白昼夢の中で

丹葉 菟ニ

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喜雨

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「おはようございます」
「おはよう ございます」

昨日の1件が嘘のように 日常を取り戻した、様に見える。

カラフルなランドセルを背負った子供達や足速に通り過ぎるサラリーマンを見つめながら 交番前に立ってる。その斜め前、道路を挟んだ向う側の建物の間からガラの悪い2人組がチラチラとこちらを伺ってるのは分かってる。
織田警視の指示で俺にも警護が付くことになり、交番の中では制服を来た 近藤さん山下さんが付いてくれている。

装着してるイアホンマイクからは呑気な2人の会話がずっとされてる。
《さわやかな朝に 似つかわしくない2人組って逆に目立つとか考えないあたり 出来の悪いやくざを選んだんだな》
《コラコラ あの人達も この辺で上の方に覚えてもらうって必死なんだよ》
《その必死さを 他の事に回せなかったのか?》
《そうだねぇ~、須賀ちゃんは どう思う》
「おはよう 気をつけて行くんだよ」

《「一緒に挨拶をしませんか?」》
《お断りします》
《右に同じく》

制服を着てるが、2人は俺のボディガードで居るので 交番勤務をしなくてもいいことになってる。
上からの指示でも有るので 誰も咎める人はこの中には存在しない。



昼前に 祠堂の秘書に呼ばれて 休憩時間に俺に会いたいと連絡を寄越して来た。

「昨日の今日で 連絡を寄越してくるなんて あからさますぎでしょ」

近藤さんと山下さんは私服に着替えて 俺に隠しマイクを仕掛けると、勝手に指定して来た店に数分後遅れで向かった。

10年ぶりに再会したが 昔と変わらない顔、人を見下したこの人の目が最も嫌いだった。

「お久しぶりです。何ですか」

「浅嗣に 財産を譲るとか言ったそうだな」

「言いましたよ。俺の本当の弟なら後見人にって思ってね。今は家庭もないし、こんな仕事をしてるし 財産何か要らないと言ったけど 父さんが貰っとけって くれたんで」

「ふん!お前は 自分の弟の顔も分からないのか?」

「ろくに顔も覚えていませんから」

「今更DNA鑑定なんぞ必要ないだろ!さっさと譲るものがあるならとっとと 譲って消え失せろ」

俺が知ってる弟とかけ離れてる人物です!この一言をもう一度 この人に言いたい。あの時は俺は子供でボコボコに殴られて何も出来ずにそれで終わりだった。
今のこの人は、昔と同じ事をするのか?それは それでこの人を訴えれる口実が出来て助かる。あの時と違う、ちゃんと この人の対応1つで この人を追い込む事が出来ると俺は知ってる。

「俺にもしもの事があった場合であって、今すぐになにかがあるわけないですよ。
それには後見人と言っても 俺が好きな人ができて結婚すれば 後見人を嫁に変えます。ずっと俺の物を背をわせとくのも可哀想でしょ?元は須賀家の物なんですから」

「景気が良いとは聞いてたが 出来損ないのお前にまで所得逃れをする金があるとは どんだけ意地汚くなったんだ?」

聞き捨てならん!俺の父さんはお前なんかよりかはずっと綺麗だ!

「父さんの悪口はやめて貰えますか?それに、浅嗣が本当に俺の弟なら後見人じゃ無くて そのまま譲渡してもいいですよ。11年前に弟じゃないと騒いだお詫びに。ただしDNA鑑定が条件ですが」

