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この度、俗に言う〝異世界転生〟せず幽霊になりました。5

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❇︎✴︎❇︎✴︎❇︎✴︎大治郎と真波の出会い❇︎✴︎❇︎✴︎❇︎✴︎

⌘ 大輝視点 ⌘

「ただいま」

「おかえり、大輝。遅かったな」

何故か俺のマンションに曾祖父さんが転がり込んでいる。

「んだよ。まだ帰ってなかったのかよ…親父達、心配してたぞ」

御歳90を超えた曾祖父さんは、爺さん達と喧嘩して、俺の家にホームステイ家出している。

「十分いい歳して家出って」

「うるさい‼︎アイツら俺を年寄り扱いして」

いやいや、十分年寄りだから‼︎

「今日も、何処かに出かけたのかよ?最近、懐かしい人に会ったって話していたけど…」
「ああ。今日も会って来た。そしてバスで出かけてきた」

「曾ジィ、バス乗れたんだ(笑)」

「大輝、お前も俺をバカにするのか?」

「そんなんじゃ無いよ。普段、車移動が殆どだろ?」

「意外とバスで外出するのも、頭と体を使うから、楽しいぞ」

「楽しいなら構わないけど、転ぶなよ?」

「分かってるって」

「しかし、今日も遅かったな?忙しいのか?」

「いや、仕事は早めに終わったから半日休みを取って、ちょっと見舞いに行って来た」

「見舞い?」

「あぁ。入社した時に、お世話になった人」

流石に曾祖父さんに田所真波の見舞いに行ったとは言えず、出そうになった言葉を飲み込む。

「そうか…早く良くなると良いな」

「早く良くなってもらわないと俺が困る」

「そうか…」

爺さん達と比べ深く探らないから、家出して来た曾祖父さんと暮らすのも苦にならない。

俺って曾祖父さん似かな?

「大輝、また、朝から出かけるから」 

「分かった。何かあったら連絡しろよ」 

「生意気な…」

ーーーーーーーー

「曾ジィ気をつけて行けよ」

「子供扱いしよって」

少し腹を立てて曾祖父さんは出かけて行った。

〝RRRRR〟

「あっ親父。うん…あぁ。曾ジィ?元気だよ。今日も知り合いに会いに行くって出掛けたよ」

曾祖父さんの様子を話しながら会社に向かう。

ーーーーーーーー

「嵯峨嶋課長、おはようございます」

「おはよう」

「昨日、ーー社のーーさんから………」

昨日は、田所真波の様子を見たくて半休を取ったから後の様子を確認する。

「………の件は分かった。担当のーーさんには連絡しておく」

昼休憩に入り社員食堂に入ると噂好きな輩が田坂真波の話をしていた。

〝田坂さん、まだ目を覚さないって〟
〝ツイてないわよね彼女…〟
〝えーっ?そうしたら、岩岡さん事故じゃ済まされないんじゃない?〟
〝ヤっばぁ〟

噂好きの女達は俺の姿を見つけ

「「「嵯峨嶋課長♡ご一緒していいですかぁ?」」」

相変わらず、何を抉りたいのか分からないが、ゴテゴテと飾る長い爪と大量に揚げ物を食した様なテラテラした化粧にとは程遠い香水をプンプン漂わせ、互いに牽制し合う女性陣…うんざりする。

ではなく彼女らは〝SAGASHIMAの御曹司〟としか見ず俺と付き合う事はとしか考えてないのは見え見えである。

円滑に会社を動かす為に色々と我慢している所に未だ目を覚まさない想い女を面白可笑しく言われ、コイツらの口をガムテでグル巻きしたいと言う思いを必死に堪える。

「俺、噂に花咲かせてる人、苦手なんだよね?それに田所さん、頑張っているわけだし、早く元気になってほしいって願うの俺だけかな?」

「「「そっ、そうですよね」」」

「あっ私、用を思い出しちゃったから失礼するわ」

「「わっ私達も!」」

気不味そうに女性陣は去っていった。

「嵯峨嶋、やるじゃん。暫くは来ないんじゃ?」

「△△…もう来なくていい。臭いで具合が悪くなる」

「ひっでぇな?」

「俺が欲しいのは彼女だけだ」

「随分とご執心だな」

「るせっ」

女性と付き合った事が無いわけじゃないのに年甲斐もなく照れてしまった。

「ブハっ!耳赤っ!」

         ◇
         ◇
         ◇

⌘ 大治郎視点 ⌘

「大輝、また、朝から出かけるから」

「分かった。何かあったら連絡しろよ」

「生意気な…」

曾孫の大輝の家に世話になって1週間過ぎた。

息子達には悪いが、どちらかと言うと曽孫といる方が気分が楽だ。

なんだか若い頃の自分によく似ておるし、息子達みたいに深く探らないせいもあるかも知れない…

ーーー 7●年前 ーーー

戦争が終わり、辺り一面は焼け野原で何も無かった。

「にぃちゃ。お腹空いたよぉ」

早くに両親を亡くし、1番上の兄、2人の姉たちは戦争で徴兵や望まない婚姻で離散した。

俺は1番下の弟を抱え、この先、どうするか考えると声を掛けられた。

「もしかして大ちゃん?」

「初絵?」

初絵は近所に住んでいた2つ年下の幼馴染だった。

「そっかぁ、大ちゃんも、平ちゃんと2人きりなんだね」

「お前は、どうするんだ?行く宛はあるのか?」

「あるわけないじゃ無い」

互いに行く当てもないが生きて行く為に身を寄せ合い歳を誤魔化し給仕や御用聞きの仕事をして行く中で、大人達の話や読み捨てた新聞で情報を集めたりしてこれから先の事を考える…

