白昼夢の中で

丹葉 菟ニ

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御山洗

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入れてもらった甘いカフェオレを飲みながら外を眺める。13階から眺める景色と全く違う、特に違うのが遠くまで見渡せる景色だ、漠然と夜はもっと良いだろうなと思う。

「気に入ったか?」

隣り立った晃さんの手にもマグカップが握られてた。

「うん。でも、家は2つもいらないと思うけど」

家を2つも持つなんて俺には贅沢に感じられるけど、お金持ちには普通のことなんだろうけど、同じマンション内じゃなくても良いと俺は思う、

「大体の番持ちは同じマンション内にもう一つ部屋を持ってるか、戸建てなら敷地内にもう一棟建てるのが定番だ、家族が増えたら困るだろ」

「家族が増えたら・・・」

あぁ、なるほど。発情期の時の部屋になるんだ。たしかに必要になってくるけど、発情期部屋が同じマンションの最上階ってアリなのか?

「せっかく有るんだから俺は此処をと思ってるが、鈴の意見も聞きたくて」

確かにあの状態で移動を考えたら、同じ敷地内や建物の中にある方が楽だと俺も思うけど。

「晃さんは俺との子供が欲しいって思ってくれてるんだ」

「当然だ。鈴は俺の子は欲しくない?」

真剣な眼差しで覗き込んできた晃さんをしっかりと見つめ返した。

「晃さんそっくりな子が欲しい」

晃さんそっくりな子だったらきっと俺はベタ惚れに可愛がるだろと思ってると、眉間に皺を寄せて考え込んでしまった晃さん。

「それは嫌だな。俺は鈴のそっくりな子が欲しい」

えぇー、俺に似てしまうと 線が細く身長も平均より低めの普通に子だ。救いは、晃さんとの子だから可愛いだろう思うが・・・やっぱり 晃さん似の子供がいい。男の子だと男前だろうし、女の子だと美人に間違いない。

「俺さ、・・・美男美女を連れて歩きたいな・」

「アァん、それは浮気宣言か?!」

不機嫌な時にでる 晃さんの「あぁん」の声に肩がピクリと跳ねしまうのは仕方ない。Ωにとってαの怒りはなによりも 恐ろしく感じてしまうと最近 身に染みて分かってきた。

「子供の話しをしてるの。晃さんに似た子だったら男の子でも女の子でも 美男美女になるなって」

「俺に似たら生意気な子だ。それよりも、鈴に似た子の方が素直で 可愛いに決まってる。俺としては鈴似の子を3人は欲しい」

俺に似たら絶対に平凡だと思うけど、まだ出来てもない子供をどうこう考えるよりも先ず 気になるのが、子供の数が具体的なんだけど。

「鈴は何人欲しい」

俺に聞かれても正直な気持ち、親は何となくしか分かってない俺が 子育てをするのかと考えただけで 頭がいっぱいだ。俺には子育てが出来るかも怪しいのに。

「1人育てるだけでも大変そぅ」

「子育ては母親が1人でするもんじゃない。父親の俺も一緒に子育てをするんだ。不安にならなくていい」

不安を暈してみたけど 晃さんにちゃんと俺の気持ちが通じた。
窓辺からソファーに移り何故か晃さんの膝の上に座らされた。

「今 思ってる事 全部言ってみろ」

今 思ってる事。上手く言えるかわかんないけど、と、前置きをして ポツリポツリと話してみた。ずっと流されるように来てしまった、晃さんが好きだけど やっぱりお互いの事をまだよく知らないし、生活していく上で経済的には不安はないけど、俺も働いた方がいいのか、子供はいつ作るつもりなのか。それと、晃さんが他に付き合ってる人がいないのかと聞いた時は、不機嫌全開で怒られた。

お互いの好き嫌いはゆっくり知っていけばいい。と言いながらも、晃さんの職場での立場や年収、持ってる株や不動産を聞いて やっぱり住む世界が違うと感じてしまった。1番驚いたのが、この建物が晃さんへの誕生日プレゼントに建てられたと知った事だ。

「冗談のつもりで 番が出来た時に、こんなのが欲しいって言ったらプレゼントされた。流石に驚いたが、誕生日プレゼントだったから 貰ったが 鈴が気に入らないなら 引っ越してもいい」