「どうあっても 自分の無能さを棚上げして、優秀な弟だとは認めたくないんだな。本来なら長男の自分が名誉ある祠堂家の跡取りだと思っての行動か?お前は役立たずのβで、弟が素晴らしい才能の溢れるαだと、まだ現実を直視しきれない愚か者だと認めたくない気持ちも分かる。でもな浅嗣は紛れもなく私の優秀な‪α‬と桜の美しい‪α‬を そのまま受け継いだ浅嗣はお前の弟だ。DNA鑑定しないと 弟だと認めきれない気持ちもわかる。お前だけが 我が家の中で大きく異なる存在に成ったてしまったのは仕方ない。それはどんなに努力しても所詮 クズはクズ 出来損ないのβだ、どんなに足掻いても‪α‬に離れないからな。財産なんて 出来損ないには宝の持ち腐れだ、優秀な者に譲って使ってもらうのが世のため人のためだ。分かったな?早速 財産を浅嗣に譲れ。お前が持っていても役にもたたん 浅嗣が有効に使ってくれる」

すっげーな、かなり異常な場所で育てられてたんだな。最初の頃ロボットだったって兄さんが言ってたけどあながち間違ってないんだろうな。
父さんはα至上主義の馬鹿 だって言ってたけど、間違ってないよ。よくこんな人が政治家やれてんな。
世間に今すぐにでもバラしたい。この人はα至上主義者でβを屑呼ばわりしてますって。
自分がαだから支配者になった気分で居るならわかってるはず だよな?この世の中99%がβだって事を!?

「屑ですが 私にも仕事がありますので」

水も飲んでなければ料理にも手を付けてないので無視してそのまま店を出てきた。

店を出ると尾行の下手な2人組がピッタリ着いてくる。俺だけが狙われてるのなら問題ないが、家族の事が頭をよぎる。





須賀の養子先を調べれば 贔屓にしてるし輸入家具をメインの株式会社 永信だ。家具と言っても 一点物のアンティーク物を扱っていて、俺や家族が贔屓にしてる所だ。

確か婿がやり手のαで、長男が父親を越しそうな できの良いαだと聞いた。
成程、須賀はその家の次男だったのか。

譲渡されてるのが株式会社永信の株とマンション2部屋と貸し駐車場。警察学校に入る前に譲渡されてる、きっと 警察官としての職務中に何か起きて 動けなくなった時の為に、親が子を心配して 食って行けるだけのものを渡したんだろうな。
どこの親も〈親は幾つになっても子供を心配するものだ。〉口を尖らさて言う、 どこの親も一緒だ。

「7・8000万といったところか。どれも綺麗な物件だからなぁ~ 。昔の好で横に流せるし、仙竜会にしてみれば7・8000万なんて一晩で動かせるかなぁー 動いてくんねぇかなぁ~」

本気で言ってないことは口調で分かるが、さっさと持ち場に戻れと蹴り出したくなる。
俺の隣に座って 愚痴を洩らすのは東だ。仙竜会にも因縁がある東としは、動かぬ証拠を1つでも掴んで塀の向こうに送ってやる。と 意気込みは凄かったが 他の班の証拠固めが順調なのに対して、自分達の班の進行状況がイマイチ、特に 仙竜会の悪事の証拠が出て来ないと愚痴を漏らしに来たのか?須藤班と田村班が須賀を囮にした作戦状況を見に来た?なぞだが 兎に角も

「鬱陶しい!」

「だァァァァァ! 仙竜会と原が会ってたのは間違いない。でも 債権者と債務者以上の関係性が見えてこない」

証拠が全ての世界で 関係性があるだけでは 引っ張れない。仙竜会はまだまだ必要悪と見なされたのか フィクサーの指示で証拠を囲われたみたいだな。そうなったら 証拠なんて探すだけ無駄だ。光も差さない暗闇の中で真っ黒な箱を探すようなも。今回も諦めた方が賢明だ。次 仙竜会が表に顔を出し 不要だと判断された時 この事件に繋がる悪事も全てを公になる。その日が来るか来ないかは 全てはフィクサーの指示一つにかかってる。

「はぁ、なら原を追って見たらどうなんだ?」

「園長の佐々木 郁也も元は孤児で 1人でも子供達を救いたいと 若い頃から無理をして、捨てられた子たちを育てると聞き付けた 県職員の1人が 県議に求めて 今のひかり園ができ、運営は奥さんが亡くなるまで一手に引き受けてたが 15年前からは今の原になってる。あの園は 10年前から毎日の食費や最近やった屋根の修理の水増し請求書で何時も資金難だ」

