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イースターエッグハント
フラワーアレンジメント教室にて -3-
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花音が立ち去るのを見送り、テーブルの上を片付けていると、こんにちは、と背後から声をかけられた。
振り返ると、先ほど川上との話題に上がった高木という女性が立っていた。
こんにちは、と咲も挨拶を返す。
「ねぇ、あなた華村先生とはどういったご関係なの?」
挨拶もそこそこに笑みを浮かべ尋ねてくる。
「関係?」
咲はキョトンとして高木を見返した。よく見ると、周りの母親たちも遠巻きに二人の話に聞き耳を立てているのに気がついた。
「あなた、華村先生と付き合っていらっしゃるの?」
「い、いえ、とんでもない」
初対面の高木の不躾な質問に面食らいながら、咲は慌てて手を振った。
「単なるお手伝いです」
「でも、お手伝いならいつも男の方……たしか山本さんとか言ったかしら。その方がされていたわよね」
よくご存知で。
「悠太くん、今日は風邪を引いたそうで。それで、急遽ピンチヒッターに呼ばれたんです」
咲は半ば呆れながら答える。
「悠太くん……?」
高木の肩がピクリと小さく動いた。
もしかして悠太くんって呼ぶのも地雷だったの?
咲は目を白黒させ、高木を見返した。
「あなた、山本さんとも親しいのかしら?」
険しさを増した顔で高木が尋ねた。
「ええっと、親しいというほどでは……彼の喫茶店に顔を出す程度です」
まぁ、喫茶店にまで、と高木は大袈裟に驚いてみせる。
「ということは、華村先生とは私生活でもお付き合いがあるのね」
悠太の喫茶店に顔を出すと言っただけで、花音との関係性を推察できるのだから、高木はかなりの情報通なのだろう。
もし、同じビルに住んでいることがバレたら──
「あの、すみません。まだ仕事があるもので……」
下手に情報を漏らさないよう、咲はやんわりと牽制した。
「あら、それはごめんなさいね」と高木は素直に応じた。それから思い出したように、そういえば、と呟く。
「あなたと一緒にいたあの小さな男の子。あの子は、息子さん?」
「陸くんですか?」
「陸くんっていうの? その子、森の方へ一人で入っていったけど大丈夫?」
「……森?」
咲はギョッとして川上に目を向けた。咲の最後の記憶では、陸は川上にアレンジメントを持っていったはずだった。
「……いない」
しかし、カウンターに立つ川上の傍に陸の姿は見えない。
「え、森っていうのは?」
咲は慌てて高木に聞き返した。
ほら、あそこ、と高木は装飾窓越しに外を指さす。掃き出し窓を出るとすぐ傍にテラス席、五メートルほど離れたところに鉄のフェンスがある。フェンスの内側には季節の花が咲き、外側の奥のほうにはこんもりと木々が集まっている場所が見えた。
「あのドアから庭園に出て、森へ行ったわよ」
片側だけ開いている掃き出し窓を指さす。
「あんな小さな子が一人で森に入って大丈夫かしら?」
そう言って高木は眉をひそめた。
「ちょっと、私、探してきますっ」
咲はそう高木に告げ、掃き出し窓を抜け、庭園へと飛び出した。
振り返ると、先ほど川上との話題に上がった高木という女性が立っていた。
こんにちは、と咲も挨拶を返す。
「ねぇ、あなた華村先生とはどういったご関係なの?」
挨拶もそこそこに笑みを浮かべ尋ねてくる。
「関係?」
咲はキョトンとして高木を見返した。よく見ると、周りの母親たちも遠巻きに二人の話に聞き耳を立てているのに気がついた。
「あなた、華村先生と付き合っていらっしゃるの?」
「い、いえ、とんでもない」
初対面の高木の不躾な質問に面食らいながら、咲は慌てて手を振った。
「単なるお手伝いです」
「でも、お手伝いならいつも男の方……たしか山本さんとか言ったかしら。その方がされていたわよね」
よくご存知で。
「悠太くん、今日は風邪を引いたそうで。それで、急遽ピンチヒッターに呼ばれたんです」
咲は半ば呆れながら答える。
「悠太くん……?」
高木の肩がピクリと小さく動いた。
もしかして悠太くんって呼ぶのも地雷だったの?
咲は目を白黒させ、高木を見返した。
「あなた、山本さんとも親しいのかしら?」
険しさを増した顔で高木が尋ねた。
「ええっと、親しいというほどでは……彼の喫茶店に顔を出す程度です」
まぁ、喫茶店にまで、と高木は大袈裟に驚いてみせる。
「ということは、華村先生とは私生活でもお付き合いがあるのね」
悠太の喫茶店に顔を出すと言っただけで、花音との関係性を推察できるのだから、高木はかなりの情報通なのだろう。
もし、同じビルに住んでいることがバレたら──
「あの、すみません。まだ仕事があるもので……」
下手に情報を漏らさないよう、咲はやんわりと牽制した。
「あら、それはごめんなさいね」と高木は素直に応じた。それから思い出したように、そういえば、と呟く。
「あなたと一緒にいたあの小さな男の子。あの子は、息子さん?」
「陸くんですか?」
「陸くんっていうの? その子、森の方へ一人で入っていったけど大丈夫?」
「……森?」
咲はギョッとして川上に目を向けた。咲の最後の記憶では、陸は川上にアレンジメントを持っていったはずだった。
「……いない」
しかし、カウンターに立つ川上の傍に陸の姿は見えない。
「え、森っていうのは?」
咲は慌てて高木に聞き返した。
ほら、あそこ、と高木は装飾窓越しに外を指さす。掃き出し窓を出るとすぐ傍にテラス席、五メートルほど離れたところに鉄のフェンスがある。フェンスの内側には季節の花が咲き、外側の奥のほうにはこんもりと木々が集まっている場所が見えた。
「あのドアから庭園に出て、森へ行ったわよ」
片側だけ開いている掃き出し窓を指さす。
「あんな小さな子が一人で森に入って大丈夫かしら?」
そう言って高木は眉をひそめた。
「ちょっと、私、探してきますっ」
咲はそう高木に告げ、掃き出し窓を抜け、庭園へと飛び出した。
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