「否、引っ越ししなくていい。ココに住めば便利だもん」

1Fにはコンビニからフィトネスや色んな教室が揃ってる。2Fには衣服やバックや靴が揃い、3Fにはキッチン用品から日用品や手芸に本屋、4Fには旅行会社に宝石店や美容店、5Fにはオシャレな飲食店。6Fからは大手の会社が入ってるのだ。その他にも マンションを出れば 色んなお店があるし、歩いて5分の所には高級食材を取り揃えてるスーパーがあるし、整備された広い公園も有り便利なのだ。流石に人気No.1の地域だけある。

1つ残念なのは、俺が大好きな大安売りのスーパーがない事だ。住んでたアパートから歩いて15分の所にあった大安売りのスーパーは5時からタイムセールが有り、鐘を鳴らしながらマイクで安売りの商品を宣伝するのだ。宣伝を聞いた主婦はその商品に手を伸ばす。もちろん俺も、手に出来たその瞬間が堪らない。トイレットペーパー、12ロール150円で買えた時は3日間は俺の機嫌がものすごく良かった。15尾入った海老200円の時は思い切ってエビフライ5尾もして食べた時は盆と正月が一遍に来た思いだったな。

「何か足りない物でもあるのか?あるんだったら言ってみろ」

頬を撫でながら甘く囁く晃さんの胸に体を預けながら、大安売りの激戦で手にして来た戦利品の数々を晃さんに話して聞かせた。

「安くするなら限定数を付けずにやれば混乱せずに済むだろ」

「分かってないなぁ、お店にも生き残ってもらわないと俺達みたいな庶民には困るの。普段からギリギリの値段でやってるって知ってるから、限定数を手に出来なくて残念がるけど、文句なんて言ってる人は聞いたことない。それよりも、店長や従業員からして お店の人の雰囲気が物凄くいいって評判だもん」

楽しそうに スクスク笑って話を聞いてた晃さんも俺が大好きなスーパーに興味を持ったのか、安売りの時間に一緒に行こうって事になり一緒に出掛けることにした。

車に乗り込む時になって 田中さんの運転する車の中に晃さんへのプレゼントを置きっ放しにしてしまったことを思い出した。預かってくれる、って 言ってたし大丈夫だよね。

晃さんの車に乗り込むと助手席にはカエルとウサギのぬいぐるみが置かれてる。自然と晃さんがウサギを膝の上に置いたので俺はカエルを自分の膝の上に置いた。
カエルが好きだと思ってたけど違うのかな?

「カエルの方が好きかと思ってた」

「・・オレが好きな方を鈴に貸したいんだ」

「そっか、このカエルの ちょっとマヌケた顔 晃さん も可愛いって思うんだ。ふふっ」

やっぱり 晃さん可愛い物 好きなんだ。だったら、あの付箋 きっと気にってくれるよね。

「あー、そうだな。・・愛着が湧くもんな」

棒読みに聞こえるし表情も少し固まって見えるけど、きっと知られたくな一面だったのかも知れない。こんな時は 気が付かないフリをしてあげなきゃ。

「今日のタイムセールなんだろ、楽しみ」

「タイムセールの商品を買えなくても 鈴の好きな物を買えばいい」

「うーん、唐揚げ食べたいな」

「良いなそれ。今晩は鈴の手料理を楽しみにしていいか?」

「良いけど、味の保証はしないから」

「鳥肉の他になにを準備すればいいですか?俺の奥さん」

必要な物を話してる内に安売りスーパーに到着した。店内に入れば大勢の人が店内をうろついてる。俺と晃さんは精肉売り場にやって来た。

「凄い人だな」

晃さんが感心してる時にタイムセールの鐘が店内に響き渡るとお客がピタリと動きを止めた。
{本日のタイムセールの目玉商品 鶏もも肉 国産若鶏の鶏もも肉100g 80円 100g80円!をなんと2枚入りで50パック限り、お一人様一パックまで}鶏もも、と聞いた瞬間に店内に居た人達が精肉売り場にダッシュを始めた。もちろん俺もだ、近くに居たおかげで2枚入りの鶏もも肉をゲット出来た喜びを直ぐに晃さんに伝えた。

