赤い糸の先

丹葉 菟ニ

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上質な恋を

新たなる挑戦 3

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暖かいまま運ぶにはどうしたら良いだろ?と相談すればローランが保温出来る魔石を貸してくれたりノットがバスケットを準備してくれたりして、出来た差し入れとカーディガンを持って来たが、そっと中を覗けば忙しく動く騎士達を目の当たりにして回れ右をしたが呼び止められてしまった。

『どうしたイオリ。アルベルトに会いに来たのだろ』

『何時からここに来てたんだ?皆忙しいんだから邪魔しちゃダメだろ』

『手土産を持ってきたんだろ。それだけでも渡して帰ればよかろう』

桔梗に即座に言い当てられてしまった。たしかに"お疲れ様"と言って コレを渡す位は許されるよね。

よし!と、気合いを入れ直し 中に入ろうとしたが中からドアを開けられてしまった。

「あれ、イオリお久しぶりです。総隊長は中にいますよ。どうぞ」

「あぁ、アシュお久しぶり 元気だった」

「元気ですよ。イオリ発案のレッグウォーマーのおかげで寒い夜や外でも足元が暖かくて助かります」

アシュの足首にはレッグウォーマーは無いけど助かってるなら良かった。

「そうなんだ良かった」

「ええ、レッグウォーマーを発案してくれたイオリには感謝してます。総隊長の所まで案内しますよ」

案内してくれなくれなくてもわかるけど「どうぞ」と背を押されてしまっては大人しく従うしか無さそうだ。

アシュがドアをノックして中から声がすると最初に入り俺は後に続いた。久しぶりに見たアルは髪が少し乱れ 目の下の隈が薄らとできてる。

「イオリ・・・イオリ!、・・・ちょっと、少し待って、いや待てない」

俺を見たアルはボソッと呟いたかと思えば いきなり両手で机を叩き立ち上がったかと思えばオロオロし始めた。
そんな姿を見たアシュは忍び笑い始めてしまい俺もつられて笑ってしまった。
笑われて困り顔のアルにまた笑ってしまった。

「失礼します。いつまでお客様を立たせてるつもりです」

ノックとともに返事も待たずに"失礼します"と入ってきたアランの言葉にアルが慌てて座る様に促されて俺が座るとアシュはまだ肩を震わせながらも部屋から出ていった。
隣ではお茶を入れてくれてるアラン、桔梗はスリスリとアルに擦り寄ってる。

「あの、忙しい時に来てごめん」

「いや 大丈夫だ。私も一休みするところだ」

横に座ったアルをしげしげと遠慮なく見てしまう。
本当にそうだろうか?机の上に積まれた書類を見れば違うとわかるけど、4日前は目の下に隈はなかった。たった4日で目の下に隈ができるって不眠不休過ぎる。

「母さんから聞いてるが事業を開くそうだな、おめでとう。私にも何か手伝える事が有れば何時でも言ってくれ」

忙しい中でも俺の事もちゃんと知ってくれてるだ。

「ありがとう。でも、ほぼアルのお母さんがしてくれるから俺は確認だけで良いみたい」

「そうか」

"そうか"と、聞こえるか聞こえないか位の寂しそうな小さな声で呟いたっきり何となくアルも言葉が出てこないし、俺も言葉が出て来なくて美味しいはずのお茶が不味く感じてしまう。

『はぁ~、差し入れを持ってきたんだろ』

そうだ、差し入れ忘れてた!

「あのさ、差し入れ持ってきたんだ。良かったら食べて」

バスケットからスフレパンケーキを取り出しノットが一緒に入れてくれた蜂蜜をスフレパンケーキに垂らしナイフとフォークを手渡した。

「ありがとう。うん?上手いな口の中で蕩ける。ホットケーキとはまた違うな」

早速 上品に切り分け一口食べてくれたアル。

「今日はスフレパンケーキなんだ。アルのお母さんも喜んで食べてくれたんだ」

「そうだろうな。母さんでなくても皆が好きになれる味だ。作るのが大変だったろ。ありがとうイオリ 元気が出る」

作ってきてよかった。

「ほらイオリも一口どうだ?」

小さくカットされたスフレパンケーキをオレの口元に持ってきたアルを見れば眩しい笑顔だ。
この笑顔を見たら断れない。
1度やってんだ。と覚悟を決めてパクリと食べた。

「仲が宜しくて安心致しました」

!!アランが居たのを忘れてた。
羞恥心いっぱいで全身が熱くなるのがわかる。

「イオリは本当に可愛い」

よく分からないセリフを吐きながらもアルに抱きしめられたけど 今は何となく有難いような気がするのでそのままアルに身を任せる。

「ご休憩は半刻でお願いします」

休憩時間を言いおいて退室したアランにホッとして顔を上げればアルの視線が直ぐにぶつかった。

「イオリ ちゃんと寝れてるか?」

そっと目の下に指で触れるアルにドキドキしてしまい言葉が出ない。

「すまない」

痛ましげに表情を曇らせたアルにいきなり謝られてしまっても俺には訳かわからない。

「?なんでアルが謝るの」

「私ではイオリの力には慣れない。それでも私はイオリと別れてやることは決して出来ない」 

1番不安に思ってたいたことと真逆な言葉に安心しきってしまった。

「良かったぁ。俺 アルに嫌われたのかと思ってた」

「イオリを嫌いに慣れない!イオリこそ私を嫌ってるのでは」

「嫌いじゃない!ただ ちゃんと俺の気持ちや意志をちゃんと聞いて欲しいだけ!それにこの世界の常識なんて知らないからダメな時はなんでダメなのかちゃんと話して欲しい。でも、俺も隠し事してたから そこはごめん」

言いたいを一気に言ってしまった。

「桔梗ばかりでは無く私にも頼って欲しい。必要とされたい。相談されたい。力になりたい。常にイオリの一番の理解者でいたい。イオリの事は全て知っておきたい。私なしでは生活出来なくなればいい」

えぇ~っと、最後は危険だ 聞かなかったとこにしよう。でも、やっと 桔梗の言っていた意味がわかった。何かあれば直ぐ桔梗に頼りすぎて、アルにしてみれば頼りにされてないと感じてたんだ。

「コレからはもっとアルに頼りにするから」

「ああ そうしてくれ」

まだカーディガンを渡してないしもっと話したかった。トウカチョウを1本の糸に出来たことやこれからの事、事業の事や名前が決まったこと、それなのにギュッと抱きしめられて安心してしまって数日の寝不足のためか秒で眠りに入ってしまった。
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