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急雨
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改めて自己紹介してくれた お兄さんは 織田 湊さん35歳α お母さん 織田ふみかさん 年齢は内緒 Ω
昨日 電話で頼まれ湊さんが俺の付き添いに着てくれる事で纏まったが お母さんが 来てしまった。
俺に 説明されても正直「はぁー」としか言えない。
「あの、わざわざ時間を作ってくれてありがとうございます。でも お仕事が忙しいのであれば 俺 1人でも大丈夫なので」
ソファーに深く座って足組んでる湊さんは盛大にため息はいて睨まれてしまった。
「あのな、晃も色々と不安で1人で外出して欲しくなくて わざわざ 頼んで来たんだ。そこんところ 分かってんのか?」
「でも、申し訳ないし」
「そうよね、普段から忙しい 忙しいってちっともママにも構ってくれないのに 久しぶり晃ちゃんから頼まれ事してお兄ちゃん風吹かせたいだけなよ 湊ちゃんは。だから 今日は鈴ちゃんとママが一緒にお出かけすればいいわよね」
となりに座るお母さんは俺の腕には自身の腕を巻き付けて下から覗き込むように 「一緒にお出かけ」と言ってる。が ホンネを言えば1人で出かけたい。
「母さん!!何度言えば分かってくれるんですか?!公共料金なんて支払ったことも無いお母さんがついて行っても足でまといです。家で大人しくしててください」
「あら、知らないからこそ鈴ちゃんに教わるのよ。ね、鈴ちゃん 私ね主人と出会って10代で結婚したの、何不自由なく暮らしてこられたから鈴ちゃんよりも世間なんて分からないから教えてね」
10代で結婚か。早いなぁ~、Ωだし デキ婚なのかな。・・・本当 見た目 若いな・・・確実に俺よりも長生きしてる相手に何を教えるんだ?
「俺 お母さんに教えれることなんて無いです」
「あら、そんなことないわ。鈴ちゃんが当たり前に知ってる事でも私にして見れば初めてで新鮮な事かもしれないもの。ね、私と一緒にお出かけしましょう」
もぉーめんどくさい。料金払いに行くってだけなのになんでこんなことになってんだ?!
「あの、お昼も一緒にって言ってますし 仲良く出かけませんか?それが無理なら俺一人で行きます」
「わかった、その代わり勝手な行動はするなよ。1人でも手一杯なんだから」
1人でも手一杯??
「社会見学ね」
「勝手な行動はしないでください。良いですね」
お母さんはニコッと笑って頷いた。
マンションを出て驚いた。静かに横ずけされて朝岡さんが当然のようにドアを開けた。
「ありがとう。さぁ 鈴ちゃんと乗って」
・・・センチュリーだ。近くでセンチュリーはなかなかお目にかかれないのに コレに乗るの?
俺 お母さんをマジマジと見てしまった。
「あの、お母さんって何者?」
「主婦よ」
普通の主婦が運転手付きのセンチュリー乗るの?
