白昼夢の中で

丹葉 菟ニ

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漫ろ雨

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科捜研三角と田村、近藤、須賀を加えた班は今 須藤班と合流出来た。

「よぉ~、やっと合流できたって事は 繋がりバッチリだなぁ~。高校生の割りには こんな所を顔パスで入れるなんて 悪趣味だぜ」

須藤班の金田、野々村の2人と 車に待機してる岡、川野だ。

「坊やがやってるデート倶楽部の動きも活発になってるみたいだしな。1部が上納されてるなんて知らずにお小遣い稼ぎ感覚でヤってるんだろうな。恐ろしいよ」

近藤は引き継ぎの時に聞いた話を忌々しげに呟く。同じ年頃の子供が居るから尚更 なのだろう。

「上からの指示で指紋とDNA出来るものを持ち帰れって話なんだよな」

こちらで好きに動いて良しとの言葉を貰ってる。こんなチャンスは無いとばかりにサクッと 作戦を練る。話し合った結果、3つ程出来上がったが、最初の切っ掛けは三角と須賀が浅嗣が出てきた所を乗り込む作戦だ。

待つこと40分、浅嗣と青葉賢治が仲良く揃って出てきた。想定内ないで1番餌に食いつきやすい作戦に出れる。

「久しぶりだな。浅嗣 一緒に来てもらいたい」

一応 少しでも一緒に暮らしてた時期があるが、養子にいってからは1度も会ってない相手だ。覚えてるか不安がある。

「あぁ?誰だてめぇ」

1歩前に出てきたのは青葉の側に控えてた人間だ。

「あー、思い出しましたよ。長いこと会ってなかったですからね」

高校生の割りには澱んだ目をした少年の面影を残した1人の青年が面白いものを見つけたいと言わんばかりに笑顔を作ったが、どう贔屓目に見ても 犯罪者が作り出す特有の歪んだ笑みにしか見えなかった。
そんな事を思ってるとも おくびにも出さずに平然と言葉を返した。

「思い出してもらえて光栄だな」

「知ってるのか?」

「ええ、この人 元 祠堂家の長男で僕のお兄様ですよ、出来損ない過ぎて父に捨てられましたが」

ドッと周りから遠慮のない笑い声が沸き起こる。

「今更なんの御用ですか 元 お兄様?」

「子供の頃からの体が弱くて 家から出られなかった割には大きく育ったもんだな」

「ええ お陰様で」

α特有なのか 背が高くて 均等と取れた躰に顔もそこそこ良い。但し 普通にしてれば。

「やっぱり 俺とは似てないのな」

「出来損ないの貴方と一緒にされたくは無いですね」

悪いが俺も一緒にされたく無い。その一言を飲み込んだ。

「俺とお前 本当に兄弟かハッキリさせたくは無いか?」

「お断りします。では さようなら」

「待てよ」

「嫌がってんだろ、お兄様」

去って行こうとする浅嗣を呼び止めに入るが、そこに割って入って来たのが 最初に声を掛けてきた奴だ。

「ちょっと君、お兄さんは君にちょっと頼みたい事が出来てね」

優しさを全面に押し出して 声を掛けるのは三角だ。

「頼みたいこと?」

三角の言葉に反応したのは意外性も無く青葉だった。

「賢治さん、どうせろくでもない事なんですから」

浅嗣は足を止めて 呆れて振り返った。

「所で貴方は?」

今初めて存在に気がついたと言わんばかりの浅嗣に呆れたが顔には出さない様に気を付ける。

「さんかくと書いて三角と申します。お兄さんの後見人を貴方にとおっしゃっておりまして」

「後見人?」

片眉を器用に動かして興味が有りそうな素振りを見せるが 返事は返してこない変わりに青葉が口を挟み始めた。

「こんな所で話す話じゃい、時間があれば どこか別の場所に移動しないか?」

「いいぜ。浅嗣も異論は無いよな」

「勝手に決めないで下さい」

後見人の言葉を聞いて、自分の話でもないのに どんどん前に出てくる青葉。それに意を唱えるのは浅嗣だけだ。浅嗣が嫌がるのも無理ないが 青葉は浅嗣の境遇を知らないようだ。

