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第1話:「TS美少女隊員と装脚機、異世界へ」
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「――ったく」
陸上防衛隊、普通科所属の装甲車輛搭乗員――髄菩 神和陸士長は。
狭く快適とは言えない空間内の座席で、いささか難儀な想いをしていた。
そこは89式装甲装脚機――89AWV(Armor Walker Vehicle)の機体内部。その砲塔内に設けられる、機長と砲手がタンデム配置で縦に並ぶ内の、機長側席だ。
狭さや居心地にあっては別に良い。入隊して部隊配置になった時から装甲車乗りだ、慣れている。
問題は別に多々あった。
まず、まだ陸士階級に過ぎない自分が、この89AWVの機長を務める事になった現状。いや、それはまだ可愛いほうか。
大きなウェイトを占める問題の一つは。
――この慣れない〝女〟の身体。
――本来の性別は〝男〟である自分が、女――それも美少女と言っても良い姿身体へと、性転換している事実だ。
今は何も映っていない、側面の通信用モニターには。
凛とした顔立ちの黒髪ロングの美少女――自分の顔が反射で映って見える。
おまけに視線を落とすと見える。自分で言うのも難だが、その美少女な自分の完璧ながらもワガママな凹凸のボディは。
全身のボディラインを浮き出して主張する、ぴっちりのボディスーツに。プロテクタやパーツ、装甲類がそのボディラインを損なわない(というか露骨に際立たせる)ように付属装着される。良い趣味をした(もちろん皮肉)搭乗員用の装甲ボディスーツ。
――〝軽量装甲戦闘服7-型〟に飾られ、悩ましく色気を醸している。
「妙なことになった」
そして、極めつけの一つ。
髄菩はボヤきながら、機長用席に設けられるキューポラのペリスコープを覗き、そこから外を望む。
外に見えて広がるは、丘や草原が続き青空が広がる長閑な光景。
そしてその大空に――〝ドラゴン〟が。飛龍や大きな鳥獣が人を背に乗せて、宙に在り飛び交う姿光景。
極めつけはの問題は、現在自分等が居る場所が。魔法とモンスターが存在する、〝異世界〟であるという事実であった――
簡単に、事の経緯を説明する。
日本は、地球は。ある特殊な新エネルギーの実験中に不測の事態が起き、その効果が原因で異世界へと繋がってしまった。
そしてその転移先の、異世界の国家コミュニティと嫌が応にも関係を持つ事となり。その果てに人道的観点や防衛観点上から、面倒事に介入せざるを得なくなり。
日本国防衛隊が派遣され、その矢面に立つ事となったのだ――
「――それはいいが、いや良くは無いが。何も〝女になって乗る事になる〟のと、タイミングが被ることは無いだろうに」
その世間を揺るがした事件を、事の経緯を思い返しつつ。髄菩は続けてそんな言葉を零す。
前述したとおり、髄菩の本来の性別は男性である。
それがなぜ今に在っては美少女の姿となっているのか。それに関する地球世界の歴史事件と、いくつかの事情について説明したい。
髄菩等の世界、地球では十数年前に。その身の性別を変換できる性転換特質が人類の体機能に潜在する事が発見され、その後に自由な性転換を可能とする技術が確立された。
数年前程からその技術、ノウハウ他は一般レベルにも降りてきて普及が始まり。
その世界の人類は性別の垣根を、一つの形で越える事に成功していた。
それから現在にあっては日本国防衛隊でもこの性転換特性、技術は各方面で活用が始まっている。
当初は広報面や隊員の生活面での活用に比重が置かれていたが。続けての活用先として目が付けられたのが、戦車や戦闘機、一部艦船など。物理的構造・容量に制約を受ける機体車輛装備などに登場する隊員による活用。
要は男性隊員が、小柄で柔軟な女性の身体へ性転換する事で、快適性や利便性の向上を図るもの。それを期待しての、任務時の性転換推奨および場合によっての指定だ。
これは一部部隊で試験的に運用が始まり、昨今の重作業の機械化・オート化も助け、その結果いくらかの有用性が証明され。それから順次各部隊でも導入が進んでいった。
陸上防衛隊各隊にあっても例外では無く、戦車・装甲車・AWV部隊の男性隊員は。少しでも良い居住性など追及し、搭乗時は女体化することがセオリーになりつつあった。
それらを前提として、髄菩の話に戻れば。
その、異世界との接続という大事件と。
性転換文化が普及して、髄菩の所属する部隊にもその業務上での活用推奨が流れて来たのが。良いのか悪いのか分からないが、奇しくも同じタイミングだったのであった。
そしてその直後に、髄菩の部隊には異世界派遣部隊としての白羽の矢が立てられた。
おまけのおまけに、異世界との接続の混乱の煽りによる人員不足から。髄菩の直の上官であった機長の陸曹が異動する事となってしまい。
砲手であった髄菩が、そのまま機長にスライドする措置が取られる事となってしまう。
――かくして。
髄菩から言わせれば、いらないタイミングが重なり。髄菩は美少女へと姿を転じた上で。