よく考えたら 補導された時も 病院に連れて行ってくれた車も高級車だった。でも、今は目の前に止まった車を見たら、なんかとてつもなく天と地どころか、地と宇宙程の違いがある事に気がついた。恐る恐る お母さんと湊さん見て、聳え立つドリアムルマンションを見上げた。
「ボヤっと立ってないでさっさと乗ったらどうだ。周りの目が五月蝿い」
湊さんに何か言われたが聞いてなかった。
「えっ?」
「乗れって言ったんだ」
肩を押されて強引に車の中に押し込まれてしまった。慌てて降りようとするがすぐさまお母さんが乗り込み助手席に湊さんが乗り込んみ「出せ」 と 号令を出すと、シートベルトをする暇もなく 車は静かに動き始めた。
「あらあら、鈴ちゃん シートベルトを締めて」
子供に手を貸すようにシートベルトを引っ張り シートベルトをしてくれたお母さん。
「ふふっ、後部座席もシートベルトしないとダメなんですよ」
そんな事を言いながら 自身にもシートベルトを絞めたお母さんに途切れ途切れになりながらも ありがとうございます と何とか言えた。
前もって晃さんに聞いてたのか迷わずに、俺の自宅に 帰り付いた。
「待ってろ」と 湊さんが降りて ポストの中をの物を持って帰ってきた。請求書を一つ一つ確認して揃ってる事を伝えると またしてもクルマが動き出し。
「金はあるのか?」
今は仕事もして無いし、晃さんの所を出る時も 生活費を置いて出るつもりだった。その後すぐに引越しも考えてた。自分が色々と心許無い事はたしかだし、あんなアパートを見られたら色々と湊さんお金の心配をされてしまって恥ずかしくて俯いてしまった。
「ちょっとした手違いで 晃さんにお借りしましたが直ぐに返しますので」
それでも 全くない訳でもないので、ちゃんと説明をしようにも なんと言っていいかわからいままに言葉にしてしまった。
「いや、そんな事を聞いたんじゃなくて、・・・俺の聞き方が悪かった」
「いえ」
妙な雰囲気に包まれる車内に息が詰まりそうになる。
「ねえ、このお手紙でお支払いするの?」
明るい声が隣からかけられた。
「はい!このハガキの この部分を摘んで開くと支払い書になります」
なんの講座かとツッコミたくなるけど 真剣に聞いてくるお母さんにハガキを見せながら 丁寧に教えた。
「ねえ、私に開かせて貰っても良いかしら?」
ハガキを渡すと、慎重に捲り始めたお母さん。
「あら、簡単に開けるのね。スルスルって、ほら 開けたわ」
ハガキを綺麗に開けたと喜ぶお母さん。ウーン「よく出来ました」とかは 言えないので笑って誤魔化した。
そんな事をしてたら 大家さんの家に辿り着いた。なんで、振込みじゃなく手渡しなのを知ってるのか謎だ。
車を降りると湊さんとお母さんも着いて来る気満々。
「あの、1人でも大丈夫なので」
「晃に1人にしないで欲しいと頼まれたから」
「鈴ちゃんは もうウチの子よ。挨拶しとかないと」
「母さんは余計なことは 言わないで下さい」
こんな所で揉めないで下さい。
さっさと終わらせたくて チャイムを鳴らした。
「はーーーい」
スエット姿で出来たのは大家さんの娘さんで30手前。何時も この娘さんの愚痴を良く聞かされる。働かずに親のスネかじりの娘に手を焼いてる。らしい。
「あら、たなぁァァァァ」
バンと、鼻先でドアを閉められてしまった。
「鈴、お前 あの娘に何かした覚え あるか?」
「いえ、親のスネかじりだと、大家さんの愚痴を聞くことがあっても 何かした覚えは全くありません」
「そうなの?困ったわね、お家賃を持ってくる時は手土産も持ってくるべきだったのかしら?鈴ちゃん出直す?」
鼻先でドアを閉められてしまったら手土産が居るのだろうか?最初のご挨拶の時だけで 後は手土産なんて持ってきたことは無い。
「要らねーだろ そんなもん」
お母さんの意見はバッサリ切り捨てる湊さん。
「でもね、ドアを閉められてしまったわよ?」
「家賃が渡せません」
困った。せっかく連れてきてもらって 中に娘が居ることも分かってるのに 家賃が渡せないのである。
どうしたらいいのか分からずに湊さんを見てしまった。
「二人同時に俺を見るな」
そんな事を言いながらも腕を伸ばしもう一度チャイムを鳴らした。
『少々お待ちください!!!』
家の中から先程の娘が叫んでる。
「突然の腹痛でトイレに駆け込んでるかもしれないわね」
なるほど!
