地面に落ち、先と同様わずかに燃え広がった後に勢いを減じ、やがて掻き消えた。
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