「ねぇ、大ちゃん。手先が器用なんだから何か作ってみたら?」

何気無しに言った初絵の言葉が奇跡を呼ぶ。

小間物を購入して手を加えた物を初絵に使わせると、初絵の職場の人達が〝これは便利〟〝こんな使い方があるね〟と話題を呼び、日本人、外人向け小間物屋を開業。

色んな時事に翻弄されながらも、従業員を雇える程に大きくなった。

幾ら身寄りがない物同士、小さな弟と同居とは言え、思春期世代の男女が同じ屋根の下で暮らすのは外聞が悪い。
初絵の事を幼馴染から女性と意識した俺は18歳の年を迎えたと同時に初絵と結婚した。
勿論、結婚式なんて挙げてない。

結婚を決めた年に1番下の弟は父方の弟夫妻が引き取り離れて暮らすことになる。

弟より、俺の方が寂しかったのは言うまでも無かった。

ーーーーーーーー

結婚して2年後に息子が誕生し3人の子供を授かる。

高度成長期の波に乗り小さかった小間物屋は今じゃ〝大企業〟って呼ばれるくらいに大きくなった…

72歳まで会社の前線で働いていたが、息子に全てを譲り妻と今までできなかった事を楽しむ事にした。 

出逢いがあれば別れは必ず来るものである。
 
「初絵…」と痩せ細り骨と皮しかない妻の手を握りしめる。
「あなた…」歳を重ね病いと闘いながらも変わらず柔らかい笑顔を向ける初絵。

「ちょっとだけ先に行くだけじゃない?待ってるから、たくさん私に土産話を持って来てね。大ちゃん」

出逢いから7●年。
連れ添って6●年。
妻であり、友であり、良き相談相手だった初絵は80を迎える前に俺より先に旅立つ。

暫くは初絵を亡くした辛さが大きく何もやる気が無い一年を過ごした。

「大治郎さん!もし、時間があるなら手伝ってもらえないか?」

古い友人から紹介されたのは高校の用務員のボランティア…

亡き妻を、いつまでも悼んでも虚しいばかりと思い、行く事を決め、そこで田所真波あの子と新たな出会いを果たす事になる。

彼女の第一印象は見た目は年相応なのに、どこか達観している少女。

曾孫の大輝より歳下の彼女、孫娘が居るならこんな感じかな?と思いながら彼女と話す時間が、いつしか楽しみになっていた。

「大治郎さん。お給料、手取り〇〇万円で高卒で働ける、お仕事って何か知りませんか?」

突然、彼女が神妙な面持ちで。就職の相談をしてきた…

「なかなか現実的な数字を言うね。随分と切羽詰まっている様子だが、何があったか、良かったら話してくれるかい?」

彼女の父親が病で倒れ、突然の兄の結婚、そして自分が働かないと家計を支えられない事を感じ、自分に相談する事に至ったらしい。

家に帰り息子達に彼女を雇えないかと相談したら、喧嘩になる始末。

俺が立ち上げた会社は俺から息子、孫へと代替りするうちに時代に合わせ成長している事を感じた。

「なぁ。通信でも大学あるからさ、生活が落ち着いてから大学卒業の資格を取るように条件付けたら?」

何気ない大輝曾孫の言葉でパッと開けた。
まぁ条件付きだけど彼女なら大丈夫と確信していた。

息子や孫を通して彼女の仕事ぶりを耳にしながら時々、電話のやり取りをしていたが、彼女の家も新たな変化があり一人暮らしと俺のとの約束の為なのか、通信で大学を通うようになり、連絡がめっきりと少なくなっていた…

まさか幽体の彼女に再開するとは思わなかった。

幽霊とかは見えないが昔から人の思念て言うのか執着かよく分からないが生きてる人間のは見えていた…そのおかげか分からないが、大きな問題もなく会社は安定していた。

仕事を終え、いつも彼女と話していたへと足を運ぶとスーツ姿の彼女が居た。

私は思わず声をかけた。

「あれ?もしかして真波ちゃん?」

穉気ない少女から大人へと変貌を遂げた彼女は、とても綺麗になっていた。

「大治郎さん…てあれ?私は確か会社の階段から落ちたんだけど、何でここにいる?て事は私は死んだの?えっ?でも大治郎さんには私が見えてる…………え?」

困惑している彼女に俺は言葉を被せた。

「そんな事、どうでもいいじゃ無いか。すっかり大人っぽくなって。元から美人さんだったけど、綺麗になって男なんて引く手数多じゃ無いのかい?」

「はははは(苦笑)残念ながら出会いは無いですよ」

「見る目がない男が多いって訳だ…勿体無い…いや恐らく、態と出逢わないんじゃ無いのかな?」

全く、近頃の若い男達の見る目のなさに呆れた。

彼女と別れ、大輝の部屋に着くと電話が鳴った。
孫から彼女が階段から落ちて今、丘の上の病院に緊急搬送されて2週間近く目が覚めてないことを知り再び彼女に会いに行き肉体の在処を教えた。
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