「大丈夫でしょうか?」
「医者が必要なら待機させておきましょうか?」
「そうかもなしれないが、・・・待ってくれと言ったんだ。あと5分して応答が無ければ救急車を呼ぶか」
「そうですわね」
そのまま 5分して もう一度チャイムを鳴らそうとした所にワンピースに清楚な感じの娘が立ってた。
「お待たして申し訳ありません。どうぞ御上がり下さい」
俺が見てる人はさっきのスエット姿の女性と同一人物なのかと、疑ってしまう人だった。
「・・・・・」
言葉もなく呆然と見てたら湊さんが変わりに要件を話してくれた。
「ミツバ荘の田中ですが 家賃をもってきた。 領収をくれるだけで結構だ」
「領収書を 書いてる間にお茶でも」
イヤイヤ、 ここで話すことはあっても俺一度も家に上がったことないから。
「結構だ。私たちは先を急いでるので」
大したようはないけど 湊さんの言葉に頷いてしまった。
「そうなんですね。少々お待ちください」
なにその 残念そうな顔に、ぎらつく女の目をしたのを見て なるほど と わかったけど、よく見たら湊さんが既婚者だって分かるよ 指輪してるの。まだまだ スネかじりは続くみたいですよ大家さん。
家賃と引換に領収を受け取った。
「田中さん、何時でも遊びに要らしてね」
「うふふ。鈴ちゃんね、結婚しましたの。あっ、私 鈴ちゃんの母になりましたの。つきましては、来月一杯で お部屋を出ますから 契約解除 お願い致します」
ええーー!!!!ちょっと 俺 住むところなくなったら 帰れる場所 無いんですけど!!困るんですけど!!
「えっ、・・・うそ 。あっ指輪 なるほど あー分かりました。伝えときます」
ちょっと!!指輪って 俺には指輪ないだろ!!って、湊さんしか見てないし 態度悪くなったし 了承しちゃった。マジかよ!!!
「ありがとうございます。宜しくお伝え下さい。行くぞ鈴」
いきなり紳士面して頭を下げ 俺の肩に少し手を乗せて 車に誘導された。
車に乗り込み ゆっくりと進み始める お母さんがくすくす笑い始めた。
「もぉ~、耐えらんないわ。久々見たわ 湊ちゃんも まだまだモテたのね。帰ったら 愛ちゃんに教えてあげなくちゃ」
愛ちゃん?湊さんの奥さんかな?
「母さん。愛音にわざわざ教えなくても良いです」
「あら、ダメよ 楽しい事は皆で分かちあわないと」
「あの娘には気の毒かもしれないが、α狙いならやめといた方が賢明だ。あんな子を好きになるαは居ない。遊ばれて捨てられるのがオチだ。同じβ同士で恋愛した方がまだ大事にされる」
バッサリ所か畑違いを好きになるなと蹴り落とす勢いの湊さん。高望みしたい子の希望や気持ちもくんでやらないのは酷いと思う。
「鈴ちゃん、湊ちゃんの言い方は酷いかもしれない、でもあの子は多分 どんなαとも合わないと思うわ」
「どうしてですか?」
「人はね男女やバース性の問題は二の次だと私は思ってるの。疲れてる時に癒して上げれる心を持ってるかどうか。そして、バース性で人を最も癒して上げれるのがΩなの。一説には永く迫害され続け心を痛めてきたΩが、1番人の痛みを分かってあげれる。そして、αは誰にも弱味を見せないが1番癒しを求めてる。こればかりが全てでは無いわ。でもね、あの子にはαの癒しにはなれないわ。湊ちゃんを見て 湊ちゃんだけに気に入られたかったあの娘にはね」
ウーン 分かる 様な ・・・気がする。
車はコンビニの駐車場に止まった。
「ココがコンビニね。ワクワクするわ!!」
お母さんの中ではコンビニがメインイベントになっていたみたいだ。
「お母さん、子供では無いんですから はしゃがないで下さい!」
母親を叱る子供も居るんだ。初めて知ったな。
親に育てられてない俺としては湊さんとお母さんの関係を見れるだけでも新鮮だったし 楽しかった。
そんな俺は道の向こうに居る人物を見た瞬間 俺は走り出してしまった。
車の急ブレーキの音で相手は俺の方を見て 走り出した。間違いない俊だ!
