赤い糸の先

丹葉 菟ニ

文字の大きさ
上 下
51 / 192
焦り

親 3

しおりを挟む
高かった日も ゆっくりと傾き始めた空をベンチに座り眺める。

15歳は働けないのか。
簡単に 住み込みで働ける場所を なんて考えてた自分が愚かに思えてくる。

あの時・・・もっと しっかり神様の話を聞いてなかったのか。もっと話し合うべきだった。と、グルグルと同じ事ばかを思う。

『風が出て来たな。身体を冷やしては風邪を引く。家に入れ』

『ほんと 少し肌寒いな』

長袖のシャツ1枚では寒い昼間は暖かったのに夕暮れは冷え込んでくるな。
そんな事を思っていると 肩から背中にかけてフワリと温もりを感じた。

驚き振り返れば アルが俺に上着を掛けてくれたのだ。

「その、なんだ 寒くなったから」

「上着ありがとございます。とても暖かいです」

思った事を素直に言っただけだが「そうか」と 言って立ち去るアル。

『上着貸してもらちゃった』

『ふん、詰めの甘い奴だな』

『?なにが』

『なんでもない。気にするな、ソレよりも部屋に入った方がいい。今晩は冷え込みそうだ』

『そうだね』

昼と夜の寒暖差がある。秋が近づいてるのだろう。季節の変わり目が苦手で、直ぐに体調を崩しやすいばあちゃんを思い出す。
元気にしてるかな。

俺は 少し 落ち込んでます


-・-・-・-・-・-・-・


イオリがリビングを出て直ぐに後を追ったアルベルト。
何故、私も誘ってもらえないのかと 悲しくなりながらも、イオリの数メートル後ろを着いて歩く。

庭の散策が好きなのか?と思えば 休憩するために置かれてる椅子に座り空を見ているイオリ。

何を思い空を見上げてるのか、その表情は悲しそうだ、聞いてみたいような気がするが、後ろを付けていたなどと みっともなくて側に行けないのだ。
いつまでも 座って動かないイオリ。

だんだんと冷え込み初めて 頬に当たる風が肌寒いさを感じる。
イオリの着ている服は長袖のシャツだけ。
風邪を引いてしまうと 無意識に自分の着ている上着を脱ぎ イオリの肩にかけた。

驚いた顔のイオリと目があってしまったが、後には引けず正直に 寒くなったからというと、パッと花が咲いた様な笑顔で御礼を言われた。
思わず抱き締めたい衝動を堪え 背を向けて 「そうか」としか 言えなかったが、私としては大収穫だ。イオリに笑顔で御礼を言われたのだ。
コレで少しは近づけたのかもしれない。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

モルモットの生活

麒麟
BL
ある施設でモルモットとして飼われている僕。 日々あらゆる実験が行われている僕の生活の話です。 痛い実験から気持ち良くなる実験、いろんな実験をしています。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

神官、触手育成の神託を受ける

彩月野生
BL
神官ルネリクスはある時、神託を受け、密かに触手と交わり快楽を貪るようになるが、傭兵上がりの屈強な将軍アロルフに見つかり、弱味を握られてしまい、彼と肉体関係を持つようになり、苦悩と悦楽の日々を過ごすようになる。 (誤字脱字報告不要)

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...