白昼夢の中で

丹葉 菟ニ

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雨の日は思い出と現実の笑

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疲れてしまったのか、車に乗り込み 直ぐに寝入ってしまった鈴を妻が優しく自分の膝枕をしてやるのを見ながら電話に出た。

「晃か・・・・そんなことを言っても お前は今 忙しいのだろ? ・・・・鈴君は織田家の嫁なんだからちゃんとお披露目をしないと鈴君が肩身の狭い思いをするだろ。・・・・わかってるじゃないか。男なんて飾りでしかない。メインは大事な嫁のお披露目だ。・・・・そうは言っても 鈴君も乗り気で目を輝かせてた。・・・フフっ とっても可愛かったよ 役得だった。・・・え、そうか分かったよ何とかしてみる、じゃ切るよ」

「晃ちゃん 怒ってた?」

「怒ってたねぇー、部下からお店を聞きいて 激怒したんだろう。勝手な真似はするなって。式は2人きっりですると言ってたけどね」

「ダメよ。この子はちゃんと大勢の人に祝福して貰って我が家に来て欲しいもの」

妻の言い分は最もで、この子をちゃんとお披露目しない事には 大変な事になる。

私の家の歴史を紐解けば小さな民宿から始まり、曽祖父から一気に全国に目を向け展開したホテル業に成功した。

現会長を務めてくれている祖父は心から祖母を愛してた。祖母は敏感肌の為に科学製品が殆ど合わなかった。祖父は祖母の為にと、肌に優し物 をテーマに天然素材の食品やリンネ類や家具も一新し 壁材を漆喰にしたホテルを世界展開し、色々な所に旅行をしてみたいと言う祖母の願いを聞きいれたのをきっかけに、爆発的な人気を誇るホテルとなった。

そして私の代で、食品やリンネ類を商品化して売り出し 食器や洗剤まで自社製品を作り出した。

ホテルで使う物は家庭内で使う物と変わらないと、市場に展開した所、幸先よくヴィーガンの人達に受け入れられ、次々に健康志向に強い人達にも受け入れられ、今では 若い女性達に食べて健康美を、なんて言ってる子達が我社の物を進めあってるネットを見つけたりもする。ネットで話題になると それが一気に品薄になるために侮れない。

初代の名前からヒントを得た、松が重なりあったマークはどこの家庭にも1つは有るだろう。
小さなものと言えば 手触り抜群なティッシュから始まり大きなものは家だ。
今 晃が住んでるマンションも、晃の誕生日プレゼントに何が欲しいと聞くと、具体的要望を伝えてきた。将来 番ができた時に全ての生活が賄うマンション。要望を聞き入れ私が1から設計し 我が社が建てたものだ。
初めは最上階で暮らしてた晃だが、番が見つかった時用にと、番との新居様にとあれこれと口を出し、下の階に住居を移した。

願えば大体のものは叶えられる財力のある家に嫁が来ると知った時にどんな子なのかと調べるのは当然。我が家は松重株式会社は世界の億万長者に20年以上も名を連ねてる織田一族のトップだ。

調べた結果 慎ましく 心優しい10代の子供だと知った時は正直 戸惑ったが会ってみると 穏やかに笑う姿が安心感や安らぎを与えてくれる子だ。少し一緒に居れば コチラが警戒を解いてしまう子だ。



晃が自分の進路を口にした日を思い出した。
ずば抜けて頭のいい子でαとしての力も強かった。そんなある日、自分は警察官になると言い出し頭を抱えてたが、反対しても言う事を聞く子でも無いことは親の私が1番良く知ってる。

反対するよりかは 理由を聞いた方が早い。

運命の番を見つけたいと言った息子を笑わなかった自分を褒めたい。なにを言い出したのか、都市伝説を信じて 自分のたった一人の番を探すとは、なんとも夢見がちな子に育ったと頭を抱えてしまった。私の周りにも見つけたやつは居ない。神話を言い出さなかっただけでもマシだと思う事にした。

警察官になるのはいいが、ずっと独身で居られるのも困る。押し問答の末に35歳までに見つからなければコチラで決めた人と結婚をする約束を取り付けて認めた。
あの時は 笑わなくて正解だったな。ほんとうに見つけるとは思ってなかった。今も隣ですやすやと眠ってるだけなのに、傍に居るだけで癒されてる気分になる。まるで小動物の様な子だな。

「不思議ね、私も勝己さんも運命ではないわ。湊ちゃんと愛ちゃんも。勿論 私の周りにも運命で結ばれたなんて聞いた事ない。でも、本当にあったのね、噛み跡がとっても綺麗。丁寧に手当てしたのね」 

「あの我慢強い子が 我慢できなかった運命の子だからな。とても大事なんだろう」

大学時代 デパート買い物をしてた時に ヒートを起こしてる子が居たが 誰もが遠巻きに見てる中、冷静に介抱し 隔離室に誘導したのが晃だと聞いた。ヒートを起こしてる子は晃を求めが 晃はピシャリと跳ね除けたと報告受けてる。
運命の番の匂いは芳醇で逃れることが出来ないと都市伝説の中の一説にある。
妻のふみかの匂いも香しい匂いだが、自分の運命の番の匂いとはどんな物なのか 1度で良いから嗅いでみたいと密かに思うだけで、探してみたいとは思わない。

「結婚式には親族だけにして 披露宴は会社関係者から取り引関係者 後は晃ちゃんのお仕事の関係者よね」

「後は鈴の呼びたい人になるな」

「そうね。2人には少し抜け出して 別の会場を用意しましょう。手作り感があった方が子供達は伸び伸び出来ると思うの」

妻は鈴の気持ちを優先させた答えは、園の子達を呼ぶための提案だ。気兼ねなくのびのびと祝える席を作ってやりたいと妻なりの配慮だ。

「それはいいね」

色々と辛い事が起きた後になるだろう。頭の中で妻の希望を書き込み 鈴君の希望を聞き出して、賑やかなパーティーの企画を組み上げる事にした。

まぁ、あの子はとことん 嫌がるだろうが 鈴を上手いこと使えば 渋々此方に従うだろう。
すべては 事件解決してからだな。



その前にこの子の名前を早急に何とかしてやらないとな。

須賀氏の甥っ子になるのか。
双方にとって 悪い話にならないな。


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