窓から 飛び出すな!!と怒鳴る運転手に「すみません!」と大声で謝ると 俺も俊の後を追った。
背中から「鈴!!行くな!!」と、湊さんに怒鳴られながら。
昨日 電話で頼まれ湊さんが俺の付き添いに着てくれる事で纏まったが お母さんが 来てしまった。
俺に 説明されても正直「はぁー」としか言えない。
「あの、わざわざ時間を作ってくれてありがとうございます。でも お仕事が忙しいのであれば 俺 1人でも大丈夫なので」
ソファーに深く座って足組んでる湊さんは盛大にため息はいて睨まれてしまった。
「あのな、晃も色々と不安で1人で外出して欲しくなくて わざわざ 頼んで来たんだ。そこんところ 分かってんのか?」
「でも、申し訳ないし」
「そうよね、普段から忙しい 忙しいってちっともママにも構ってくれないのに 久しぶり晃ちゃんから頼まれ事してお兄ちゃん風吹かせたいだけなよ 湊ちゃんは。だから 今日は鈴ちゃんとママが一緒にお出かけすればいいわよね」
となりに座るお母さんは俺の腕には自身の腕を巻き付けて下から覗き込むように 「一緒にお出かけ」と言ってる。が ホンネを言えば1人で出かけたい。
「母さん!!何度言えば分かってくれるんですか?!公共料金なんて支払ったことも無いお母さんがついて行っても足でまといです。家で大人しくしててください」
「あら、知らないからこそ鈴ちゃんに教わるのよ。ね、鈴ちゃん 私ね主人と出会って10代で結婚したの、何不自由なく暮らしてこられたから鈴ちゃんよりも世間なんて分からないから教えてね」
10代で結婚か。早いなぁ~、Ωだし デキ婚なのかな。・・・本当 見た目 若いな・・・確実に俺よりも長生きしてる相手に何を教えるんだ?
「俺 お母さんに教えれることなんて無いです」
「あら、そんなことないわ。鈴ちゃんが当たり前に知ってる事でも私にして見れば初めてで新鮮な事かもしれないもの。ね、私と一緒にお出かけしましょう」
もぉーめんどくさい。料金払いに行くってだけなのになんでこんなことになってんだ?!
「あの、お昼も一緒にって言ってますし 仲良く出かけませんか?それが無理なら俺一人で行きます」
「わかった、その代わり勝手な行動はするなよ。1人でも手一杯なんだから」
1人でも手一杯??
「社会見学ね」
「勝手な行動はしないでください。良いですね」
お母さんはニコッと笑って頷いた。
マンションを出て驚いた。静かに横ずけされて朝岡さんが当然のようにドアを開けた。
「ありがとう。さぁ 鈴ちゃんと乗って」
・・・センチュリーだ。近くでセンチュリーはなかなかお目にかかれないのに コレに乗るの?
俺 お母さんをマジマジと見てしまった。
「あの、お母さんって何者?」
「主婦よ」
普通の主婦が運転手付きのセンチュリー乗るの?