「せっかくの兄の誘いだ 話ぐらい聞いてやるのが 出来のいい弟ってもんだろ。 あそこのコーヒー お勧めだ入ろうぜ」

道の反対側にある 喫茶店を指さして先導する青葉に渋々従う浅嗣の後ろについて場所を移動した。



それぞれ注文し終わると早速 後見人ってなんだと聞いてきたのは青葉だ。

「その前に なんで僕が此処に居るのがわかった?」

当然の質問がだな。

「おれ、今 こんな仕事してんだ」

懐から取り出して見せたが 鼻で笑って見せた2人

「へぇー、やっぱり出来損ないじゃん。巡査って1番下っ端だよね。僕にはやりたくても なかなか やれない肩書きだ 」

「まぁまぁ、折角の兄弟の対面だ 話とやらを聞いてやろうじゃないか、なっ 浅嗣」

たかだか 巡査の肩書きでは動じない2人。話を聞く気満々の青葉は迷惑そうにしてる浅嗣の肩に腕を回してにやけ顔を晒してる。

「なに 簡単なことだ。俺とお前が本当の兄弟なら 俺の財産の相続人になって欲しいって話だ」

「ほぉ~、相続ってとぉ 桁の問題が出てくるだろ?」

関係無い青葉が早速 桁の話をしだした。

昨日の内に資料を渡されて頭の中に出来る限り入れとけと言われて資料を全てに目を通した。
海外のパイプを持ちたくて金策に走ってると言う話は間違ってないようだ。ファースト・ミッションを成功させたい青葉組の引渡しは1ヶ月後。金の準備が出来なければ 新たに繋げたルートも潰れる。
一方 此方はその情報を掴んでるので ルートごと 引っ張りたいと考えての行動だ。

「貴方には関係ないのでは?」

「俺は浅嗣とは ちょっとした 間柄なんだよ お兄様」

「いくら 僕に相続してくれるの?」

「俺は今の所 自分の家庭は持ってないし、こんな 仕事をしてるから 自分で決めた 後見人を見つけろと 父さんに言われてね。最初に思い浮かんだのが弟の存在だ。須賀の家が 俺にと相続してくれた物 すべて」

ハッキリとした物は言わないのは作戦の内だ。

「景気のいい話じゃねぇか。コイツがお前の兄なんだろ?サッサと後見人に慣れよ」

「その前にDNA鑑定をしてからだ」

「断る!」

間髪入れずに断る浅嗣に驚いてるのは青葉の方だ。

「そんなに ハッキリ断ることなのか?」

「自分の弟を態々 DNA鑑定してからじゃないと信用出来ないとか言ってる人の物を態々 貰いたいと思う方がおかしいだろ?そんなものを貰わなくても僕には祠堂の跡取りだからね」

「そこまでしないと自分の兄弟と認めたくない気持ちもわかるぜ」

店員が注文したものを持ってきて 置いて行く。

「やってもらえないなら この話しは無かったことにする」

「金額を聞けば コイツの気持ちも変わると思わないか?」

「ちょっとした間柄の貴方には関係ない」

「おいおい、あんたも せっかく貰ったもんを不意にしたくなくて 浅嗣に声掛けたんだろ?その間に立ってやろうとしてる俺の親切心を不意にするのか?」

オーバーアクションを取りながらおどけて見せるが 目がギラついてる。余程は金策に困ってると見える。

「暴対法ができて そちらも何かとお困りのようですね。私も警察官との端くれですので 貴方達に1円でも流れるなら今の職場に居ずらくなりますので コレから先は入ってこないでいただけますか?」

