赤い糸の先

焦り

友 7

『本を読んでるのか？』

『読むために借りたから読むよ』

『先程からため息ばかり付いてるぞ。ため息は幸せが逃げるのだろ』

『ホントに幸せが逃げるわけないじゃん』

『アルベルトは本気で信じてるぞ』

『そうみたいだね』

『風邪を引いたのなら早めに言え』

 『ぅん。わかった』

外はシトシトと静かに雨が降り 外に目を向けないと雨が降ってるとは気が付かない。

『雨 止むかな？』

『さぁな、イオリ顔が赤いぞ』

仕事に行ってるアルにわざわざ 頭が痛いとか言えないよ。

『やっぱり少し寝るよ』

『賢明な判断だ』

ベッドに入り込んで目を閉じ横になった分身体が少し楽になった気がする。



ウトウトしては目が覚めるを数度繰り返してるとよく知ってる暖かな温もりを手に感じ目を開けるとアルが手を握ってくれてる。

「どうしたの」

「どうした－
「ガゥガゥ」

怒鳴り声が頭に響き顔をしかめると、桔梗が吠えると額に手を置き下を向いた。

「すまない。ひどい熱を出してる。辛ければ誰かを呼べ」

「みんな 仕事してる   ケホッケホッ」
「イオリ！喋るな」

俺の手をしっかりと握りあたふたとしだすアル。

「水！水はいるか？」

「うん」

「そっそうか！」

少し身体を起こしアルがそっと飲ませてくれる水は冷たくて 美味しい。

「アルベルト！！先生が来てくださったわ」

先生が着てくれたと 部屋に飛び込んできたお母さんを注意せずに先生を迎え入れるアル。

「お久しぶりですイオリさん」

部屋に入って来たのは医療班の責任者のヴァンさんだった。

「ケホッ、お久しぶりです」
「喋るな！」

眉間にシワを刻み苦しそうに見える。

「では、失礼しますね」

診察はどこも 一緒なんだ。

「風邪ですね。薬を出しますので、軽くでも食べた後に薬を飲んで、しっかりと休んで下さい」

「風邪なのね。はぁー、イオリ！！夜 1人でお外には出るのは禁止します。わかったわね」

「はい」

「なるほど、昨晩は冷え込みましたからね。それで風邪を引いたのでしょ」

「ヴァン先生、わざわざ来てくださってありがとうございます」

「いえいえ、では コチラとコチラ あと、熱が高くなったらコレを飲ませて下さい」

鞄から薬をグリーさんに手渡して お大事にと帰っていた。

「ゆっくり休むのよ。また、後でようすよ見に来るわ」

「ありがとうございます」

忙しいのに迷惑かけちゃったな。
反省しながら眼を閉じると額にヒンヤリと冷たい布を置いてくれたのはアルだ。

「暖かいスープを用意して貰ってるから」

「うん」

アルの握ってくれてる手が心地良くて安心出来る。