赤い糸の先

戸惑い

痣 15

アルが腕を組んで数秒 有り難い話が飛び出た。

「使った事も無いなら いきなり使うのは危険すぎるな。教師を付けるか」

「教師をですか？」

「ならば、私が立候補しても宜しいでしょうか？」

「是非、お願いします！！」

アルが答えるよりも先に返事を返してしまった。
隣で深いため息を吐いてるアル。俺なんか悪い事した？

「是非 よろしくお願いします。教授願う日程等は後程で宜しいでしょうか？」

アルと神主が この後の 日程等 話してるが俺には関係なさそうだ。

『魔法の使い方教えてくれるって 楽しみ』

『暴走させないように コントロールを身につけろ』

『コントロールかぁー。難しいのかな？』

『人それぞれだろう』

話は終わったのか アルに帰るぞと言われて 教会を出て 女神の横に立つとキョロキョロと辺りを見回すアル。
誰かと待ち合わせなのかもしれない。

「あの、 道順を覚えてますので 1人でも帰れます。今日はありがとうございました」

ペコ と頭を下げて体を半回転して去ろうとしたが、肩を掴まれて 動けなかった。

「まて！何故 1人で帰ろうとする」

「この後 誰かと待ち合わせなんでしょ？」

不機嫌さが滲み出てる アルに これ以上何を話していいか迷う。

「誰が そんな出鱈目を言った？」

「誰もそんな事 言ってませんよ。アルが辺りを見回してたから俺はそう思っただけです。違うんですか？」

溜め息を吐きながら 大きな手で顔を伏せてしまったアル。
あー、俺に気づかれたくなかったのか。一応 まがりなりにも 番だからな。

「あっ、大丈夫ですよ。アルがどこで誰とよろしくやってても 構いません。どうぞ、お好きに 過ごして下さい。でわ」

俺にしては、最高に気を使って 言ったつもりなんだが、アルの表情が恐ろしいことになってしまった。

「俺がどこで 誰とでもよろしく やるつもりもは無いが、イオリはどこでも 誰とでもよろしくやるのか？」

日当たり良好 ポカポカしてて気持ちいい、なのに静かな問と ともに底冷えと悪寒がする。

「あの、俺の話では無くてですね、 アルの話を・・
「待ち合わせなどしてない。誰ともどこかで よろしくするつもりもない。イオリはコレからどうしたかったのだ？」

「どうしたかった と 聞かれても・・・お金ないから真っ直ぐに アルさんの家に帰るつもりでしたよ？」

はぁー と溜め息を吐き 空を見上げるアル。

「溜め息を1つ吐くと1つ しあわせが逃げますよ？」

全身を硬直させて 壊れたブリキのオモチャの動きをする アル。

「そんなに 溜め息は吐いていないぞ」

「朝から確実に 10回以上は溜め息を吐いてますね。幸せ10個は確実に逃がしてますから」

アルがまた溜め息を吐きそうになるが クッと 息を思いっきり飲み込む 姿は にがい薬を飲む 子供の姿に見える。

「そうか、今後は気を付ける様にする」

「それが 良いと思いますよ？」

底冷えと悪寒は いつのまにか消えた。