赤い糸の先

丹葉 菟ニ

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やりたい事

今できること 13

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隣りに座るお母さんは扇子を優雅に仰いでたのに、今では扇子で目から下を隠してる。

『俺の名前が出たけど どうすれば?」

「イオリ殿か。御本人が尽力すると言ったのか?」

「なにを勘違いしてますの。聖魔法を守っていくには、同士となる者を1人でも迎え入れ、互いに助け支え合い 人々に施しを与え 私達の素晴らしい叡智を広め 1人でも多くの理解者を作ること。イオリ殿はきっと 我等に賛同してくれるでしょう」

手枷がハマって無かったら その場で真剣に話を聞いたと思う。
良く爺ちゃんに妙な宗教だけは入るな!お前の仏教は御先祖が眠る墓だ !なんて良く聞かされてたから 入会はしないけど 話なら聞いてやることはよくあった。
家に来ては  なんちゃらは、で最高約2時間は聞いた時も合ったけど、ちゃんと最後に「俺の仏教は先祖が眠る墓にあるんで はいりませんよ。」と、断った。

そう、話なら聞くけど入会なんかは別だよ。
ペンを握らされるなら 絶対に話は聞かないしね。コレにサインなんて冗談じゃ無いって。
即 断る。

『かなり 気に入られてるな』

『迷惑だから』

「イオリは証持ちなのは知ってるか?」

「噂には聞いております。でも、正式に発表もされてない証とか?うふふふ、噂は所詮噂にしか過ぎません。それに、もし本当だとしても 聖魔法の持ち主 我々の意思に深く感銘を受けるに違いありません。同じ証持ちの番など 見向きもしないに違いありませんわ。今からでも遅くないのでお世継ぎは他でおつくりなさいな」

明らかに アルを見ながら言ってるよ あの婆さん。俺が人体兵器を作ったりする事に感銘を受けるとか無いから。それに アルが他の人と?
・・・イラッ

考えただけ その辺の物を全部投げつけたくなる。

「その思いはターナ 君一人の思いだけだ」

「なぜ、私一人の思いだと仰るのか理解に苦しみますわ。宿舎に来られる方は皆さん 私やアシス様の考え方や思いに賛同して下さって尽力して下さったのよ?貴方こそ 我々 聖魔法の偉大さを知ると良いわ。アシス様とイオリ殿は私達を率いて下さるわ」

なんか気持ち悪いこと言ってんなと感じるが、頭の中ではアルが他の人とイチャイチャとしてるシーンが頭の中でグルグル回る。

「と、言っているが イオリはどう思う」

王様に問われて 立ち上がると、罪人たちの視線が一斉に集まり揃って「「「「「えっ!」」」」」なんて言ってるがそれ所ではない。頭ん中では 俺じゃない誰かの前で半裸になって襲いかかってるアルがいるのだ。

勝手にアルの所まで歩いて行き腰に両手を置き 見上げた。

「俺のこと、散々 証持ちだの番だの言ってたくせに 他で子作りするの」

「しない」

「浮気したらその辺の物を全部投げつけてやる」

俺は真面目に言ってるのに フニャ と笑ったアルは幸せそうだ。"なに笑ってんだっ"て、言ってやろうとしたらその場で片膝を付き綺麗な手を差し出して来た。

「私のたった一人の番は貴方だけだ。この身は国の忠誠に誓ったが 私の魂はイオリだけに捧げたい。この身が滅びたとしても生まれ変わっても貴方だけ愛したい。どうか私の魂を受け取って欲しい イオリ」

今この場が 罪人たちの審議をしてる場だとか、王様や偉い人が大勢 居るとか 頭の中からすっかり抜け落ちてた。

「浮気しない?」

「そんなつまらない事をしてる暇なんてない程 イオリを愛してる」

片膝を付いたまま真っ直ぐ見つめて答えてくれるアルの目は真剣だ。

「捨てたら許さない」

小さな声だったか普通の声だったか 分からないけど 俺はアルの手を取った。

「俺の唯一無二だ」

距離があるのに耳元で囁かれ鼓膜を振動し背すじに甘い痺れを生み出すと自然に涙が零れた。アルは俺の手の甲にキスをしてくれた、最初で最後の誓いキスはきっと 忘れない優しいキスだと思った。

顔を上げたアルは立ち上がり濡れた頬を細く長い指で涙を拭うった後 めじりに1つチュッと音を立ててキスをした所で 「あ~、イオリの気持ちは分かってもらえたかな?」と、どこかで聞いた声だと、?なった後に直ぐに意識が猛ダッシュで追いかけて来た。
!!!!!!!!
ヤバいヤバいヤバい
ココハ イマ ザイニンタチノ シンギチュウ

全身 茹でたこ より赤くなった俺は穴が合ったら隠れたい!いや もう自分で穴を掘る。星の裏側まで掘って逃げ出す!

もう どこも見ることが出来ずに 真っ直ぐ見るのは アルの濃紺な軍服姿の胸だけ、他に視線を移す事が出来ない。



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