赤い糸の先

丹葉 菟ニ

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焦り

目標 4

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『寝れたか?』

擦り寄って来た桔梗が心配そうに聞いてくる。

「ありがとう 寝れたから」

ハッキリ言って 余り寝れてない。正直に言えない俺を桔梗は信じてはいない様子だ。

『今日 何をして過ごす?』

『昨日の解読の続きが出来たらいいなって』

『そうか、私は少し離れるが大丈夫か?』
 
珍しく 離れる事を伝えて来る桔梗。

『大丈夫だけど?』

『そうか なら私は少し出かけてくる』

『気を付けて』

クルリと方向を変えてスタスタと去って行く桔梗に思わず手を振ったが、何処に行くのか聞き忘れたなと思った。

「今日はなにをされたいですか?」

「昨日の解読の続きがしたいです」

「では、陛下の執務室に向かいましょ」

ウルさんに案内してもらい 王様の執務室に到着すると 少し時間が欲しいと言ってきた王様。

「実は 昼からで良いのだが 先ずは娘の編み物を教えてやる事は出来ないだろうか?」

言いにくそうに キョロキョロと視線を彷徨わせながら ポツリと呟く。そこには居るのは王様なのに 今は1人の父親が座るってる感じがする。

「別に構いませんよ。王妃様とも約束してましたから ご一緒に教えれますよ」

「本当か!いやー、良かった。面倒事を頼んだから言いづらさがあったが、妻や子供に私だけがイオリを独占するのは狡いと 怒られてしまって 困ってたんだ」

ホッと胸を撫で下ろす王様。きっと家族仲が良いのだろう 羨ましい。

「俺も編み物が途中だったから 助かります」

「そうか。余り 無理だけはするなよ。お主に何かあればアルベルトに叱られてしまうのは私なんだからな」

叱られると言いながらも朗らかに笑う王様につられて 気を付けますと笑い返した。
王様は立ち上がり 昨日 開いてくれた扉を開けてくれたので俺は「お邪魔します」と呟いて扉をくぐった。

-・-・-・-・-・-・-・

素直に言えないのは自分の事よりもまず先に人の事を思ってしまうからだろな。
優しいと言ってしまえば聞こえはいいが、私から言わせて貰えば素直ではない。
母親だと思うならもっとハッキリと言って欲しいものだ。

トコトコと城の中をしっかりした足取りで目的の部屋の前に来た。

「ガウガウ」

中から扉が開くと遠慮などせずに入る。

「おお!桔梗 どうした?」

「イオリはどうしたの?」

アルベルトの両親が揃って茶を飲んでた。
母親の服の先を少し咥え引っ張ってみる。

「あら?私に何か御用かしら?」

「ワウ」

「そう?何からし・・・」

もう一度 服の先を咥えて引っ張ってみると母親は立ち上がった。

「ついて来いって事なのかしら?」

正解。
ドアの前まで移動してみると母親はしっかりと着いてきた。
なかなか感がいい。

「私は桔梗について行きます」

「そうだな 慌ててる様子も無いし きっと大丈夫だろう。ついて行って見てくれ。私は仕事に戻るよ」

「何処に案内してくれるのかしら」

案内では無い。
トコトコと歩き、初めに出できた 母親の部屋にやって来た。

「なるほど、分かりました。アルベルトの所に行きたいのね?もしかして、イオリが寂しがってるのかしら」

正解だ。さぁ、アルベルトを呼んでくれ。
「ワウワウ」

「困ったわ、今 アルベルトに余り接触しない方が良いのよ。イオリを聖魔法の集団に入れようと毎日 家の周りに聖魔法の使い手が彷徨いてるの、余り良くない噂もあって アルベルトが調査してるわ、旦那様も調査して下さってるから早く証拠が揃うでしょ。それ迄は イオリとアルベルトの接触は避けた方がいいでしょ」

なに?そんなことになってたのか?それにしても 聖魔法の使い手は間違った考え方の集団だ。何も知らないイオリが信じ込んでしまってたら大変な事だ。そんな奴らの接触は避けた方がいいが、イオリが夜眠れないのも困る。さて、どうしたものか?

「困ったわ」

「ガウゥゥ」
困った。

ノックがされて返事を返すと 慌てたように入って来るアンネッタ。

「申し訳ございません。是非ソフィア様にお会いしたいとバラド国のリーズ様が」

「なんですって?旦那様では無く私に?」

「ええ、是非にと」

ふん!あの噂の王子か、母親に話とはなんだ?

「ガゥガゥガゥゥ」

「桔梗は会わない方が良いと思うの?」

違う!

「会う方が良いと?」

「ガウガウ」

正解だ!

「そう、では会いましょう。アンネッタ 支度します、手伝ってちょうだい」

「かしこまりました」






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