如月から手渡せれた 美味くもない煮きってるコーヒーを受け取りながらぼんやりと話してくれてるが報告書になって上がってた。

「妻 弘美が生きてた頃は今程 苦しくもなく伸び伸びやってたし 近くの遊園地にも年一回 園の子供達で 遊びに行ってた」

「そう、初めのきっかけは分からないけど バレないと分かると大胆になるのは どこも一緒だ」

「あの園にダム地にの住所が使われてる子が居ないか調べてるだろ」

報告書として上がってきた事を態々聞かなくてもいいが 気晴らしになればと態々 話を振る。

「御手洗 俊、田中 鈴、橋爪 靖、この3人の親の所在が分からない。田辺 波直の親は生活困窮者で預けられたみたい」

そんな事を確認してると三角がバインダーを手に入って来た。

「出たか?」

「バッチリですよ。どうぞ」

昨日の喫茶で須賀と三角が出た後で捜査員が2名入り 祠堂 浅嗣の使ったアイスコーヒーのストローを入手していた。

バインダーに挟まれた報告書に祠堂 浅嗣と須賀 高嗣との兄弟関係を示す低い数字と 認められないの文字。
念の為にと 三角に頼んで須賀高嗣と田中鈴の兄弟鑑定は高い数字と共に認められてるの文字。
自分の番が高い比率で兄弟だと認められる数字が高く近い存在、頭で理解出来ても腹が立つ感情に笑えくる。

その下には もっと面白いものが 挟まってた。
如月にバインダーを渡してやり 手近な机に軽く腰を掛けて腕を組み如月が見終わるのを待った。

「どの様に 御迎えに上がりましょうか?」

「気が早いよ。先ずは家宅捜索からだな?三角には悪いが 面が割れるから 部下の手配を頼む」

頷いて去っていく三角と家宅捜索令状を取るために動く如月を目で追いながら、番の肩に残る銃創を思い出す。癒えることの無い傷が この事件を終えることで少しでも番が安心して暮らして欲しいと心から願う。







おかしいだろ!!絶対に おかしいだろって!!

湊さんの奥さん、愛さんがやって来た。
女3人寄るとかしましい と言うが、女3人でなくても喧しい。

「あの、ですね」

「はい!なにか ご要望がございますか」
「なんなりと ご要望をお申し付け下さい」

満面の笑みで揉み手をする営業マンの2名のお方と、お母さんと長男の嫁の視線が痛い。

「すーちゃん!遠慮なく 言ってね。一生に1度っきりなんだし。そうだ!折角なんだし 神様の次には仏様にもお礼を込めて神前式、今は和婚だったかしら?」

「わこん?ってなに?」

「和の結婚式で和婚って言うんですってフーちゃん。すーちゃん知ってた?」

いえ、知りません。
お母さんをフーちゃんと呼ぶ 愛さんは、お母さん同様極上の美人さんだった。そして、性格は推しが強く、ハッキリ してて 楽しい人 だと思う。

初めてあったのに いきなり「きゃ~、貴方が鈴ちゃん?初めまして 湊さんの妻の愛音です。あーちゃんでも愛ちゃんでも好きに呼んで、私は鈴ちゃんのこと すーちゃんって呼ばせてね。今は青アザで顔酷いけど 可愛い顔立ちしてるわね!」
「でしょでしょー、もぉ~、1目見た時 余りにも可愛くてビックリしちゃったもの。この子ならどんなデザインでも似合うわって」
「分かるわ!本当に楽しみ。楽しい事が大好きで 少しだったけどイベント会社に務めてたの。任せてね」

ビックリ箱を開けた感じの2人に押されまくって、しどろもどろになりながらも、やっと言える言葉は、 晃さんに相談して返答させて下さい。の一言だった。


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