「晃さん見て見て!目玉商品ゲット出来た!今日は唐揚げパーティーだよ」

唐揚げが余程嬉しかったのか満面の笑みを浮かべて喜んでくれた晃さんと買い物を済ませてマンションに戻った。

テレビで見て気に入ってる、塩胡椒に漬け込んだ後にニンニクと香辛料を効かせた唐揚げが俺の中でお気に入りで、鳥肉を2枚を使いタップリと作った。隣りで、晃さんは豆腐を使った韓国風サラダを作ってくれている。後 2人で簡単に卵スープを作り 出来上がった物を2人で運び 食卓に付き いただきすを2人でした後唐揚げにかぶりついた晃さん。

「うーん、美味い」

「晃さんから美味いを頂きました」

嬉しくて つい園で言っていた口癖を言いなが 俺もガブリと齧りついた。外側はパリと揚がり 中は良く味が染み込み、柔らかくジューシーだ。我ながら上手く出来たと胸を撫で下ろした。そのまま野菜をタップリと使ったサラダを1口。

「ぅあっ、ごま油が良く聞いてるのに食べやすい、それに人参やワカメもタップリ入ってる。コレ 後でレシピ教えて」

「あぁ」

いっぱい作った唐揚げもサラダも完食して2人で後片付けをして別々に風呂に入った後に気が付いた。この家にベッドが1つなのだ。下に下がればベッドは有るけど何故か もう掴まってしまってる俺はなんだろう。
しかも 耳元で甘く囁く晃さんに力が抜けて軽々とお姫様抱っこされてバカでかいベットに下ろされてしまい、そのまま晃さんが覆いかぶさってきた。

光沢がある黒いガウン1枚姿の晃さん、しかも素肌で着てるせいで見えてしまった胸板に、何故かゴクリと生唾を飲み込んでしまった。

器用に片方の眉だけを動かして見せた晃さんは、俺の手を取り自分の胸に俺の手を当てた。

「触ってみたいか?」

何度も触ってるはずなのに、初めて触るみたいな感覚にドキドキと胸が高まる。

「えっと、じゃあ 遠慮なく」

ガウンの合わせから手を滑り入れて晃さんの胸を触る。シャワーを浴びたばかりの晃さんの肌はしっとりしてて気持ちがいいな、と感じるがこの手を何処に持っていけばいいのか迷う。そっと 動かしてみたが、晃さんはジッとしてくれてる。でも、俺としては このまま手を引っ込めるのも 変だし、いつもと手の位置が違う様で変な感じで落ち着かない。落ち着ける場所を探すように手を動かす。胸から肩に手を滑らせ後ろ首の少し下の位置に辿り付いた所で 何故か手の位置が落ち着いた。

ホッとしてると晃さんが喉を鳴らして笑って「正解」と言ってるが意味が分からない。

「セックスしてる時の鈴の手の位置はいつもそこだ、キスしてるも気はもう少し上にある」

カッと身体中に火が付く。あんなに激しくしてる最中でも俺の手の位置まで把握してるなんて どんだけどスケベなんだよ。信じられない!

「変態オヤジ」

「ご希望に添えて変態オヤジでやらせて貰う」

反論する前に口を塞がれ舌が絡むと、パブロフの犬の様に両腕を晃さんな巻き付け、もっと と身体が望むように自分からも舌を絡みつける。

「本当に キスが好きだな」

態々 言葉にしなくてもいいと、言いたいのに また口を塞がれてしまい叶わないまま、変態オヤジと化した晃さんに一晩中 泣かされる勢いで抱き潰された。




目覚ましの音で起きて直ぐに置き手紙に気が付いた。晃さんの字は美しく几帳面で読みやすく、見本の様に見える。とてもじゃないけど 俺の字は見せられないと痛感した。

シャワーを浴びてご飯を食べたら、手紙に書いてた通りに迎の車が来たとフロントから連絡が入り慌てて下に下がったら、田中さんが車のドアの前で待っていてくれた。

「おはようございます。鈴さん、お預りしてました御荷物をどうぞ」

「ありがとうございます」

促されるまま 車に乗り込み やっと落ち着いた。良く考えたら、昨日の事で深く落ち込んでいた筈なのに、俺は通常運転になってる。晃さんが先回りして、俺が落ち込む隙を作らせないように してたかも知れないと気が付いた。
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