赤い糸の先

丹葉 菟ニ

文字の大きさ
上 下
189 / 192
上質な恋を

新たなる挑戦 2

しおりを挟む
よし!外出禁止が解けたぁー

今朝 朝食前に父さんから呼び出され「今日で外出禁止は終わりですが、いつ魔獣が出没するか分かりません。勝手な外出はしないで下さい」と言われた。

「はい」と返事をして急いで用意されてる朝食を食べると桔梗は出掛けてくるとサッサと出ていき俺はキッチンへと入った。

「頼まれてたものは準備出来てる」

ローランに手伝ってもらいながらもフワフワのパンケーキを目指して作り始めた。

粉を振るいにかけ黄身と白身を分けた。まずは卵白に砂糖を交ぜ卵白をフワフワに。別のボールに粉と砂糖黄身を混ぜた物をフワフワの卵白を数回に分け底から混ぜ合わせて焦げないように注意しながらじっくりと蒸し焼きに。
丁度焼きあがった時に騎士に守られながらやって来たお母さん。仕上げをローランに任せて俺は玄関に急いだ。

タイミングがバッチリで嬉しくて笑顔で出迎えた。

「いらっしゃい。良かった 丁度スフレパンケーキが焼きあがったんです」

「元気そうで良かったわイオリ。スフレパンケーキって何かしら?楽しみね」

「気に入って貰えるか分からないけど食べて見てください」

部屋に招きノットがサッパリとした甘さのフルーティーのお茶を入れて貰い、ローランが仕上げをしてくれたスフレパンケーキをお母さんの前に置いた。

興味深く眺めてるけど 冷めない内に食べて欲しくて進める。
柔らかな生地にナイフとフォークを刺して一口に切り分け口に運びパクリと食べてくれたお母さんの目が驚きに見開いてる。


「コレはホットケーキとは全く違いますわ。口に入れた瞬間シュワシュワと溶けて無くなりましたわ。なんて素晴らしいの」

ばぁちゃんがテレビを見ててホットケーキとどこが違うんだい。って言ってたから俺がネットで検索して作ってやると 美味しいとペロリとたべてくれた。その時の感想と全く同じだ。

「美味しく作れて良かった」

感想を聴きながらも最近の話からトウカチョウの進み具合。殻から糸にできたことを大袈裟に褒められ、本題の事業の話になるが、本当にそれでいいのか?と思う様な話だった。商品の売り込みや交渉等はお母さんが執り行う、俺はほぼお飾り社長状態だ。

「あの それは俺は名ばかりの事業主になりませんか?」

「心配は要りませんわ。商品の紹介とは大袈裟に言っておりますが、お茶会の際に最先端の流行りを売り込む様なもの。貴族が気に入り使ってれば自然と民達もそれとなく取り入れたくなります。華美な宝飾品を省き工夫を凝らし民達に安く売り出しますのよ。レバンチィーノ商会とも密に手紙のやり取りを行っておりますから心配には及びませんわ」

なるほど、商品紹介のプレゼンは貴族のお茶会になるのか。そこで上手く商品紹介が出来て売り込めたら貴族が勝手に広めてくれる。
つまり貴族が気に入るか気に入らなかいかで商品の売れ行きが変わるし、貴族が商品の広告塔でもある。

「そうなんですか。でも俺の名前で事業を立ち上げて大丈夫なんでしょうか?」

「勿論です。イオリの発案を他の者の名で世に出すなんて私が許しません。イオリ、事業所の名をアイザワにとお手紙に書いておりましたが アイザワとは誰なんですの?」

「へ?俺ですよ、今ではイオリ・ターネットですけど、元は相澤 伊織です」

「イオリは家名で お名前がアイザワだったのね。ごめんなさい。ずっと家名でお呼びしてたのね」

あー かなり驚いてる。そうだよな、アルが紹介してくれた時もイオリって言ってくれたからそのままイオリって名乗ったよな。フルネームで名乗ったのは初めてアルに自己紹介した時だけだったよな?・・・俺はフルネームで自己紹介したよな!?あの時は気分が悪くて良く覚えてないけど たぶん大丈夫だと思う。
しかしなぁ~、苗字が先に来て後が名前って日本だけだもんな。

「名前がイオリで間違ってないです。俺の苗字が相澤なので苗字を使ってくれたらと思ったんですがダメでしたか?」

「そうなの、良かったわ。イオリの苗字なら当然アルベルトも知ってるわよね」

気分が悪かったけど当然 自己紹介してる。はずだ。

「初めての時にフルネームを言ってますから」

「そう、よかったわ」

ホッと息を漏らすお母さんは酷く安心した顔を見せてくれる。

「苗字でも大丈夫でしょうか?」

「ええ、苗字でもお名前でもなにも問題はありません。ですが製糸制作では無くてアイザワ事業でいい思いますよ」

「そうですか?ならそうします」

幾つか確認とお喋りをして帰るお母さんを見送りお昼を食べてもう一度スフレパンケーキを焼いた。





ジェルフラッティ伯爵邸に一日数度の馬車ので入りがあるとの事。
冬も深まれば何処の家も茶会もパーティーも開かないのが暗黙のルール。そして新年を祝う王宮の舞踏会を開始に各邸で開かれ始める。

寒くなってきたが 今年最後の茶会として親しいもの達だけでひっそり茶会が開かれる。まだ茶会があっても可笑しくない時期だが看板も家紋も入っていない馬車は怪しい。

そしてリアンテは家紋が付いたままの馬車でジェルフラッティ伯爵の邸を訪ねてた。
隠すなら家紋がない馬車を選ぶが家紋が着いてるなら用があり尋ねただけだと思う方がただしい。

「ルミ国と多く取り引きされてますね。絵付けの陶器や生花から作られる香水や化粧品は女性の人気も高いですから」

陶器や化粧品だけではないだろう。何を運んでるのか気になるな後を付けさせるか。

「リアンテの息子ダリフが密かに王都に戻ってきてるみたいですね」

何度思い出しても好きに慣れない人物だ。調べてわかったが2年前から領地から居なくなってた。何処で何をしてるのかと思えば領地経営の勉強をしにルミ国に行ってる人物がこの時期に戻ってきたとなれば 怪しむには十分なのだが父親と不仲とも報告が上がってる。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

モルモットの生活

麒麟
BL
ある施設でモルモットとして飼われている僕。 日々あらゆる実験が行われている僕の生活の話です。 痛い実験から気持ち良くなる実験、いろんな実験をしています。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

神官、触手育成の神託を受ける

彩月野生
BL
神官ルネリクスはある時、神託を受け、密かに触手と交わり快楽を貪るようになるが、傭兵上がりの屈強な将軍アロルフに見つかり、弱味を握られてしまい、彼と肉体関係を持つようになり、苦悩と悦楽の日々を過ごすようになる。 (誤字脱字報告不要)

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

処理中です...