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62話

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「それではシルキー、ハルク頼むな」

パンはある程度作ったら帝国に運ぶ、3日掛けてなんとか3万斤焼くことが出来た、今回は商人ギルドの人たちとハルク、シルキーで帝国に向かう、その為にトラックを購入しておいた

「オゴダイさんも運転は充分注意してくださいね」

「はい、でもこれはすごい魔道具ですね、1日で王都まで行けるなんて、いつもは1週間かかりますが」

こちらではテレサ主導の元パンを焼き続ける、嬉しい誤算があった、スラムの窯で焼いていると、スラムの住人が手伝ってくれた、主に子供たちだが、報酬はこちらの世界のまずいパンと銅貨10枚だ、かなり格安で雇ってはいるが段々と報酬額は上げていく予定ではあるが、今は見習いのようなものなので仕方がない

「おじさーん、まだたくさん焼くの?」

「多分1ヶ月は焼くことになると思うぞ、頑張ってこねてくれよ」

声を掛けてきたのはここで知り合いになったトゥリだ、この子意外に有能で10歳ながらここのスラムの子供達のリーダーのような存在だ、ボルテ、トルン、ジュチ、ジビィ、ラム、カイシュ、サガンを率いている、みんな孤児のようだ

10歳なのでまともな仕事することが出来ず、町に出入りする人たちから施しを受けてなんとか生活をしているようだ。

この窯解体したら孤児院作るのもいいかも知れんな、材料を日本から持ってきてこちらで金貨受け取っても消費するところがなくお金が貯まるばかりだ、日本でも年寄りのタンス預金を吐き出させる為に色々な政策を打っているが、それはそもそも現金を貯め込まれていると流通がしなくて不景気になる

スラムの中で雇用が生まれるのはいいことだ、大人でも真面目に働くならどんどん参加してもらいたい、1ヶ月だけの短期契約だがニートよりはましだろう、スラムの大人でニートは居ないが、働かざる者食うべからずと言ったところだろうか

大所帯となったパン焼成部隊はどんどんとパンを作り上げていく、拙いなりに子供たちは頑張っている、見てるとかなり微笑ましいな、いつかこんなかわいい子供ができるといいなと妄想した。

毎日1万斤のノルマではあるが、今日は1万2千斤焼き上げることができた、夕方になるとアステルが来た、もう1人ドワーフを連れてきている

「窯の調子はどうだ?今からメンテするから帰っていいぞ」

「毎日ありがとう、頼むな」

毎日フル稼働で窯を酷使している為定期的にメンテにきてくれている、一緒に居たドワーフはアステルとは違う工房のエステルだ、そっくりでまるで兄弟のようにしか見えないが、血の関係はないようだ

サガンとカイシュが仕事を見ている、将来は鍛治士にでもなりたいのだろうな

「お前たち興味があるのか?」
サガン、カイシュ
「手に職身に付けたら独立できるかなって、そしたらスラムから脱出できるし」

ちゃんと10歳から将来のこと考えてるなんて偉いな、他の子達は渡したパンに貪り食ってるというのに、まあ一生懸命頑張ってたからな

「美味しいか?」
子供達
「うん、毎日食べることができるなんて今までなかったから幸せだよ」

あのまずいパンで満足するなんて可哀想な子達だ、自分達で作っているバター入りパン食べさせたらどんな反応するのだろう、あげたいのは山々だが一斤でも多く帝国に送り込みたいので今は我慢してもらうしかない

バッグに入ってる非常食のカップスープなら渡してもいいか

「これもついでにやるよ、お湯入れたら飲めるぞ」

「ありがとう」

人数分渡すと飲まずに閉まった

「どうしたんだ?飲まないのか?」

「今飲むと無くなっちゃうじゃん、食料がない時のために取っておかないと」

うん、泣けてくるな、もう少し食料は渡してあげてもいいかな、テレサ達に余分に作るように頼んでおこう、おにぎりとか受け入れられるかどうか試すのもいいだろう

こちらでお米は見たことはないので試食に使えるかどうか食わしてみるのもいいな、ただで渡すなんて勿体ないからな

取り敢えず今日の仕事は終わり、帰るとしよう

「テレサ帰るぞ、そろそろフレイヤも終わってる頃だ」

「はい、今日は1人でお店番でしたから寂しがってるかもしれないですね」

お店に行くとフレイヤがテレサに抱きついていた。

「1人で寂しかったよー」

今まで1人でやらせたことはなかったからな、心配の計算も電卓を渡してあるので問題はない。

「よく頑張ったな、特に問題はなかったか?」

「うん、問題ないよ、私も一人前だね」

「じゃあこれからも1人で出来るってことだな」

「やだやだやだ」

からかい甲斐のある奴だ

「テレサ、明日おにぎりを子供達の分作っておいてくれ」 

「かしこまりました、具は何に致しますか?」

「梅干しだけでいいぞ」

梅干しを食べた時の反応が楽しみだ、子供達のすっぱそうな顔はさぞかし可愛いだろうな、明日が楽しみだ。
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