よく考えたら 補導された時も 病院に連れて行ってくれた車も高級車だった。でも、今は目の前に止まった車を見たら、なんかとてつもなく天と地どころか、地と宇宙程の違いがある事に気がついた。恐る恐る お母さんと湊さん見て、聳え立つドリアムルマンションを見上げた。
「ボヤっと立ってないでさっさと乗ったらどうだ。周りの目が五月蝿い」
湊さんに何か言われたが聞いてなかった。
「えっ?」
「乗れって言ったんだ」
肩を押されて強引に車の中に押し込まれてしまった。慌てて降りようとするがすぐさまお母さんが乗り込み助手席に湊さんが乗り込んみ「出せ」 と 号令を出すと、シートベルトをする暇もなく 車は静かに動き始めた。
「あらあら、鈴ちゃん シートベルトを締めて」
子供に手を貸すようにシートベルトを引っ張り シートベルトをしてくれたお母さん。
「ふふっ、後部座席もシートベルトしないとダメなんですよ」
そんな事を言いながら 自身にもシートベルトを絞めたお母さんに途切れ途切れになりながらも ありがとうございます と何とか言えた。
前もって晃さんに聞いてたのか迷わずに、俺の自宅に 帰り付いた。
「待ってろ」と 湊さんが降りて ポストの中をの物を持って帰ってきた。請求書を一つ一つ確認して揃ってる事を伝えると またしてもクルマが動き出し。
「金はあるのか?」
今は仕事もして無いし、晃さんの所を出る時も 生活費を置いて出るつもりだった。その後すぐに引越しも考えてた。自分が色々と心許無い事はたしかだし、あんなアパートを見られたら色々と湊さんお金の心配をされてしまって恥ずかしくて俯いてしまった。
「ちょっとした手違いで 晃さんにお借りしましたが直ぐに返しますので」
それでも 全くない訳でもないので、ちゃんと説明をしようにも なんと言っていいかわからいままに言葉にしてしまった。
「いや、そんな事を聞いたんじゃなくて、・・・俺の聞き方が悪かった」
「いえ」
妙な雰囲気に包まれる車内に息が詰まりそうになる。
「ねえ、このお手紙でお支払いするの?」
明るい声が隣からかけられた。
「はい!このハガキの この部分を摘んで開くと支払い書になります」
なんの講座かとツッコミたくなるけど 真剣に聞いてくるお母さんにハガキを見せながら 丁寧に教えた。
「ねえ、私に開かせて貰っても良いかしら?」
ハガキを渡すと、慎重に捲り始めたお母さん。
「あら、簡単に開けるのね。スルスルって、ほら 開けたわ」
ハガキを綺麗に開けたと喜ぶお母さん。ウーン「よく出来ました」とかは 言えないので笑って誤魔化した。
そんな事をしてたら 大家さんの家に辿り着いた。なんで、振込みじゃなく手渡しなのを知ってるのか謎だ。
車を降りると湊さんとお母さんも着いて来る気満々。
「あの、1人でも大丈夫なので」
「晃に1人にしないで欲しいと頼まれたから」
「鈴ちゃんは もうウチの子よ。挨拶しとかないと」
「母さんは余計なことは 言わないで下さい」
こんな所で揉めないで下さい。
さっさと終わらせたくて チャイムを鳴らした。
「はーーーい」
スエット姿で出来たのは大家さんの娘さんで30手前。何時も この娘さんの愚痴を良く聞かされる。働かずに親のスネかじりの娘に手を焼いてる。らしい。
「あら、たなぁァァァァ」
バンと、鼻先でドアを閉められてしまった。
「鈴、お前 あの娘に何かした覚え あるか?」
「いえ、親のスネかじりだと、大家さんの愚痴を聞くことがあっても 何かした覚えは全くありません」
「そうなの?困ったわね、お家賃を持ってくる時は手土産も持ってくるべきだったのかしら?鈴ちゃん出直す?」
鼻先でドアを閉められてしまったら手土産が居るのだろうか?最初のご挨拶の時だけで 後は手土産なんて持ってきたことは無い。
「要らねーだろ そんなもん」
お母さんの意見はバッサリ切り捨てる湊さん。
「でもね、ドアを閉められてしまったわよ?」
「家賃が渡せません」
困った。せっかく連れてきてもらって 中に娘が居ることも分かってるのに 家賃が渡せないのである。
どうしたらいいのか分からずに湊さんを見てしまった。
「二人同時に俺を見るな」
そんな事を言いながらも腕を伸ばしもう一度チャイムを鳴らした。
『少々お待ちください!!!』
家の中から先程の娘が叫んでる。
「突然の腹痛でトイレに駆け込んでるかもしれないわね」
なるほど!
