妖怪社長の伴侶は下僕

丹葉 菟ニ

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ムカつく。

ただいまと 母さんが帰ってきた。リビングの扉が開くと同時に、俺は母さんに声を掛けた。

「母さん!俺 卒業旅行行きたいんだけどいい?」

「良いわよぉ~。仕事を始めると お友達とゆっくり旅行なんてなかなか行けないから。友達と最高の思い出を作って来なさい」

「卒業旅行 3月の中頃の予定なんだ」

「そう、楽しみね」

母さんなら簡単に話が通る。普通はあっさりした話なのに、騰貴とだと 全く 話が通らない。

「ご飯 作ってくれたの?ありがとう 母さん 助かっちゃう」

「うん、肉じゃがとキュウリとシラスの酢和えと味噌汁。あと騰貴がアレンジ冷や奴作ってくれた」

「騰君もありがとう」

なにかを打ち込んでたが、俺と母さんが立ち話をしてる姿を、眉間に皺を寄せたまま見てた騰貴。振り返ってお礼を言う母さんには一瞬でいい人の顔を見せて 「大したことはして無い」と言った。が、一瞬で表情筋をガラリと変えた騰貴にあっけに取られた。

やっぱり騰貴な人間じゃなかった。あそこまで露骨に表情を変えれる人間っていなよ。
着替えてくるとリビングを出ていった母さん。またもや騰貴と2人にになってしまい気まづい。
リビングを出ようとすると腕を掴まれてソファーのうえに投げられてしまった。

「ぃッた。なに?」

腕組みをして仁王立ちして睨んで凄んでくる騰貴。はぁー、母さんが卒業旅行を許しても騰貴が許せないなら諦めるしかないのか?

「金の無駄遣いをするなと言ってたが、世の中 金を溜め込んでばかりいても景気は良くならん。使いうべき所に金は使い 削減できる所は削減すればいい。なにか欲しいものはあるか?」

は?妖怪が日本経済を語るって可笑しくねぇ?否、騰貴は会社経営をしてるから語っても良いのか?確かに、金を使わないと景気は回らなくて不景気になるけど、俺に欲しい物って何?

「欲しい物って・・・・」

欲しい物を言えっていきなり聞かれても直ぐには思いつかない。必至に考えて思い出した物が

「じゃ、シャー芯かな?買っとかないとって思ってて」

迫力満点で凄んでた騰貴だったが、俺が買って欲しいものを口にした途端、コロッと180度 態度が変わり ニコニコし始めた。

「シャーシン?だな。わかった 買ってやる」

シャー芯代約200円で景気回復するかは謎だが、塵も積もれば山となるだ。でもよ、一日でウン千万を動かす企業の社長様だ。立派に景気回してると思いますよ?
それに、1日でウン千万を使ってる社長様が態々 200円を使ったとしてウン千万のカスミにもなれない200円が可哀想に思えてきた。

でも、買ってやると上から目線で言われた俺は一応 お礼は言わないと・・・いけないのか?

「はぁ、ありがとう?」

シャー芯くらい 自分で大学の帰りにでも買えるけど・・・大威張りで買ってやると宣言してる騰貴にお礼を言わないといけないよな、人としてお礼は大事だ。

「嬉しかったら もっと喜べ」

眉間の皺は無くなったが どこか浮かない顔を浮かべてる騰貴に 妙なものを頼んでしまったのかと俺の方が不安になる。

「?  はぁー、あー、うん。ありがとう。?」

「 まとめて買うか!?10個とか20個とか、どうだ?」

「え?いや、1つで良いよ 」

1つ買えばそれなりに日数は持つから要らない。10個とか20個とか 個人が1度で買う個数ではない。

「遠慮は入らない」

遠慮してないから。 ってかさ、シャー芯がなにか 分かってんのか? シャーペンの芯って、伝わってるよ・・・な?経済の話をするし 大丈夫だろう。
知らないはずは無いよな。それに、シャー芯を知ってますか?なんて、恐れ多くて聞けない。
馬鹿にしてるのかとか?とか言いがかりの因縁を付けられても困るしな。ココは黙っておくに限る。



夕飯の時、弟が新しいテキストが欲しいと母さんに強請ってたが騰貴があっさり買ってやると申し出てた。弟は嬉しさで満面の笑みを浮かべて喜んでた。が、俺は なぜか 騰貴に冷たい目線で見られないと行けないのだ?買ってやると言い出したのは騰貴なんだけど、俺も半分 出せって事か?別にそれは構わないから俺から半分だすと申し出ると 冷ややかに温度が 少し下がった。

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