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63話

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「今日は折角の休みの日にごめんな」

「気にしないでください、急ぎの仕事ってわかってますから」

今日はお店が休みの日だ、1人でパンを焼こうと思っていたらテレサが手伝いを名乗りを上げてくれた、
フレイヤ
「感謝してくれてもいいですよ」

一緒にフレイヤも来てくれているがなんか手伝ってくれてると言うか邪魔してるようにしか思えない、子供達と喋ってるが手が止まることが多い

「それでね、その敵の攻撃が結構早くて、、、、」

「へぇ、お姉ちゃんの魔法がそんなに凄いんだね」

なんか噛み合ってない、フレイヤはゲームの話をして、子供達はフレイヤが実際に魔法を使っているのだと思っている、こっちの人達にゲームの話したって通じるわけはないのだが

「おーいっみんなお昼にしよっか、今日はおにぎり持ってきたからみんなで食べようか」

テレサの作ってくれた梅のおにぎり、どんな反応をするだろうが
フレイヤ
「すっぱーいっ美味しい」

慣れたものだ
子供達
「酸っぱくて変な味ー」

吐き出す子も居る、梅のところだけを避けて食べてる子も居る

「お米はどうだ?美味しいか?」

「白いとこは美味しいけど、赤いとこは変な味」

白米と梅と合わせてお米だと思っているようだ、お米が美味しいって言ってくれるってことはこちらの世界の住人にもお米の良さがわかってくれたようだ

「その赤いところも食べないと、次のおにぎりあげないぞ」

「え え じゃあ我慢して食べるから次の頂戴」

梅も慣れてしまえば美味しさがわかるのに、フレイヤなんて美味しそうに食べてるだろうが、テレサは何も言わずに食べている

(テレサって好きな食べ物あるのだろうか)

いつも何を食べさせても美味しいって言ってくれるが、どれを食べても同じ反応だ

「テレサって好きな食べ物ある?」

「野菜全般が好きですけど、中でもバーニャカウダーが1番好きですね」

変わった奴だ、若い奴なんて肉が好きって決まっているのに、野菜なんて栄養の為に食べるだけの存在だ

「テレサの前世はウサギか馬だったんだろうな」

「はい、そうですね」

からかっても否定もされない、悲しい、それはさておき疲れてる時は甘い物がいいだろうと子供達に飴玉をやる

「これ甘くて堅いね」

「それは噛むな、舐めるんだよ、そしたらずっと口の中で味がするから」

まさか飴玉の食べ方まで教える日がくるとは、きっと祖母もリリムに飴をあげた時はこんな感じだったんだろうなと祖母のことを思い出す

「じゃあ午後も頑張ろう、夕方になったらチョコをあげるから、みんなちゃんと手伝えよー」

「はぁーいっ」

フレイヤよ一緒になって返事するな、お前は自分の小遣いで買えるだろ、シルキーだけが甘い物好きとして目立つがフレイヤも甘い物は好きな方だ、見たらアイスとかはよく食べてるからな、こっちでは冷凍技術がないからアイスは見たことはない。明日はアイスでも持ち込んでみるか

商人ギルドのヘルプの人たちは作業を休めずに働いている、だいぶ手慣れてきたようで、ぎこちなさが抜けている、毎日1万個、もうじき6日も続けていれば慣れてきても普通か

こねる、寝かせる、焼く、この単純作業を延々と繰り返しているだけだ、ほんと終わりが見えない、追加注文した小麦粉もこれが作り終える前には到着するようだ

ハルクは昨日の朝に出たからこっちに戻ってくるのは明日の夜中か明後日か、夜中にファステルに着いても町の門は閉まっているので入城はできない、可哀想なのは着いたらまた運びに行ってもらわないといけないってことだ

車の運転は俺かハルクしか出来ないからな、帰ってくるまでにオゴダイさんもうまくなっていると良いけど、オゴダイさん40代だからそこまで体力はないだろうな

それにしても持って行ったパンは向こうで売れたのだろうか、今回パンの販売に関してはこんびに帝都支店で売るのを止めて商人ギルドで売ってもらっている。

うちの店で販売して、当局に目を付けられても後々が大変だ、商人ギルド通しても1斤300ゴールドで街のパン屋と価格は同じにしてもらっている、手数料を取って高く売ってしまって、帝国みんなの手に渡ってもらわないと作戦の意味がないからだ

侵攻までに間に合うといいのだが、いくら戦争の準備に数ヶ月掛かるからそれまでの間にと言われても戦争を開始されてからだと悠長に作戦なんてしている時間はない 

なまじっか敵に食糧を供給して終わりになってしまったらまさに敵に塩を送る行為と言えよう、こっちは総動員して敵の腹を満たす行為なんて無意味を通り越して有害である

どうせ兵士の手に渡るなら遅効性の毒入りパンでも渡した方がいいよ、もちろん毒と言っても死ぬような毒でなくて下剤のような物でいいだろ、下痢はかなりの体力を奪うはずだ

俺も子供の頃に腐った牛乳で苦しんだ記憶がある、その状態のときは何もする気が起きなかった物だ

夕方現れたアステルに孤児院の計画を伝えた。

「それはいいな、町のみんなもここをどうにかしないといけないことはわかってはいるんだ、だがみんなそんな人のことを気にしている余裕はないんだよ」

「親方は人のことより自分の酒のことだけだろ」

「うるせえ、折角格安で建ててやろうと思ったのに」

「じゃあ酒はおまけで出さなくてもいいと?」

「それは話が別だな、酒は仕事の活力だ、やる気が違う」

「じゃあパンが終わったら頼むな、建てる費用は負けなくていいよ、その代わり帝国のゴールドで払ってもいいか?」

実は通貨は厳密には帝国でもフォーセリアでも同じものが使える、ただ相場によって多少換算額が変わるだけだ、今は帝国120ゴールドで銅貨1枚のはず

これからの話をしながら俺は仕事の片付けを終えた、明日は向こうの港へ小麦粉を取りに行く予定だ。
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