現在の搭乗機である89AWVと、異世界へと踏み入る事になったのである。
陸上防衛隊、普通科所属の装甲車輛搭乗員――髄菩 神和陸士長は。
狭く快適とは言えない空間内の座席で、いささか難儀な想いをしていた。
そこは89式装甲装脚機――89AWV(Armor Walker Vehicle)の機体内部。その砲塔内に設けられる、機長と砲手がタンデム配置で縦に並ぶ内の、機長側席だ。
狭さや居心地にあっては別に良い。入隊して部隊配置になった時から装甲車乗りだ、慣れている。
問題は別に多々あった。
まず、まだ陸士階級に過ぎない自分が、この89AWVの機長を務める事になった現状。いや、それはまだ可愛いほうか。
大きなウェイトを占める問題の一つは。
――この慣れない〝女〟の身体。
――本来の性別は〝男〟である自分が、女――それも美少女と言っても良い姿身体へと、性転換している事実だ。
今は何も映っていない、側面の通信用モニターには。
凛とした顔立ちの黒髪ロングの美少女――自分の顔が反射で映って見える。
おまけに視線を落とすと見える。自分で言うのも難だが、その美少女な自分の完璧ながらもワガママな凹凸のボディは。
全身のボディラインを浮き出して主張する、ぴっちりのボディスーツに。プロテクタやパーツ、装甲類がそのボディラインを損なわない(というか露骨に際立たせる)ように付属装着される。良い趣味をした(もちろん皮肉)搭乗員用の装甲ボディスーツ。
――〝軽量装甲戦闘服7-型〟に飾られ、悩ましく色気を醸している。
「妙なことになった」
そして、極めつけの一つ。
髄菩はボヤきながら、機長用席に設けられるキューポラのペリスコープを覗き、そこから外を望む。
外に見えて広がるは、丘や草原が続き青空が広がる長閑な光景。
そしてその大空に――〝ドラゴン〟が。飛龍や大きな鳥獣が人を背に乗せて、宙に在り飛び交う姿光景。
極めつけはの問題は、現在自分等が居る場所が。魔法とモンスターが存在する、〝異世界〟であるという事実であった――
簡単に、事の経緯を説明する。
日本は、地球は。ある特殊な新エネルギーの実験中に不測の事態が起き、その効果が原因で異世界へと繋がってしまった。
そしてその転移先の、異世界の国家コミュニティと嫌が応にも関係を持つ事となり。その果てに人道的観点や防衛観点上から、面倒事に介入せざるを得なくなり。
日本国防衛隊が派遣され、その矢面に立つ事となったのだ――
「――それはいいが、いや良くは無いが。何も〝女になって乗る事になる〟のと、タイミングが被ることは無いだろうに」
その世間を揺るがした事件を、事の経緯を思い返しつつ。髄菩は続けてそんな言葉を零す。
前述したとおり、髄菩の本来の性別は男性である。
それがなぜ今に在っては美少女の姿となっているのか。それに関する地球世界の歴史事件と、いくつかの事情について説明したい。
髄菩等の世界、地球では十数年前に。その身の性別を変換できる性転換特質が人類の体機能に潜在する事が発見され、その後に自由な性転換を可能とする技術が確立された。
数年前程からその技術、ノウハウ他は一般レベルにも降りてきて普及が始まり。
その世界の人類は性別の垣根を、一つの形で越える事に成功していた。
それから現在にあっては日本国防衛隊でもこの性転換特性、技術は各方面で活用が始まっている。
当初は広報面や隊員の生活面での活用に比重が置かれていたが。続けての活用先として目が付けられたのが、戦車や戦闘機、一部艦船など。物理的構造・容量に制約を受ける機体車輛装備などに登場する隊員による活用。
要は男性隊員が、小柄で柔軟な女性の身体へ性転換する事で、快適性や利便性の向上を図るもの。それを期待しての、任務時の性転換推奨および場合によっての指定だ。
これは一部部隊で試験的に運用が始まり、昨今の重作業の機械化・オート化も助け、その結果いくらかの有用性が証明され。それから順次各部隊でも導入が進んでいった。
陸上防衛隊各隊にあっても例外では無く、戦車・装甲車・AWV部隊の男性隊員は。少しでも良い居住性など追及し、搭乗時は女体化することがセオリーになりつつあった。
それらを前提として、髄菩の話に戻れば。
その、異世界との接続という大事件と。
性転換文化が普及して、髄菩の所属する部隊にもその業務上での活用推奨が流れて来たのが。良いのか悪いのか分からないが、奇しくも同じタイミングだったのであった。
そしてその直後に、髄菩の部隊には異世界派遣部隊としての白羽の矢が立てられた。
おまけのおまけに、異世界との接続の混乱の煽りによる人員不足から。髄菩の直の上官であった機長の陸曹が異動する事となってしまい。
砲手であった髄菩が、そのまま機長にスライドする措置が取られる事となってしまう。
――かくして。
髄菩から言わせれば、いらないタイミングが重なり。髄菩は美少女へと姿を転じた上で。
現在の搭乗機である89AWVと、異世界へと踏み入る事になったのである。
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