オタクは本気で夢見てる

鍵 2

ただいまアリアーナちゃん。・・・アリアーナちゃん 俺アリアーナちゃんとの生活を守る為にも頑張るから。

俺のやるべきとこを さっさと頭の中で纏める。

1、引越し理由を話したかちゃんと聞く
2、引越しの内見は断る
3、このままズルズルと弁当を作って貰うのは悪いから断る
4、夕飯は今日で断る
5、鍵を返す

この５つを ハッキリ言わないとダメだよね。

1つ言うのも 大変そうなのに 5つも・・・俺に言えるか心配だけど、アリアーナちゃんとの未来のために俺は頑張る。見ててねアリアーナちゃん。

動きやすいスエット姿で隣に行くが鍵が閉まってる。
借りてる合鍵で開けると、いらっしゃい と天ぷらを揚げながら にこやかに声を掛けて来るのはアリィールさん。

「良かった。丁度いま 揚げたばかりなので 食べましょ？焼酎と日本酒どちらから行きます？」

「いえ、・・・」

アルコールなんて入ったら話す事も話せなくなる。

「あっ！やっぱり最初はビールですよね？！ささっ、上がって下さい。せっかくの熱々が冷めてしまうから」

「うん。お邪魔します」

アリィールさんのテリトリー内に入ると押しが強いな。俺 今までどんな風に断ってたっけ？

「あの、お茶のペットボトル持ってきたから」

「緑茶割りって美味しいって聞きました。後で試して良いですか？」

「え？あぁ、どうぞ」

絶対に飲む方向でしか話してないな。飲むのが好きなのか？
熱々の天ぷらと金平ごぼうが並ぶテーブルの前に座らされて ビールを握らされる

「じゃ、今日もお疲れ様でした」

軽く缶を合わせて美味しそうに飲み干す姿を見れば俺も飲みたくなる。
1本だけならと 思いゴクゴク喉を鳴らして飲むと心地よい炭酸が喉を通り抜ける。

歯応え抜群の金平ごぼうにプリプリのえび天にサクッとレンコン。旨みが凝縮されたイカ天は一夜干しを使ってるらしい。

「へぇー、一夜干しって炙るだけかと思ってたけど、天ぷら めっちゃ美味い。ビックリです」

「一夜干しは 中華料理に入れても上手いですよ。炙るだけなんて勿体ない」

「 本当に 料理がお上手なんですね」

「1人だとなかなか 作る気になりませんけど、青田さんが一緒に食べてくれるとやりがいが出ますね」

あっあれ？断るのにこの流れは不味くないか？

「買って食べるよりは経済的だし健康にも気を使えますよね。青田さんの好きな物を考えながら弁当を作るのも楽しいし」

ちょっと 待て！そこまで話を広げるな！！

「あっ、そうだ。次に考えてる引越し先は2LDKですか？」

「あぁ～。そうだねここは1DKだからちょっと狭く感じてたんだ。大学時代から住んでたしね」

たしかに、狭いって感じながら過ごしてた部屋だし嘘は言ってないしね。
部屋の話が出たから切り出すなら今だな。
先ずは鍵を返すか！

「そうだ、忘れる前にこれを返しとくよ」

「持ってて構いませんよ。夕飯の準備の度に開けるよりは青田さんが自ら開けてくれた方が助かるので」

うぅうん？俺はこの先ずっと、夕飯を食べに来る約束までしたのか？待て待て！そんな事は無いはず！？アリアーナちゃんとの時間を優先する俺がそんな事言うはずはない。