赤い糸の先

丹葉 菟ニ

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上質な恋を

新たなる挑戦 4

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愛しい重みが増し、よく見れば寝てしまったイオリを抱え直した。
良かった、私の醜い欲望を聞いても臆することも無く私を頼ってくれると言ってくれたイオリ。飽きられたのでもなく嫌われたのでも無いのだと分かれば嬉しく寝入ってしまったイオリの頬に何度もキスを贈り隣の仮眠室のベッドにそっと寝かせイオリの横に自身も横たえ目を綴じた。





2人して寝不足なのだ。寝てしまっても致し方ない。
ここぞとばかりに椅子に登り書類を読み始めた。

リアンテの息子ダリフ・・・の人相書きがこれか?かなりの男前とは程遠い コレは悪人面だ。
鳥男の好みなんぞ知らんが この顔を精悍な男前とは評さないだろう。
役にも立たない情報から推測しか出来ない今が歯痒い。

ジェルフラッティ伯爵とフラボル公爵の繋がりがあるルミ国の家や事業や商会を虱潰しに調べてるが机の上にはかなりの量になってる。
一つ一つを確認してると1枚の書類に目が止まる。

ルミ国のハニシス子爵か。
リバード家の魔獣狩りで一族郎党が処刑されたとなっているが、一族の中に地下牢で赤子を産んだ者がいた。
あの当時のルミ王は愚王で宰相の傀儡だったにもかかわらず、生まれてきたばかりの子だけは助けたいと密かにハニシス子爵に受け渡したのが醜聞になるから記憶にも残ってないはず。

表向きと裏の顔があるハニシス子爵、魔獣の賭けを提案したのも裏ギルドの斡旋し言葉巧みに唆したのもハニシス子爵。宰相と深い関係にあったのがハニシス子爵なのだが、上手く宰相と切り抜け素知らぬ顔で生き残った。
次代が変わり、宰相とハニシス子爵は裏で悪巧みを繰り返し世界統一を企み敗戦し反省等は全くせずに王家の責任と罵り王座が引き摺り降ろした宰相、ハニシス子爵から迎え入れてた側妃が産んだ王子を成人と共に王座に据えた。
あれから、人の暮らしに興味を持てずに人里には降りてないから詳しくは無いが、怪しむには十分な人物を見つけた。

うむ、いつもながら伝える手立てが無い。
こんな事ならアルベルトも念話の相手に入れとけば良かった。

ドアを叩く音に鳴いて応えると静かに入室して来たアランは目を細め私を見る。

「書類の中に何か気になるものでもありましたか」

これだと分かるように前足でハニシス子爵の書類を叩く。

「ハニシス子爵ですか。評判がいい家柄なんですが桔梗が気になるならもう一度調べましょう」

「あぁそうしてくれ。他に気になる者はあるか?」

ドアを叩く音で起きたアルベルトは私の横で書類を見返してる。ざっと見渡すが他は無いと首を横に振った私を撫でるアルベルトを見れば目の下の隈はそのままだがだいぶスッキリとした顔をしていた。

「ターネット邸には私から報告しときますので  この上の物を片付けて下さい」

「あぁ、そうしよう」

事も無げに言ってのけたアルベルトは猛然と机の上の書類を片っ端から正確に片付け始めた。







目が覚めると誰かの腕の中だけど顔を見なくてもわかった。

「目が覚めたか?」

「うん おはよう」

「夕飯に1度起こしたが全く起きなくて心配した。医者に見せたら 寝不足気味だから寝たいだけ寝かせてればいいと説明をうけたが 大丈夫なのか」

「えっ、そうなんだ。ごめん心配かけちゃったみたいだけど俺は大丈夫」

「夜はちゃんと寝るんだぞ」

起こしに来て起きなかったからって医者を呼ぶか?呼ばないだろって言いたいけど言えない。探る様な目で見られたら 本気で心配させてしまったんだと反省してしまう。次からは起こされたらちゃんと起きよう。起きれるか怪しいけど。辺りを見回せば俺が間借りしてる部屋。

「アルが連れてきてくれたの。忙しいのに運んでくれたんだありがとう」

アルを見れば目の下の隈が薄くなってる。少しは寝れたみたいで良かった。それしにして、寝る時は裸だと豪語してたのにシャツを着たままだ 依れてしまってるけど。

「ガゥガゥ」

桔梗もベッドに上がってきてアルと俺にスリスリと擦り寄って来た。

「「桔梗おはよう」」

俺とアルの声が重なり自然と笑顔になる。僕も居るよと百合も鳴きながら交ざり俺とアルは思いっきり桔梗と百合を撫でてベッドを降りるとノックと共に「失礼します」とアランとルーシーが部屋に入ってきて身支度を手伝ってくれた。

朝食前にアルは父さんの所に行っていてくると部屋を出て戻って来ると一緒に朝食を食べる為に部屋を移動した。

席に着いて待っててくれた父さんに挨拶すれば父さんも挨拶してくれて一緒にご飯を食べた。何気ない話の中 事業の話になり「アイザワ事業が発展して行くのが楽しみですね」と言ってくれた父さんに「発展出来るように頑張ります」と答えたが、隣から不機嫌な低い声で「イオリ アイザワとは誰だ」と聞かれた。

「え?初めて会った時に自己紹介しましたよね」

「違う。出逢って次の日だ。自己紹介しあったのは朝食に誘ったが名前が分からないからその時はじめて名前を教えて欲しいと聞いた時。初めて君がイオリと名乗ってくれたから名前を知った。アイザワなんて一言も言ってない」

あ~、そうなんだ。確かに思い出せば 出会って次の日だった気もする。やっぱり名前しか教えてなかったんだ。

『アルベルトの言ってると通りだな。私も初めて知った』

「えつ、そうだったの」

桔梗までも知らないなんて驚いてしまい声に出してしまったが、周りの微妙な空気に居心地が悪くなってしまった。

「あー、改めまして相澤伊織と言います。今は伊織ターネットです。これからも宜しくお願いします」

立ち上がり深くお辞儀をすれば、アルのお母さんと同じ勘違いをされてしまったが、イオリが名前だと説明して納得してもらった。

「ターネットでも良かったんですが、俺としては目立ちたくなかったので相澤にしました。相澤ならもう名乗ることもないから目立たないでしょ」
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