「おいおい 、肩書きはそうでも中身はクリーンにやってるぜ。俺達も其方さんに目を付けられると、どんなにクリーンにやってても やりにくくて困りますね」

「やりにくくて困ってるなら 肩書きを無くせば良いだけの話だ。この話しは 無かったことに、では」

「その様ですね 須賀さん。他に後見人になって貰える人を探した方が早いようですよ」

伝票を持ち 店を出た。外で待機してる者達を無視して進む。どこからとも無く現れた者達が後を付けてくるが 気づいてない振りをして適当な店に入り 俺は父親に迷惑をかけるかもしれないと 〔詳しくは話せないが、父さんから貰った財産を 浅嗣に譲る話を今日本人にして来たと〕と書き込みメール。 その間 三角は須藤班に連絡を入れて次の指示を待った。

直ぐに返信が来た内容は、[お前の事を信じてる。]の一言だけ。その後 兄からも[ 必要な物はなんでも言ってこい]と来た。俺は 恵まれた環境をくれた 今の家族を巻き込みたくないし 大好きだ。でも、このまま 弟の名前を語ったまま 好き勝手に 弟の名前を汚されるのを黙って見ている訳には行かない。2人に 〔ありがとう〕 と返信した。

三角の方に来た返信は 須藤さんの知り合いの弁護士事務所に行けとの指示で添付されて来た住所を頼りに弁護士事務所にたどり着いた。 事務所には 須藤さんが待機してた。

「お疲れ!」

「「お疲れ様です」」

「さてと、無駄話は無しだ。須賀巡査  財産なんて見せびらかして大丈夫なのか?」

「はい。父さんにも もしかしたら迷惑をかけるかも知れませんが 了承して貰えました」

「悪いが こっちで勝手に調べたよ。安月給の割には持ってんな。アッチも残り1ヶ月だ。痺れ切らしてるし襲われないように気をつけろよ」

「あの1つ質問いいですか」

どうぞと ばかりに手を見せて 深く座り直した須賀さん。

「資料を読んで気になったんですが、仙竜会と繋がってるなら そこから金を借りれば済むのでは?」

あーそれな、と呟く須藤さん。

「先代までは同じ錦成組の傘下として竜己組と青葉組は肩を並べてたが、竜巳組の組長が引退する前に竜巳組を収縮して行き身綺麗にして組を畳んだ。そして元は若頭だった息子や若頭補佐、1部の幹部達も離脱届けを出して身綺麗になり一般人になった。
そして、1年もしない内に仙竜会としては新たに立ち上げてる。今は同じ土台に立ってない以上 それなりの見返りも無いと貸さないし、旨みもない所には見向きもしない。 偶に話をするのは昔のよしみ。直接 なにかを依頼した証拠も残してない徹底ぶり。頭の切れはピカイチだよなぁ~」

前のめりになり湯呑みを掴み1口飲むと 遠くを睨みながら また口を開いた。

「大まかな 道筋は見えてる。原が仙竜会から金を借りてるのも分かってる。でもなぁ~、客だと言われたらそこまでなんだよな。細かな所までは見えてこない。でも 絶対に繋がってるのは分かってんだけど 証拠がないのが痛いよなぁ~。あのダム地の1部を買い上げてたのが 仙竜会だ」

「それって 偶然では無いですよね?」

「じゃ 無いなぁ~。至急に金が欲しいからって、あの土地の持ち主達が 同じ所に 土地を売りに行った。なんて御伽噺 誰が信じるかってんだ」

「御伽噺じゃ無ければどこかに証拠があるでしょ?」

須藤さんは1度 天井を見上げ こちらにやっと向きあってくれた。

「それなんだよ。2課も躍起になって探したんだけど さ、まぁー 見事までに綺麗なんだよ。もぉ~呆れるくらいピッカピカ。一つの汚点も無いから2課の皆様お手上げなのよ」

上着のポケットから電話を取り出した。



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