赤い糸の先

丹葉 菟ニ

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やりたい事

今できること 2

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ジメジメした牢屋を上がる時も完璧なエスコートをしてくれたアルにお礼を言うけど 全く離れる気配がない。

「そうそう、無礼講のお披露目 忘れないで下さいね」

無礼講のお披露目?無礼講なのに何かのお披露目をするの?なんだろう!?ディールさんの雰囲気からは楽しみって感じがする。

「・・・あぁ、忘れないで居たらな」

苦虫を噛み潰した顔のアル。良く分からんけど、なんか嫌なのかな?

「あははは、大丈夫 大丈夫。ちゃんと忘れないように しつこく付き纏って思い出させてやりますから」

よく分からんけど、しつこく付き纏って思い出させてやるとか、ちょっと怖いンですけど。

「ディーのしつこさの右に出る者は居ないからな、早めにやった方が身のためですよ」

うわぁ~、イルーラさんのお墨付き。
イルーラさんは第2部隊隊長さんでディールさんは第2部隊副隊長さん。牢屋に入る前はお互い名前しか聞いてなくて、牢屋から出てくる時にハッキリと聞いたんだ。

二人共 気さくな感じで、堅苦しいのが嫌いだから隊長とかそんなのは気にしなくて 普通に接して欲しいと言われちゃた。

アレ?今頃ってなるけど、アルの立場ってなんだろう?確か第1部隊隊長さんはガイルさんだっけ?1度だけ挨拶したし、第1部隊副隊長はユージだし 第3 第4とか続くけど アルが所属してるとは聞いてない。俺が聞いたのはアルの領地運営で?、アレ?、領主が騎士の演習に出るの?可笑しくね?
俺って 今 気がついたのも可笑しな話だよな。

『今頃だけど、アルって騎士で領事主なの?』

『本当に今頃だな』

『だって、なんか自分の事でいっぱいだったから、気にならなかった』

『ふむ、確かに・・・だが、やっとアルベルトに興味が持てて来てるのはいい傾向だ。自分で聞いてみろ』

俺が首を傾げてると、アルにサラと頭を撫でられてしまった。

「・・・どうした?」

「いえ、アルって演習にも参加してたけど、所属聞いたことないなって」

「おや、言ってないのですか?総隊長殿」

「えぇぇぇぇぇぇアル 総隊長なの?」

驚き過ぎて叫んでしまったよ。だって総隊長って言ったら、各隊の頂点だよね。
アルの歳からしとても ちょっとって思うよ。

「あぁ まぁ肩書きが取れてないな」

まだ肩書きが取れてない。って事は 辞めようとした?

「また、辞めてるなんて言ったら また我々で嘆願書 出すぞ」

隊長達から辞めないで下さいって嘆願書出されて辞めるに辞めれなかったの?

「イオリさんもご自分の番の素晴らしい勇姿を見たいですよね?」

イルーラさんの言葉にアルの正装姿での立ち姿を想像してしまった。
・・・絶対にカッコイイ、間違いなく見惚れる、コンサート会場 満席で失神者続出だな。

「ちょっと 見てみたいかも」

「そりァもぉ、カッコイイの一言ですよ。年初めの陛下の挨拶の時なんか、我先にと総隊長を一目見ようと一斉に押し寄せて来るし、舞踏会に出席すれば男女と問わずに周波を送られるしで かなりモテまくりますから」

その時の光景が脳裏に思い出させてやるのか、うんざりした感じで語るディールさん。確かに 1人独占状態でモテるのは面白くない。やっぱりそうなのか、・・・前世の友達の言葉をこんな時に思い出したくなかった。"モテまくりの裏返しは食い放題だ。"思い出さなければ良かった、なんかムカつく。

「へぇー凄いですね、同じ男として羨ましいかぎりだ」

冷たい風が吹き肌寒さが少し増すなか、アルが不機嫌な声で何気なくディールさんに話しかけた。

「最近身体が訛って来てるから久しぶりにグランド走りたいと言っていたな。タップリ50周の後 腕立て腹筋各500セットすれば体の訛りも取れるぞ。行ってこい」

「はぃぃぃ」

変な返事をしながら回れ右をして"またな"と手を振って去っていくディールさんに"また"と手を振り返した。

「ねぇ、50周の腕立て腹筋500回って普通なの?」

グランドの広さも有るけど 運動苦手な俺としてはグランドの 2・3周でバテる自信がある。

「ぁー、ちょっとキツいですが やれない事も無い回数ですね」

ちょっと歯切れが悪く答えるイルーラさんの、 やれない回数では無いと聞いて安心した。

「流石 普段から鍛えてるだけあって凄いですね。俺なんて腕立ても腹筋も10回出来れば良い方ですよ」

「気にしなくていい。今回の事で 少し身体が訛ってると言っていたからな 進めただけだ」

フーン、やっぱり騎士の人達って常に鍛えたいとか思ってるのか、脳筋の人が多いんだな。

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