赤い糸の先

丹葉 菟ニ

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焦り

友 10

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寝込んで四日目でやっと布団から出る事が出来た。
アルがずっと側で見張ってるからトイレ以外に出る事が出来なくて身体が訛ってる感じがする。まずは軽く身体を動かす目的で 庭に出て散歩をする事にした。

「やっと 布団から解放されたって感じだよ」

『無理すると過保護のアルベルトが血相変えて出てくるぞ』

やっと、アルの過保護ぶりを認めた桔梗。
昨日は流石の桔梗も呆れてたもんな。それに今 着てる服。
朝から何枚着てるかとか確認してきたアル。2枚と答えると自ら クローゼットに入って俺のコーディネートをして来て、コレを着ろと手渡して来た。
着ないと部屋から出ることは許さないとか、ありえねぇ~よ。って、思ってたが アルの本気を見て渋々着ることにした。

庭に出るならコレを着ろと上着まで指定して来る徹底ぶりに 『かすり傷でも大袈裟な悲鳴をあげそうだな』と、呟いてた桔梗に、そこまでは無いだろうとは言えなかった。

『この庭には小川が流れてる。行ってみるか?』

『ホントに!行ってみたい!!』

庭に小川とか、すっげぇ~。アルって本物のおぼっちゃまだよなぁ~。

「イオリ様、散策中失礼します。マーサ様がお越しになりまして、ぜひ イオリ様に仮縫いの1着を見て頂きたいと」

「そうなの?まだ そんなに日にち経ってないのに凄いね」

「見に行かれますか?」

正直 見たくない!!けど、わざわざ見てくれと持ってきたんだよな。見ないといけないだろう。やだなぁー、あのフリフリふわふわだったら 引き裂いてしまいそう。

「行きます」

『俺が仮縫い破りそうになったら止めてね』

『マーサとアルベルトの決めたもの。きっとイオリに似合う物だ。自信を持て』

桔梗はシルバーウルフだ。きっと人間の着るものには興味が無い。だから センスの欠けらも無いのだろう!



グリーさんに案内されて向かった部屋に1歩踏み出し・・・そのまま背を向けて出て行きたくなる。

「待ってたわ!!イオリ。もぉ~創作意欲が止まらなくて 殆ど不眠不休よ。どぉかしら!最高傑作が出来たの。自分の才能に慄いてるわ」

フリフリふわふわ要素は何処にいった!!
今 俺の目の前あるのは、見せられた絵と余り変わりは無いけど、ほぼレースを使ったブリブリのキュートだ。可愛い女の子が好みそうな要素ばかりで 俺の方が慄くわ!!

「上の方は色が濃いめだけど下に行けば僅かに薄くなってるの。この色合いのグラレーションが嫌味じゃないでしょ?」

「確かに見事だ。流石に今回ばかりは認めるしかないな。素晴らしい、マーサに頼んで正解だった」

「ガゥゥ」
『素晴らしいな。きっと この世界中でコレを着こなせるのはイオリしか居ないだろう。アルベルトとマーサに感謝だな』

それを訳すと、この世界中でコレを着こなして笑い者になるのは俺だけだ。って、言ってるのか?

「あら!やっと私の才能に気が付いた?いつもボタンがどうの、ここの刺繍がこうの と文句を垂れてたのに」

「私は正直に言ったまでのこと。今回に関しては文句の付けようがない」

「フフッ、だって 私の理想とする可愛い子だもの。創作意欲が湧きに湧いてるのよ。それから、ほらこれも。帰ってからも次々に思いついては書き留めたのよ」

スケッチブックを取り出しアルに見せるマーサ。気になるのか桔梗もアルの隣に行ってスケッチブックを覗き込んでた桔梗が前足を使いスケッチブックをペシペシ叩いた。

「桔梗も見る目があるな。私もコレは絶対にイオリに似合うと思っていた」

妙に気の合う2人と1匹で話は盛り上がりを見せる中、仮縫いだという生地を引き裂きたい気持ちに駆られる。でも、なんとか踏みとどまるのは不眠不休で頑張ったと語った一言だ。
その言葉が無ければ直ぐに引き裂いたであろうブリブリキュートな衣装を睨んでいた。
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