オタクは本気で夢見てる

秘密の恋人は

「法的効力も無いが結婚証明を発行してくれる物や結婚式を上げてる場所が有ると？」

真っ直ぐに目線を合わせて来る相手はメデゥーサだ。
ココで嘘や誤魔化しをして後でバレたら俺はメデゥーサに彫刻にされるかも・・・想像しただけでも ぶるっとなる。

今の俺は細い糸の上を歩いてる気分だ。いつ切れるか分からない緊張でぶっ倒れそうだ。
ダメだ。オタクな分 想像力逞しいかも俺。でも、そんな風に見えるからタチが悪い。

「俺が恋人なんだから当然取りやめるよな」

「グヴ」

妙な唸り声が出てしまったが気にしない。だって俺は辞めたくない。俺の夢だったのに、辞めたくない。

「二股状態で婚姻届に本気でサイン出来るのか？今日から夫婦になりますって事だよな？
俺が別れに納得して無いのに本気で、結婚式をお前は上げれるのか？」

愛おしいアリアーナちゃんに二股をしたまま不誠実な男にはなりたくない。
そうだよ、俺がアイツに気持ちが無くても、俺が付き合うって了承したからには今は恋人なんだ。別れるにしてもアイツが別れてくれない限り、アリアーナちゃんに対して俺は裏切り者なんだ。
自分自身を守りたいが為に 俺はアリアーナちゃんに不誠実な男にはなってしまった。

情けないと思うと同時に涙が溢れ出した。

「俺はアリアーナちゃんと別れたくない。ずっと、ずっと、ずっーと俺の心の支えだった、どんな時でも 俺を笑顔で励ましてくれたんだ。こんな俺を好きだって受け入れてくれたのもアリアーナちゃんだけなんだ」

何とか堪えようとするけど、1度 積を切ってしまった水滴はポロポロと止めどなく流れた。

「あーぁ～ぅん。そう何だな。わかった、その、アリアーナちゃんだけは特別に好きなだけ思ってていい。だからほら泣くな」

アリアーナちゃんは、お前に言われなくても俺には特別な女性だ！
おまえにわざわざ 許可なんか要らない。俺はこの先もずっと アリアーナちゃんを愛し続けるから。

そんな事を思いながらも、コイツの胸に抱きしめられて、涙が止まるまで目尻や頬や唇にキスされてしまった。