赤い糸の先

丹葉 菟ニ

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焦り

目標 7

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お母さんは用事が出来たと知らせを受け 今日は王妃と王女にかぎ針の編み物を教える事になった。
毛糸の持ち方から鉤針の動かし方を丁寧に教えたが、元々が器用なのだろう 一通り教えると後は時折 質問を受けるが 比較的スイスイと編む2人を横目でか確認しつつ 自分もアルのマフラーを完成させた。

3色のマフラーは思い描いてた通りに出来て自分的には満足だけど、果たしてアルは気に入ってくれるか 気になる。
義理で1度でも使ってくれるなら御の字だよなあ。などと チラリと脳裏に思い描くが上手く行かない。何故ならば しっかりと使って欲しいと思うからだ。でも、それは俺のわがままで、アルが気に入れば使ってくれるだろうし気に入らなければ箪笥の隅に追いやられるだけだ。
使わないので有れば桔梗の首にでも巻こうかな。

そんな事を思いたがらチラリと2人の様子を見るが編み物に夢中になってる。
まだ大丈夫そうだと確認して、王妃様に この中から好きな物を使っていいと言われてる籠の中から黒の毛糸と少なくなってる毛糸を幾つか用意し、太いかぎ針に持ち変えて お母さんの注文のストールを編み始めた。

大判のストールでもかぎ針は大きめにしたので直ぐに出来るが所々に少なくなってる毛糸を使い花を編み華やかしてみようかと想像しながらせっせと編んで行く。

「あら、マフラーを編み上げたの?」

俺が新たな編み物を始めたことに気がついた王妃様が声を掛けてきた。

「ええ、マフラーは編み終えたので、今はお母さんに頼まれたストールを編んでます」

「ストールを?大きな物となると 難しいのよ?大丈夫なの?」

心配そうに聞かれるが 俺にとってはそうでも無い。集中してしまえば2・3日で出来上がるだろう。

「大きな物ですが集中出来ればそんなに大変でもないので 大丈夫ですよ」

「そう、あまり無理をしちゃ ダメよ」

「はい」

「お母様 少し休憩しましょう。レーナお茶をお願い」

お付の人にお茶をお願いする王女様。

「初めは上手く出来るか心配だったけど、編み棒で編むよりもずっと簡単だわ。なぜ 誰もかぎ針で編める事に気が付かなかったのかしら?」

「そうよね。こんなに簡単に編めるとは思わなかったわね。ねぇ、イオリ マフラーの次は 私もストールの作り方を教わりたいわ」

期待のこもった目で見つめてくる王妃様と王女様。俺なんかより立場の上の人にNOが言える人が居るならお目にかかりたい。

「ストールは大きなものなので、先ずはしっかりとかぎ針に慣れてからにした方が失敗なく作れると思いますよ」

「それもそうね。しっかり慣れてから教わるわ」

「その時は私も一緒にお願いしても宜しいでしょうか?」

「もちろん」

ニコッといい笑顔を見せてくれる王女様。女の子の笑顔は可愛いな、なんて思うけど 何故かアルの笑顔の方が良いななんて 思ってしまった。

アルは今頃何してるのかな?



-・-・-・-・-・-・-・


領地の管理から企業 観光と幅広くやっている。
それらを滞り無く運営しなくては領地で暮らしてる民が困る。

領地も広いから分割して担当者を決めて報告させてる。橋の老朽化、土地改良、土壌調査、山の管理、各分野の出資と収入、魔物討伐依頼 等 全ての書類に不備がないかと全てチェックしなければならない。

「はやり この綿毛の刈り入れ量がおかしくないか?今年は去年よりも気候が安定してたはずなのに去年寄りも減って」

「去年は雨が続いたせいで殆どの綿毛がダメになりました。が、去年よりも減ってる状態は明らかに疑ってくれと言っているのと一緒ですね」

1部の書類を机の上に並べて見比べる。明らかに数字を誤魔化してるのは明白だ。私も舐められたものだ。1人心当たりは有るので悩む必要は無いのだが、証拠となる物がこの書類だけでは弱すぎる。

「聖魔法の1人 レートを筆頭に複数の者が去年から頻繁に国外に出立してますね」

「面白い話だな。毎年 運営費が足りないと嘆いては経理に五月蝿く怒鳴り込んで行ってるのに 呑気に旅行か?」

「ええ、きっちり護衛も付けて」

「詳しく話せ」

ニヤリと人の悪い顔を覗かせるアラン。本当にコイツだけは敵に回したくないと心底思わせる顔に 私もニヤリと笑って返した。

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