「大丈夫でしょうか?」
「医者が必要なら待機させておきましょうか?」
「そうかもなしれないが、・・・待ってくれと言ったんだ。あと5分して応答が無ければ救急車を呼ぶか」
「そうですわね」
そのまま 5分して もう一度チャイムを鳴らそうとした所にワンピースに清楚な感じの娘が立ってた。
「お待たして申し訳ありません。どうぞ御上がり下さい」
俺が見てる人はさっきのスエット姿の女性と同一人物なのかと、疑ってしまう人だった。
「・・・・・」
言葉もなく呆然と見てたら湊さんが変わりに要件を話してくれた。
「ミツバ荘の田中ですが 家賃をもってきた。 領収をくれるだけで結構だ」
「領収書を 書いてる間にお茶でも」
イヤイヤ、 ここで話すことはあっても俺一度も家に上がったことないから。
「結構だ。私たちは先を急いでるので」
大したようはないけど 湊さんの言葉に頷いてしまった。
「そうなんですね。少々お待ちください」
なにその 残念そうな顔に、ぎらつく女の目をしたのを見て なるほど と わかったけど、よく見たら湊さんが既婚者だって分かるよ 指輪してるの。まだまだ スネかじりは続くみたいですよ大家さん。
家賃と引換に領収を受け取った。
「田中さん、何時でも遊びに要らしてね」
「うふふ。鈴ちゃんね、結婚しましたの。あっ、私 鈴ちゃんの母になりましたの。つきましては、来月一杯で お部屋を出ますから 契約解除 お願い致します」
ええーー!!!!ちょっと 俺 住むところなくなったら 帰れる場所 無いんですけど!!困るんですけど!!
「えっ、・・・うそ 。あっ指輪 なるほど あー分かりました。伝えときます」
ちょっと!!指輪って 俺には指輪ないだろ!!って、湊さんしか見てないし 態度悪くなったし 了承しちゃった。マジかよ!!!
「ありがとうございます。宜しくお伝え下さい。行くぞ鈴」
いきなり紳士面して頭を下げ 俺の肩に少し手を乗せて 車に誘導された。
車に乗り込み ゆっくりと進み始める お母さんがくすくす笑い始めた。
「もぉ~、耐えらんないわ。久々見たわ 湊ちゃんも まだまだモテたのね。帰ったら 愛ちゃんに教えてあげなくちゃ」
愛ちゃん?湊さんの奥さんかな?
「母さん。愛音にわざわざ教えなくても良いです」
「あら、ダメよ 楽しい事は皆で分かちあわないと」
「あの娘には気の毒かもしれないが、α狙いならやめといた方が賢明だ。あんな子を好きになるαは居ない。遊ばれて捨てられるのがオチだ。同じβ同士で恋愛した方がまだ大事にされる」
バッサリ所か畑違いを好きになるなと蹴り落とす勢いの湊さん。高望みしたい子の希望や気持ちもくんでやらないのは酷いと思う。
「鈴ちゃん、湊ちゃんの言い方は酷いかもしれない、でもあの子は多分 どんなαとも合わないと思うわ」
「どうしてですか?」
「人はね男女やバース性の問題は二の次だと私は思ってるの。疲れてる時に癒して上げれる心を持ってるかどうか。そして、バース性で人を最も癒して上げれるのがΩなの。一説には永く迫害され続け心を痛めてきたΩが、1番人の痛みを分かってあげれる。そして、αは誰にも弱味を見せないが1番癒しを求めてる。こればかりが全てでは無いわ。でもね、あの子にはαの癒しにはなれないわ。湊ちゃんを見て 湊ちゃんだけに気に入られたかったあの娘にはね」
ウーン 分かる 様な ・・・気がする。
車はコンビニの駐車場に止まった。
「ココがコンビニね。ワクワクするわ!!」
お母さんの中ではコンビニがメインイベントになっていたみたいだ。
「お母さん、子供では無いんですから はしゃがないで下さい!」
母親を叱る子供も居るんだ。初めて知ったな。
親に育てられてない俺としては湊さんとお母さんの関係を見れるだけでも新鮮だったし 楽しかった。
そんな俺は道の向こうに居る人物を見た瞬間 俺は走り出してしまった。
車の急ブレーキの音で相手は俺の方を見て 走り出した。間違いない俊だ!
窓から 飛び出すな!!と怒鳴る運転手に「すみません!」と大声で謝ると 俺も俊の後を追った。
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